「すまないな、花月。買い物手伝ってもらってちまって。」
「いいんだよ、別に。僕が好きでやってるんだから。」
とある日のとある新宿。
”ビーストマスター”こと冬木士度と”絃の花月”こと風鳥院花月は行き交う人ごみのなかを歩いていた。
見た所、2人とも紙袋を持っている。
どうやら中身からして買い物の帰りらしい。
「まどかが行くって言ったんだが、アイツはバイオリンの練習があってよ。
んで俺だけ来たんだが、丁度お前と会ったもんで結局手伝って貰っちまったな…」
「いいんだよ、本当に。僕も暇だったしね。
それに、こんなに荷物が多くちゃ君も大変だろう、士度?」
そう。見た所、2人は随分と荷物をたくさん抱えている。
一体何をそんなに頼まれたのか……
花月は多少気にはなったものの特に言いはしなかった。
そんな時だったのである。
Existence
―新たな出会い―
―――ガヤガヤガヤガヤ………
とある建物…見たところ銀行らしい。それなりに大きいのだが。
随分と騒がしいな、と思った士度と花月の2人はその方向を見る。
…すると何故かそこの前に人だかりが出来ていた。
そこにいた人々は驚きの表情やら心配そうな顔をして突っ立っている。
だが、士度や花月の位置からは一体その原因がなんなのかわからず、
?と2人は不思議に思いその先を見つめた。
「何だろうね、士度?」
「さあな。でも…なんだかあんまり良くない感じがするぜ。
あの様子じゃ。」
「僕もそう思う。ちょっと行ってみようか。」
「え?あ、おい。花月!!」
人だかりの中へかけて行く花月を止めようと手を伸ばすが。すでに遅く。
士度ははぁ…とため息をつくと仕方がなそうに、
花月のかけて行った人だかりへと足を進めた。
―――「近づくんじゃねぇっ!!近づくとこの子供を打つぞ!!」
士度が人だかりの前の方に行くと、すでに花月はその場所にいた。
視線の先を見ると、銀行のドアの前には1人の男が銃をかまえ少女を捕まえながら、
その銃口を少女の頭へと突きつけていた。
属に言う、銀行強盗だ。
「…どうやら予感的中のようだね。」
「…だな。」
男が少女に銃口を押し付けるたびに周りにいる人々は小さく叫び、目をそらす。
「お母さんー!!」
「百合子!!」
その人だかりの中から女の人の叫ぶ声が聞こえる。
どうやら少女の母親らしい。少女は逃げ遅れたらしく、今男によって捕まっている。
母親は少女を助けようとするも、他の人によって止められており動くことが出来ない。
少女は泣きじゃくりながら母親の名前を呼ぶ。
「お母さん!!お母さん!!!」
なおもなおも叫び続け、泣きじゃくる少女についに男はキレた。
「うるせぇぞこの…!!静かにしろ!!」
目をぎゅっとつぶる少女に、男の銃口は向けられ引き金が引かれようとしていた。
―――!!
「ちっ…!」
士度の舌打ちと共に、士度と花月はかまえをとった。
ところが、その時だった。
ヒュオオオオオオオッ!!!!!
突然男の方へ荒々しい風が吹き付ける。
あまりの強さに男は耐え切れずその場に倒れ、手に持っていた銃はその反動で男の反対側に飛んでいった。
「「!?」」
突然の目の前の出来事に2人は自分の目を疑う。
やったのは自分達ではない。
では一体誰が…?
男の倒れている最中、特に影響を受けず座り込んでいた少女は、途端に誰かによってすばやく抱きかかえられ、
軽快に母親の前へと着地した。
「お母さん!!」
「百合子!!」
解放された途端、少女は目の前の母親へ駆け寄り、
母親はしゃがんだまま、娘である少女を抱いた。
だがしかし、周りは自分達の目を疑っていた。
なぜならば、その子供を救出したのは
1人の少女…一般的に言う
女子高生であったのだから。
士度と花月もまた自分達の目を疑っていた。
しかも士度の到っては、
その少女の制服は自分がよく知っている知り合いとまったく同じものであったのだ。
制服を着た少女というのは……そう。
は学校の帰り道の途中であった。
すると士度や花月と同じく、この人だかりを見つけ近寄ってみると。
今にいたったのである。
――いつもの仕事着とは違い、制服姿のは母親とその子供の抱き合っている姿を見ると。
周りの驚愕の目も気にせず、にっこりと微笑んだ。
そしてまた男の方へと振り返る。
「くっそ…!何なんだよ一体!!」
打ち付けた頭を抱え、起き上がりながら男は身を起こし、自分に何がおこったのか
必死にそのワケを考えていた。
「無駄ですよ、もう。
もうすぐ警察が来ます。どっちにしろ、あなたには逃げ道はありません。」
男が顔を上げると、そこには1人の女子高生が立ちはだかっていた。
は男を下に見ながら淡々と言葉を述べる。
「幼い子を人質に取るなんて。そんな汚い手を使うとは…情けないですね。」
挑発的に見下ろしながら言うに男はまたもや怒りをあらわにする。
「なんだと…?小娘が言ってんじゃねぇぞコラァ!!」
バッと男は後ろのポケットから何かを取り出し、
目掛けて駆け出す。
