「貴様、あの家のものなのか…!?」

その言葉に、の目が大きく開かれた――――




















Existence

-無限城"IL"奪還作戦!-






















「へぇ、思った以上にやるね、ミス・レッドムーンは。」

一つの画面に二つの映像。

片方の映像には奪還屋である美堂蛮と不動拓磨が、

もう片方にはよろず屋であると筧十兵衛が映されていた。


そして、それを見ているのは今回の敵のリーダーとも言える、少年王マクベスだった。



少年王と呼ばれるようにまだその表情は幼い。

だが、持ち合わせた頭脳は遥かに大人を越えるほど。

悠然と笑みを携えるその姿が追うものはと十兵衛の戦いであった。




画面を見つつ、なおも言葉を続ける。

「これは予想以上の…いや、期待通り…と言ったところかな…?」


「………」


「…どうかしたかい、さくら?」


「あ、いえ…」



ふと隣にいるさくらが黙って画面を見ているのを気にし、声をかけるが少々反応がうすい。



?とマクベスはくびをかしげた。


「あ、いえその…家というのがちょっと…」

「あぁ、今十兵衛が言ったこと?うん、確かに気になるところではあるよね。





だが、何故か彼女については謎が多い。」




「え…?」



返ってきた意外な言葉。



それもそうである。



何故ならあのマクベスの技術を持ってもわからなかったことが多かったのであるから。


「どういうことですか…マクベス?彼女については謎が多いと…」


「あぁ…。アーカイバのデータを調べてた所なんだが、あの赤屍蔵人の他にもう一つ、



彼女のデータが出てきた。」



「!?それは…!」



「僕にもわからない…

ただ何故か、彼女についてはほとんどプロテクトがかけられていたんだ。」



「そんなまさか!だって彼女のようなのが無限城にいたとは聞いたことがありません、



ミス・レッドムーンなど…」


















「いや、考えられなくはないさ。」










ふいにマクベスではなく別の声が耳に入り自動的にそちらを振り向く。




「プロテクトがかけられているってことは余程無限城にとって重要な人物とうかがえる。




だろう?」


「鏡…」



白いスーツを身にまとい、よりかかっていた柱から離れてマクベス達の方を振り向いたその人物は

おもしろそうに彼らに笑みを浮かべながら言った。




「あの運び屋至上最低最悪と言われた赤屍蔵人のデータが出てきたにもかかわらず、


普通の少女となんら変わらないように見えるは過去等の詳細が不明。






これは一体どういうことなのかな?」





「…なんだか鏡君、彼女について知っているような素振りだね。




…どうなの?」




「クスクス…



さあ…ね…。」


「………」



マクベスに真剣なまなざしをむけられつつも鏡は笑みをたやさない。






「まぁいいや。どっちにしろ、彼女がよろず屋のであることには変わりないんだ。


行く手を阻むものは阻止するしかない。」




再び画面に目を戻しカタカタとキーボードを打ち始める。





「では僕も行くとするかな。」



が、鏡はスッときびすを返し出口の方へとむかった。





「…彼女の所へかい。」



「………」





互いに背を向けたまま、マクベスは視線を画面へ、鏡は笑みを浮かべる。







「…さて、それもどうかな…?」






そう行った後、室内にドアの閉まる音が響いた―――


















―――「お前はあの家のものではないのか!?」


「…!?」





――やはり…


十兵衛の叫びのあとに沈黙が続き、

焦るような顔の十兵衛とは反対に黙る

未だ戦闘の時に向ける顔のままのために、その真剣な表情をくずすことはない。



ゆっくりと口を開き言葉を声に出し始めていく。





「…そういうあなたは筧家の方ですね…


その飛針を見てわかりました。」


「ということはやはり…!」





―こんなところで言うことになるなんてね…仕方がない。





「あなたのお察しの通りです、私は家の人間です…

あなたと同じように、風鳥院家…花月さんも恐らくはすでに気付いていると思いましたが…」




外見は落ち着いているように見えるものの、

内心は正直揺らいでいた。


心音が無駄に響いてならない。






「そうか…だが何故だ…家は確かもう…」


確かもう…という十兵衛の言葉を目をつむって聞く。





彼の言いたいことはわかっていたから。






家はもう…滅してしまったはずだ…。




そう…何年か前謎の滅亡により一族が滅びてしまっと…」





「謎…ということはやはりまだ滅亡した理由がわかっていないんですね…」




「どういうことだ…



なぜ滅亡した一族の末裔がここにいる…!」




シン…とした空間に響くその声は余韻を持つ。

は下を向きながら眉根をよせ、目を細めた。

フッと頭をよぎる光景。

忘れかけていた…いや、自分で忘れようとしていたのかもしれない。

一つ一つの映像が鮮明に思い出されてくる。






――おかあさん!おかあさん!!


