ここへ来た以上、こうなることはわかっていたのかもしれない。

鏡君にも久しぶりに出会って、あの過去の幻影に遭遇して。


だから本当はわかっていたのかもしれない。

ちゃんと踏ん切りをつけなくっちゃって。



ここへ来る前だってそうしなきゃって思ったけれど、

……やっぱりまだ、迷いがあった。



だからちょっとのことで動揺してしまったのだと思う。

でも、そんな私を迷いから振り切らせてくれたのは

きっとみんながのいてくれたから。





だから私は進んでみせる。


自分の”運命”に―――





















Existence

-無限城"IL"奪還作戦!-

12





















―――これが本当に最後の戦いになるのは間違いない。



自分の前で会話を交わしている蛮と銀次。

そして赤屍を目前に、ヘブンはそう思っていた。


―――いったいこの先どんな”悪夢”が待っていると言うの?


失うものしかないこの戦いにいったい何の答えがあるっていうの?―――




わからない、まだその答えは見つからない。

果たしてこの仕事を本当に達成することが出来るのか。



「なにやってるヘブン!行くぜ!!」

「う…うん」



―――とにかく今は、先へ進むしかないわよね…




きっとみんな進んでいる。


それぞれ決着をつけるために前へと。


だから今は――








進んでみせる、前に。



















「……へぇ、四人も生き残ったとはね。


これは驚きだ。」



コツコツと自身の靴音を鳴らせ、白いスーツをなびかせながら歩みよってくる鏡。

先ほど蛮と卑弥呼が負わせた傷もすでに治っており、

相も変わらず余裕の笑みを浮かべていた。



「しかし驚く反面、残念でもあるよ」

「残念だぁ?」


「そう―――マクベスが言葉どおりに全てが進んでいることがね。」



「「「!?」」」


「クス」



鏡の言葉に動揺が走り、赤屍は笑みを浮かべる。





すべてが言葉どおりに進んでいるいうことに―――






「マクベスの言葉通りならここに来るのは君たち四人だけ。

冬木士度、絃の花月、そして寝返った笑師春樹はバーチャル戦士との闘いで……」



















「闘いでなんだって?」



















そこに現れたのは、紛れもない士度、花月、笑師の三人。

負傷をおいながらも三人は生きていた。


「士度!カヅっちゃん…笑師まで!!」



「!!」



「どうやらカリキュレーションとやらが狂い始めたようだぜ?



命が惜しけりゃそこどけやキザヤロー。

でもって外野席(アルプススタンド)で『観察』しとけ。







奪らえたものは奪り還す―――――


オレらGet Backersの底力をよォ!!」



















自身に満ちた全員の表情。

彼らの前になし得ないものなどあるのであろうか。








「――なるほどこれは確かにマクベスの計算にはなかった。」


焦るわけでもなく笑みを携える。

そしてその視線は蛮達の向こうの方へと行っていた。

近寄ってくる気配に、耳をすませて。






「そしてそれはもう一つあるみたいだね。」





「え?」






全員が後を振り返る。


目に映ったのは―――







ちゃん!!」














そこにはかなりの早さで走ってきたらしく、息をきらせて肩をゆらせたが立っていた。



「みんな…!!」


再び出会えた成果、笑みが自然とこぼれる。

かけよってくる銀次と卑弥呼に安堵感が湧き上がっていた。



「良かった〜無事だったんだねぇ〜!!

