竜園
Original Novel

- 銀のHYDRA -




第U章  白銀の許婚








 小鳥のさえずりが、木漏れ日の差し込む窓から響く。
 微かに緩んだ爽やかな風が、ベッドにまで吹き込む。
「ん…ぁ」
 呻いたカムイはベッド上で身体を起こす。
 細い、少女と見間違うばかりの素肌が、僅かに鳥肌を立てていた。
 特に訳もないが、子供の頃から素裸で寝るのがカムイの癖だった。
 演技でない、本気の寝呆け眼が潤んでいる。
 腰が重い。
 ぼんやり…と師匠と激しい性行為に耽った記憶が甦る。
 超が付く程の低血圧のカムイだった。
 無意識状態で頭を掻くと、寝癖の付いた銀髪がシーツの上で舞う。
「寒ぃ………」
 隣に視線を落とすと、誰かが毛布を分捕って熟睡していた。
「てめ…グレイぃ」
 毛布の中から、臀部が顔を覗かせ、灰銀色の尻尾が波打っている。
 むっときたカムイだが、寝呆け眼のままにへら…っと微笑む。
 カムイが尻尾を握ると、微かに痙攣する。
 起こさないように細心の注意を払ったカムイが、毛先を三つに分けて編み始める。
 グレイが断言する所の、病的なカムイの趣味だ。
 嬉しそうに鼻歌を口遊むカムイは、手早く三つ編みを完成させる。
 何処からともなく取り出した、紅のリボンを結わえた。
 ついでに禁呪を施し、半日程外せなくする。
「あったくぅ…勝手にボクの部屋で眠んじゃないよなぁ」
 妙に手触り良い、手入れされたような尻尾毛を弄っていたカムイが、尻尾の根元の思い切り際どい下着に気づいた。
 思わず絶句する。
 どう見ても女性物の下着だ。
 選択肢そのT。
 いきなり女装に目覚めた。
 選択肢そのU。
 昨夜、女とベッドインしたグレイが、下着を取り違えた。
 選択肢そのV………。
 いまだ寝呆けたままのカムイと、尻尾の刺激に目覚めた人物と目が合う。
 綺麗な緑翡翠の瞳。
 薄紅色の唇からは、可愛く牙を覗かせている。
 絹のような前髪が頬に掛かり、産毛の並に淡い体毛がうなじから背中に生えている。
 無表情な顔は、美形と言っていいだろう。
 頭頂部から生えた獣耳を伏せ、怪訝げな素振りさえ見せずにカムイを振り仰ぐ。
 見ず知らずで、ウオルフィ族で、おまけに女性、だ。
「ぉ…はよぉ」
 頭が真っ白になったカムイが、間の抜けた挨拶をする。
 しばし、時間が止まる。
 頭の中真っ白のカムイは、聞き慣れたはずの足音にも気づかない。
「カムイーっ。居んだろ? お前さァ、昨夜はちょっと酷いぞ………ッ?」
 無造作に扉を開けたグレイが、ベッドに乗ったふたりに石化する。
 振り返ったカムイと同様、頭が真っ白になってしまう。
 再び、しばしの時間が経過する。
 阿呆みたいに口を開け閉めするふたりの男を尻目に、ウオルフィ娘は無言でベッドから降りる。
 細い腰回りを絞めるボディス。
 思い切り盛り上がった、乳房が露に零れる。
 下着姿の狼娘は、恥じらいの仕草も見せずにストッキングを履く。
 無言のまま服を身に付け、部屋から踵を返した。
 逆らえない圧力を感じ、道を譲るグレイ。
 更に阿呆のように見詰め合うふたり。
「あの女誰だ?」
「あの女誰だ?」
 弾けるように同じ台詞を吐く。
「お前ッ! スゥちゃんにあんな仕打ちしておいて、部屋に女引っ張り込むたぁ!」
「ナンパするのは勝手だけど、ボクの部屋に女を住まわせるんじゃない!」
 又もや同時に言葉をぶつけ合う。
 お互いの事情を話し込んだふたりは、痕跡もなく消えた狼娘を探した。
 幽霊のように消えた狼娘は、最早居たかどうかもはっきりしない。
 ふたりは早々に忘却する結論を出す。
「いやぁ、吃驚したぜ。お前のああいうシーン初めてだったからサ」
「それはボクの台詞だ。てっきりグレイかと思ってたぞ」
 乾いた笑いをしながら、階段を下りて厨房に向かうカムイとグレイ。
「ボクは又、グレイの押し掛け恋人かと思った」
「人聞きの悪い事、言うんじゃねぇっての。カムイこそ、どさくさ紛れに一発位ヤッちゃっじゃねぇの?」
「だっ、誰が? 大体、昨夜は何処に行ってたんだよ。そっちは」
「どっ、何処でもいいじゃん」
 想い人に袖にされたグレイは、自棄酒を飲みまくり、挙げ句に昔関係した事のある同級生娘ふたりと乱交セックスに耽ってしまった。
 勝手にスゥに操を立てていたグレイだったから、破裂する程に精気が溜まっていた。
 城の厩舎裏の藁の中で、明け方まで取っ替えひっ替え射精を続けた。
 騎士種族と半獣人の娘達は、失神してからも義務的に尻を使われ続けた。
 流石のグレイも正気に戻った時、精液塗れの娘達に謝罪した位だ。
 どちらも婚約済みだから、遊びと割り切って手合せが出来る。
 それをいい事に、グレイは腸が捲れる程可愛がった。
 ふたりとも下級貴族の息女だが、性格的にアクティブだ。
 互いに後ろ暗いふたりは、乾いた笑いを合わせる。
「あはは、忘れよう」
「それが一番だな。夢だったと思えば………………」
 先にリビングに降りたグレイが、顔を引きつらせて硬直する。
 無性に嫌な予感のカムイは、ソファーに腰掛けて待ち構えていた狼娘に絶句した。





「ミリュウ=フォン=レキサンドゥラ。ミリュウで構わない」
「………さいで」
 上座に陣取ったミリュウの向かいで、カムイとグレイは神妙に並び座っている。
 始めの印象が印象だけに、妙に逆らえない。
 カムイは名乗った娘に唇を歪めた。
 名前は自分の身分をも表している。
 高位爵位の貴族は、三つ名を持っている。