いや……


―――おかあさああん!!



いや………!!





「ッ……」


胸が苦しい。声が詰まっていきそうなほどに。



――ダメだ、こんなところで動揺なんかしてる場合じゃない……

そう思って、頭を振り切る。

少しだけ、ほんとうに少しだけではあるものの、

映像も振り切られていく。




「……一族内の争いです」


「なに…?」


家は狙われた訳ではありません………

一族内で争いが起こったんです。


ある事情により……」



「では、他のもの狙われた訳ではないと…?」

「ええ。」

「…待て。ならば何故…



何故貴様意外の全員が死んでいる…?


それに、ある事情とは…」




「そ、それは……」

突然、が言葉を濁す。

だが、十兵衛の真剣な眼差しに思わず身をたじろいでしまい、

余計に言葉が出なくなってしまう。




どうしよう…とそう思っていた矢先のことだった。





――ゴゴゴゴゴゴ…………



「「!?」」


急に、音とともに地響きがあたりを襲い始め、二人の身体を揺らす。

さほど大きな振動ではないものの、多少のバランスを失ったために、

必死で足で自分の身を支えた。




「…何だ…?」


「これは……」



―――誰かが交戦中…?



この地響きから察するように、自分と同じように他の仲間が交戦中なのであろう。

一体どこで行われているかはわからない。

なにせすでに廃墟のビルであり、多少もろい部分もあるであろうから。




――十兵衛もまた、自身の足で身体を支えていたものの、

その視線の先は遠くの方を目を細めて見つめていた。


すると、ふと耳につけたイヤホンから主の声が聞こえた。


『十兵衛もういいよ、だいたい彼女のデータは取れた。

お疲れ様、帰ってきて。』



「……わかった…」



イヤホンを抑えていた手を下ろし、

スッと前にいる少女を見やる。

それに気付いたらしく、向こうも目線をあげる。



「今回はとりあえず中断だ、マクベスより帰還命令がでた。

だが、次はない。覚悟しておけ。」


「…………」



そう言ってが無言のまま、

十兵衛はその場をスッと、立ち去っていった―――











地響きもおさまり、ようやくバランスが正常に保てるようになると

はふぅ、とため息を一つついた。



「よかった……途中で地響きがして…」


他の誰かが交戦中なのであろうはわかったものの、

今はそれに助けられたために感謝ではあった。


あのままの状態でいれば恐らく―――



「…あのままだったら、きっと否が応にも言わなければならなかったよね…」


それだけは控えたかった。

あのことを知っているのはほとんどいないのだから。



いや、むしろ知られてはいけない、本当は知ってはいけないのだ



だからせめて今だけは―――







「…せめて今だけはこのままでいさせて…」









――お願い……








そう願いをこうように、自身の身につけている十字架を両手で握り締める。


まるでそれは懺悔のようにも捉えられるように――
























少女の願いは届くのであろうか
























この先起こることを
























彼女は知る由もなかった―――――――


























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無限城IL偏第6段です。今回はちょっと短めでした。
すみません…また遅くなってしまいましたーあぁー(泣)
書きたいことはいっぱいあるのに……何故進まない私の更新!!


ええと、とりあえず前回で終わらせる事の出来なかった十兵衛との会話を書きましたー。
十兵衛がちょっと悪い人に見えるー……
ヒロインの過去、大分明らかになってきましたね!
ですが、まだちょっと過去に関連したものが出てきます。
というのか、このIL偏はほぼヒロインの過去を明らかにしていく繋ぎの話でもあったので
どんどんだして行こうかと。…なんだかオリジナル要素ばっかですみません…。

次はですね!ついにヒロインの言う”彼”が出てきますよ〜!
と言ってももう大分わかってたり?
まぁとりあえず、次にて”彼”を出しますので、また。

それでは〜次に向けてれっつらごー!



H.16.11.7