098 Wedding Bell



cheese☆彡さん作
三人兄弟の中で末っ子の一人娘だった私は、両親の愛情、特にパパには溺愛されて育った。
時にはママがちょっぴりやきもち焼くほどに…
小さい頃は『パパのお嫁さんになる。』って言ったらそれは、それはにこにこと微笑んでいたパパ。

でも、それは叶わないと知ったある日パパに、
『ねぇ、パパ。愛ね、パパと結婚したかったけど、守お兄ちゃんにパパだから駄目だって言われちゃった。だからね、愛、パパみたいな人見つけてお嫁に行く。』
そしたらパパったら少し考え込んで
『それは…駄目だなぁ…』
『えっ?どうして?』

驚いて見返した私にパパは、
『パパに似た奴の所にお嫁に行ったら、愛はいつも泣いてそうだから・・・。』
『え〜。愛泣かないもん。パパみたいな人だったらいつもニコニコできるもん。ママみたいに。』
『―ママみたいに?』
『うん!』
にっこり笑った笑顔のパパはその大きな手で私を軽々と抱き上げてくれた。

地球防衛軍の若きエリート、歴戦の勇者で『鬼の古代』と名を轟かせている。
がプライベートは良き家庭人でとっても子煩悩の愛妻家。
愛の大好きなパパ…。

―柔らかい日差しが心地よく窓辺から差し込んでいる。
今日はシンと私の結婚式…。

支度を整え鏡の前に立った私の後ろで、ママは優しく微笑んでいた。
私もにっこり微笑んで、隣の親族の控え室のドアを見詰めた。
多分、航兄さんはビデオを手にとって調整なんかしてて、森の祖父母はにこやかにお話し中、パパは……、(観念して)おとなしく座ってるかな…。念の為に守兄さんが見張っているはずなの。

だって昨夜、
『シンが挨拶に来た日、父さん、母さんが迎えに行くまで戻ってこなかったよな。まさか結婚式当日も・・・。』
なんて意地の悪い事を言う航兄さんに守兄さんは笑いながら、
『今更逃げたりするもんか。誰だと思ってるんだよ。古代 進だぞ。』
でもそれを覆した人物が若干一名、
『いいえ。結婚式ですもの。危ないわ…。守、あなた明日進さんの傍にいなさい。』
孫たち一斉の視線に、お茶を飲みながら強く頷く祖母、美里。

「―まあ、酷い人たちね。あなた達おばあちゃん家でそんな事ばかり話し合ってたんじゃないでしょうね。パパがかわいそうだわ。」
鏡越しのママに肩をすくめてチロッと舌を出しごめんなさいしながら、
「私はパパを信じてるわよ。確かにシンとの件ではちょっとひやひや、ドキドキさせられた事もあったけど愛の為だってちゃぁんとわかってますもの。」
「そうよぉ。全ては愛の幸せのためのなせる業よ。感謝しなさい。パパに。」
「はぁ〜い。ママ。」
わざとおどけた態度をした私。

でもその顔をみたママは、
「まぁ、ほんとに大丈夫かしら?これから結婚式に臨む娘が・・・。さっ、皆待っているから…。」
と、そっと差し出してくれたハンカチ…
「ママ・・・。」

ちょっとうるるっときてうな垂れた私を、さりげなく優しくママは支えてくれた。
世間では、良妻賢母、才色兼備な完璧な女性。
でも、家ではそんな崇高な硬いイメージは全くなく、普通の優しい、コロコロと表情豊なママ。
愛の大好きなママ…。

カチャリと隣のドアを開け、ママはにこやかに皆に話しかけた。
「お待ちどうさま。さぁ愛・・・。」
真っ白いドレスに身を包んだ私はママに促され皆の前に進んだ。
パパもゆっくり立ち上がって私をじっと見詰めている。
「まぁ、愛・・・綺麗よ、とってもよく似合ってるわ・・・」
普段冗舌な祖母も珍しく言葉少な・・・。
その言葉に嬉しくて、私は皆の前でドレスの端を持ってクルリとターンしながら、
「本当?嬉しい。このドレス選ぶとき大変だったの。ママとあぁでもない、こうでもないって。」
「ふうん、シンと選ばなかったの?」
デジカメで写真を撮りながら聞く航兄さんに
「いやぁね。シンには見せてないもん。お楽しみ!」
ほんと、シンなんて言ってくれるなぁ、ふふふ…。

そんな私たちのやり取りを見ていた両親と目が合った。
近づく私に、パパはドキッとした顔をし、その場から離れようとしたところをママにしっかり腕をとられた。
にこやかに微笑みながら何かしら囁くママにちょっと罰が悪そうに答えているパパ。

私は二人の前に立ち「パパ、ママ」と小さく呟いて体を寄せた。
二人ともそっと抱きしめてくれた。
私はこの二人に、一杯愛されて、慈しまれ、大切に育てられた。
この腕の中は私にとって一番安心できる場所だった。
末っ子の私は大きくなっても、よくパパやママに抱っこして貰っていたから…人一倍その想いは強い。

この安らかな場所から今日私は巣立っていく。
これまではただ守られていただけの私。
でもこれからは私にも守るものが出来るのね。
それは少しずつ増えていくのですね…。
大丈夫…。
シンと一緒に守って少しずつ築いていく。
パパとママみたいに…。
でも・・・もう少しこのまま…このまま…。

―コンコンとノックの音がして、
「そろそろお時間ですので式場のほうへ。」
スタッフの言葉に私はそっと顔を上げた。
パパは黙って私に手を差し伸べた。
その優しい眼差しに、私もとびっきりの笑顔を返して腕を絡めた。


厳かな曲の流れる中、パパと並んで歩くバージンロード。
ゆっくり、ゆっくり歩いて行ってシンの前に立ち止まった。
繋いでいた私の手をシンの手に渡ししながら、
「二人ともお互いの手を離すなよ。」
って微笑みながら言ってくれたパパ。
「はい。」
とはっきりと答えて私の手を取ったシンに、私はにっこりと微笑んで、パパにも小さく頭を下げた。

   ―嬉しいときも悲しいときも…
               健やかなときも……Amen……

(終)


cheese☆彡さんが当サイトの古代家の娘愛ちゃんのWeddingu Bellのお話をくださいました。

まな娘、愛ちゃんの結婚式。進パパの胸に去就するものは何だったのでしょうね? とっても幸せなでも切ない涙を流したことでしょう。

これからはまた、ママに甘えなさいね〜、パパ!(by 愛ちゃん(^^;))
あい(2007.2.10)

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