 貴族、それも公爵の御令嬢というわけだ。
 これは、どう考えてもグレイ関係しかない。
 グレイの横顔を盗み見ると、案の定思い切り引きつっていた。
 だが、ちょっと反応が尋常ではない。
「何者?」
「あ、ぅ…だから、もしかして………?」
「許婚。いや、お前の妻になった」
 恐ろしく義務的に頭を下げる押し掛け女房に、金縛りに合うグレイ。
 寝耳に水のカムイも、声を裏返らせる。
「マジか? グレイっ」
「親父が勝手に決めただけだ! ミリュウさんだったな。俺は、実家とは縁切りしてるんだ。悪ぃけど、レキサンドゥラ家に帰って………て? レキサンドゥラだって!?」
 顎を外すように叫んだグレイが、珈琲カップを取り零す。
 レキサンドゥラ公爵家は、自分の領地を持つ辺境の有力貴族だった。
「如何にも」
 相手の反応も意に介せず、鷹揚に頷く。
 一見硝子人形のような美貌だけに、表情の無さが違和感を醸し出す。
「四聖獣家がひとつ、牙族レキサンドゥラ公爵家四女。母様は妾だ」
「ああっ、聞かない。俺には関係ない」
 耳を塞ぐグレイに、ミリュウは苦笑いした。
 石像に精気が吹き込まれたような、そんな感じだった。
「そうもいかない。私は一族の後継者と仲違いしている。今度の嫁入りも、事実上の勘当措置だ。帰る所なぞ有りはしない」
「ったく、貴族ってのは、何で………」
 聞くとはなしに聞いていたカムイは、呆れたように呟いた。
「そういう物だ」
「兎に角! 俺も居候してる身分なんだよ。あんたの面倒を見てる暇はないね」
「………自覚あったんだ」
「持参金ならば少しばかりある。それに………其処の家主殿には、身体を玩ばれた貸しがある」
 我関せずで珈琲を啜っていたカムイが、激しく吹き出す。
「………カムイ。お前やっぱり」
「ちっ、違うぅ!」
「強引に同禽された挙げ句、尻尾まで結わえられた」
「別に俺は構わないんだけどサ。責任………取ってやれよな」
「お嫁に貰ってくれるのは誰でも構わんぞ」
「良かったな、カムイ。俺等ウオルフィは種族云々は全然アバウトだから」
「という訳で、末長く宜しく」
 次元の違う所で利害の一致した獣人ふたりが、意気投合してカムイを篭絡する。
 半ば力ずくで説得させられたカムイは、疲れ果ててぐったりと脱力した。





 強引な同居者が増えてから少しして。
 纏った入金のあったカムイは、借金返済に登城した。
 ミリュウの結納金、いやさ家賃である。
「なーんか………思い切り状況に流されてる気がするんだけど」
 と言うか、いいように振り回されてるとか。
 何時もの冷たい拒絶にも気づかず、地下への道筋を歩む。
 物置を改装して自分の部屋にしたミリュウは、何の違和感もなく生活を供にしてる。
 時折、世間擦れしたボケを見せる事はあるが、身分を嵩に澄ました所はない。
 グレイもそうだが、基本的に善人なのがすぐに解った。
 結構、お似合いの組合せなんじゃないかと思うカムイだった。
 発情期の期間まであるウオルフィ種族は、性的行為に関して明け透けで有名だ。
 気にいった相手なら、初対面だろうが同性だろうが自然に性交を交わす。
 同種族間では珍しく貞操概念の強いグレイだ。
 とはいえ、公認の夜伽相手に指一本も触れていない。
 最も、自分が気づいていないだけかもしれないが。
「ミリュウさんって結構美人で可愛いのにな。変な奴」
 それなりに気を使って、今日など家にふたりだけにしてある。
 連込み宿代わりじゃないが、帰ったら特別料金を請求する心算だ。
「お早よう御座います。お師匠」
「おー…ちょうど良い所に来たね」
 フラスコ片手に怪しげな実験に耽っていたレヴィが、振り返って微笑する。
 何故か漆黒の装束を愛用するレヴィだ。
 お伽話の悪魔召喚をしている構図にそっくりだ。
「今月分の返済金を持ってきた………んですけど。何してるんです?」
 魔道士でもあるレヴィが、錬金術をしているのは珍しい。
 触媒と方程式を用いて現象に干渉する錬金術と、魔術では次元が異なる。
 極稀に生まれる魔力を操れる才能を有した人間のみが、錬金術などとは比べ物にならない力を持つ魔術を習得できる。
 ファクナシオ王国では、レヴィを含め15人迄しか確認されていない。
 レヴィの幼友達で親友のカムイとスゥの母親が、打診して紹介したのが師弟関係の始まりだった。
 天神の生態は謎に包まれていたが、独自体系の強大無比な魔術を操るという。
 あいにくの所、才能の無かったカムイは錬金術のみを学んでいた。
 だが、錬金術の分野では、特異な程の才能を示した。
 最も、カムイ本人は、手に職を身に付けるだけの意欲しかなかったのだが。
 それでも、並の錬金術を行なえるだけの腕前はあった。
「まあまあ、いいじゃないかい?」
「また…駄目ですよ。変な悪戯は」
 城の外壁を真っ赤に染める。
 髭面の騎士団長の可愛がっていた猫を、斑牛に変える。
 第三者は笑えて、された方は泣きたくなるような悪戯がレヴィの趣味だった。
 この間の、王様の頭を禿にするという企みは、必死で思い留めさせた。
「ま、ま、そいう事だから」
 お説教で喉を枯らしたカムイは、差し出されたグラスを何も考えずに飲み干す。
「………解りましたか? 大体ですね、お師匠の冗談は笑えないものが………なっ、何ですか?」
「うみゅ…可笑しいな」
 にこにこと可愛らしく微笑みながら説教を聞き流していたレヴィが、しばらくしても何の変化もない事に小首を傾げる。
「何か企んでません?」
