竜園
Original Novel

- 銀のHYDRA -




第X章  金の狼と銀の人形








 城下町見るの、初めてだ☆」
 カムイと腕を組んだミリュウは、嬉しそうに周囲を見回す。
 腿の切れ込んだ着物から、元気に動く尻尾が覗いている。
 胸元も大きくはだけた衣服に、周囲の男達の視線が集まる。
 無論、本人は微塵もその気がない。
 ミリュウの注意の総ては、愛しい旦那様に向けられている。
「ん…っと、ミリュウさん、家から出た事なかった?」
 学師のような肩掛けに、ターバンを巻いた外出衣装のカムイが、必要以上に寄り添うミリュウを持て余しながら尋ねた。
「あと、王都に来た時とか」
「呼び捨ててくれ。ふたりだけの時は、ミリュウが…いい」
 真剣な瞳にじ…っと見詰められ、カムイは無意識に引く。
 てらいも駆け引きもない、真直ぐな態度が語りかけてくる。
 ミリュウは顔を伏せて頬を掻くカムイの腕を、心無し強く胸に抱く。
「………王都にきた時は夕方だった。カムイの家は外れにあるから、繁華街には出た事がないのだ」
「じゃ、メインストリートに行こうか? ボクも余り詳しくないけどね」
「カムイはこの街で育ったんじゃないのか?」
 無邪気な何気ないミリュウの言葉に、カムイは皮肉げに苦笑した。
 遮光の入った眼鏡を掛けたカムイは、紅の瞳を隠す。
「………人の集まる場所には、行かないようにしてるから」
「何故だ?」
 きょとんとしたミリュウは、不思議そうにカムイの顔を覗く。
 全く悪意のない、本気のミリュウの疑問に、カムイは虚を突かれる。
 子供のように純粋に見入ってくるミリュウに、自然と笑いがこみあがった。
「な、何故笑う?」
 ちょっと膨れるミリュウに、更にカムイはくすくす笑ってしまう。
「くす…後免。人込み、好きじゃないんだ」
「ちょっと気分を害したぞ。屋台のジュースを奢って貰う」
 むくれたミリュウは、街路の屋台を指差す。
 優しく微笑んだカムイは、決して重くない財布を取り出す。
「はいはい、お姫様。何味?」
「苺」
 木彫りの器に、冷たい苺の果実汁が注がれる。
 屋台のジュースの入ったボトルは、錬金術の氷室によって低温が作られている。
 魔石の一種である氷魔石の紋章だ。
 そういった類が未経験のミリュウは、心底嬉しそうにはしゃぐ。
 しばし屋台巡りをして街の喧騒を楽しむと、ストリートから外れた場所にある職人街へと足を運んだ。
 物珍しげに周囲を見回すミリュウを連れ、顔馴染みの武器屋に訪れる。
「いらっしゃい。売りかい? 買いかい?」
「お久しぶりです。今日は買物に」
 頭の禿げた店主が、変装をしたカムイを見抜いて声をかける。
 武器屋『戦乙女』は、ファクナシオ城下町に古くから店を構える老舗だった。
 親父は昔、カムイの継母メイア=レイロードと一緒に旅をした事もある戦士だった。
 赤子の頃からカムイを知っている親父は、亜人、それも半天神であるカムイを差別しない数少ない人間のひとりだった。
「この間の魔封具な、割りと評判いいぞ。出力が安定してて、暴走もしないそうだ」
 カムイは生活費稼ぎに、魔封具を売りに出していた。
 無論、製作者名を伏せて売りに出した其れ等は、顧客の評判の良い逸品だった。
「どうだ? 店の専属連金術師になる話、考え直さんか?」
「駄目ですよ。僕が専属なんて羽目になったら、お店潰れますよ? 只でさえ、ぼろい店構えなんですから」
「たくっ、餓鬼が余計な心配するんじゃねぇ」
 含み笑いするカムイに、親父は思わず突っ込んでしまう。
 確かにカムイが専属になったとして、公になれば店が潰れるのは間違いない。
 呪われた落し子として、カムイの存在は無名ではなかった。
 親父はカムイが自分が疎まれている事実を知り、あえて親しい者達から距離を置いている事を知っていた。
 カムイの事を自分の息子同様に思っているだけに、そんな態度が哀れでならない。
「そういや、スゥ嬢ちゃん騎士叙勲なったそうじゃねぇか。祝いの言葉、言っといてくれよな」
「えぇ、伝えておきます」
 心無し返事を詰まらせたカムイは、寂しげに頷く。
 義妹とは、ここしばらく顔を合わせてはいない。
「早いもんだな。もう、18歳か? あのお転婆娘が、騎士様になるとはねぇ」
 辺境で名の知られた勇者であった彼等が冒険を止めてファクナシオに落ち着いたのは、メイア司祭がスゥを身篭もったからであった。
 今は亡きメイアの夫と、彼ガバルディ、宮廷連金術師になっているレヴィ。
 消息を消したウオルフィ族を含めた仲間達が、親父の脳裏に浮かんだ。
「もう、スゥも一人前の大人です。変わらないのは………ボクだけですね」
 話に入っていけなくて戸惑っていたミリュウだったが、今にも泣きそうに見えたカムイの手をきゅ…っと握る。
「ところで、そこの別嬪さんは誰だい? グレイ坊のコレかい」
 親父は小指を立てて、ミリュウに問い掛けた。
 苦笑して説明しかけたカムイを押さえ、ミリュウが前に出てて胸を張って宣言する。
「私の名前はミリュウ。カムイのお嫁さんだ」
「み、ミリュウさん…?」
「誤解無きよう願う。私が愛しているのは、グレイではなくカムイだ」
 何時に無くはっきり言い切ったミリュウに、さすがに言葉を失うふたり。
 しばしの沈黙の後、親父は堰を切ったように大笑いした。
「な、何が可笑しい!」
「いや、気に入ったよ。気の強いお嬢ちゃん。そうかい、カムイ坊に惚れたんかい」
「………はぁ」
 顔を覆ったカムイは、赤面して溜息を吐く。
 もしや、行く先々でお嫁さん宣言をする心算なのだろうか。
「つう事は、お嬢ちゃんの武器を見繕いにきたって訳だな?」
「まぁ、そうゆう事で」
「不愉快だぞ、カムイ。帰ろう」
「よっしゃ、結婚祝いに好きな武器をくれてやろう」
 カムイを引っ張って踵を返したミリュウだったが、結婚祝いという台詞に反応した。
 強引に契りを結んで、結婚式など挙げていない。
 だが、ミリュウも女として、誰かに祝って貰いたい気持ちがあった。
 ミリュウはカムイを上目遣いで見詰め、おねだりする仕草で尻尾を振る。
「………お金もないし。好意に甘えよっか?」
「あうんっ」





