「人間のはじまり」 京子隊員




青年海外協力隊トンガ隊員機関誌「'Oiaue第6号」より転載



トンガ昔話を求めて('Oiaueより)  昔、昔のこと。  この世は見渡すかぎり海であった。  空には、ただひとり、タンガロアが住んでいた。タンガロアはくる日もくる日 も、鏡のような海を見て暮らしていた。  ある日のこと、彼は海に何やら黒いものが浮かんでいるのを見つけた。黒いも のはひとつの岩となり、海から離れて上に昇ってきた。  タンガロアは、その岩を空に引き上げて自分のそばに置いた。そして、指でて いねいにこねまわして女の形を作り、それに息を吹き込んだ。  これで、ようやくタンガロアはひとりぼっちでなくなった。彼は自分の手で女 を母親にしてやった。  生まれたのは、一羽の鳥だった。ツーリという名をつけた。  タンガロアはその鳥を下界の海へ行かせた。鳥は水だけの世界を、はしからは しまで飛んでいった。けれども、いくら探しても羽を休める場所はなかった。  息子がかわいそうになったタンガロアは、海にひとつ岩を落としてやった。岩 はいくつにもくだけて、海に浮かび、サモアとトンガとフィージーの島々になっ た。  ツーリは最初の岩にとまり、そこに家を作った。ところが、何もないものだか ら、たちまち飽きてしまった。  彼は父親に、「ここには影ひとつないんだから。」と不平を言った。すると父 親は、人間草というつる草を送ってくれた。  ところで、あることから息子は父親のいうことをきかなくなった。そこでタン ガロアは罰として、つる草を食い荒らす虫を送ってよこした。  くさったつる草を食べて、虫はどんどん増えていった。そして、その虫から男 の人間と女の人間ができたのである。
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