「何でもない、何でもない。うむ、おっかしいなぁ」
「だから、何が可笑しいんですか?」
 深く溜息を吐いたレヴィは、諦めて手を振った。
「も、いい………。今度はもっと強力な奴、造っとくから」
 理不尽な疑問点を残されたまま帰路に着いたカムイだったが、すぐに謎は解けた。
 下半身に猛烈な疼きが沸き起こったのだ。
「ぃ…一服盛ったな。何考えてるんだよぉ、お師匠様は」
 股間に血液が集中し、目眩すら感じる。
 前かがみで歩く姿に、通行人が怪訝げな視線を向ける。
 あらゆる薬物に関して抵抗力のある天神だったが、カムイの場合ハーフである。
 体内に吸収された速効性の催淫剤は、時間を掛けて人間の部分を侵食していた。
 外出時には欠かせない、頭に巻いたターバンから冷汗が零れる。
 責任を取らせるにも、今から城に戻るまで保ちそうに無い。
 限りなく情けないが、自室で自慰でもするしか方法はない。
 昼下がり、何時ものように無人の店内から二階に上がる。
 意識は朦朧とし、腫れあがった股間はズボンを突き破りそうだ。
 余程凶悪に強力な魔薬だったらしい。
「グレ…イ、居ないのか?」
 居ても困るのだが、家中に気配がないのを確かめる。
「カムイ? グレイなら、早々に外出した」
 背後から掛けられた声は、大きな果実を抱えたミリュウのものだった。
 体毛の多いウオルフィ族は、必要最小限の衣服しか身に付けない。
 腰まで裂けた直垂布に、乳首も露な上着一枚。
 ブラジャーはしないのが主義のミリュウだった。
 室内着なのだろうが、今のカムイには危険過ぎる程に危険だった。
「どうした? 気分でも悪いのか?」
「ちょ…寄らないで」
「失礼な言い分だな。これでも心配してやっている」
 壁に寄り掛かったカムイは、薫る女性の匂いを頭から追い払う。
 獣のような獣欲が、理性の軛を引き千切りそうになっている。
 カムイの内心の葛藤に気づかないミリュウは、無造作に正面に回り込む。
「大丈夫か? ………本当に苦しそうだぞ」
「………だったら、楽にさせてくれ、よ」
「えッ…?」
 俯いて呟いたカムイの震えが止まる。
 怪訝げに顔を覗き込むミリュウに、有無を言わせず唇を奪った。
 いきなりの行為に、硬直したミリュウは激しいキスに脚をがくつかせた。
 手から零れた果実が、廊下に転がる。
 カムイとミリュウの背丈は同じ程だ。
 体重から言えば、ミリュウの方があるかもしれない。
 初めてのショックに震えるミリュウは、壁に押し付けられたまま身動ぎもない。
 それに、元来ウオルフィ族に口づけという概念はない。
「ひぃ…ぁ………」
 舌をなぶられたミリュウは、膝小僧から力が抜けて床にへたり込んでしまう。
 悲鳴のような小さな吐息が漏れる。
「ぁ……ひ…」
「本番は………これからだぜ」
 半ば正気を失ったカムイは、瞳を虚ろにしたミリュウに宣言した。





 力の抜けた爪が、カムイの二の腕を裂く。
「く…ぅ………んんぅ…」
 数十度目の乳首への口づけに、ミリュウは力無く呻いた。
 出し入れの可能な鋭い爪の痕に、深紅の液体が滲んで雫となる。
 六畳程の手狭な部屋は、今だ生活感に乏しい。
 購入したベッドは、真新しく綿も硬い。
「きゅ………ッ」
 カムイに無理矢理ベッドに連込まれたミリュウは、喉の奥から声を搾り出す。
 小一刻も楽器のように奏でられ続けただろうか。
 青翡翠色の瞳を潤ませたミリュウは、魂の抜けた人形のようにカムイに踊らされる。
 引き締まったウエストが捩られ、腹筋の筋が浮かび上がる。
 人間に比べ、遥かに凌力の秘められた肢体が跳ねる。
 総ての衣服をはぎ取られたミリュウは、絶え間なく襲う快感美に我を忘れた。
 全身に生えた柔らかい産毛が、分泌される汗に艶やかに滑る。
 カムイの繊細な動きで責める指と舌に、始原の本能が肉体の反応を促す。
 尾骨の発達した安産型の臀部が、獣の動きで前後に蠢く。
 ざんばらに振り乱れる灰銀色の尻尾。
 脚の付け根から分泌された潤滑液のせいで、しとどに濡れてしまっている。
 カムイは尻尾を頭に乗せ、四ん這いのミリュウの尻肉の谷間に顔を埋める。
「はァ!あはァ!はン…はァはァはァあぁ! ………ふひゅ………ぅ」
 生殖行為に羞恥心の薄い種族のミリュウは、上体を捻って伸ばした右手でカムイの頭を奥に引き寄せる。
 淫乱なその手を邪険に払い除けたカムイは、思う様にミリュウの秘肉を貪る。
 押し当てた両親指で濡々の粘膜を押し開き、可憐に痙攣する膣襞に舌先を泳がせる。
 散々にお師匠から仕込まれたカムイだ。
 房中術での、免許皆伝のお墨付きを貰っている。
 ひゅくん…ひゅくん…っと粘々の肉孔が、侵入する舌先を搾る。
 包皮から剥かれた肉芽は激しく充血し、愛液とカムイの唾液に濡れそぼっている。
 男性器を迎え入れる準備が整った小女陰が、指先で限界まで露にされる。
「ぁ…」
 一瞬、不安げな目をしたミリュウが、肩口から縋るような視線を向ける。
 枕に顔を埋め、くわえた指から唾液が滴っている。
 カムイは暴れさせないように開かせた太股を抱き抱え、深くミリュウの尻底を舌で掘りえぐった。
 肉芽から始まり、尿道を抜けて膣口から肛門までを滑った舌が通過した。
 見開いたミリュウの瞳孔が色彩を失い、次の瞬間に全身の筋肉が凝縮した。
 激しく仰け反るミリュウが、呼吸不全に喉の奥を天上に向ける。
 限界まで海老反りになった腰が尻尾ごと激しく痙攣し、激しい解放感と共に蠢く。
 括約筋の凝縮で、膣孔から白濁した液体が吹き出された。
