薔薇十字騎士団、ローゼンクロイツオルデン。


長生種(メトセラ)でも短生種(テラン)の見方でもない、

”世界の敵(コントラムンディ)”と呼ばれたその組織。


表舞台にはほとんど出てこない彼らは、数々の事件の影でその暗躍を見せていた。


しかし、その姿は依然謎に包まれている。





”我ら、炎によりて世界を更新せん(イグネ・ナチュラ・レノヴァートル・インテグラ)”



それが彼らの間の合言葉のようなものであり、騎士団の一員であることを証明するものでもある。






―――が、そんなテロリストと呼ばれるほどの闇の組織の中にもただ一人、

唯一、騎士団の一員とは思えないほどにその雰囲気とかけ離れた少女が一人いた。


彼女もまた表舞台には殆ど出ず、その主君に対する忠実さはかなり強いと言われている。



そう。

見た目も中身も、他の者達とかけ離れた少女は、

れっきとした薔薇十字騎士団の一員であるのは間違いではない―――――――




















序章

―月の女神―



















騎士団のメンバーが集まる”塔(トゥルム)”。


その中でも広い部類に入る部屋にいくつかのソファーと椅子が置かれ、

向こうには大きく開かれた窓があった。


並べられたソファーや椅子には3人の男が腰掛けて話をしている。






「………といったような感じでAXも動き出しているようですよ、我が君。」


「ふーーーん、そっかあ。

じゃあアベルも動くかな?」

「いずれはそうなるのではないかと。」


「クスクス、我が君は相変わらずナイトロード神父にご興味がおありなんですね。」

「そりゃあもっちろん!僕の大事な弟だからねっ」

「おや、そういえば君が好いているという、かのエステル・ブランシェも

アベル様とともに動くそうだよ。」

「へえ、エステルが?

それはぜひ会いたいものだね。」

そう言って天使のような美貌で悪魔のような含み笑いをする、

この中でも一番若いように思える彼はディートリッヒ・フォン・ローエングリューン。

位階、8=3(マギステル・テンプリ)、

称号、人形使い(マリオネッテンシュピーラー)。

その外見は鳶色の髪と瞳。

白磁のごとき麗貌で、天使に例えられるも度々ではあるが、

中身は悪魔といっていいほどの黒い面を持つ。



その反対に位置するは、愛用の細葉巻(シガリロ)を口にし、

先ほど”我が君”への報告を終えたその人物はイザーク・フェルンド・フォン・ケンプファー。

位階、9=2(メイガス)、

称号、機械仕掛けの魔術師(パンツァー・マギエル)。

中でも特に目立つ外見は、腰までのびる長く黒い髪と怜悧で知的な顔である。

文学を好み、自分でも言葉の中に歴史上の人物が書いた詩を引用するくせを持つ。

我が君の一番近くに使える存在でもあり、

この薔薇十字騎士団の中でも”我が君”を除いて、特に高い地位を誇る。




そしてディートリッヒとイザークの二人から挟まれるようにして

間に座るのは、この薔薇十字騎士団の最高位であるカイン・ナイトロード。

我が君(マイン・ヘル)と呼ばれ、騎士団の面々に従われる絶対的存在。


豪奢な金色の髪に、それに見合った白い服を纏う。

少し子供のような言動を発するものの、その風格は騎士団の主君そのもの。



その3人が会話を交わす雰囲気は妖しく、また優雅でもある。






そんな3人がしばらく話をしていたところ、ふと、

カインが何かを思い出し、イザークに問いかけた。



「そういえば、彼女はどうしたのかな?

今日はまだ姿が見えないね。」


「ああ、彼女なら今我が君のためにお茶を入れているところでしょう。

もうじき来ますよ。」


「そろそろじゃないかな?


