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む〜さん作

 

土門竜介は張り切っていた。

砲術科希望だった当初は「女の下で働けるかよ!」と反抗していた時期もあったが、「住めば都」というか、どんな仕事でもやってみたら、それなりにやり甲斐もあり、戦闘とは違う不思議な達成感を味わうようになってきた。

また、ユキの下で働く事に少しずつ喜びを感じ始めていた。それは恋の2、3歩手前ということか、土門にも気づいていなかった。

 

「班長!炊事場の片付け、終わりました。他に何かやる事ありませんか?」

生活班長室に入ると、ユキが机の上に突っ伏し、顔を少し横に向けたまま、眠っていた。それはまるで天使のような寝顔だった。

土門は言葉を失い、そのままユキの寝顔を見続けていた。

「班長、疲れているんだろうな。乗組員の面倒から惑星探査の準備までやらなきゃいけないんだから・・・」

机の隅には、「艦長への提出用」とメモの貼った報告書が置いてあった。

「よし、俺が艦長に届けてこよう」と思い、報告書を手にとった時、

「・・・進さん・・・」とユキの声が聞こえた。どうやら寝言のようだ。

「!? 進さん?誰のことだろう?」

土門は古代艦長の下の名前が「進」である事に気づいていなかった。

「進さん・・・会いたかったわ・・・」ユキの目元から一筋の涙がこぼれてきた。

「!! 班長・・・泣いている・・・」

土門は胸の奥がキュンとなり、ユキを泣かせる「進」が許せなかった。

しかし、とりあえず、この報告書を艦長に届けなければいけないと思い、第一艦橋に向かった。

 

ユキは夢を見ていた。

いつものようにエアポートで進の帰還を待っていた。

「ユキ!ただいま」

「進さん!お帰りなさい。会いたかったわ」

「僕だって!」

究極の遠距離恋愛続行中の二人にとって、出迎えは劇的なドラマのワンシーンとなる。

熱い抱擁と甘いキスでお互いの無事を確認する。

いつまでも、いつまでも・・・

 

「艦長、報告書を持ってまいりました。」

「ん!? 土門、この報告書は生活班長に頼んでおいたものだが・・・」

「班長はお疲れのようだったので、私が代わりに・・・」

「そうか・・・ありがとう。どうした?何でそんな怒った顔をしているんだ?」

「・・・いえ、別に。あ・・・でも、さっき」

「さっき?」

「班長が寝言で『進さん』って、泣きながら・・・」

「!?」

「ユキが泣いていたって?おまえ、また泣かしたのか!」島がジロッと進を睨む。

「俺は何もしていないぞ!」

「違います!班長を泣かしたのは艦長じゃありません。進って奴です!」

「へっ!?」南部が不思議そうな顔をする。

「進って奴が班長に悲しい思いをさせたんですよ、きっと。『進さん、会いたかったわ』って言っていたし・・・」

「・・・」

「俺だったら、女性を泣かしませんよ!進って奴、許せないよ」

「ほぅ〜!許せないんだったらどうするんだ?」島がニヤッと笑って尋ねる。

「ぶん殴ります!!」

「また、取っ組み合いするのかよ〜」南部が呆れる。

初日に二人が取っ組み合いのけんかをしたのは皆知っている。

「? またって、俺がぶん殴りたいのは進の野郎です!」

(土門、まだ気づいていないのか。進が艦長の名前だってこと・・・)

「まあ、無事地球に帰ったら、ぶん殴るなり何なりすればいいんじゃないのか」真田が笑った。

「・・・そうします」そう言って、土門は第一艦橋を後にした。

 

翌日、ユキが次の探査計画書を持って、艦長室にやってきた。

「これが食料の補充も兼ねた計画書です」

「ありがとう・・・ところで、大丈夫か?疲れているんじゃないのか?」

「大丈夫よ。どうして?あっ、昨日、土門君が報告書を持っていってくれた時、ちょっといねむりしちゃったけど・・・何かあったの?」

「いや、別に・・・君が『進さん』って言いながら泣いていたって・・・」進がそっとユキの頬をなでる。

「えっ!」

「土門は『進の野郎、ぶん殴ってやる』って言っていたよ。俺のこととは最後まで気づいていなかったようだが・・・」進が苦笑する。

ユキはクスッと笑って、自分の頬をなでている進の手の甲にそっとキスをした。

「・・・あなたをエアポートに迎えに行った夢を見たの。今回も無事に帰ってきてくれて良かったって・・・ホッとして、嬉しくて、それで涙が出たのね」

「ユキ・・・俺は夢の中でも君を泣かせているんだな」

「嬉し涙なんだから平気よ」ユキが笑顔を見せる。

「嬉し涙でも、ユキの涙は見たくないな。いつも俺のそばで笑っていてくれるように努力します。だから、これからも俺の夢を見ますように・・・」ユキの髪に口づけた。

「あなたは私の夢の中では毎晩レギュラーよ・・・」

「俺の夢の中には君しか出てこないよ」

 

二人は星の海に囲まれて、今宵はどんな夢を見るのでしょうか・・・

 

END


Part3ヤマトの二人ですね…… 土門君、官庁の名前もまだ覚えてなかったのね〜〜(^^;) かわいい土門君に、雪ちゃんの思いを意図せずだけど伝えてもらって、古代君は幸せもんだわね!

む〜さん、ありがとうございました!!
あい

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(背景:Holy-Another Orion)