ぱすてるチャイム
Pastel Chime

アナザーエイジズ
Another-AGE's
〜天空の戦使〜







第U章 Battle Sword






「―――という訳で、貴女は本日付けでこの王立教習戦闘空母に配属されます」
「拝命しました」
 冷たい声での命令。
 そして、それに負けず劣らず固く凍った声での返答だった。
 緊張、ではない。
 ベネット教官は一分の隙も無く敬礼を返す女生徒に、好ましさと同時に危うさを感じた。
 感じられないのだ。
 声にも表情にも、仕草にも。
 感情の起伏というものが。
 それが完璧な兵士だと言わんばかりに。
 事務的な手続きを終えたベネットは、その整った表情に僅かな笑みを浮かべる。
「遠く光陵からご苦労様。『舞弦』へようこそ、コレットさん」
 亜人種、エルフ種族。
 コレットの履歴書を見た限り混血とあるが、外見は純粋なエルフであるベネットと酷く似ていた。
 子供と見紛うばかりの体格だが、その振る舞いは訓練された軍人の機敏さが宿っている。
「…コレットさん?」
「私が配属されるのは、サードAクラスで間違いありませんか?」
「ええ。私が教練を担当しているクラスです」
 コレットは表情を変えず、僅かばかり視線をずらした。
 つられて船外を映したウィンドウを目にしたベネットは、溜息を吐いて額に手を当てる。
「あの無茶苦茶な機動は………相羽君ですね。また単独で突出して」
 窓の外に瞬く閃光、流星のような光帯。
 ジグザグに、跳ね上がるように。
 どんなコンピューターでも解析できないようなアルゴリズムで、無限の空を縦横無尽に機動している。
「老朽化しているとは言え、元は連合のA級戦闘艦です。舞弦の防御フィールドは突破できないでしょう」
「…」
 そのブルーの瞳が『心配して』いると感じたベネットは、一応の保証をした。
 最新鋭戦艦『光陵』から見れば、舞弦は廃艦寸前のスクラップだ。
 まして、遠く故郷から離れて、こんな辺境宇宙に飛ばされれば………自分でも落ち込むかもしれない。
「紹介は明日にします。今日はゆっくり休みなさい」
「…」
 身動ぎもせずに窓の外を見詰めるコレットに、ベネットは頭を振って席を立った。
 小さな個室には、コレットだけが残された。
 遠い、瞬きにしか見えない機動戦闘を、確かに感知している。
 蜂蜜色のツインテールが、不機嫌そうに揺れる。
 それが、コレットが初めて表した感情だった。
「………何アイツ」
 窓の外に視線を向けたまま、見える筈の無い距離の先を見詰めている。
「ばっかみたい。何を遊んでるのよ?」
 コレットは吐き捨てるように呟いた。





 ―――ドン!ドン!ドン!
 機体の側面に、不可視の衝撃波が撃ち込まれる。
 とっさに張り巡らせた『シールド』は、しかし一瞬にして存在力を打ち消されてしまった。
 相殺し切れなかった衝撃が、コックピットをシェイクする。
「てめっ…雑魚のクセに痛いんだよっ!」
 雷電と同じ大きさほどの敵を、正面に捕える。
 無機物でもない、生物でもない、どちらも等しく混じり合った異形の存在だった。
 両側に腕のような触手を生やしている事から、『ナックルタイプ』と呼ばれる敵性生物だった。
 カイトの目の前に、鋭角な三角と、無限を描くホロサイトが乱舞する。
「―――堕ちろ!!」
 照準が重なり合った一瞬。
 形成もしていないフィールドを、殺意で強引に増幅させて撃ち出していた。
「余裕」
『アンタ、馬鹿!?』
 スピーカーから響いてきた罵声に、カイトは反射的に怒鳴り返した。
「邪魔すんなよ、委員長!」
『ソードシップが『ブレード』も形成しないで、何を熱くなってるの!』
「………ウルサイ」
 煩わしい。
 五月蝿いな。
 ―――俺の邪魔をするなよ。
『せめて、『アーマー』を展開してから戦いなさい! 本当に沈むわよ、相羽君!』
「…ウルサイ…ウルサイ…五月蝿いんだよ!!」
 何もかもがノイズのように満ちて―――が聞こえない。
 醒める意識が純化する。
 尖って、剥き出しにされた―――殺意。
 雷電に埋め込まれたソルが、その出力の桁を跳ね上げていく。
「………死、ィ」
『カイト君!!』
 ビク、と手が震えた。
 操縦桿に添えられた手。
『一度後退して、システムを起動させて』





