百人一首は不思議な歌集? |
この百人一首には不思議なことがある。歌や歌人の撰び方がどうも変だ、と昔からいわれてきたのである。 たしかに百人一首には名歌も、少なからず入っている。また百首のうち九十八首までは、「勅撰和歌集」(すなわち天皇や上皇がその時代の最もすぐれた歌人たちに命じて編纂させた格式の高い和歌集)に収録された歌であって、その意味では皆ある一定のレベルの歌から成り立っていることもたしかである。 しかし、歌の名人・定家が、何万何千という歌のなかからよりすぐった百の歌だというには、思わず首をかしげたくなるような、あまりにも平凡な歌が多すぎる、ということが、和歌や国文学の専門家によってしばしば指摘されてきた。 |