
「タコとネズミ」 川崎隊員 著
青年海外協力隊トンガ隊員機関誌「'Oiaue第1号」より転載

トンガに住む昔ながらの漁師さんは、タコをとる時に、宝貝の殻の端にヤシの
葉の繊維を結び付け、ネズミの形に似せた道具を使います。タコのいそうな所で
この道具をひっぱると、タコが誘われ、貝殻にへばりついてくる。タコが気付い
て「しまった!」と思う時には、漁師さんによって手早くヤスで突かれて船の
上、なのだそうです。
今も行われているこの漁は、昔々のタコとネズミの喧嘩から始まったと信じら
れています。
あなたはタコの中に7本足のタコがいるのを知っていますか。
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昔々、トンガのある島に友達どうしのタコとネズミが住んでおったそうな。毎
日毎日、タコとネズミは仲良く遊んでおった。
ある夏の日のことじゃった。その日は朝からお陽様がSunSunと照りつける暑い
日じゃった。タコもネズミのその暑さに「今日は何をして遊ぶべか。」と考えお
った。そのうち、泳ぎの上手なタコが、「ネズミどん、今日はこげに暑いから海
で泳いで遊ぶべぇ。」と言いおった。ネズミは、「タコどん、そらえい考えじゃ
が、わしゃ泳げんぞい。」と答えた。
「何かうまい手はないもんかの。」タコもネズミも知恵をしぼった。タコが、
「わしがネズミどんを頭の上に乗せて泳いでやるが。」と言いおったので、海の
嫌いなネズミも勇気を出して海に入ることにした。
しばらくは楽しく遊んでおったが、ねずみは潮風に腹を冷やされたのか、突然
ウンチがしたくなったと。「タコどん、わしゃ疲れちもうたから、島さ帰ってく
れんかのう。」しかし、ネズミはとても島までもちそうになかった。体中冷や汗
をかいて頑張ったが、とうとうネズミはタコの頭の上で用を足してしもうた。じ
ゃけど、タコは一生懸命泳いでおったので気付かんかった。
島に着くとネズミは恥ずかしそうに小声で「タコどん、すまんのう。」と言っ
て、そのまま走って帰ってしもうた。タコも追いかけようとしたのじゃが、一生
懸命泳いだ後で、息も切れて走れんじゃった。タコはヤシの木陰にどっかりと腰
を下ろすと、しばらく休むことにした。タコがぐったりと休んでいると、どこか
らか変なにおいが漂ってくるのに気付いた。そして、「ネズミどんを降ろしたの
に頭の上がまだ重いようじゃが・・・。」タコは何気なく頭の上をなでてみた。
すると、どうじゃろ頭の上にはネズミのウンチが乗っとるじゃないか。
タコは疲れていることも忘れて真っ赤になって怒りだした。タコはネズミの住
んじょる穴の家まで行くと大きな声で、「ネズミどん、出てこんかい。」と呼ば
わった。ネズミは、「タコどん、しょうがなかったんじゃ。赦してくんろ。」と
言うだけで顔も出さんかったので、タコはますます頭にきてしもうた。タコは穴
に近づくと、ネズミどんをひきずり出してやるべぇ。と一本の腕を穴の中に突っ
込み、手探りでネズミの尻尾をつかまえた。「痛たたたっ。」
ネズミはあやまってるのに赦してくれんタコに腹が立ってきた。タコはネズミ
の尻尾を引っ張って離さんかった。「痛い痛い。」ネズミは尻尾をつかんだタコ
の腕を噛んでやった。ちょうどそん時じゃ。タコが力いっぱい尻尾を引っ張っ
た。「ウッ!」とネズミは歯を噛みしめてしもうた。「痛ーーい。」タコの腕は
噛み切れちまった。
タコは涙を流して痛がりながら海へ帰っていった。
それ以来、タコはネズミを見かけると真っ赤になって追っかけるのだと。
じゃから、タコの中には7本足のタコがいるし、もし、皆さんがタコをつかま
えたら頭の中を見てごらんな。真っ黒いネズミのウンチが見つかるベサ。
※ この昔話は、トンガ語研修中に、トンガ人のスニータ先生が話してくれたも
のです。思い出しながら、出来るだけ聞いたとおりに、そしてタコもネズミも悪
者にならないように、ちょっとだけ手を入れて再現してみました。
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