 レーダースクリーンの中で、敵の群れから雷電が離脱する。
 元々の移動速度は雷電が速い。
 特に『飛燕』『雷電』等の高機動型ソードシップは、エルダーの中でも最速だった。
「………相羽機、雷電。戦闘宙域を離脱」
 陽子は誰に報告するでもなく呟いた。
「はぁ…」
 背中からオペレートシートに覆い被さっていたミュウは、安堵の溜息を吐く。
 そして、無理やり奪い取ってしまった陽子のヘッドセットを、謝罪しながら返した。
「御免ね…陽子ちゃん」
「良いんだけど、ね。別に」
 ちょっと皮肉げな笑みを浮かべながら振り返る。
「相羽君の担当はミュウだし」
「御免なさい…」
 実際はオペレーターに担当者区分などは存在しない。
 だが今までは、カイトの出撃時には自然とミュウが担当をしていたし、その理由もはっきりと解ってしまった陽子だった。
 『何なのかしらね、アイツは? バーサーカー症候群?』
 無論、精神的なメディカルチェックも定期的に実施されている。
 普段のボケボケしたのんびり屋と、キれたように戦いに没頭する殺戮者。
 『変な奴…よね?』
 ミュウは心配げにスクリーンを見詰めている。
 苦笑した陽子は、隣のオペレート席にミュウを座らせた。
「さ、てと………相手は『スライム』に『ナックル』ね。雑魚っていえば雑魚なんだけど」
 他のクラスメート達は、まだ追い着いていない。
 というより、発進の段階でもたついて、舞弦を出てすらいない。
「何やってんのよ皆。しょうがないわね、相羽君には逃げ回ってて貰うかな」
「大丈夫、だよ? 陽子ちゃん」
 落ち着いて微笑むミュウに、陽子は少し驚く。
 さっきまでカイトを心配していた少女とは、とても思えない台詞と表情だった。
「今のカイト君なら、あれぐらい単機でも充分」
「………そう?」
 そもそもカイトの機動戦闘技術を、陽子は知らなかった。
 それ以前に信じていなかった。
 敵から充分に離れた位置で停止した雷電は、フィールドの形成を開始していた。


Transform Sequence Staet-Up


 モニターの中央に表示された文字列。
 雷電の総てのコントロールと総てのエネルギーを司る『ソル』が、カイトの心臓に同調するように鼓動を響かせる。
 滝のように上から下に流れ落ちる文字の羅列。
 コックピットに浮かんでいるフォロモニターが、通常航行仕様から機動戦闘仕様にシフトした。
「バトルモード・スタート」


Soul Generate System Complete


「ソルの出力安定レベルW」
「フィールド発生装置、作動開始しました」
「武装管制系へのエネルギーバイパス規定値をクリア」
 暇だった陽子はミュウと一緒に、バトルモードへの起動シーケンスをサポートする。
 とはいっても、雷電には補助するほどのトラブルも無かった。
 『マジにやれば出来るんじゃないの、相羽君』
 目の前でクルクルと回転する雷電の3Dフォログラフを、指先で突っつく。
 『エルダーシップ』の制御は、ソルを媒介にして行われる。
 故に、パイロットのメンタリティが機体の状態に大きな影響を及ぼすのだ。
「実装甲の変形を終了………何コレ?」
「どうしたの? 陽子ちゃん」
 雷電の機体パラメーターを読み出していた陽子が呆れていた。
「アーマー装備『Leather Jacket』…シールド装備『Buckler』…新入生の装備か、コレは」
「あ、あはは………カイト君、防御に出力を取られるのイヤだって」
 武装の選択は個人の自由、とはいえ限度があると思う。
 もっとも、最低限の防御系フィールドでも、物理攻撃は完全に遮蔽できるのだが。
 確かにその分だけ、ブレードの出力が上がるのも確かだ。
「ま、アタシには関係ないか………ダウンロード完了を確認、と」
「ん…、ブレードの展開を―――いけない!!」
「敵性生物急速接近! 『バットタイプ』三機…相羽君!」


Enemy Approach! Enemy Approach!


