プリント基板製作のノウハウ
「連枝」(れんり)では、多数の標準基板を用意していて、今後もラインアップを充実していきますが、
 ユーザーが基板を自作する場合でも、現在では従来よりずっと簡単で安価にできるようになっています。


◎プリント基板製作の歴史

 
ほんの数年前までの話ですが、8cm×10cm角くらいの基板をつくるのに十数万円の予算が必要でした。
 回路図だけから作ってもらうには多分20万円以上とられたと思います。
 パターンを自動で製作するCADは売られていましたが、数百万円というとてつもない値段で、とても手の出るような値段ではありませんでした。予算のない当社では回路図を描き、それに従ってパターンを鉛筆で描いて提出していました。
 すると、「図面が分かり憎い!」と、電話で文句を言ってくるのです。それが、さも鉛筆描きの図面を軽蔑したような口調なので、(あんたは、パターンを貼っているだけだろう)と心の中で反発したものです。当時は黒テープをパターンとして貼る業者がいたのですが、全く設備投資のいらないその意味では楽な仕事でした。
 そのパターンを焼き付けてフイルムを作るのですが、そのためパターン製作費だけで10万円也が請求され、実際の基板製作にさらに数万円が請求されます。その上大抵の場合、パターンにはミスがあり(もちろん当方の責任ではありますが)、恒例の’切った貼った’のあと、作り直しになれば、またあらたに十数万円がかかるのですから、たまったものではありませんでした。
 プリント基板製作は’量産してナンボ’の世界で、100枚くらいを前提にパターンフィルムをつくるのでしょうが、普通の製品で必要なのは、2,3枚で充分なのですから、随分むだな話でした。量産品なんて普通の工場ライン用には不要ですし、個人のマニアにはもっと不要です。
 個人的に、光エッチングで基板を少数つくる手もありましたが、エッチング用酸化第2鉄は、赤茶色の液体を大量に発生し、流しの汚れの始末が大変で、本当のマニア以外には手を出しかねるものだったと思います。

◎ガーバーデータの確立

 
そのうちパソコンが普及し、基板製作やデータ保存に当たり前のようにパソコンを使用するようになり、企業と基板屋の間でのパソコンによるデータのやり取りが普及してきました。
 その時、(多分)アメリカのフォトプロッターの老舗Gerber Scientific Instrument社が自社の標準フォーマットとして開発した規格のガーバーデータという形式が、E.I.A(米国電子工業会)の承認を受けて、米国の標準規格となり、ヨーロッパを含めて世界標準になりました。
 それと同時に、パソコン上でパターンを製作できるフリーのソフトがいろいろ発表されて来ました。

◎格安基板メーカーの出現

 一方の実際のエッチングによる基板製作の方でも、パソコン上でフリーソフトで作ったパターンや、ガーバーデータだけで、格安で基板を作ってくれるメーカーが出現してきました。その先駆けになったのが、今話題のP板.com社です。
 又、中国やヨーロッパの新興国でも、ガーバーデータだけで基板を格安に、それも20日くらいの短期間で作ってくれる会社が登場し、各々メールで注文できるようになりました。

◎お薦めのソフトとメーカー

 ◇ソフT
   ◎只でさえ面倒で、辛気くさい(何も創造的なことはない)パターン製作が比較的に楽にできるソフトです。
     (でも、このパターン作りが好きで、喜んでこりまくる人が少なからずいます。不思議なことです)。

   PCBE   国産でフリーです。使い勝手が良く、使い方のマスターも簡単なので、広く普及しています。
          部品を動かしても、パターンがドラッグしてついてこない場合が多いので、パターン切れ等の、
          チェックが必要ですが、パターン設計が苦にならない人には最適なソフトです。。
   イーグル  ドイツ製のパターン製作ソフトで100mm×80mmまではフリーです。
          (イーグルP版の100mm×160mmまででは¥94,000ですが、円高メリットで
          平成23年9月現在¥66,000になっています)。
          ドイツ製のせいか強いクセがあって、使いこなすのにかなりの困難を伴ないますが、
          オートルーティング機能がついていて、パターンチェックは最初の一回だけ、
          パターンを光らせて、回路図と照らし合わせるだけです。
          あとはオートルーティング機能を信頼して、再チェックは不要です。
          パターン切れはありませんし、重なりのチェックはイーグルがやってくれます。
          回路図とパターンを同時に管理するようになっていて、回路図もつくることができます。
          特記として、一度購入すれば、取り扱い店に電話すれば、何でもすぐ教えてくれます。
          私はいくら無料でも、下記KiCadよりイーグルをお薦めしたいんだけどなあ。
   KiCad  本格的なPCB用CADが、驚くなかれ無償だそうです。
          あるフランスの企業内のチームが中心になってやっています。
          両手操作が基本のようで、面倒くさそうです。
          デビュー間もないせいもあり、マスターには相当な苦労を覚悟する必要があると思われます。
          開発し立てのオートルーティング機能や、基板の完成品を3次元で眺めるなどの
          不要とも思える機能もついています(トラ技’13年5月号に特集が組まれています)。