赤屍さんと同じ部屋に入った時はどうしようかと思ったよ〜!」



「…それはどういう意味でしょうか?銀次クン……」



「あ…いえ…な、ナンデモアリマセン……」


「クスクス、大丈夫だよ銀ちゃん。

赤屍さんは簡単に仲間を殺すような人じゃないから。


それに、そんな風に決着をつけるような人じゃないですよね?赤屍さん。」


「クスクス…どうやらあなたには何もかもお見通しのようですね……」


「そんなこともないですよ?まだまだわからないことはたくさんありますから。」



クスクスと笑い合う二人に、タレモードのままに抱かれていた銀次は

の、この赤屍と普通に話している姿に再びそのすごさを感じたと言う…。




「さて、銀ちゃん。ちょっとゴメンね。」


「?」


そう言ってタレモードの銀次をゆっくりと降ろすと、

は前を向いてツカツカと進み出る。


途中すれ違う時に蛮と目が合い、微笑んだ。


「よお。」


「クス、久しぶりだね蛮くん。」


「ちゃーんと生きてるみてぇだな、上出来じゃねぇか。」


「まぁ…ね。生きていなければおかしいし。」


「え、おかしいって…ちゃん………?」



赤屍以外の皆の不思議そうな表情をよそに更に前へ出る。

全員の前に出た瞬間、は立ち止まり鏡を見た。





「やぁ、。君も来るとはね。」


「もちろん。私もこの仕事のメンバーだし、最後までやりとげるのが仕事だよ。」


「なるほど…その辺はやっぱり変わっていないね、君は。」


「「「「「「!?」」」」」」」


「クス」



鏡と何の変哲もなく話し出したに全員は驚きを隠せず、目を見開いた。

赤屍はの事情を知っているために、笑みを携えていたのだが。



ちゃん…?

何で十兵衛のお友達のことをちゃんも知ってるの…?」


「オイ、………」



皆の動揺に少し陰りを見せる。

だが、すぐにその表情も一心な瞳を持って向けられた。



「………みんな、私……ね………」


、いいのかい?」


「うん…いいの。踏ん切りをつけなくちゃと思うから。」


「君がそう決めたのなら、僕は君の思うままにするよ。」


「うん、ありがとう。鏡君。」



―――踏ん切りをつける。


運命を受け入れるためにも。


これから進んでいくためにも。









再び顔を皆のもとへと向ける。

驚きの表情をみせている仲間たちを見渡して。



「私ね…元はこの無限城のバビロンシティの出身者だったの。」


「「「「「「!?」」」」」」」


「んなっ………!?」




「みんなには言うべきかどうしようか考えてた…

…でもまだ私には迷いがあったから言えなかった。

みんなのことを決して騙そうとしたわけじゃない。


でも今回様々な事があって…自分の過去のバーチャルを見て…

それで踏ん切りがついたの。


ここで決めなければ、自分は前に進めないと思うから…」



皆が黙っての話に耳を傾け、聞いていた。

そしてそれに、は言葉を続ける。






「前へ進むにはそれに続くように道を作っていかなきゃいけない。

だからみんなに言うことにしたんだ………




騙したようで…ごめんなさい。」


こんなことで許してもらえるかどうかはわからないけれど、

それでも精一杯の謝礼をこめて礼を一つする。



しばらくの沈黙が流れる。

は礼をしたまま、動かずにいた。



「………顔を上げてよ、ちゃん。」


礼をしたままでいると、ふと銀次の柔らかな声がかかり

は驚きでゆっくりと顔を上げる。


そこには皆の微笑んだ姿があった。



「オレたちはちゃんが何者であったってかまわないよ。

ちゃんのこと、悪い人だとは思わないから。」


「そうですよ。あなたのように風とともに舞うような戦闘姿を見せてくれる方を、

皆悪い方だとは思いません。」


「オレらにもあるように、お前にも事情ってもんあるんだろ?

だったら、自分の思うがままにすればいいことさ。」


「仕事はきちんとこなしているのですし…あなたがそんな風に謝ることもないですよ。」



「みんな………」









「そういうことだ。オメェが気にする事ねぇよ。

周りの事なんて気にしねぇで、テメェのことはテメェで決めろ。





それが正しいと思うのならな。」













―――あぁ私は本当に………


本当にいい人たちに巡り会えたことを…感謝したい…―――



















「みんな…ありがとう…!」







――その時自然に涙が出たけれど、











でもそれは悲しみに満ちたものじゃなくて










嬉しさに満ちたものだったから………











だから今はこの幸せを噛み締めていたい―――
































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次でラストです!



H.17.1.16