[身につくファーストエイドとCPR]
救命救急法は役に立つの?
こんな経験はありませんか?
たとえば… こんなヒヤッとした経験はありませんか?
その1
あなたは2歳の息子が吐いているのを発見しました。床には薬の容器のふたが開いてます。薬のラベルから、薬は家に訪ねてきたあなたの母親のものだとわかりました。強い作用のある薬を飲んでしまったに違いないとあなたは思いました。あなたならどうしますか?次の中でYESと思うものを全て選んで下さい。
- すぐに大量の水を飲ませる。
- 口に手を入れ吐かせる。
- 左側を下にして寝かせ、救急車を呼ぶ。
- 子どものそばを離れず意識の状態や息を普通にしているかよく見る。
その2
家で。テーブルには素敵なクロスがかかっています。その上にアツアツのおでんの鍋がありました。上を見上げた子供がテーブルクロスに興味を…と思った瞬間、端を引っ張りました。転んだ子供の足におでんがかかり赤くなっています。子供は大泣きしています。あなたならどうしますか?YESと思うものを全て選んで下さい。
- すぐに風呂場へ連れていき、足にシャワーで水をかけ痛みが取れるまで冷やす。
- 冷やしても赤みが消えなかったのでアロエを塗り様子をみた。
- ところどころ水ぶくれになっていたので、針でつぶしてガーゼを当てた。
その3
冬のゴルフ場、8ホール目。一緒にプレーしていた友人の一人が突然胸を押さえて倒れこみました。そういえば少し調子が悪そうでした。声をかけても返事がありません。あなたならどうしますか?YESと思うものを全て選んで下さい。
- そのまま身体を動かさないようにしてすぐにケイタイでフロントに連絡する。
- その場に寝かせ、息があるか顔色はどうかを見て、必要なら蘇生法を実施する。別の人は救急車を呼ぶ。
- 揺り起こしたら返事をしたので温かいお茶を飲ませた。
日本の救急体制のキビシイ現状から
急病やケガは場所や時間に関係なく発生するものです。自宅、学校、公道、乗り物の中、デパート、プール、スキー場、海、山・・・どこにいても緊急事態と無縁とはいえません。
ひとたび非常事態が発生した場で命を助けてくれる人は誰でしょうか?
救助や医療の専門家である救急隊員や医師、看護婦などは要請を受けてから駆けつけるケースがほとんどです。119番に通報してから救急車が現場に到着するまでに要する時間は全国平均で6.3分程度かかっています(平成14年)。実際には、倒れている人を発見し、観察をして緊急事態かどうかを判断して電話をとるまでの時間を加えなければなりません。
呼吸停止をしている場合、後遺症無く回復する見込みがあるのは4分以内というデータがあります。何もせずに救急車の到着を待ち、救命を祈っても意味が無いのです。つまり、現実には専門家任せに出来ない状況が起こりうるのです。
では、誰なら命を助けられるでしょう。それはその場に居あわせた人です!そして、それはあなたかもしれません。
居合わせたあなたが、緊急事態であることに気づき周囲の人と協力して救命処置を行うことで、後遺症を起こすことなく回復する道を開くのです。その場に居るあなたが行動を起こすためには救助のための知識が必要なのです。
当講習会ではこんなことを学びます!
