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いわき市立植田東中PTA新聞コラム『汐風』7号 99年7月

 中学時代は、魂が誕生する時だ。
 今まで親と共に太陽に向かって伸び伸びと育ってきたはずの子供が、心の階段を一段一段降り始める。自分自身の深さを知るために。自分の心の豊かさを手にするために。
 けれどそれは、親にとってはとても不安なことだ。大人たちは自分たちの中学時代のことをすっかり忘れている。いや、それが辛く寂しく切ない経験だったことをいやというほど知っているから、わざと忘れてしまうのかもしれない。
 自分で自分の心の闇を覗き込むには勇気が必要だ。若さはその勇気を後押ししてくれる。青春の時期まで心が、その誕生を待ってくれるのにはきっと理由があるのだ。
 その心の階段をたった一人で降り始めた子供に、私たち大人が心がけるべきは、彼らが必要としたときに必要とした分だけの助力を与えることだろう。自分の力が及ばないときに助けを得られなかった子供は無力感にさいなまれる。けれど、自分の力で乗り越えようとするときに助けられてしまったら、子供は別の意味で無力感に襲われるのではないか。
 必死にバランスをとりながら、暗くて細い道を歩き始めた子供たちは、きっかりと必要な時、必要な分だけの愛情を求めている。贅沢この上ない要求!しかし、その贅沢に答えることのできるのは、子供のそばにいつもよりそって彼らのタイミングをしっかり見届けられる親以外にないだろう。
 そのための瞳を、いつも見開いていたい。