 立派な臀部の笑くぼが消え、力無くぼてり…とベッドに沈む。
 粘液の糸を引く唇を放したカムイは、頬に飛び散った飛滴を甲で拭った。
 色白を通り越し、大理石のようなカムイの肌が、冷めた興奮で微かに紅潮している。
 臨界に近い興奮に、理性の枷を解き放ったカムイは、寒気さえ感じる美貌を露に微笑を乗せる。
 度を超した性戯に、子宮の奥まで突き抜ける絶頂に押しやられたミリュウ。
 顎を腕に押し付けるミリュウの唇から、一筋の血が流れる。
 興奮の余りに、二の腕に牙を突き入れていた。
「ゃ………ぁ…もぅ………もぅ…」
「いいから………大人しくして」
 一方的な奉仕をしていたカムイは、ミリュウを仰向けにさせて股間に割り入る。
 抵抗する気力さえ抜かれたミリュウは、従順に鳴いて瞳を潤ませる。
「すぐに済ます…か、ら」
 苦しそうに呻いたカムイが、喉を引きつらせて言葉を紡ぐ。
「嫌なら…ベッドから降りて。構わないなら、黙っていて………」
「………ぅ…」
 残った理性を掻き集めた最後告知に、押さえ付けられているミリュウは振り仰いだ。
 だが、冷たい紅色のカムイの、瞳の奥に潜んだ思いに気づいた。
 僅かに唇が吐息を吐き出し、身体から余分な力を抜く。
 小さく頷いたミリュウが目を瞑り、獣耳を伏せる。
 獣人が、相手の意志に承諾した事を示す仕草だった。
 脇の下に突かれたカムイの腕を、そ…っと握る。
 本心では逃げ出してくれる事を願っていたカムイは、黙って逸物をミリュウの下腹部に乗せる。
 へその辺りまで届く圧巻的な異物に、ミリュウは仰け反る。
 唇を噛み締め、呻き声を押さえる。
「………いい、覚悟だ」
「ゃ………さし…く……」
 下される最後の審判に、小兎のように震えるミリュウが唯一の懇願を訴える。
 だが、言い掛けて唇を噛む。
 腹の上で蠢く気配に動悸が乱れ、但じっとカムイの瞳を見詰める。
 熱い強ばりが肉を裂き、熱い塊が胎内に押し入った。
 焼きごてを押し付けられるかのような激痛に、ミリュウは牙で穿った傷口から血を流しながら声を上げなかった。





 橙色の夕日が、窓から差し込んで部屋を染めている。
 望郷を呼び起こす甲高い鳥の鳴声が、失神していたミリュウの意識を揺り起こす。
 記憶が真っ白になっていて、酷く身体が疲れていた。
 小さな部屋の自分のベッド。
 全裸でうつぶせに眠っていた。
 見事な流線を絵描く腰からうなじにかけて、白濁した粘液が飛び散っていた。
 尻尾で隠された臀部は、愛液で濡れていて涼感があった。
 今だに生々しく残る異物の感触が、下腹部の中に刻み込まれていた。
 微かな呼吸にともなって、胎にずく…ずく…と不思議と甘い鈍痛が走る。
 汗と精液で湿ったシーツの中央に、乾き掛けた血痕がある。
 半ば目を閉じたミリュウは、自分の膣から出血したそれを見詰める。
 自分でも不思議だったが、後悔はなかった。
 妙に穏やかな気持ちで、処女痕をなぞる。
「カムイ………?」
 ミリュウは、同じベッドの上で蹲ったカムイに気づいた。
 全裸のまま折り曲げた膝に頭を埋め、身動ぎもしない。
 まるで、彫像か屍のように。
 銀細工のようにシーツに流れる長髪の下で、無数に出来た爪痕にミリュウは気恥ずかしくて僅かに赤面した。
 意識はしていなかったが、かなり激しくカムイに抱きついていたらしい。
「………後免」
 流石に言葉に詰まるミリュウだったが、消え入りそうな謝罪に身体を起こす。
「何故………謝る?」
「無理矢理、こんな………レイプで、破瓜させるなんて」
 気恥ずかしさに頬を掻くミリュウは、納得して頷いた。
「いいんだ。家を出る時に、覚悟はしてきた。何時かこんな経験をする事になると………。避妊剤を常用しているから、妊娠の心配はないぞ?」
「………後免」
「構わんと言っている。今時、純潔なぞに価値はないからな」
 小さく笑ってみせるミリュウが、冗談粧して尻尾を振る。
「まぁ、それなりに痛かったが、その…良かったぞ………?」
「後免な………」
 同じ言葉の繰り返しに、反射的に激したミリュウが怒鳴りかける。
 先程から一度も顔を上げないカムイの足元に、涙の雫が大きな跡を残していた。





「ぬあぁ…ッ。腹減った、ぜ」
 盛大に伸びをしたグレイの背骨が、音を立てて鳴る。
 増築に改築を続け、ちょっとした迷宮のような下町を帰路に着く。
 夜の帳がファクナシオを覆い、ぼちぼちと街灯に光が灯る。
 幾つもの煙突から煙が昇り、暖炉に掛けられた鍋の香料が胃袋を刺激する。
 久方ぶりに緑森学園に登校して、気疲れを禁じえない。
 普段は平気なのだが、カムイが登城してから、ミリュウと二人で居る事を妙に意識してしまい、逃げるように家を出ていた。
 立場は微妙だし、据え膳の許婚だと手を出す訳にもいかない。
「カムイの奴、妙な気ぃ使うしサ。本当…鈍いってか…」
 思い切りの良い溜息を吐く。
 何の気なしに、頬毛を掻いた。
 玩具屋『MATRIA』に辿り着いた時には、城に掛かる夕日も沈み切っていた。
 グレイはカムイが店を出すと同時に居候している。
 厳格で貴族の当主を絵に描いたような親父と、大喧嘩して家を飛び出して以来だ。
 一年以上も身を寄せていれば、余所の家という感じはない。
「ぁ、ん?」
 こじんまりとした建物の前には、僅かばかりの庭園があった。
 廃屋の頃から手入れされていないお陰で、ミニチュアの密林のようだ。
 グレイは崩れた煉瓦階段に蹲ったカムイに気づく。
 鈍色に染まった銀髪が、垂れ下って顔を隠している。
