―――何かおかしい…


階段を登り、道を進みながら少女はふと思った。


いや、先程からずっとおかしいと思っていたと言った方が正しいだろう。


進んでも進んでも一行にそれらしい気配はせず、それどころか敵の気配がだんだん薄れてきているのである。




ふと足を止め、無言のまま考え込む。




――これはもしかして、真面目に方向が違うんじゃないかしら…なんとなくだけれど。

私、昔から結構勘は当たる方だし…






…………!?――――



ハッと何者かの気配を感じ途端に後を向く

だが、特に何もやってはこない。




この廊下を歩いているのは自分一人のはず……

その時、闇の中キラリと光るものが目に入り…?と首をかしげる。


気のせいかな…?と思ったが。



―――ヒュン!!


―!?―


途端、刃物のような先のとがったものが勢いよく飛んでくるのが目に入り、

とっさに身をひらりと交わし、空中で一回転をしてストン、と着地をした。


着地した時にふとついた右手をそのままにしながら

は顔を上げた。


「…なるほど、さすがまだ腕は落ちていないということかな…?」


「え…?」


唐突な言葉に少々困惑する。

――腕は落ちていないって……だれ…?



「クスクス、もう忘れてしまったかな…?」


まるで人を魅了するような声。

でも、それが誰なのか今だ把握出来ずにいると

コツ…と靴音を立てて暗い影の中から一つ、

姿を現すものがそこにはあった。


その姿を目に入れた瞬間、は目を大きく見開いた。





「あなたは……!」




















Existence

-無限城"IL"奪還作戦!-






















「鏡君!!」


「やあ、久しぶりだね。




目の前にいたのは思いもかけない…いや、多少は会うかもしれないとはいたものの

さすがに自分は仕事だし、会うこともないだろうと思っていた。


ところが、それが本当になるとは。


「何年ぶりかな?元気そうだね。」


「え……ほ、本当に…

本当に鏡君なの…?」


どうやら突然の事にまだ頭の整理が出来ておらず、

本当なのかが区別がつかないようだ。


鏡はそのの様子にクス、と笑った。

「じゃなかったら誰に見えるかい?」


「じゃあやっぱり………本物?」


「クスクス、疑り深いねは。

そうだよ。」



「……………」





ぽかーんと口を開けて、珍しいものを見るように鏡を見つめる

だが、本物だと分かって数秒の沈黙がたった後


は顔をほころばせていった。




「まさかと思ったけど………鏡君!!」



タッとしゃがんでいたのを起き上がり、鏡のものとへ嬉しそうに駆け寄っていく。

鏡はそれに特になにもせず笑みを浮かべてを見ていた。

「ビックリしたよー!まさか本当に会えるなんて。

久しぶりだね。」


「クスクス、性格も相変わらず変わらないね。

でもやっぱりちょっと雰囲気が変わったかな?」

「ホント?でも鏡君は相変わらず何も変わらないね。

そのホストっぷりも。」

「それはどうも。」

「あはは。」


ホスト、をわざと強調して言うに鏡は特に表情を変えることなく、

むしろの相変わらずの無邪気なところに笑みを浮かべていた。


「久々にの顔が見れると思ってね…楽しみにしていたよ。

君の噂はこっちにも届いてたしね。


仕事で来たんだろう?」


「あ、う、うん…そうなんだ…」

ふと、急に表情を変えてきまずそうに下を向く

鏡は不思議そうに見ると、その原因を理解しまた笑みを浮かべた。


「気にしなくて良いよ、君が決めた事だ。

僕は特に何も思ってはいないしね。」


「うん………ごめんね。


ありがとう。」


「うまくやっているようだから安心したしね。


あぁでも…沙羅衣は君に会えなくて少し寂しそうにしてたね。

彼は顔には出さないけれど。」


「そっか、沙羅衣も…元気にしてる?」

「あぁ、相変わらず。」

懐かしい名が耳に入り、顔が自然とほころぶ。

――沙羅衣も元気そうなんだ…良かった。










――「…。」

「ん?」


ふと名前を呼ばれ顔を上げる。





「……アレはまだ続いているのかい…?」


その言葉に瞳孔が開いたと思うと、下にうつむいて表情が暗くなり出す。

そう、アレを知っているのは彼がその一人であった。


「うん…以前なりかけがあったけど…とりあえずはまだ。

でもいつ起こるかわからない…」


「そうか…



………恐いかい?」


「正直に言えば…やっぱり…。


誰かを傷つけてしまいそうで…恐い。」



目の前の少女は、少し大人びたとは言えまだほんの幼い少女。

あどけない表情に隠された真実が彼女を苦しめていく。

――何故、このような少女に………


「ここを出て行ったのは僕たちのためであるんだろう?

