085 未 来
みーこさん作


なあ、雪、こいつらが大きくなる頃には、地球はどうなっているんだろうな?

俺は小さい頃、植物や動物が好きで将来はそれらに関わりのある仕事がしたいと思っていた。
独立心が強くて行動派の兄さんとは正反対の俺は、いつも母さんの傍から離れなかったし、兄さんにからかわれては泣いてばかりいたよ。
父さんはそんな俺のことを随分と心配したそうだが、母さんは「進は優しい子だから、それだけで充分よ。」と、いつも庇っていてくれた。

俺が愛くらいの頃は、まだガミラスの攻撃が始まる前だったから、毎日のように虫を採ったり、珍しい草や花を探して楽しんでいた。
兄さんはもう訓練学校を卒業して、宇宙を飛び回っていたから、滅多に会えなくなっていたけど、時々会うのが楽しみだった。

自分の未来なんて、まだ考えた事もなかったけど、大人になったら<植物学者>なんてものになりたいなあ・・・って、漠然と思っていたっけな。

航くらいの頃には、もう日本にも遊星爆弾が飛来してきていて、前のようには外で遊べなくなっていた。
それでも、父さんと母さんがいたからだろうか、自分の未来に不安なんてそんなに感じてなかった。

俺が守くらいの頃は・・・・・。
アイツくらいの頃は、もう父さんも母さんもいなかった。
たった一人の肉親の兄さんは、ほとんど宇宙に出てまま帰ってこない。
いや、帰って来れるはずもなかったんだ。兄さんは地球のためにガミラスと戦っていたんだから。

父さんと母さんを遊星爆弾で失って、初めて自分の未来に不安を感じた。

正確に言うと、自分の未来なんて考えなくなっていた。
考え始めたのは、ただ<ガミラスへの復讐>・・・・だけになっていった。
俺の未来は<復讐>だけだった。

訓練学校に入って、島や南部たちに出会ったけど、俺はアイツらに対しても完全に自分の心を開く事はなかった。
特にアイツらが自分たちの未来について話しているときは、そんな話を聞くだけでも嫌だった。
俺は自分の未来なんて、未来なんて口にするだけでも嫌悪感を持った。

そして兄さんが冥王星決戦で戦死したと聞かされてからは、俺はますます未来なんてものを考えなくなった。自分の未来なんて考えて何になる・・・・!?そんな気持ちが俺の心を支配していった。

だから雪、君と出会った頃の俺は心の中に今にも溢れ出しそうな<憎しみ>を持った人間だったんだ。
ガミラスを憎み、兄さんを見殺しにしてしまったと、自分勝手に思い込んで、沖田艦長をも恨んでいた。

自分の未来を完全に閉ざしていた俺は、君に一目惚れしたことさえ気付かなかったんだ。

そんな俺だったのに、イスカンダルからの帰路の時には君との未来を夢に見始めたんだ。

もしも、君に出会わなければ、俺はガミラスとの戦いに勝利をした後でも自分の未来を考えなかったかも知れないよ。

二人で未来を誓い合った後も、地球は何度も危機に晒された。
本当のことを言うと、二人の未来を諦めかけた事もあった。でも、君は絶対に諦めなかったね。
もしも、君が俺の手を離していたら、俺たちの未来はなかったはずだ・・・。

こうして今、可愛い子供たちの笑顔を見ることもなかった・・・・。

なあ、雪、俺はどんな事をしてでも、こいつらの未来を守ってやりたいんだ。

もしも、また地球が危機に晒されるようなことがあれば、俺はきっと父親として宇宙戦士として戦いに立ち上がるのだろう・・・・。そんな日が来ない事を祈るけど、もしも・・・・、もしもこいつらの未来が奪われるような事があれば、俺は迷わずに立ち上がる。

なあ、雪、こいつらの未来には何が待っているんだろうな・・・・。

おわり


みーこさんから、古代君のわが子への深い愛情を語ったメッセージをいただきました。
子供達の未来を心配する古代君は、もう立派なお父さん。そして幸せな家庭の一員なんでしょうね。
あい(2005.7.19)

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(背景:Pearl Box)