 歩み寄ったグレイは、何の気なしに声を掛ける。
「よぉ。夕飯まだなんか? 昼間抜いたから、俺腹減っちゃってサ」
 心無し肌寒さを感じる気温だが、風邪を引く程でもない。
「ミリュウさん来てから、確実に食生活改善されたよな。料理担当してくれて、マジ助かっうじゃん? 絶品とは言わないけど、俺やお前が作るよか美味いし」
 俯いたまま無反応のカムイに、ようやく様子が可笑しい事に気づく。
 茶目っ気を起こしたグレイは、カムイの後頭部を小突く。
「あんだよ? ミリュウさんと喧嘩でもしたんか? ………はぁーん。劣情に堪えかねてミリュウさん押し倒して」
「………強姦した」
「そうそう。んでもって、嫌がるミリュウさんを何度も………って、はぁ?」
 指を立てて含み笑いしていたグレイの顎が落ちる。
 冗談かとも思ったが、カムイがこの手の嘘を口に出した事はない。
 阿呆のような顔をして振り返ると、顔を上げたカムイと目が合う。
 やつれて青ざめた頬が、自嘲に歪む。
「レイプした」
「………マジ? 何で…」
「薬…でおかしくなってて、無理矢理、犯した」
 薬と聞いて、話が読めた。
 宮廷錬金術師長レヴィの悪戯好きは、知らぬ者が居ない程に悪名高い。
 硝子玉のように精気が無いカムイの瞳が、赤く腫れていた。
「そっか…ん、じゃま、仕様が無いじゃん。あ、俺等って、セックス関係…結構アバウトだからサ。一発かました程度で、んな怒ん無いってば」
「あの人………ヴァージンだった」
 立て続けに想像外の事実を聞かされ、流石に言葉を失うグレイ。
 幾度か口の開け閉めが続くが、言葉が形にならない。
「最低だろ? 俺…意識あったんだ。無茶苦茶に汚してやりたくなってさ。さっきまで強姦してた。結構、好き者だったよ? あの人。自分から腰使ってさ」
「止めろッて! んな言い方ないだろがッ」
 激したグレイは、カムイの胸倉を掴み上げた。
 前髪が顔に被さり、されるがままに吊られる。
「魔法使って、抵抗出来なくしてレイプしたんだ。俺が、無理遣りに」
「…お前」
「だから、泣かせて、抵抗したのを…俺が犯したんだ」
 グレイは婚約者を寝取った形のカムイが、何を言いたいのか理解できた。
 姦通の罪を、全部自分で負う心算なのだ。
「軽蔑してくれ………。済まない、グレイっ」
 握り締められた拳から、血の滴りが零れる。
 カムイの肩を抱き寄せ、重い溜息を吐き出した。





 かまどに掛けた鉄鍋を掻き回した後、一摘みの胡椒で味を調える。
 庭で摘んできた月桂樹の葉っぱを一枚。
 ちょっとした香り付け。
 煉瓦造りのオーブンが十分に熱したのを確かめ、腸を抜いた七面鳥を篭める。
「ふむ…我ながら良い出来」
 可愛いエプロンを締めたミリュウが、鼻を引く付かせて頷く。
 嫁入り修業の一貫として習った料理だが、やり込んでみると結構面白い。
 何より、喜んで食べてくれる者が居ると張り合いがある。
 たっぷりと効いた大蒜の薫りが、鼻孔をくすぐる。
 大蒜スープに、大蒜風味の七面鳥焼き。
 大蒜エキスのゼリー封じ。
「いや…他意はない」
 改めてメニュー確認し、取り合えず言い訳してみる。
 偏った食材選びに、我ながら赤面する。
 心無し蟹股で、前かがみなのは意識していない。
「おや、グレイか? お帰り」
 獣耳を引くつかせたミリュウが、可愛らしく小首を傾げて振り向く。
 自然な仕草だが、昨日迄とは何処と無く違って見えた。
 年頃の娘として、一皮剥けた感じだ。
 無論、本人は気づいていない。
「カムイも呼んできてくれ。すぐ、晩ご飯が出来るぞ」
「何の心算だ?」
 牙を剥き出した恐い顔で、詰め寄りいきなり問いただすグレイ。
 思わずミリュウは、握っていた包丁で身構えてしまう。
「それはこちらの台詞だ、馬鹿者。目を血走らせて何を考えている?」
「カムイと寝たんだろ?」
 単刀直入に切り込まれたミリュウは、微かに身動ぎして肯定する。
 胸を張ってグレイを睨み返す。
 悪怯れた卑屈さは微塵もない。
「カムイに応えただけだ。お前に責められる謂れはない。公的立場がどうあれ、私はお前の所有物じゃない」
「だからッ、俺が言ってんのは、んな事じゃねぇ!」
 苛立ったグレイが食卓を殴ると、並べられていた食器が派手に鳴る。
「あんたが何を考えてヤッたのかはどうでもいい。娼婦だろうが、未通女だろうが関係ねぇ俺達の力なら、カムイを跳ね除けてやれたはずだぞ! 何で、彼奴を拒んでやらなかったんだ」
 想像していた事柄とは違う原因で責められ、面食らったミリュウは押し黙る。
「………あんたは遊びだったかもしれんが、軽い気持ちでカムイをからかうのは二度とするな。いいか? 彼奴を傷つける真似は、俺が許さねぇ!」
「………悪かった。謝罪する」
 頭と尻尾をうな垂れたミリュウは、沈んだ声で謝った。
 酷く傷ついた姿に、グレイは頭の血を下げる。
「あ、いや…悪ぃ。俺も言い過ぎた」
「いい………事実だった」
 気まずい沈黙が帳を降ろし、しばしの時間が過ぎ去る。
 鍋の中身が煮詰まり、食欲を刺激する匂いが立ち上る。
 宿主の意志に関係なく、グレイの胃袋は盛んに自己主張をする。
 取り合えず、カムイを呼んでこようと立ち上がったグレイが、不図振り返る。
「あのサ」
「何だ? 夕飯なら準備できている」
 エプロンを外したミリュウは、少し寂しげな笑顔を見せた。
 本人も、内心思う所があった。