 人工知能『ランサー』を搭載していないインターフェースは、酷く事務的にピンチを告げる。
 愛想の良いAIなんて気持ち悪い。
 関西弁で喋るアイドルボイスのAIとか………何を考えてるんだ、シンゴ。
 一切の装備への投資を削って、最高級の『トリアトリ』を導入している悪友の笑みを思い出す。
 カイトの余計な思考が、起動中の『Blade Control System』にノイズを入れる。
「この場に居なくても祟る………」
 キャノピーに迫ってくる敵影に、カイトは場違いに苦笑した。
 戦闘形態に移行するこの瞬間こそが、もっとも無防備になる。
 恐怖は無い。
 知っていたから―――勝てると。
 感じていたから―――守られていると。
「―――雷電ブレード展開!!」





 直後。
 黒い宇宙に閃光が走る。
 無音の爆発シーンに、流石に陽子は青くなった。
 死んだ?
 と、リアルに醒めた思考をしている。
「………洒落にならないんだけど? 相羽君」
 とっさにクラス代表としての弔辞を考えてしまった自分が、凄く冷たい人間に思えた。
「だ、大丈夫…」
「今にも気を失いそうな顔色で保証されても、余計怖くなるんだけど………」
「信じてるから、カイト君のコト」
 『なら、その震える手をなんとかなさいよ…』
 陽子は口に出さずに呟く。
 『でも………そうね。相羽君が帰ってきたら、お仕置き決定ね?』
 陽子は爆発でロストしていた相羽機の反応に、我知らず安堵の溜息を吐いていた。





 敵性生物-モンスターの攻撃波は、真空に満ちたエーテルを媒介にして物理的破壊現象を誘発する。
 逆に、物理的なあらゆる現象に傷つく事の無い存在。
 人類が太陽系外に進出して、コンタクトした生命体。
 正体不明の異次元生物。
 単体で惑星間を飛行し、生態不明、行動理念不明、存在証明不明。
 一つだけ確かな事実は、敵性生物は『意思』を宿した生物を捕食する。
 故に人類は産み出したのだ。
 ―――同じ『力』を操る『刃』を。
「クレアに感謝………だな」
 爆煙の向こうに雷電が在った。
 悠然と、光の刃と鎧を纏って。
 雷電の機体が、一回り以上大きく見えていた。
 ガラスのように透明な曲板が、鱗のように、羽のように機体を取り囲んでいる。
 『Leather Jacket』フィールドが支えも無く、雷電を守る防御壁として発生している。
 ソルジェネレートシステム。
 真空に無限に満ちるエーテル素粒子から、無制限のエネルギーを取り出す。
 そして、エーテル素粒子自体を凝縮し、属性を付加させ、物質化というプロセスを操作する。
 それが『アーマー』と呼ばれる装甲であり―――
ギイィイイイーィ!!
 ―ザクリ!、 と―
 操縦桿に軽い手応えが伝わる。
「五月蝿い、んだよ」
 キャノピー一杯に、真っ黒い不気味なモンスターの顔が映っている。
 レバーと一緒にペダルを踏み込むと、機体がゆっくりと後退する。
 システムを起動したシップは、慣性法則を操作して機動する。
 モンスターの外骨格から、透明な光で形作られた刃が抜き出されていく。
 水晶のような透明さで構成された、それは一振りの『刃』であった。
 延長は機体の倍ほどもあるだろう。
 『エーテル素粒子』から構成され、『ソルジェネレートシステム』の産み出した『フィールド』によって収束された『ブレード』。
 零距離戦闘モード。
 ソードシップとは、文字通りに刃を使ったドッグファイト専用の戦闘機。
ギイ、キイイイーィ!!
 仲間を討たれて凶暴性を増した『バッド』が、雷電に強襲する。
「左門全弾発射!!」
 左右に増設されたポッドから、拡散ミサイルが爆煙と共に射出される。
 ロックオンされずに発射されたミサイルは、扇状に広がって、何発かはモンスターに着弾する。
 先端が潰れた『Fire Cracker U』が爆発し、残りの弾頭も全て誘爆した。
 その様は正に爆竹だ。
 最低ランクのオプション装備とは言え、その爆発力は巡洋艦を沈めるに足る。
 だが、爆煙を突破した『バッド』にダメージは見当たらない。
 仮に核ミサイルをダース単位で撃ち込んでも、結果は同じだった。
ギ?
 爆発と爆煙で雷電を見失った二匹が、戸惑う様子で停止した。
 ―サクリ!、と―
 団子のようなその姿が、まとめて真っ二つに千切れる。
「機動戦術―――一閃牙
 機動の慣性で回転する雷電の機体を、カウンターを噴かして相殺する。
 『Fire Cracker U』の爆発を隠れ蓑に、強引な慣性制御で敵の背後に回った余波だ。
 機体の高機動に、肉にベルトが食い込み、関節が軋む。
 しかしカイトは上空方向から、編隊を組んで強襲してくるモンスターを見上げ、笑った。





