闇色と紅
目につくのはそれだけ
力はもうない……
報われない空しさ
手を差し出したって
光には届かない
だってその手は紅く染まっているのだから………
ただただ呆然とするしかなく
一つの雫が地に落ちていく
とめどなく
ポタポタと…
どうして…
どうして……
どうして………
私は生まれてきてしまったんだろう…
Existence
―出会い―
前編
ザワザワとごった返す教室内。行き交う人々。
どこにでもあるようなその風景は見慣れている。
「はい、わかりました。では後程お伺い致します。」
教室の片隅で一人電話をしていた少女はそう一言言うと、ピッと電話を切った。
真剣な眼差しを携帯に戻し。今が昼休みであったということを思い出して、昼食を取ろうと。
自分の席へ戻った。
漆黒の、腰までかかる長い髪に漆黒の目。
髪は流れるようになびき、目は一心を思わせる、透き通った瞳を持つ。
身長はさほど高いというわけでもなく、152cmぐらいと言った所であろう。
はたから見れば普通の女子高生となんら変わりはない。
席に戻る途中、頬杖をついて窓の外を見つめながらため息をつく少女が目に入り。
気になって、ゆっくりとその少女へ近づいた。
「夏実ちゃん、どうしたの?ため息なんかついちゃって。
お昼、食べないの?」
「あ、ちゃん…。」
、と呼ばれた少女は優しく微笑みながら頬杖をついている少女の顔を覗き込む。
声に気づいたその少女はハッとして頬杖をしていた手をほどく。
「夏実ちゃんがそんな顔するなんて珍しいね。いつもニコニコしてるのに。
何かあったの?」
は立ったままの状態で問いかけた。
「…うん、それがね…。
お母さんにもらった、大事な猫ちゃんのマスコットを無くしちゃって…今探しているんだけれど…。」
「お母さんって…夏実ちゃんの、だよね?」
「うん、そうなの。大事な大事なマスコットだったのに…どうしよう…。」
腕に顔をうずめる夏実の肩に、聖実はそっと手をのせた。
「大丈夫、きっと見つかるよ。そんなに落ち込まないで。
夏実ちゃんが見つかるって思えば、きっと返ってくるよ。
そうだ、私も一緒に探そうか?」
ポン、と握った手を片方の手のひらで叩いて、名案を口にする。
だが夏実は依然、う〜んと曖昧な返事を返すだけ。
迷いに迷ってやっと結論にたどり着くと、申し訳なさそうな顔をしながら
「ううん、やっぱりいいや。今探してもらってるから。」
と答えた。
探してもらってる…?という使役に対し、不思議に思ったは疑問を浮かべた。
「え、探してもらってるって…誰に?」
「あ、うん。そういうのを探してくれる人たちがいて…」
夏実が言っている「探してくれる人たち」というのは、本来ならば「取り返してくれる人たち」なのだが、
事情が事情、あまり心配をかけたくないので、それ以上は言わなかった。
「そっか。なら安心だね。」
夏実が何かを隠しているということに、勘のいい気づいていたがそれ以上は言わなかった。
探してもらっている…なんて。
警察に尋ねたっていうのならわかるんだけど…。
どうやら事情があるみたいだし、あまり突っ込まないようにしておいた方がいいみたいね。
内心、あまり突っ込まれなかったことに、夏実は安堵していたようだった。
「早く見つかるといいね、猫ちゃんのマスコット。」
「うん、ありがとうちゃん。」
はそう一言言うと、その場を去っていった。
――――――放課後、いつも通り学校を出ようとして靴を履き替えると。
腕時計をちらっと見て時間を確認する。
まだ大丈夫かなと思いつつ、とりあえず門を出ようと足を進めると。
すでに門出ようとしていた夏実がいるのを発見し、声をかけようかどうしようか迷っていた時だった。
たまたまその時彼女の周りには誰もおらず、スーツ姿の2人組が寄ってきていた。
なんとなく嫌な予感がした次の瞬間、突然抵抗する彼女を捕まえ、車に連れ込もうと。男性が2人がかりで襲いかかった。
予感的中。
とっさにサッとその辺の木に移動し、身を隠す。
夏実はそのまま抵抗する力もむなしく、連れ去られてしまった。
「…なんだか、大変なことが起きてしまったようね…。」
身を寄せてい木から離れ、今しがたことが起こった門の方を振り返る。
風が黒髪を揺らし、つぶっていた目をゆっくりと開けるとは行動を開始した。
先程までとは違う、真剣な面持ちを表し。
一見平凡な女子高校生ではない
もう一人彼女の顔を見せて………
「あれっ、タイミング悪いなぁ。
まぁいいや、メール打っとこうっと。」
とある場所に止められた車の車内。
今しがた電話をかけていた金髪の青年はそう一言いうとかけていた電話を切り、メールを打ち始め、
運転席にいる茶色い頭の、小さなサングラスをかけた青年の方は、特に何もせず前のめりになってハンドルに寄りかかっていた。
彼らの仕事は”奪還屋”。
そして今夏実が以来をしているのが、この2人である。
たった今、違反駐車の書類を警察にて書いていたところ、金髪の少年がおとしものの所で猫のマスコットを見つけ、
無事に奪還した、と夏実に連絡しようとしていた所であった。
ピピピピッ、とまた着信がなる。
「あ、返ってきた、返ってきた。」
嬉しそうにメールのボタンを押すと金髪の青年はメールの文章を読み上げた。
「えーっとなになに…」
金髪の青年がメールの内容をすべて読み上げ「なんだか変だね。」と言うと、
途端に茶髪の青年の顔が険しくなる。
まじったな…こりゃ…
たかだか依頼品、しかも猫のマスコット人形を渡すだけのことに港の倉庫に呼び出すはずがない。
茶髪の青年はハンドルを切り、車を急いで走らせた。
――まさか港の倉庫だとわね…
後を追いかけてきたは車から降りた3人の男と夏実がとある港の倉庫に入っていくのを確認し、
その近くの建物の影に隠れていた。
先ほどの制服とはまた違い、黒いシャツ、黒いスカート、黒いブーツ…
全身を黒い衣装で染めて。
先ほどの明るい感じとはまた違い、今度はまるで何かを隠すよう…そんな。
さて、どうやって乗り込むかな。
さきほどから乗り込むタイミングを狙ってはいるものの、なかなか入りにくい。
大人数の男が中にいるのを確認したし、夏実だっている。
まぁもっとも男共の人数など、彼女には関係のないことだが…。
問題は夏実自身だ。
特に何をされたわけでもないので意識のある状態でいるのだが、それがまずいのだ。
あんまりこの姿をバラしたくはないんだけどね…
自分がこの黒い衣装を身にまとっている理由、そしてなぜ自分がここにいるのかと聞かれてしまったら
嫌が王にも、その理由を答えなくてはならない。
だが、そんなことを言っている暇もなく、仕方がなく乗り込もうとしたその時であった。
自分の近くを(自身の姿が見えているわけではないのだが)一台の車が通過して行くのを目に捕らえた。
そのまま目で追うとその車はなんと、夏実たちのいる倉庫へ入っていくではないか。
顔こそはよく見えなかったが、明らかにあれは仲間ではない。
なんでこんな所にあんな車が…?
大体、港の倉庫に来ること自体がおかしい。
多少迷ったが、はうん、と心を決めると倉庫の入り口へと近づいていった……―――
TOP/NEXT
まだ続きまーす…。