「いや、あー、ずっとウオルフィ種族の領地に居たんだったら解んねぇと思うけどサ。人間社会っての、結構酷ぇ差別あってサ。俺達亜人にも、風当たり冷たい訳だ」
「話には、聞いている」
「んだから、見て解ってっと思うけど、カムイの場合、ちと立場複雑でサ。おまけに本人が変り者で、なんつーか、自分関係で好きな奴が傷つくの嫌な奴なんだ」
 言いながら恥くなったのか、グレイは鼻先を掻く。
「ま、だからサ。後であんたん所に謝りに行くと思うけど、それなりに宜敷くしといてくれな?」
「了解した」
 くすっと笑ったミリュウは、優しい微笑を浮かべて頷く。
 グレイが出ていった後、ミリュウはオーブンから狐色の七面鳥を取り出す。
 氷室から葡萄酒を出し、コルク栓を抜く。
「………でも。私は羨ましいと思うぞ」
 鍋を掻き回しながら、一人独白した。
「お前のような親友が居て」





 葡萄酒の杯を一気に呷ったカムイは、喉を焼く熱さに噎せる。
 普段は滅多に酒精を摂取しないカムイだったが、うじって居る性根に弾みを付ける意味合いで酒の力を借りる。
 晩餐が済んで頃良い時刻。
 気の効かしたグレイは、早々に寝入ってしまっている。
 隣合わせのミリュウの部屋が、カムイにとって遥かな敷居の高さを感じさせた。
「どんな、顔して謝ればいいんだよ………」
 鏡の前に立ち、本気で情けない己れの顔を眺める。
 何時もは鏡の類は大嫌いだった。
 人間離れした容姿を、まざまざと映し出されるから。
 もう一人の自分が、胸の奥に潜めた欲望を嘲笑っているように感じてしまう。
 結局溜息を吐いて、ベッドに腰掛けた時だった。
「はい…っ?」
 予想だにしなかったノック音に、カムイは裏返った返事を返してしまう。
「私だが、入るぞ」
「みっ…ミリュウ、さん」
 言うが早いか、何の躊躇もなく訪問者が部屋に押し入る。
 羽毛枕を小脇に抱えているのは、ミリュウその人であった。
 男性物のワイシャツを寝巻代わりにしており、形の良い素足が丸見えだ。
 浮かび上がる身体の線を見る限り、中はパンツのみだ。
 本人に他意はないのだろうが、恐ろしく扇情的な格好だ。
 心無しか、腰が重そうに見える。
「何で? こんな時間に…?」
「あー、うむ。私は待つのは性に合わんのでな。互いに言いたい事もあろうかと、こうして出向いた訳だ」
 明後日の方角を向いたミリュウは、言葉尻を濁す。
 壁を挿んで同様に捩っていたミリュウは、カムイより辛抱が足りなかった。
 初めて入ったカムイの部屋を、何気なく眺め回す。
 第一印象は、奇妙な生活感の欠如だった。
 不器用だが真摯なカムイの謝罪に、真面目な顔をしたミリュウは一々頷く。
「ん…解った。では、私の事も許してくれるか………?」
「えっ?」
 床に敷いた枕に胡坐を掻いたミリュウが、股間から出した尻尾を意味無く弄る。
 可愛い灰銀色の獣耳も、元気無くうな垂れさせている。
「私は…たぶん、お前に貸しを作らせる勘定をしていたのだ。利害関係さえはっきりしていれば、主従の伴った付き合いをするのに便利だから」
「ミリュウ…さん」
「ミリュウでいい。他人行儀に呼び会う仲では無かろう?」
 自分から内面を垣間見せるミリュウに、無意識に尻込みするカムイ。
 そんな様子に気づいてか、ミリュウさ寂しげに微笑む。
「私には、もう…何処にも居る場所がない…から。済まなかった。出ていけというなら、明日にでも荷物を纏める」
「そんな事はッ!」
 怒ったように怒鳴られ、ミリュウは慌てて身動ぎする。
 カムイも自分の大声に驚き、ミリュウの視線から顔を背けた。
「そんな事、思ってる訳ないだろ。家に居たいなら、嫌になるまで居ていいから。………それに、ミリュウ…が飯作ってくれないと、僕とグレイは飢え死にする」
 理屈になっていない脅し文句。
「ぁ…ありがと」
 不意に俯いたミリュウは、膝を抱えて丸くなる。
 苦痛でなくなった部屋の空気が、少しだけ軽い。
 夜泣鳥の求愛の鳴声が、宵闇に浮かぶふたりに促す。
「あ、あのさ」
「あの、ぁ…な、何だ?」
 シンクロしたように同時に声を掛け、そんな様に同じく照れる。
「いや、ミリュウから、いいよ」
「ん…じゃあな、その、居間…借りてていいか?」
「ん? 何で? やっぱり部屋、狭い?」
「そういう事じゃなくて、洗濯してるシーツ乾いてないんだ。その、昼間ので…汚れたから」
 照れながら経緯を述べるミリュウに、カムイは真っ赤に赤面する。
「別に、駄目なら………」
「僕の…所で寝る?」
 かなり激しく動揺していたカムイは、思い切り台詞を短縮して言う。
 ベッドをミリュウに譲るという提案だったのだが、シチュエーション的に、一緒のベッドで夜を過ごさないかという誘い以外の何物でもなかった。
「…ぅん。寝る」
 慌てたカムイが否定する前に、団子状態のミリュウが小さく肯定する。
「だけど、エッチは…」
「しっ、しない。約束する」
 くすっと可愛く微笑したミリュウは、枕を持ってベッドに上がる。
「違う。優しく…シテ欲しい」
「み…ミリュ…ウ」
 壁に後退るカムイを追い詰め、はだけた胸板におでこを預ける。
「一応…経験ないから。手順も解らないけど、教えてくれれば…ちゃんとする」
「ぅ…あ、だけど…」
「側に居て、くれるんだろう…? 独りは………嫌だ、よ」
 縋るように潤んだ瞳に、カムイは我知らず投げ出された身体を抱き締めていた。
 開け放たれた窓から夜風が吹き込み、季節外れの花弁が舞う。
「んん…ぅ。後免…後免ね。あの時、カムイの目も、私と同じだったから………拒むなんて出来なかった。きっと…あなたの気持ち、解るから」