「………何なの、アイツ?」
 陽子はレーダースクリーンの上を、縦横無尽に駆ける雷電に呆然とする。
 その速度は、モンスターの三倍は出ていた。
 慣性制御のレベルに違いは無い。
「………アイツ、何なのよ」
 光の甲冑を纏った雷電は、真っ直ぐに構えたブレードで敵のアームを打ち払うと、機体の先端を回転させるように機動する。
 背後から包み込むように触手を伸ばした『スライム』を、反転しつつ真横に弾けて切り裂く。
 圧倒的―――そう表現できる戦いだった。
 だが、それは。
「耐えられるの? 生身で、アレが」
 加速する度に瞬くフレア。
 ジェネレーター推進器が吐き出す、プラズマの光。
 慣性制御での起動にGは生じないが、それでは同じレベルの慣性制御で移動するモンスターに勝る事は無い。
 カイトは更なる機動力を得るために、通常航行に使用する推進器を使用していた。
 通常航行時のジェネレーターを使用した推進力は、戦闘機動時の慣性制御機動よりパワーがあるのは確かだ。
 だが、バトルモードに移行した状態では、デフォルトでロックされる仕様になっている。
 戦闘時のランダムな高機動に耐えられないからだ。
 パイロットの身体が。
 『あの娘、何て事をしてくれてんのよ!』
 陽子は内心で、お下げ髪のクラスメートに悪態を吐く。
 禁止されている訳ではないが、イレギュラーな改造である事に違いは無い。
 陽子は問い掛けるような目で、隣のシートを覗き込んだ。
「…大丈夫…」
 陽子の視線を知ってか知らずか、ミュウは自分に言い聞かせるように呟いていた。





