Existence
―出会い―
後編
倉庫の中ではすでに事が起きていた。
「俺達はその子を取り返しに来ただけだよ。」
金髪の青年は反対側にいる、1人の男にそう告げた。
だが男は、2人が夏実の仲間であり、自分を監視に来たと言って話を聞こうともしない。
青年ははぁ、とため息をつくと手のグローブをしっかりと身に着け、大勢の男共のなかへと足を進めた。
途端、青年の手から一筋のなにかが発する。
は隠れながらも、目を凝らしてそれがなにかを見ようとした。
電気…?
そう、青年が発していたのは紛れもない、電気そのもの。
拳を振りかざしてくる男共のその手をつかむと、青年は電気を放った。
なにかを仕込んでいるのだろうか…?いや、そんなはずがない。
大体、そんなことで同時にあんな電力を発生させるのは無理だ。
だとしたら…あの青年が自分自身で電気を発生させているとしか考えられない。
―――まさか………
なにかを思い出したように、は驚いて目を見開くのだが…
その真意がわかるのはもう少し先のこと……
「うわあぁぁぁぁっっっ!?」
もはや何が起きているのかさえわからない、仲間が倒されてしまった今恐怖におののくしかない男は銃口を夏実へと向け、
引き金を引こうとした。
「「!?」」
それにすばやく気づいた金髪の青年は一目散に駆け出し、
茶髪の青年はちっ、と舌打ちをして自身のサングラスをはずそうと手をかけた。
ところが。
ビュウウウウッ!!!
突然2人の青年の間を風が擦り抜け、動きを止めてなんとかそこに立ち止まる。
しかし風は特にものを飛ばすこともなく、男の手に握られた拳銃を強く吹き飛ばした。
吹き飛ばされた銃は宙を舞い、ゆっくりとスローモーションのように落ちていく…。
カランと地で回転しながら吹き飛ばされた銃は動きを止めた。
「ぐっ…!!」
ピッと男の右腕の甲に一筋の傷が走る。
大したものではないので人質である夏実を離しはしなかったものの、動揺を隠せないあまり2人青年のを見やる。
茶髪の青年は今がチャンスだとばかりにサングラスを外し、その紫の瞳を男へと向けた。
「ひぃぃぃぃっ!!そんな目で俺を見るなぁぁぁっ!!!」
もはや勝敗は見えた。
…が男はあきらめずに、地に落ちた銃を広い、その銃口の先を2人の青年に向ける。
パアンッ、と2度連続で音がし、2人は倒れていく。
やっと倒したと少し安堵した男に対し、夏実はその光景を目の当たりにして意識を失ってしまった。
ところが、
男の目の前が一瞬にしてまぶしいぐらいの光をあらわす。
見れば、それは警察…自分と同じ職業のものたちがいて。
しかも自分に銃口を向けている。
男は必死に手を振りかざして、それを止めようとした。
「やめてくれぇっ!俺は警察だ!!
お願いだ!!打たないでくれぇぇぇっ!!!!!!」
大勢の警官達が動きをとめるはずもなく、引き金をいっせいに引いた。
男はどんどん銃口で埋め尽くされていく………………
かのように見えた、その時。
「ジャスト1分だ。」
1人の男の声が耳に入る。
それは先ほどまで聞いていたもので……。
男の視界が次第に開けていった。
「悪夢(ユメ)は…見れたかよ。」
チェスの駒は動いた。
駒の指すその意味は…………
チェックメイト。
―――「おい、そろそろ出て来いよ。」
「え?どうしたの蛮ちゃん?」
金髪の青年は夏実を抱えようとし、
男の意識はなくなり、倒れているのを横目に見ていた茶髪の青年は一段落着くと入り口の方へと声をかけた。
もっとも、金髪の青年は彼が何を言っているのか、よくわかっていないらしい。
コツ…と靴音が十分に響き渡り、一つのシルエットを作る。
姿をだんだんと現していく少女、そして最初に目についたのは
揺れる長い黒髪…。
「女…の子…?」
金髪の青年は思わず、そう言葉を漏らす。
黒髪であり全身も真っ黒である少女は軽く微笑みながら、その漆黒のまなざしを2人へ向けた。
「…さっきの風、あれはアンタだな。」
ズボンのポケットに手を入れたまま、茶髪の青年は少女を睨み付けた。
「…そうです。失礼だとは思いながら少し割り込ませて頂きました。
私にも多少関係がありましたので。」