 両の腕に強く縛られたミリュウは、痛みを凌駕する熱い安らぎに切なく呻く。
 指先で顎を差し出され、泣き顔をカムイに晒しだされる。
「ぁ……ん………。んっ…んんぅ!」
 頬を含めた顔中にキスされ、流れの中で仰向けに倒される。
「ふぁ………ひゃ…ぁ」
 動悸の乱れで、切なく呼吸したミリュウに、カムイがそ…っと覆い被さる。
 直接、唇に舌が這う。
 ミリュウの股間に腰を挟ませ、顔を掌で挟んでミリュウを貪る。
 昼間のような獣的な欲情ではなく、恋人にするような愛情の仕草。
 息を荒げるミリュウは、切なく火照ってきた腰を揺すった。
 何か、心に酷く不安を覚え、いじましく顔を逃がそうとする。
 だが、カムイは其れを許さず、粘い液音さえ立てて舌を絡め続ける。
 永遠と、深い口づけだけが、未だ幼いふたりを繋げる。
 カムイの脇腹から背中を往復する震える指先が、次第に熱を込めた愛撫に変わる。
 自分でも覚えていないが、どうやってかカムイの服を剥いてしまっていた。
 白く熱い感触だけが脳裏に残り、所々の記憶が飛んでいる。
 下着の上から、熱く硬い逸物を押しつけられ、自制が途切れて爪を剥いてしまう。
「はぁ…はぁ………」
 カムイは撫で梳いていた指から灰銀髪を流し、ようやく唇を放す。
 舌の奥が怠い。
 キスだけでこれ程の時間を過ごしたのは、初めての経験だった。
「もっと…ぉ………」
 青翡翠色の瞳を潤ませ切ったミリュウが、切なく悶えて続きを催促する。
 濡れた牙が桜色の唇から覗き、壮絶に色っぽい。
 ふたりの混じった唾液が、ミリュウの頬に筋を引いている。
 熱い吐息が首元に掛かり、カムイは呻いて腰を捩る。
 絹布一枚を食い込ませて接触していた性器同士が、擦れた快感で同時に呻く。
 ミリュウの下着は、分泌された愛液で激しく濡れていた。
 キスの途中から、勃起仕切った肉根を断続的に押し込まれてたのだ。
 膣唇に食い込んだ滑々の布切れは、肉根の形そのままだった。
「カムイぃ…やめ………ないでぇ」
「焦らないで。全部、僕に任せて………。望む通りにシテあげる」
 昼間の強姦の罪滅ぼしに、ミリュウが求めるままに続ける心算だった。
「ぅん…うん。カムイぃ…」
「じゃ…脱がすよ」
 小指を噛んだミリュウは、従順にカムイから脱がされていく。
 豊満なウオルフィ種族の牝らしく、綺麗に括れた肉付きの良い裸身が現われる。
 裸身を晒すことに羞恥はないのか、いじらしくカムイを見上げて可愛く促す。
「綺麗…だよ」
「あぅ…あぅん、あうぅん…あうぅん」
 狼のような鳴き声で、快感を訴えるミリュウ。
 弾力の詰まった乳房が揉みしだかれ、それだけでミリュウは身悶えた。
 急速に感度を開発されるミリュウを観察しながら、体中余す所無く責めていく。
「弄る、よ………」
 濡れ濡れのパンティの中に、繊細なカムイの指が潜り込む。
 押し上げられる布が蠢くたびに、ミリュウの甲高い鳴き声が上がる。
 新しく溢れた愛液に指の間がべとべとに塗れ、カムイは陰毛が見え隠れする鄙猥なミリュウの恥丘を眺めた。
 ミリュウの腰が反り返り、何度も何度も筋すじが浮かぶ。
「もぅ、もぅ…お願…お願いぃ………死んじゃうぅ」
「うん…本当に、いい?」
 尻尾をひくひくさせるミリュウは、切なく愛しくカムイを見詰めて繰り返し頷く。
「カムイじゃなきゃ…嫌ぁ」
「え…っ?」
「ぃ…れてぇ………」
 苦しそうな仕草に、カムイは下着の紐を解く。
 ミリュウもカムイの股間に手を差し伸べ、反り返った逸物を両掌に納める。
「おっきぃ…おっきぃよぉ」
 ぎこちなく扱きながら、自分を犯したそれの感触を覚え込む。
 嫌いじゃない。
 カムイの物なら尚更に。
 そんな心の動きに、ミリュウ自身気づいていない。
「後免ね…ちっちゃく出来ないんだ。始め程、痛くないはずだし…すぐ、慣れるよ」
「んぅ…信じてる」
 言いながら不安げに瞳を潤ませるミリュウの手を取り、きつく指を組み合わせる。
 ミリュウの臀部の下に腰を入れ、股間を上向かせて挿入の姿勢を取る。
 あてがわれた肉根の感触に、一度だけミリュウが身震いする。
「大きく…深呼吸して」
「あぅ…はあ…ぅ…ひゅ………」
「いい子だ」
 健気に言い付けを守るミリュウに微笑む。
 そして頃合を見計う。
 ミリュウが深く息を吸い込んでいる時に、腰を入れて挿入した。
 横隔膜が張り、余分な力が抜けていたお陰で、ほとんど抵抗もなく貫かれる。
 ぷちゅ…ッと、膣孔に滲み溜まっていた愛液が吹き零れる。
「きゃううぅ…ッ…ッ」
「くっ…凄ぃ、きつくて………」
 咄嗟に息を止めて鳴いたミリュウの胎内で、括約筋が凝縮して肉根を搾る。
 出し入れも出来ない程に絞まり続けるが、肉根の半ば程まで、ミリュウの柔らかい胎内へと埋没していた。
「きゅ…ひゃ…こ、恐い」
 股間に杭を撃ち込まれたミリュウが、痺れて感覚の消えた下肢に怯えた。
 初めての時のような激痛はないが、火傷しそうに熱い異物が胎内に蠢いている。
 とうとう我慢できず、深くカムイの背中に爪痕を刻む。
「安心して。僕が、側に居るから。大丈夫…後、少しだからね」
 可愛く涙ぐむミリュウが、カムイの胸に縋って健気に頷く。
「ぅん…ぅん。痛く………ない」
「じゃ…また、深呼吸初めて」
 何とか呼吸を整えようとするが、焦っているのか切ない吐息を繰り返す。
「俺を信じて………」
「あぅ、うん………信じる」
 ほやぁ…とカムイを抱き締めたミリュウが、おでこを擦り付けて甘える。