 『ウィスプ』と分類される不定形モンスターが襲い掛かる。
 燃える炎の塊のような身体から、数十の火炎弾が射出される。
「非常識なんだよ…!」
 空間を真っ赤に燃やす炎の矢に、カイトは毒づきながらも目まぐるしく手足を動かす。
 真空でぼうぼうと『音』を響かせて『燃える』火。
 エーテル物理学が構築された現代でも、理解できないカイトにとってはだたの非常識現象だった。
 ただ、まともに当たれば自分が破壊される。
 それだけ知っていれば十分だった。
「このっ………『シールド』形成!!」
 ―ドンドン!ドド…ッ!!
 小型で不透明な力場が、一瞬にして雷電の側面に発生する。
 直撃コースの火炎弾を防ぎ、残しは推進器の出力を全開にして回避した。
 機体の全体を覆うアーマーで受けるより、収束されて『硬い』シールドで受けた方がダメージは少ない。
 距離の離れた雷電に、『ウィスプ』の群れが一斉に火炎弾を発射した。
「一機に対して、大げさなんだよ!」
 シャワーのように飛来する火炎弾に、自分で突っ込みを入れる。
 単機突出した自業自得なのだが。
 その顔は笑みを浮かべていた。
 目の奥が、チリチリする。
 吐きそうなぐらい、喉の奥が熱い。
 神経が真っ白に灼熱する。
 空間に張り巡らされた糸の隙間を縫うように、閃光の速度で雷電が機動した。
 敵編隊の中央に突入して、一体を切断した。
 その雷電に対し、モンスターの群れが包囲するような動きで接近する。
 『鎧』を身に纏い、『盾』で一切の破壊を拒絶し、『剣』で全てを薙ぎ払う。
 一対一の戦闘では、ソードシップは無類の強さを発揮する。
 逆に、一対多数の戦闘には不向きだった。
 強力なモンスターに対抗するために、単体単独戦闘機能に特化した機動兵器。
 コックピットに鳴り響くアラーム。
 握り締められた操縦桿が、キシキシと軋む。
「………五月蝿い」
 だから、殲滅する。
 粉々にする。
 ―――静寂にするために。
 ―――の旋律を思い出すために。
 だが。
『………静かな空に響く戦いの歌―――無粋だぜ』
 オープンにした回線が、聞きたくも無い口上を拾い上げる。
『俺の歌を聴け〜〜〜っ!!』
「うるせぇぞ、クーガーっ!」
 コックピットを痺れさせる重低音シャウトに、カイトは怒鳴り返した。
 レーダーの索敵範囲ギリギリから、一直線に突入してくる機体がいた。
 バトルモードに移行すらせずに、ブレードのみを展開させた『ハルバード』機。
 赤い豹柄の機体カラー。
 無意味に大音量なマイソングを、無意味な程のハイパワーウェーブで放射している。
ゴガアン!
「お、おいッ…クーガー?」
 そのまま『ナックル』タイプに突っ込んだクーガー機が、派手な爆発に包まれる。
 ソードシップにとって間違った戦闘法ではないのだが、『アーマー』を展開していない状態では、ただの自爆用の人間ミサイルだ。
『………ま、待たせたな。あ…後は俺に任せろ…ゲホっ』
「何しに出てきたんだよ! お前は」
 爆煙の向こうから現れた『ハルバード』は、右翼が折れ曲がり、白煙を噴いていた。
 案の定、寄ってたかって敵にボコられている。
『て、てめぇら…大人しく俺のシャウトを…ぐわっ』
「無茶すんなよ…」
 カイトは脱力してしまった身体に鞭を入れ、『一応』悪友であるクラスメートの救出に向かう。
 自分に無茶するなと言わせるのだから、クーガーの無謀加減も大した物だと思いながら。
『キミに人のことが言えるのかい?』
「シンゴ………と、皆来たか」
 立て続けにモンスターに撃ち込まれる光の刃。
 シンゴの『ロングボウ』を先頭に、舞弦から次々と出撃してくる友軍機。
 ソルジェネレートシステムから産み出したブレードを、次々と撃ち放ってくる。
 ソードシップとは違い、スナイプシップは遠距離攻撃用にフィールドを調整させた機体だった。
 所詮、数が同じならば、低レベルのモンスターなど敵ではない。
 速やかに駆逐されていく戦場で、雷電はバトルモードを解除して流されるままに後退した。
「―――やっぱ、駄目だった………」





 バチン!、と。
 格納庫の中に、鈍い音が響いた。
 ヘルメットを手にしたままのカイトは、左目を瞑ったまま痺れる左頬の熱さを感じる。
「何で叩かれたか…解るよね?」
「…」
 蒼ざめた唇を噛み締め、ミュウは問い掛けるようにカイトに向き直る。
 振りぬいた右掌を、痛みを堪えるように握り締めたまま。
 カイトは視線を合わせられないまま俯く。
「カイト君………」
「ゴメン」
 カイトは少しだけ自虐的な笑みを浮かべ、呟いた。
 それは、反省の意味での謝罪ではなく、心配させた事への免罪符だった、から。
 バチン!、と。
 音高く、もう片方の頬が鳴った。







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