<ファーストエイド>
子どもが何かを飲んでしまった、階段から落ちた、やけどをしてしまった、おじいちゃんが突然倒れた、料理中包丁で手を切った・・・ 日々の生活で起こりうる事故や病気。こんな時にどうしたらいいか学びます。
応急手当ての仕方だけでなく、手当てをする前にどこをどんなふうに調べ、どう判断したらいいのか学びます。
たとえば…
ヒヤッとした経験その1
これは服毒のケースです。○はc.とd.です。
服毒の一般的な応急手当ては・・・
一般的に何を飲んだかわからない場合、まず次のようなことを調べます。腹痛、吐き気や嘔吐、下痢、口の周りや中の痛み、におい、眠気、意識があるか、毒物の入った容器が近くにないか。
あなたがとるべき行動は・・・
@命に変わる状況か判断するための情報をとる:服毒した人の年齢や体格、何を飲んだか、どのくらい飲んだか、いつ飲んだか。
A腐食性のあるもの(酸やアルカリ:たとえば漂白剤など)を飲んでいたら、すぐに冷たい1〜2杯の水か牛乳を飲ませて薄める。
B救急車を呼び、呼吸しているか血液循環はあるかを常に見る。
C左側を下にして寝かせる。毒が小腸から吸収される時間を重力で遅らせ、また吐いても窒息を防ぐことが出来る。
D毒物や薬の入った容器を服毒した人と一緒に病院へ持参する。
してはいけないこと;
腐食性のある物質以外では毒物を薄めるために水や牛乳を飲ませてはいけません。錠剤やカプセルは液体によって速く溶け、毒の混じった胃の内容物が小腸に移動してしまいます。小腸は成分をより速く吸収してしまうのです。
ヒヤッとした経験その2
これは熱によるやけどのケースです。○はa.とb.です。
熱によるやけどの一般的な応急手当ては・・・
熱によるやけどの場合、まずやけどの程度と広さが問題になります。1度は皮膚の表層のやけどで、表面が赤く、少し腫れ、その部分が敏感になっており痛みがある状態です。2度はさらに深いやけどで、水ぶくれができ、腫れ、ジクジクし、ひどい痛みがあります。3度は重症のやけどで皮膚の内側の脂肪や筋肉に至っています。皮膚はろうの様に白またはグレーになり、時には黒焦げになっています。こうなると末端の神経はダメージを受けやけどの部分には痛みが無く、周囲の浅いやけど部分が痛みます。
あなたがとるべき行動は・・・
@もし服に火がついているなら、地面に転がるようにして消火する。炎を毛布で覆ったり、水をかけて消火してもよい。走り回ると炎をあおるので止める。
A意識や呼吸、血液循環の状態をチェックする。
Bやけどの部位、深さと広さを見極める(見極め方は講習会で)。
Cやけど以外の問題を見定める。乳幼児や高齢者であるとか、糖尿病や心臓病などがあるとかによってやけどの深刻さは増す。
D医療機関での治療が必要か、やけどの状態を見定める(詳しくは講習会で)。
1度のやけどの手当ては・・・ 熱によるやけどの応急手当ての仕方はやけどの深さによって異なります。ここでは1度の場合をご紹介します。
@冷水に患部をつけ、水の中でも外でも痛みが消えるまで冷やす(約15分。45分くらいかかることもある)。冷やすとやけどの進行をくい止める事ができる。
A痛みは鎮痛剤でとる。
Bアロエやクリームは皮膚をしっとりさせ痒みや皮がむけるのを防ぐ効果がある。
ちなみに、水ぶくれができた場合は故意に破かないようにしましょう。破れていない水ぶくれはキズにとって優れた保護材の役割をしてくれます。
してはいけないこと;
皮膚に張り付いた衣類を無理にはがしてはいけません。
指輪などアクセサリーをはずすのを忘れない―腫れて外せなくなることがある。
広い範囲(20%以上)のやけどは低体温を起こすほど冷やしてはいけない。
やけどが冷えるまでクリームややけどを覆うものを用いない。殺菌されていないものを用いると感染を引き起こしたり、熱を閉じ込めさらにダメージを招くことがあります。
<CPR=心肺蘇生法>
トイレで家族が倒れているのを発見した。あるいは目の前で苦しみだして倒れこんだ。交通事故に遭遇したなど。倒れている人に声をかけても応答が無く、息をしてない、脈が無い、皮膚の色が尋常じゃない。呼吸が止まった、心臓が止まった状態。こんな時に、落ち着いてどう行動したらいいか学びます。
CPRの仕方だけでなくCPRが本当に必要な状態なのか、どこをどんなふうに調べどう判断したらいいのか学びます。また、救助活動による自分自身の感染を予防する手だてについても学びます。
たとえば…
ヒヤッとした経験その3
これは急病のケースです。○はb.です。心臓発作かも知れません。脳卒中かも。いずれにしても、意識が無く呼吸もしていない命に関わる緊急事態です。