「貴方の事…信じる…よ」
 抱き合った影がひとつに交わり、時の経過が止まる。
 やがて、何方からとも無く、接合部を動かし始める。
 繊細で優しい動きで貪られていたミリュウだったが、子宮の奥で疼く熱い衝動に、ぎこちなくも本能的な動きで淫らに蠢かす。
 鈍く苛んでいた鈍痛も無くなると、嬌声を漏らして大胆に腰を振ってくる。
 欲情に瞳を潤ませ、色っぽく、子供っぽく鼻を鳴らす。
 カムイの蠢く腰に足と手を絡め、接合を深く求めるように引き寄せる。
 尻尾がカムイの臀部を、幾度も叩く。
 性技に関して言えば、ミリュウは飲込みの早い優等生だった。
 下に組み敷かれながらも、カムイを含んだ尾骨を小刻みに突き上げる。
 カムイが巨大な肉根を目一杯胎内に埋め、いらうように腰を回転させると、一緒に腰を擦り着けてくる。
 挙げ句には、膣筋を痙攣させて搾る事まで習得する。
「あーぁ…ッ、あーぁ…ッ………ぁ…きゅうー…ぅ」
「んぁ…くぅッ! はぁ………はぁ…はぁ…」
 カムイは腰を強く押し出して仰け反り、欲情の開放に鳴き呻く。
 腰を三日月に激しく逸らせたミリュウも、産まれて初めての絶頂に身悶え続ける。
 暴力的な勢いで射ち出される精液が、繰り返し子宮の奥を射抜く。
 ミリュウは胎内に流し込まれる熱い液体に、ぞくぞく…っとして震える。
 射精………されてる。
 子種………植え付けられてる。
 小耳に挟んだだけの性知識で、的確に自分の状況を判断する。
 真っ白に虚脱した浮遊感の中、膣に埋め込まれた肉根が脈打って液を噴出している。
 素直に反応し続ける身体は、カムイの絞められる臀部を抱き締めていた。
 なのに…どうして、こんなに、気持ち………いい。
 避妊具や、不妊術が世に出回っている理由が理解できたミリュウだった。
 確かに不潔で、非道徳的な行為には違いなかったが、何を捨ててもいいような快感が肉体総てに至福を与える。
「あーぁ…ぅ………」
「………これが、セックス…だよ」
 魂を抜かれたように骸を差し出すミリュウの上で、カムイは気怠く呟き教える。
「ふぁ…きゃ……ぅ」
 呻きながら腰を上げたカムイに、一体化していた内蔵器官を抜かれるミリュウは切なく身悶えた。
 粘着度の高い精液が、幾本も糸を伸ばす。
 性器同士が、離れるのを嫌がっているように。
 そして、ミリュウ自身も嫌だった。
 恥じらって指を喰わえ、人差し指でカムイの胸を引っ掻く。
「ん…後免。どっか痛かった?」
「も…もっと………シテ」
 放れる心算のカムイの腰を抱え、事の続きをいじましく催促する。
「抜いちゃ………嫌。もっと、一緒になって居たい…よ」
「でも、初めてで、そんなハードじゃ…」
「違ぅ…本当に痛くないよ………。凄く…良かったの」
 怯えるように顔を背け、カムイの反応を待つ。
「淫らな娘………嫌い? ………我が侭?」
「可愛いよ…お姫様」
 震えるミリュウの顔を上げさせ、了解の印に口づけを与えた。





 其の夜。
 カムイは改めて、ウオルフィ種族のタフさ加減を思い知らされる事となる。
 ミリュウに求められるまま、彼女の肉体を様々な格好で抱き続ける。
 後背位で獣のように悶え狂い、絶頂にカムイを押し倒して噛み付く。
 座位で幾度も泣き縋り、上体が虚脱してからも腰の動きをせがむ。
 行為を重ねれば重ねる程に、ミリュウの性器は次第にその持ち味を開花させていく。
 胎内射精をねだるミリュウの方から、射精の瞬間に思い切り膣を搾ったりもした。
 流石に射精に至までの間隔は長引くが、ミリュウの胎内に納まりっぱなしの肉根に萎える兆候は微塵もない。
 永遠に続くかのような底抜けの快感に、カムイは逆に責められながら意識を飛ばす。
 女性上位で上に跨がったミリュウが、カムイの頬を撫でる。
 それでも、腰はしっかりと肉根を含んで蠢いていた。
「カムイぃ…もう、駄目………?」
「うんん…平気。このまま、シよ」
 ミリュウは印象と違い、徹底的に男に尽くすタイプだった。
 睦み事でさえも、相手の快楽まで考えて奉仕しようとする。
 ようやく子宮を疼かせる衝動の治まったミリュウは、力尽きてカムイに垂れ掛かる。
 繋がったままの肉唇から、大量にねだり飲ませて貰った精液が滲みだす。
「どぉ…? 少しは満足した?」
「ぅん。後免ね…6回も付き合わせて」
 流石に処女にしては度の外れた回数に、ミリュウは改めて赤面する。
 其れに、6度とはカムイが精を漏らした回数で、自分はもっと達しまくった。
 今まで来た事が無かったが、初めての発情期に重なったのかもしれない。
「じゃ…寝ようか」
「うん…」
 放れたがらないミリュウを乗せたまま、自分達に毛布を掛けた。
 これ以上ない満足感に身体を浸しながら、絹糸のようなミリュウの髪を撫で梳く。
 胸の奥に、小さな罪悪感が疼いた。
 其れは、彼の義妹の思いを裏切った後ろめたさ。
 そして、無垢な少女を利用している罪の意識。
「カムイ…」
「えっ?」
「私は………後悔していないから」
 最後に特上の微笑みを見せたミリュウは、カムイの胸板に縋って眠りに就く。
 それは、側に居てくれる者を見付けた、子猫の微笑み。
「そう…だね。ボクも君の気持ち解るよ。きっと、解り過ぎるから………辛い」
 シーツに金銀の絹糸が零れた中、カムイは但遠くを眺めていた。









Presented by
"竜園"



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