「えええええええっっーーーーー!!!!!!!!?」
静かだった店内の中にけたたましい声が響き渡る。
その声を張り上げた帳本人である金髪の青年は顔に驚愕の色を見せていた。
Existence
―彼女の正体―
「はぁぁ〜…蛮ちゃぁん、お腹がすいたよう…。」
「うるせぇ!黙れ!!俺だってすいてんだよ!!」
とある日のHonky Tonk、そこに銀次と蛮はいた。
ところが何を食べるわけでも飲むわけでもなく、むしろ黒いオーラをしょっていた。
銀次に関してはカウンター席の机に顔をつっぷして力なくうなだれている。
「はぁぁ…あの時蛮ちゃんが依頼品の3分の1なんて交渉するから〜……
ホントだったら今頃200万円が手元にあったのに…。」
「おまえだってそれで納得してただろ!俺のせいだけじゃねぇ!!」
「でもでも〜…言い始めたのは蛮ちゃんじゃないか〜…。」
「うるせぇっ!この…!」
「痛い痛い〜!!痛いよー蛮ちゃん〜!!」
でもでも〜という銀次に、蛮は銀次の頭をげんこつでぐりぐりとはさむ。
銀次はたれになりつつ手足をバタバタとバタつかせていた。
「おい、ここは喫茶店なんだ。静かにしてくれ。」
「うっせぇマスター!」
「ほう…そんなことを言っていいのかな、蛮。
相変わらずツケためているくせにな〜。」
うっと蛮は身をひきながら固まってしまうのを
マスターと呼ばれた男でありこの店の経営者であるポ−ルは読んでいた新聞を
そのまま両手で広げながら、ちらっと目を蛮の方に向けてニヤリと笑った。
「銀ちゃ〜ん大丈夫?」
「あ、夏実ちゃ〜ん…もうダメだよ〜。」
甘えてんじゃねぇ!とたれている銀次の頭を蛮は一発グーで殴り、
銀次は涙目になりながら頭を抑えた。
「マスター…。」
先ほど銀次に夏実ちゃん、と呼ばれた少女は心配そうな顔でポールの方を向いた。
「夏実ちゃん。こいつらに甘くしちゃダメだよ。
いつもこうなんだから。」
「でも〜…」
言葉をにごす夏実にポールは大丈夫大丈夫、と軽くあしらいながら新聞に目を戻した。
「くっそおお!!こうなったらいい仕事見つけて一気にツケ返してやる〜〜!!」
「ほおおおおお?それはそれは早くしてほしいもんだな。」
蛮はすでにやけになって、立ちながら叫んだ。
「はあぁ…お腹すいたなぁ……」
今度は蛮に聞こえないよう、ぽつりとそうもらした銀次の耳に届いた次の音は
ドアのカランカラン、
と客が来たのを知らせるものだった。
全員がその方へと一気に目線を集中させる。
入ってきたのは……自身の長い髪を揺らせた
漆黒の少女。
「あれっ…?」
入ってきた少女を見るなり、銀次は突っ伏していた顔をバッと離した。
少女は下を向いていた目線を戻すと、目の前の人物に目を見開いた。
「あれ…蛮君に銀ちゃん…それに夏実ちゃんまで。」
「ちゃん!!」
先ほどまで沈んでいた顔をどこへやら、銀次は入ってきた少女がだと確認すると
パァッと顔を輝かせた。
「お前…この間の。」
少なからず驚いた顔で蛮もその少女を認識する。
「ちゃん!」
銀次と同じく笑顔で嬉しそうにの名前を呼ぶ夏実。
この意外なメンツに少々驚いただがとりあえず店内に足を進めるとカウンター席の方へ足を進めた。
夏実のエプロン姿を見ながらは呟いた。
「夏実ちゃんバイトしてるって聞いてたけど…ここだったんだね。」
「うんそうなの!!この間の猫ちゃんの一件以来、ここでバイトしてるんだ。」
「そうなんだー驚いたよ〜。こんな裏新宿にいるなんて。」
「うん、でもそんなちゃんはどうして?」
あ、と自分の状況に今更気づき少々困った顔をみせる。
気づくのが遅すぎた…と口に手をあてる。
しばらくうーんと悩んだ結果、はここまで来ちゃったし、しょうがないと決意すると夏実の方を向いた。
「んーそれがね…実は私もそこにいる奪還屋さん達と同じように裏で仕事やってるんだー…。」
ええっそうなの!?と、あまりにも意外な言葉に夏実が驚かないはずもなく、
ポール自身もと夏実が会話からして友達だとすぐに認識したために、ほぉ…と驚嘆の声をもらす。
ぽりぽりと頭を書きつつ苦笑いを見せるに、銀次に身を乗り出した。
「本当なんだよ、夏実ちゃん。
実はこの間の猫ちゃんの時も、ちゃん、夏実ちゃんが拉致されてるのを見て追いかけて来てくれたんだよ。
危なかったところを助けてくれたしね。俺達もそこで出会ったんだ。
ちゃんこっそり動いてたからきっと夏実ちゃんに知られたくないんだろうと思って
あえて夏実ちゃんに言わなかったんだけど…。」
そうだよね?と銀次が顔を上げると、はそうなんです、ありがとうございます。と2人の気遣いに感謝した。
「あんた見たところ高校生のようだけど…夏実ちゃんと同じ学校なのかい?」
