Kawau:La:B
シンポジウム13●情報化社会におけるネットワーキング
日本心理学会第63回大会発表論文集,1999(名古屋), S63.
インターネットにおけるネットワークの特徴
川浦康至
(横浜市立大学国際文化学部)
key words: Internet, interpersonal relationship, social support
インターネットと対人ネットワーク
インターネットを通じて形成される対人ネットワークに関しては、これまでにもさまざまな特徴が言われてきた。曰く「弱い紐帯」(Granovetter,1973)ゆえの強みが存在する(Constant, Sproull, & Kiesler,1997)、熱しやすく冷めやすい、職業や性別といった肩書き(社会的属性)を越えた関係が形成されやすい、換言すれば「人脈」ではない打算抜きの人間関係が成立している、といった具合である。研究者によっては、むしろ対人関係が失われると主張する人もいるという(安藤,1997)。こうした指摘はネットワークの世界でも、リアルライフ同様、何でもありの証左にすぎないとも言えるし、そうでないとも言える。インターネットという一枚岩ではないメディアと、そこで実際に繰り広げられているさまざまなコミュニケーションとが組み合わされての結果だからである。
対人ネットワーク形成の芽は、周知のようにインターネット上の至る所に存在する。それらは大別すると、「メッセージ交換」の場と「(自己)表現/呈示」の場とになる。前者のメッセージ交換とは、ニューズグループやメーリングリスト、電子掲示板(BBS)のように、ある共通テーマに沿ってメッセージが交わされることで成り立つ空間である(北山,1998)。参加者は関心に応じて、たとえばどのニューズグループがふさわしいのか判断しながら、書いたり読んだりする(空間の使い分け=分散する自己 (山下,1997) )。
メッセージ交換を介した対人関係
パソコン通信利用者に、ネットワークと人間関係(と関心)の関係をたずねたことがある。それによると、「新規の関心・人間関係を形成する場である」と答えた人は、そこで発言するなど、フォーラム(ニューズグループに相当)に積極的にかかわるほど多くなり、過半数にのぼっていた(川浦,1997)。またニューズグループ上の対人関係を分析したParks & Floyd (1996)は、参加期間が長く、頻繁に発言するなど関与度の高い人ほど、新規の対人関係を形成している傾向にあることを見いだしている。
フォーラムにせよニューズグループにせよ、そのテーマに関心を持つ人の集まりである。もちろん、そのテーマに関心があるという特徴は、その人の一部にすぎないだろう。しかし、そうした場でのコミュニケーションは扱っているテーマに制約されることが多いため、参加者の他の面がみえにくい。したがって、参加者は相互に自分との類似性を過大評価したり、また相手に関する手がかりが限られていることも手伝って、相手のことをステレオタイプで判断している可能性も考えられる。
ウェブ空間における対人関係
メッセージの交換によってコミュニケーションを図るという行為は、ウェブページの登場以降、インターネット上のコミュニケーションの一形態と化した。パーソナルなウェブページは、それ専門のインデックス(http://joyjoy.com/)まであらわれるほどの隆盛ぶりを見せている。ウェブページはまず自己表現・呈示の有力な手段となっているが(川浦・北山,1997)、ネット人口の増加とともに、少しずつその性格を変えてきているように思われる。自己表現自体、間接的にコミュニケーションを生起させる契機を含むが、BBSを設けたり、日記など積極的な自己呈示を行うなど、コミュニケーションの種子をページの随所に埋め込むケースが増えている(Kawaura, Kawakami, & Yamashita,1998; 川浦・山下・川上, 1999; 山内,1999)。個人のページなどへのリンク集は、開設者の対人ネットワークのひろがりを視覚化したものと言えなくない(川浦,1998)。自己の関心や知識、センス、作品などが一体となって、開設者の統合された自己が読者に伝わり、読者との間にテーマ優位のコミュニケーションではない、境遇や雰囲気を共有した関係が生まれる可能性が高い。
インターネットにおけるネットワーク
大まかに分ければ、共通の興味や関心を核とする対人ネットワーク、人物そのものを基底とする対人ネットワーク(日記コミュニティなるネットワークも存在する)、2種類のネットワークがインターネットでは観察される。いずれもインターネット固有のものではないが、その形成の敷居や閾値が従来のきっかけに比べると、そのお膳立ては低い部類に入ろう。そうした特徴は、同好の士や関係者が限られていたりして、形成し難かった類のそれを促進する効果につながる(ピアサポートの例として、江口・高橋,1998; 埴岡,1998)。その意味でインターネット上のネットワークは、文字通りのヴァーチャル(実質的)な存在と言えよう。
引用文献
- 安藤清志 (1997) CMCと対人関係: CMC研究ノート6 Computer Today, 82, 66-69.
- Constant, D., Sproull, L., & Kiesler, S. (1997) The kindness of strangers. In Kiesler, S. (Ed.) Culture of the Internet. LEA. Pp.303-322.
- 江口まゆみ・高橋裕子 (1998) 禁煙マラソン ジャストシステム
- Granovetter, M.S. (1973) The strength of weak ties. American Journal of Sociology, 78, 1360-1380.
- 川浦康至 (1997) イメージとしてのネットワーク世界 池田謙一(編) ネットワーキング・コミュニティ 東京大学出版会. Pp.104-116.
- 川浦康至 (1998) 開く 現代のエスプリ, 370, 158-166.
- Kawaura, Y., Kawakami, Y., & Yamashita, K. (1998) Keeping a diary in cyberspace. Japanese Psychological Research, 40, 234-245.
- 川浦康至・北山聡 (1997) ネットに分散、ネットでリンク 池田謙一(編) ネットワーキング・コミュニティ 東京大学出版会. Pp.138-155.
- 川浦康至・山下清美・川上善郎 (1999) 人はなぜウェブ日記を書き続けるのか 社会心理学研究, 14, 133-143.
- 北山聡 (1998) つなぐ 現代のエスプリ, 370, 147-157.
- Parks, M.R. & Floyd, K. (1996) Making friends in cyberspace. Journal of Communication, 46, 80-97; [Online] Journal of Computer-Mediated Communication, 1(4). http://www.usc.edu/dept/annenberg/vol1/issue4/parks.html
- 埴岡健一 (1998) インターネットを使ってガンと闘おう 中央公論社
- 山下清美 (1997) CMC空間におけるアイデンティティ: CMC研究ノート2 Computer Today, 78, 52-59.
- 山内浩司 (1999) 露出系の人たち AERA, 588 (4月19日号), 10-13.