アレを気にして、君は僕らに迷惑をかけまいと。」


ハッとの顔が再び上がる、

どうやらそのようであるらしく、暫く無言のまま鏡を見た。


「…うん…、みんなに迷惑をかけたくなかった…

鏡君にも。」


「別に僕らは良かったのに?」


「ううん、ダメだよ。どこかで踏ん切りをつけなくちゃ。

迷惑を…かけたくない…」


――アレを避けて通ることはできない…

だったら、自分で避けられることを避けていかなきゃいけない…―――







「そうか…でも…」


スッと鏡との距離が縮まりその顔をじっと見つめる状態となる。

鏡は手を上げると、の頭へと手を置くとその頭を撫でた。


「無理をしないようにね、君はいつも人に気遣ってばかりだろうから。」

「鏡君………」


頭を撫でられていることも特に気にせず、はただただじっと鏡を見つめる。

小さい子供を撫でるような仕草。


だが、イヤではなかった。


「それに…」


鏡の手により、の前髪が少しかきあげられ視界が見えやすくなる。



「僕にとっても、君は大事な存在だからね。

何かあったらいつでも呼んでくれてかまわないよ」


「……うん。


ありがとう、鏡君。」


再びその顔に静かな笑顔が戻る。


いつだったか、ある人も言ってくれたあの言葉。


”無理するなよ”


その時は、その一言が妙に嬉しくて、暖かくて…。

それは今も同じだった。



「本当にありがとう、鏡君」

「いや、かまわないよ。

それに、君は戦闘をしている時の姿も魅力的だが……



笑顔でいるのが一番いい。」

そう言う鏡の言葉に一瞬、不思議そうな顔をしただが

すぐにまた笑みをつくると


「うん!」



と言ったのであった。

















―――君は僕にとって大切な存在


「何が起こったとしても、僕は君の全てを受け入れるよ…」























誰もいなくなった廊下に


鏡はひとり、そう呟いたのであった…――――――





























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無限城IL偏第7段。この話も大分進んできましたねー。
それにしても今回は本当に短かった…
でもいつ終わるかはまだ自分自身にもわからないという…(汗)
頑張って早くこの章を終わらせたいですね!


さてさてお待ちかねの”彼”でしたが、鏡君でしたねー(笑)
私は赤屍さんと鏡君のペアが好きですね!あの白黒が特に!!(力説)
なんと、ヒロインと鏡君には実はつながりがあったんですね〜。
今回でわかったことですが、どうやらヒロインは以前無限城にいたそうで…?
その時に、鏡君に良くしてもらったようです。だから仲がいいんですね。
”沙羅衣”というのは、アニメを見てた方なら多分わかると思うのですが、
アニメで最後の方に出てきた、鏡君と同じ、バビロンシティの住人です。
設定にはすべてが謎に包まれている予言者だとか。
実は私、彼が結構好きだったりしました、声も渋くて素敵でv
ヒロインと鏡君の会話の中にちょっと出してみたりしました。
これから出現する可能性があるかも?
知らない方はここに行ってみてください→http://www.tbs.co.jp/getbackers/
旧サイトの登場人物のところに『翳沼沙羅衣(かげぬまさらい)』とローマ字表記であるので、
そこをポチッと。


次は……やっとこさ一部の仲間に遭遇です!
かわいそうに、ずっと一人で行動していたヒロインがやっと…!(お前のせいだろ)
誰に遭遇するかは次のお楽しみ〜♪でもその前にちょっとしたことが起こりますけど(またかよ)

それでは〜、鏡君がヒロインの頭を撫でたシーンを書くだけで
恥ずかしくなってしまった管理人でした。


自分で書いといて何なんだろう…一体(笑)

H.16.11.11