
椰子のお話 池畠隊員 著
むかしトンガのあるところにヒナ(Hina)という娘がいただよ。
その娘は毎日同じ水場へ水浴びに行ってただよ。その水場にはツナ
という長い魚、そう、日本のうなぎみてぃやーなやつだよなー、そ
んなんが住んでただよ。
そのツナがな、毎日水浴びから帰るときのヒナの水浴び用スポン
ジを吸っていたんだと。
やがてヒナに子供ができただよ。村の衆はみんな驚いただよ。誰
がその子のおとうだか、誰も知らなかったもんだからさ。それがツ
ナだと分かった時、村の衆はツナを捕まえて殺すことに決めただよ。
その日はひどい嵐で強い風が吹いて海の水も暴れていた。ヒナが
水浴びに行くとツナが現れて言った。
「今夜、おまえんところに行く。明日の朝、おれは村の衆に殺され
る・・・・・。」 ヒナはじっと聞くことしかできなかった。
翌朝、村の衆はヒナの家にやってきてツナを殺しただよ。ヒナが
その頭だけ欲しがったで、村の衆はツナの頭を残して他のところは
分けて持ち帰ったずら。
ヒナはツナに言われていただよ。「おれの頭を家の前に埋めろし」と。
ヒナはツナの頭を埋めただ。
しばらくしてそこから芽が出て一本の木になっただよ。それが椰
子の木だよなーぁ。その椰子の木を見ながらお腹の大きくなってき
たヒナは、ツナの言葉を思い出していただよ。
「・・・その木の小さい実は赤ん坊のへその緒取るときの薬だで。
大きな実ん中の汁は赤ん坊に飲ませるだよ。おまえっちはその木を
使って家を建てろし。幹を柱にして葉っぱで屋根ふいてさ。葉っぱ
を編んだかごに赤ん坊を寝かせろし。枯れた葉のしんの所は集めて
ほうきにするだ。実の中の固い殻の回りの繊維はヒモに編んで使え
るし、根を使って魚もとれるで・・・」
やがて子供が産まれ、ヒナはツナに言われたことを全部その通り
にやっただよ。
椰子の木は本当に役に立つ木だよなーぁ。ヒナ達はそりゃぁ幸せ
に暮らせただよ。
これがniu(=椰子・トンガ語)のはじまりだよ。椰子の実のジュ
ース飲むとき、ストロー挿すところがあるだろう。そこがツナの口
なんだよ。椰子の実はツナの頭なんだ。実の薄いところはツナの腹
のほうで厚いほうがツナのせなかなのさ。
椰子の実の図解

********************後 記***********************
トンガの昔話を教えてとせがんだら、トンガ語の先生・ミセスタウファ
は「本当の話じゃないけれど、こう言われているの」と言いながら教え
てくれたのがこのお話です。椰子の木(niu)はトンガ中に植えられて
いて人々の生活の中で本当にいろいろと使われています。
方言は私には懐かしく印象的だった山梨県大月で聞いた言葉を使って
みました。上州弁まじりの甲州弁になったかと思います。
東京弁も結構ですが、故郷の言葉を持っている人っていいなと思います。
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青年海外協力隊トンガ隊員機関誌「'Oiaue」より転載
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