……あ、ほら。」



丁度よく、コンコン、とドアをノックする音が聞こえる。

カインはその方向を向いて、どうぞ、と微笑みながら言った。












――キィ…とドアがゆっくりと開く。

カチャリ、と食器の音を立て、

”失礼します”と丁寧に一声かけて、一人の少女がスッ、とドアから姿を見せた。


















―――髪はつややかで美しく輝く銀色、長さはイザークと同じく腰まである。

目は海よりも薄いけれど、綺麗なアイスブルーの瞳。

耳には瞳の色と同じ、ピアスをしている。


それほどにも美しい容姿を持った少女は、優雅な身のこなしで3人の方へと近づいてきた。




少女は満面の輝くような笑みをたずさえながらカインの方を向いた。



「我が君、お茶が入りました。今日はとっても香りの良い紅茶なんです。

いかがですか?」


「ありがとう、。もちろんもらうよ。」

そうカインに名を呼ばれた少女は、、と呼ばれていた。


「イザーク様とディートリッヒ様はいかがですか?」


「私ももらおうかな。」

「僕も。」

次いで2人の方を向いて問いかけたに、

二人とも微笑を携えて答える。


そこにカインが子供のような笑顔でに呼びかけた。


も一緒に飲もうよ!」

「良いのですか?ではご一緒させて頂きますね。」


そうして微笑み、注いだ紅茶を3人に手渡して自分も椅子に腰掛ける。

3人はそれを口にすると、感心したように言葉を述べた。

「へぇ……確かに良い香りだね。」


「でしょう?町で見つけてきたんです。

とてもよい香りで、試飲もさせてもらったら、なかなかおいしくて。


ついつい買ってきてしまったんです。」


「いやしかし、確かに良い香りだ。

いつもながらのセンスは勝るものがある。」

「ありがとうございます、イザーク様。」

賞賛の言葉を述べたイザークに、軽く感謝の言葉を述べては微笑んだ。








――――・フォン・

薔薇十字騎士団、位階8=3(マギステル・テンプリ)、

称号、



”月の女神(セレネ)”





その外見や中身からして薔薇十字騎士団の一員とは思えないほどの”純粋さ”を持つ彼女は、

れっきとした”我が君”、カインに仕える忠実な部下の一人。


古代から続く月の一族の一員であった彼女は、女神の称号を持つ存在であり、

一族でも強くその力を受けていたのだが。

数年前の事件により一族が滅亡に追い込まれて一人さまよっていたところ、

そこをカインに拾われ、その感謝と忠義の印として騎士団に入り、

今イザークやディートリッヒと同じく、騎士団の一員としてその漆黒の制服を身にまとっているのである。



ただし、はそれほど仕事で外には出ず(自主的に外に動く事はあるものの)、

ほとんどカインのそばにいることが多い。


イザークの”我が君”への忠義心もさることながら、もかなりのものなのである。


そのためか、カインからへの寵愛ぶりもかなり強い。

つまり一般的に言えば、カインにとって、は”お気に入り”なのである。







!またの歌が聞きたいな!!」


「ええ、我が君のお言葉であればいつでも。


私もそういって頂けて嬉しいです。

私もまたお茶をご一緒させて頂いてもよろしいですか?」


「もっちろん!ならいつでも大歓迎だよ!」

「クスクス、嬉しいです。」


お互い好いて好かれる存在である二人は、周りからみても微笑まずにはいられない。




―――「…いやはや、いつ見てもあのお二人は微笑ましい。

特に、我が君のへの寵愛ぶりはね。」


「そうかな?僕としてはから我が君への忠義心の方が勝ると思うけど?


も何だかんだ言って、我が君一筋だからね。」


「まあどちらにせよ、互いに好いているということだよ。

恋愛感情ではなくね。」


「へえ、それ以前に君に恋愛感情がわかるものなの?

魔術師。」


「失敬な。そういう君はどうなのかね?

人形使い。」



















―――この身は騎士団のため。











そして我が君のために。











数年前のあの日、あの時から…………――――





































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トリブラ第一弾です。
連載物ではなくて、
同一主人公で短編だったり中編だったりにして行こうと思っていますので、よろしくお願いしますね。
ただ私はあまり小説の方は読んでないので、もしかしたらどこかで間違った要素が出てしまうかもしれません;
そこの所はご了承ください。すみません;;

さてさて、今回はいわゆるちょっと可愛い系な感じの主人公にしてみました。
我が君一筋な感じの忠義心の強いヒロインにしようと思って、
いろいろと設定を考えつつこんな感じにしてみました。
トリブラの騎士団サイドの夢小説を以前から書こう書こうと思っていたので、
出来て嬉しいです。
ヒロインの設定も近いうちに更新するつもりです。


さてさて、今回はとりあえず序章という形でヒロインを登場させたのですが、
次回はヒロインの過去編から行きたいと思います。
まあ結構いきなりなのですが、ここから入った方が騎士団に入った経緯もわかるので。


お付き合い頂けると嬉しいです。
これからよろしくお願い致します。

H.18.5.5