コラム 拝啓 ボスザル殿
今日、尾花沢の花笠高原スキ−場に用事があり友人と2人で出かけました。紅葉も終わり、山々の木々は葉が落ち、寒い冬の到来が近いことを告げている。スキ−場の駐車場に着いたところで助手席の友人が「サルがいるぞ!」と言った。私がそこを見ると一匹の大きな「ニホンザル」が歩いているのが見えました。ここに「ニホンザル」がいるというのは地元の人に聞いて知っていましたが、季節が寒くなり冬毛に変わった立派な毛並みの「オスザル」を見ると、その堂々とした風格と、体からにじみ出す野性の力を感じました。それからスキ−場の中で仕事をしていると何やら「フォッフォッ、キャキャキャキャ」という鳴き声が聞こえます。何かと思って見るとゲレンデの中程にある大きな杉の木の一番高い所に、大きな「オスザル」がいます。その下を見ると母ザル、小ザル、体が小さいものから大きいものまで、50匹から60匹のサル達が沢を渡っています。近くに私たちがいるので、群が安全に沢を渡れるように、ボスザルが高いところから見張りをし威嚇をしていたようです。そんな「ボスザル」に向かって私は言いました。「大丈夫だ、何もしないから気をつけて渡れよ」友達は「サルは言葉がわからないから伝わらないよ」といいましたが、この後に威嚇をしていた「ボスザル」が威嚇をやめ、静かに群と一緒に私たちの目の前をゆっくり移動していった所を見ると敵ではないと理解したようです。人間としてではなく、動物として認めてもらえたような気がしてうれしくなりました。人でもサルでも群のリ−ダ−は、一番働かなければならないもの。そして時には体を張って命がけで群の命、生活を守らなければならない。
今日、出会った「ボスザル」のような「ボス」がいる会社は、どの位存在するのでしょうか?脱サラをして農業をしている自分を「ボスザル」に重ねながら、「俺もおまえのようなボスになりたいものだ!」と心の中で思い、厳しい自然の中で群を守り続けている「ボスザル」に「尊敬の念」を持ちました。ボスよ、また、自然の中で会いましょう。
2001年11月17日 松田果樹園 松田信彦