「そうなんですよマスター!しかも同じクラスだもんね〜。」
ね〜と笑顔で言う夏実にもうんと笑顔で返す。
「そりゃあ大変だろう。まあとりあえず座るといい。」
と銀次の隣の席を促すポールには座るとカプチーノお願いします、と注文をした。
「それにしても、この間ぶりですね。
こんなにまた早く出会えるとは思いませんでした。」
性格のせいなのか、未だ少し敬語がぬけないだったが、2人は特に気にしなかった。
「だね!ちゃんはどうしてここに?」
「これから仕事があるので、ちょっと軽く休憩してから行こうと思って。
銀ちゃんたちはどうして?」
「俺達はよくここに来るんだ。ツケばっかためてるけど……」
と言ってチラッと蛮を見た銀次に蛮は余計なこというな!とまた銀次の頭を殴った。
いたたーと頭をさすっている銀次と怒っている蛮にはクスクスと笑みをもらした。
「それにしてもびっくりしたぁ。ちゃんが裏で仕事をやってるなんて。」
「まぁいろいろとあってね。よろず屋をやってるんだ。
あ、たぶんわかってると思うけど…このことは内密にしてね。」
「もちろん!」
と意気揚々にいう夏実には笑みをこぼした。
ところが、カプチーノを作っているポールはの言葉を聞いた瞬間ポールはピタッと動きを止めの方を見た。
「よろず屋…ってお前さん、
まさか”よろず屋 ”かい?」
「そうです。」
へぇ〜と顔に驚愕を見せるポールに銀次と夏美は意味がわからずハテナマークを浮かべる。
ところが、蛮はもとから察していたらしくタバコを取り出し、吹かし始めた。
「え?え?どうしたの?マスター。」
「馬鹿お前…知らないのかよ。」
フゥと煙を吹かしながら蛮は呆れ顔で銀次をみた。
「知らないって…どういうこと、蛮ちゃん?」
ポールを見ていたのを蛮に戻し、銀次は尋ねた。
自身は軽く微笑んでいるだけなのだが。
「そいつ…は通称ミス・レッドムーン。
裏業界ではポールに引けをとらないよろず屋だ。
風を使う者で、仕事の成功率は100%。容姿、年齢等は一切不明であるがかなりの実力者と聞いてたな。
よろず屋界が産んだ女神とも言われているが……」
「…………」
蛮の言葉を聞い銀次はしばらく静止していたものの、ハッとすると途端に口を大きく開いた。
「えええええええっっーーーーー!?」
銀次にとっては、こんなにかわいいごく最近の女子高生が裏世界で生きているというだけでも驚きなのに。
なんとこの少女がこの世界では名の知られた(銀次は知らなかったが)実力者であるというのだから、
ついついをまじまじと見つめてしまった。
は特に同時もせずニコニコとしている。
「風使いって言うから…もしかしたらと思ったんだが…
やっぱりな。」
「ええええ!?ええええ!?そ、それって本当なのちゃん!」
「うーん、そうだね〜…確かにそうも言われてるみたいなんだけど…。
でも2人に比べたら全然たいしたことないよ。」
多少苦笑いをしながら手を振るも、ポールは関心の目でを見つめた。
「ミス・レッドムーンがこんな女子高生だとはな。」
「ええ、なにせ"ミス"ですからね。」
"ミス"という言葉を強調しつつ、はクスクスッと笑う。だが途端に、笑うのをやめ軽く目を伏せて口を開いた。
「でも…この名は正直…
あんまり好きじゃ…ないんですけどね……」
静かに寂しそうな笑みを見せているを、
その場にいた全員は目を離さずにいられなかった…。
「あ、そ、それにしても。
ちゃんってその服装、制服と全然雰囲気が違うんだねっ。
でも、全身が黒ずくめでとってもかっこいい!!」
「あ、う、うん。これは仕事着なんだ。」
静寂していた場の雰囲気をさえぎった夏実は話題を変えようと、ちょっと気づいたことを述べた。
はそれに少し気遅れしつつ返事をする。
の服装はほとんどが全身黒で覆われている。
もともとの黒髪に、耳には普段見ないピアス、黒の瞳。
上から、黒のブラウス、袖は大きくまくられている。
丈がバラバラでありヒラヒラとした膝ぐらいまでのスカート、黒の長いブーツ。
その姿はどこか、彼女に神秘さと美しさを与えているようだった。
ところが。
「ね、ねぇねぇ蛮ちゃん…。」
「あ?なんだ。」
「いやさ、ちゃんの格好。確かにすごく似合ってるんだけど………」
だけど…と蛮にこっそりと耳打ちしながら言葉を濁す銀次。
蛮は銀次が何を言いたいのかわからず。
「なんだよ。」
とタバコを加えたまま後ろにいる銀次に問う。
「全身が黒いのって……………
赤屍さんと同じみたいなような気がして……」
パサ…とそれに相応しい音を立てて落ちたタバコのケースのから。
それに気づいて不思議に思ったと夏実の2人は?を浮かべた。
蛮は動きを止めたまま、しばし停止する。
…………んが。
「なっ!?銀次!!!!