よく見れば、それはナイフ。
予備に用意しておいたのであろう。
しかしは特に動じもせず、そこに佇む。
ナイフが向けられようとした…その時であった。
――リィン……
まるでそこには何もなかったかのように響き渡る鈴の音と共に、男は不自然な格好でピタッとの前で動きを止めていた。
「……?」
目の前で動きを止めた男をは不思議そうに見つめる。
「子供に手を出すのも許せませんが……
女性の方に手を上げるのも許せませんね。」
声のした方を見ると、そこには髪の長い、女性のような物腰で鈴を構えている男と、
その隣には、頭に白いバンダナのようなものを巻き、ラフな格好をした男が立っていた。
男は「う…あ…」と小さく叫びまったく動かない。
途端は何かが反射したのを見、目を凝らしてよく見ようとした。
「絃…?」
よく見ると白く細い糸が男を縛っているのが見え、はじっとそれを見つめていた。
…そしてまもなく警察が到着し、男は逮捕され、警官によって連れて行かれたのであった――
――「本当にありがとうございます、なんとお礼を言ったらよいのか…。」
「いいえいいえ、気にしないでください。
お嬢さんが無事だっただけで、こちらも嬉しいですから。」
事が無事に終わり人だかりもなくなった頃、先ほどの母親はへと謝礼をしていた。
互いに頭を下げ、丁寧に言葉を述べる。
「お姉ちゃん!!ありがとう!!」
「いいえ。」
少女の可愛らしいお礼にも、しゃがんだ状態のまま、は優しく微笑んだ。
やがて親子は仲良く手を繋ぎ、母親は軽く会釈をし、少女は手を振っているのを。
は微笑みながら小さく手を振って見送った。
――親子が去っていった後、それまで後にいて見ていた士度と花月の方へ。
は向き直り、近づくと2人に頭を下げた。
「確かお2方でしたよね……助けてくださってありがとうございました。」
「いいえ。でもなんだか、僕たちが助けなくても大丈夫だったようですね。」
「そんな、すごく助かりました。
本当にありがとうございます。」
微笑むに、花月もやさしく微笑み返す。
愛想よく挨拶を交わしていた聖美と花月だったが、
途端に士度が口を開き、その中に割って入った。
「アンタ、何かの使い手か…?
あの風の吹き荒れようを見ると。
あんな吹き荒れようが偶然に起こるなんて、普通にはないからな。」
ふいに発せられた士度の言葉には振り向き、見つめるとクスリと微笑んだ。
「わかりましたか…?ということは先ほどの様子から見て、
やっぱりあなた方も何かしら能力を持った方々なんですね。」
「つうことは…」
「そうです、確かにあれは私がやったものです。
私には風を操ることが出来るので。」
「やはりそうでしたか。
驚きました、あなたのような方があんな能力を備えているなんて。」
「でも大したことはないんですよ。」
が苦笑い加減でそう言うと。
そんなことないですよ、と花月は言い、再度口を開いた。
「僕の名前は風鳥院花月です。
こっちは冬木士度と言います。」
花月が士度の方を指し自己紹介を述べると
「です。よろしくお願いします。」
丁寧に頭を下げ、手を差し出し2人は握手を交わした。
―――「…花月。」
「ああ、わかっているよ、士度。」
が去った後、2人はまだの去っていった方向を見つめながら、その場に立ったままでいた。
「…まさか、ミス・レッドムーンがあんなやつだったとはな。」
「…彼女の噂は僕達が無限城にいた頃にも伝わってきていたからね。
風を操るものでありその容姿、年齢等はまったく不明。
無限城でもなかなか有名だったしね…。」
「どう見ても普通の女子高生にしか見えねぇ。
本当にあんな少女が裏で生きてるのか…?」
「まぁ…彼女にも理由があってのことなんだと思うよ。
裏で生きている人間にはいろいろと理由がつきものだからね。」
出会った少女は本当に普通の女子高生にしか見えず。
特に士度に至っては驚きを隠さずにはいられなかった。
あれが無限城でも噂されていた少女とは……
そんなことを感じさせないほど、彼女の雰囲気は柔らかなものであったのである。
「…………」
花月は1人、先ほどの会話から黙り続けていた。
手を口に当て、何かを考え込んでいる。
もちろん、それは先ほどの少女。
のこと。
――もしかして彼女は……
「おい、花月?」
士度の呼び止めにも反応をせず、
花月は1人、考えを巡らせていた。
彼女、の謎は多い。
BACK/TOP/NEXT
士度と花月との出会い編です。
いやぁ、赤屍さんに続き出会いの多いことですね…。
それだけ出会いは貴重なんですよ(なんだそれ)
この2人、意外に書くの難しかったです…
というのか士度のあの頭に着けているやつ。
あれってバンダナでいいんですかね?(焦り)
花月ちゃんの最後の心の中での考え事というのは
主人公の謎多き点の1つが関係しています。
ホント…謎の多い主人公ですみません…(汗)
少しずつ明らかにしていくので、どうかお付き合いくださいませ。
それでは。
H.16.6.22