 ◇イーグルのマスター
      マスターには以下のサイトが参考になります。
      井上誠一氏のEAGLEによるプリントパターン自動作成      

      本では、「プリント基板CADEAGLE活用入門」(今野邦彦、CQ出版)
           「EAGLEによるによるプリント基板製作の素」(後閑哲也、技術評論社)
      があります。
      私は、後閑哲也氏の方を手引きとし、井上氏のサイトも精読しましたが途中挫折し、
      今野氏の本を新しく購入し、なんとか問題を解決して漸くマスターしました。
      本は両方の購入をお薦めします。
      特に回路図上のピン番号をパターン側(パッケージと呼ぶ)で設定するのには驚きました。


 ◇メーカー
   OLIMEX社  ブルガリアのメーカーですが、ここでは一枚のみとか少数の時は格安です。
          一枚2,3千円で、多数作っても、一枚単価×枚数となるので、
          パターンフィルムを作らないで、新しく開発されたドット・インジェクト・プリンタによって
          製造していると思われます(他メーカーも?)。
   P板.com社 日本のメーカーで、中国、韓国に発注している会社です。
          なかなか対応も良いと評判ですが、パターン切れや重なり等の指摘はある程度は
          してくれますが、完全にしてくれるわけではありません。
   PCBCART  中国のメーカーで、価格はP板.comよりさらに格安です。
          外国メーカーの場合、支払いはPayPal がお薦めで、手続きも簡単です。
   Silver Circuits マレーシアのメーカーです。中国でない自由主義圏のアジアで、英語も上手な
          ので安心です。PCBCARTより少しだけ高いですが、納期など対応はスピーディです。
          P板.comやPCBCARTのように再発注の時、パターン代が無料になるということはなく、
          その場合は、割引きで対応しているようです。
   趣味の基板屋さん 日本のメーカーで、趣味でつくる程度の基板は¥1,000程度でできます。
               初回1枚は無料というのも継続していますが、理解不能な大サービスです。
               日本語が自由に使えて便利です。


 ◇まとめ
    格安メーカーの登場は、冒頭で述べた基板製作の根源的な欠点の’量産してナンボ’を解消
   することになりました。
   詳しい値段は述べませんが、大体従来の国産の1/10くらいの値段で、納期もスピーディです。
   対応が遅れている国産メーカーは、よほど思い切った転換をしないと生き残れないでしょう。

    詳しい価格や、注文申し込みの仕方はインターネット上にありますので、丹念に読んでください。
   私も随分、一生懸命ネット情報めぐりをしたものです。
   外国とのメールでの交渉は、英語でとなりますが、ブルガリヤも中国も英語圏ではないので、お互い
   英語力は対等と思って、気後れせず英語力を使いましょう。中国の場合は漢字を使って見るのも
   面白いと思い、’乞願図面 of pdf’などと私はやっていました(相手の英語が下手で、
   言ってることの意味が良くわからないことが多いのです。最下段に詳述)。

    回路の適正、製作用ソフトの使いこなし、ガーバーデータの考え方や、注文パターン等、
   考えることが多くて、大変に時間のかかる仕事であることを覚悟して、
   根気、根気で頑張る必要があります。
   もともと、冒頭で述べたパターン作りは、とても面倒な辛気くさい仕事だったのですから、
   安く出来る分、もうけものと思って頑張りましょう。

 
(コラム)PCBCARTの英語のわからなさ。
  PCBCARTでは注文の度に応対の方法が違うような気がして、戸惑う場合が多いのです。

  それはともかく、英語については超難問の場合があります。
  今回、ガーバーデータをアップロードし、受け取ったというメールが来たあと、別の課長クラスらしい人
  からメールがあり、
  @ NO file pls upload it on our web site, thanks. 
  とありました。この意味がわからない。特に以前からよく見る’pls’がわからない。
  please?、pluss?、あるいは*.plsファイルのどれかを問い合わせたところ、その返事がなく翌々日、
  次のようなメールが来ました。
  A I mean NO gerber files for production, please upload it on our web site,
  つまり、ガーバーデータをまだ得てないので、アップロードしてほしいということのようです。
  いや、ガーバーデータは送ったはずだと、その確認メールをFW:したりしましたが、かなりイライラしました。
  何故Aのような長い文章が@のように短くなるのでしょう。多分、中国英語で、
  次のような中国語の漢字の並びの
  無い、ファイル、乞う、アップロード、それ(ファイル)、我がWebサイト上、感謝
  をそのまま
  NO file pls upload it on our web site, thanks.
  としたのだと思います。前から’pls’の意味を聞いているのですが、返事はありませんし、また使うのを
  止めようとしません。英語に母音の無い単語はないはずですし、自分の英語に自信がないくせに、変な
  単語を使うなと言いたいです。
  最初の人にアップロード済みの再確認をして一応安心しましたが、この良くわからない英語を使う課長さん
  からは返事がありません。何か返事してよ!

  英語の勉強をしているのではなく、基板作りのためお互いに、母国語でない英語という中間言語を
  一生懸命使用しているのだから、英語の実力に対するプライドはともかく、
  事務的に対応してほしいものです。



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