お前その嫌な名前を口に出すんじゃねぇ!!!!!思い出すだろうが!」
「ご、ごめん〜蛮ちゃん〜!でも何かそう思っちゃって…。」
「あいつとじゃ全然違うだろ!!だいたいあいつはな……!」
と、途端ハッとすると2人はギギギギ・・・・とでもなりそうな効果音で2人の方を向く。
「私と・・・誰かがどうかした?蛮君…」
「いや…その…。」
髪をなびかせて、黒なのに透明さを感じさせる瞳を向けながらは蛮の方を向いた。
ハハハ〜と頭の後ろに手を当てながら蛮はすごいいきおいでガシッと銀次の首を掴むと、
くるりと達に背を向ける形になった。
「ほら、だから言っただろ…!!全然ちがうじゃねぇか!!
だいたいアイツは人間じゃねぇ!!」
「う、うん……」
「やっぱり、どうしたの?2人とも。なんか変だよ?」
ハッと後ろを振り返るとがすぐそばにおり、2人の顔を覗き込むようにして首を傾げた。
「い、いやあのね…ちゃんのその全身黒ずくめの姿がある人に似てて…」
「バカ銀次!!!」
ゴツン!!!と、本日3度目にして最高のげんこつを。失言をしてしまった銀次にくらわす。
「ある人?」
「あ、いやその…この間の仕事で敵対した人に…」
「誰?」
「えっと…」
「えっと……」
「えええええっと………………」
たらたらたら〜と汗を流しながら目をそむける銀次にはなおも首をかしげて覗き込む。
「えっとぉぉぉぉ〜…あ、赤屍さんに……。」
サーッと蛮の顔から血の気が引いていく。
――――言ってしまったー……
「赤屍さんっって…まさかあの、業界では至上最低最悪って言われてる、
運び屋 Dr.ジャッカルこと赤屍蔵人?」
「え!?ちゃん知ってるの!?」
「うん、もちろん。有名だからね、この業界じゃ。」
「そ、そうなんだ…。
ちゃん!!!!!!」
「は、はいぃぃぃっ!?」
たらたら〜と汗を流していたとは思いきや。
ガシッ、と銀次はの方を掴み手に力をこめると。
は銀次の突然の行動に大きな声で変な返事をし、後ろに一歩引き下がってしまった。
「あの人にはぜったい!
ぜったい!!
ぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっったい!!!!!!!!!!!!!!
近づいちゃダメだよ!!!!」
「え、は、はぁ………」
「絶対だよ!!!!!!!!」
目をぎらぎらと光らせ、さらにグッと顔を近づけ、肩にこめる力も強くなるので。
「は、はははいぃぃっ!!!」
と。は返事をするしかなかった……。
―――「はぁ…それにしても……
ビックリしたな〜、今日の銀ちゃんは。」
とある工場の建物の近く。
はHonky Tonkにてカプチーノを飲みながら休憩をした後、今回の仕事のためにこの工場へと足を進めていた。
今でも思い出す、銀次のあの焦った表情とぎらぎらした目。
銀次の印象からは考えられない行動だ。
考えれば考えるほど、は何でそんなこというのかなーと頬をぽりぽりかいた。
「ま、考えてもしょうがないか。
とりあえず、"近づかなければいい"んだよね。」
うん、納得したようにうなずくと、はスッと静かに目を閉じる……
集中力を高め、一つ一つの仕事への真剣さを胸に。
目をゆっくりと開く。
それは先ほどの彼女とは思えないほどの眼差しで。
「行くわ。」
―――彼女は風を切って走り出した……
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GBドリーム第2弾でーす。
今回もGBのお2人がお相手でした〜。
それにしても…銀ちゃんてばそんなに否定しなくても…。
このお話は丁度アニメでいう第3話〜第5話の「GBvs運び屋」のあとのお話です。
本当はもうちょっと進む予定が
見事に収まりきれませんでした(汗)
これだけでも十分長いのですがね…。
次回はついに!今回名前の出て来たあの方の登場です!!
私自身大好きで更新したいと思いますので、次も見てくださると嬉しいです。
もしよければ今回の(だけでなくても)感想を頂けると喜びますのでBBSや一言に打ち込んでやってください。
それでは〜またいずれ!
H16.5.30