ここでは、倒れている人を発見して心肺蘇生法をするまでを紹介します。
ちなみに、c.は脳卒中の場合でも心臓発作の場合でもむせたり吐く危険があるのでお勧めできません。本人が欲しがる場合は様子をみながら少量あげてみます。
@外傷がないか、出血していないか、脊髄に損傷が疑われないかに注意しながら近づく。
A声をかけたり肩を叩いて反応を見る。
B仰向けにし、下あごを持ち上げ気道を開放して空気の通り道を作り、呼吸しているか見る。
C血液循環があるか見る。息をしている、咳き込むなどの反応がある場合、血液循環はあると判断する。それらがなく、皮膚が冷たく青白くなっている場合は循環がないかもしれないと判断する。
D反応のレベルを見る。質問に明確に答えられるか、答えはないが話しかけるとうなるなどの反応があるか、話しかけには反応しないが痛みに反応するか、痛みにも何にも反応しないか、の4つのレベルで判断する。
CPRの手順は・・・ チェックしながら命に関わると判断したら次のように行動します。
@反応がないのなら救急車を呼ぶ。
A気道を開放したが息をしていないのなら、その人の鼻をつまみ口から息を1回(2秒)吹き込む。
B息を吹き込んでも胸が膨らまないのならもう一度気道を開放し息を吹き込む。
C胸は膨らんだが皮膚の色は変わらず反応もないのなら、胸を圧迫し心臓マッサージ15回(100回/1分の割合)行い、次に2回息を吹き込む。助けが来るまでこれを繰り返す。
救助行為としての救命救急法
ファーストエイドとはけが人や急病人に対する救急処置(直ちに行われる手当)であり、適切な医学的治療に代わるものではありません。それは、医療処置を受けるまでの一時的で補助的な手段でしかありません。
一般市民の行う救命救急法は、生死に関わる緊急事態においてその状況を認識し、心臓マッサージや人工呼吸などの救命手当を行うことを指します。これもまた、救急の専門スタッフによる高度の救命処置を受けるまでの救助活動の一つであり、治療行為ではありません。
日本ではファーストエイドの一部を治療行為、つまり専門家しかしてはいけないこととの思い込みが根強く、より素早い手当てが生死を分けるような緊急事態でも、救急車を呼びただ待っていることが多いのが現状です。平成15年、救急隊が搬送した心肺停止状態の人の内、救急隊到着時に家族等により応急手当てが実施されていたのは約3割であるといいます。手当ての方法を身につけ、救急車が来るまでにその手当てを実施する人が増えればもっと多くの命が救えるに違いありません。
緊急事態に居合わせた一般の人 → 救急隊員 → 医療機関
自分がいつ“居合わせる人”になるかもしれません。われわれ一人一人が大切な家族や仲間の命を守るキーマンになるかもしれないのです。
ちょっと余計な話になりますが…
救急処置に関連する言葉は様々です。代表的な言葉を紹介しておきましょう。
- ファーストエイド
- ケガ人や急病人に対する救急処置。応急手当、応急処置ともいう。ファーストエイドが正しく行われれば、ケガ人や急病人を死なせることも、長期入院させることも無く、早期に回復させることが出来るかもしれない。
- 心肺蘇生法:CPR
- 呼吸停止や心臓停止状態にある対象者に、呼吸するための適切な気道を広げ、人工呼吸や心臓マッサージを行う方法。一次救命処置の一つ。
- 一次救命処置:BLS
- 呼吸停止や心臓停止状態にある対象者を救命するために行われる処置の内、薬剤や医療器具を用いない処置をいう。NSCのプログラムでは対象者発見から緊急事態を認識するための観察、CPR、窒息時の処置、AED(自動体外式除細動器)による処置が含まれる。
- 二次救命処置:ALS
- 救命処置の内、一次救命処置から引き続き、専門的なトレーニングを受けた救急隊員(救急救命士)や医師などが医療器具や薬剤を用いて行う医療行為。
- 救急蘇生法
- 厚生労働省と日本救急医療財団では、一般市民による人工呼吸や心臓マッサージ、止血法といった「救急蘇生法」の指針(ガイドライン)を示している。
- 応急手当
- ファーストエイドのこと。応急処置ともいう。BLSも含めて応急手当てという場合もある。
- 救命手当
- 一次救命処置と同様の意味合いだと思われる。
- 救命救急法
- このサイトで用いた救命救急法という用語は、一次救命処置と同様の意味合いである。本来は一次、二次救命処置とを分けずに指すものであると思われる。この用語は、医療専門用語を知らない一般市民でも「命を救うための救急処置」を思い浮かべることが出来るようにと考え、このサイトで使っている。