静かに、たんたんと。かつ丁寧に言葉を述べる。
「ええええっ!!?そうなの!?こんなかわいい女の子が!?」
金髪の青年のかわいい…という今は場違いな言葉にぴくっとまゆを寄せた茶髪の青年だったが、すぐに次の言葉をつないだ。
「あぁ、ホントだ。アンタが風を放ったときに、気配に気づいたが…それまでは全くわからなかった。
…関係がある、という所からして……
アンタ何者だ。」
今にも襲い掛かりそうなするどい目を向けられたが、少女は依然として落ち着き払っていた。
「そうですね…こちらから名乗るのが礼儀でしょうし…。
私の名前はと申します。
そこにいる水城夏実ちゃんと同じ高校であり、クラスメイトであり…。
まぁ普通の女子高生なのですが…
裏ではよろず屋をやっています。」
えええええええええっ!!!!?という金髪青年の声に対し、
茶髪の青年は少女のその言葉を聞いてピクッと眉を動かす。
「今日は別に仕事というわけではないので、あなた方とは敵でも味方でもないのですが…
夏実ちゃんが猫のマスコットですごく悩んでて、少し様子がおかしかったので。
…そしたら丁度夏実ちゃんが連れ去られていく所を目撃して、跡をつけたら…今に至ったんです。
それにしても夏実ちゃんが言ってた”探してくれてる人たち”というのはあなた方のことだったんですね。
奪還屋”Get Backers”さん。」
「え?俺達のこと知ってたの!?」
思わぬ発言に、金髪青年は声を出す。
「ええ、新宿を拠点にやっている2人組で、
蛇眼という能力を持つ方と電気を発生させる能力のある方がいると以前聞いたことがあったので。
こんな所でお目にかかれるとは思いませんでした。」
ニコニコと笑顔で語る少女に、蛮はふぅ…とため息をついた。
敵でないとわかると、ピリピリとしていた空気も多少和らいでいった。
「よろず屋か…アンタみたいな女子高生がとはな。
まぁ…敵でもないみたいだし、そんな警戒する必要もなさそうだしな。」
「うん!ていうか、ちゃんて言うんだね!かわいいなぁ。
俺っ天野銀次!!電気を発生させることが出来るんだ!よろしくね!!
んでこっちが…」
「美堂蛮。さっきの幻覚を見せていたのがこの俺。
奪られたら奪り返せ、”Get Backers”ていうのは正しく、俺達のことだ。」
タバコを吹かす蛮に対し、銀次はあいそうよくに駆け寄って握手をする。
もやわらかく微笑みながら握手をした。
「よろしくお願いいたします。」
「あ、俺にも蛮ちゃんにも敬語でなくていいよ!
気軽に喋ってかまわないから。」
「そうですか?…じゃあ…
よろしくね、銀ちゃん、蛮君。」
「うん!よろしく!!」
微笑み合う2人に、蛮はため息混じりに微笑んだ。
途端、はハッとする。
「いっけない!クライアントとの待ち合わせが…!
ごめんなさい、これで失礼します!」
「そっか、うん。またいつか仕事で会おうね!!」
「はい、ぜひまた!では。」
駆け足で去っていくにバイバ〜イと意気洋々に手を振ると、
銀次は蛮に話しかけた。
「いい子だったね、あのちゃんていう子。」
「あぁ…」
?と、蛮の曖昧な答えを銀次は不思議に思う。
「どうしたの、蛮ちゃん?」
「あ?…いや、なんでもない…。
おいそれより帰るからそいつ乗せろ、銀次。」
「あ、うん。わかった!!」
夏実の元へと向かう銀次に対し蛮は1人先に車へと乗り込んだ。
前を見据えたまま、なにやら考え事にふけた状態で。
「………風を操る能力者か…。」
意味ありな言葉を残し。
蛮と銀次と夏実を連れた車はまた走り出して行った……………
BACK/TOP/NEXT
奪還屋連載開始ー!!
今度はちゃんと更新できるといいですねぇ…(遠い目)
マンキンの連載もやってるのに、私ってばいくつ連載やりゃあ気が済むんでしょうか…。
ていうかこの出会い編、長すぎですよね。自分でもビックリです。
そういうわけで、前編と後編に分けさせて頂きました〜。
なんか話の流れ方とかわけわかんないですね…(泣)もっとうまく書きたかったです…。
早く続きも書きたいですね〜☆
ここまで見てくださった方、ありがとうございました。
これからもよろしくお願い致します。
H16.5.16