 軽装の鎧一式と、迷宮探険道具を貰ったカムイ達は、夕暮の街を宛てなく彷徨った。
 剣術を学んでいたミリュウは、戦刀を愛器に選んだ。
 何でも、実家に食客として滞在していたお侍に、実戦剣術を教えて貰ったらしい。
 切った貼ったの実戦を経験した事はないが、侍がミリュウの素質に惚れ込んだ程の技術を身につけたらしい。
 ふたりは城下町を横切る運河の畔に座って、パイ切れを食べる。
「良い人だったぞ」
「また、ミリュウってば」
 機嫌良くパイを頬張るミリュウに、カムイは苦笑を返す。
「だって………私達をお似合いだって、言ってくれた」
「親父さん、ボクの父親みたいな人だから。勝手に思ってるだけだけど…ね」
 食べかけのパイを魚の餌に投げ込んだカムイは、紅の夕陽を眺めた。
 伊達眼鏡を外したカムイの横顔に、ミリュウは胸が痛くなる程に見惚れた。
 紅に染まった銀髪が、川風にそよぐ。
 今更ながら、ミリュウはカムイの事を何一つ知らない自分に気づく。
 カムイが自分の内面を隠している事も、ミリュウは何時も感じていた。
 其の事が、ミリュウには悲しかった。
 聞けば教えてくれるかもしれないが、踏み込む勇気がミリュウにはなかった。
 カムイの側に居られる幸せな時間を、壊してしまいそうな気がしたから。
「少し、風が冷えてきたね………帰ろうか?」
「嫌だ」
「え…?」
 カムイが振り返ると、俯いたミリュウが肩にしな垂れてきた。
 綺麗な形の獣耳が、不安げに伏せている。
「………そんな悲しい顔は嫌だよ」
 微かに身動いだカムイは、反射的に顔を押さえる。
 だが、ミリュウが切ない瞳で見詰めているのに気づいて、微笑みを浮かべた。
「平気。大丈夫だから、俺…強いから」
「嘘だ…」
 ミリュウはカムイの胸に顔を埋め、微かに爪を立てる。
「黙っててもいい。何も聞かないから………嘘だけはつかないで」
 ミリュウにとって胸が軋む長い時間の後、カムイは小さく頷く。
 ほんの僅かだけ、カムイの心の内側に入れたミリュウは、込み上がる安堵に涙を零してしまった。
 自分が誰かをこんなにも慕えた事を、密かに誇らしくさえ思えた。
 他の誰でもない、カムイを好きなのに偽りはないから。
 優しく髪を撫でられて、腕に抱かれている。
「ミリュウ………?」
「シテ…くれ」
 陽は沈み、美しい満月が水面に映っていた。
 運河の散歩道は、恋人たちの有名なデートスポットだ。
 薄暗い時間帯になれば、街灯の下で愛を囁く恋人達が集いだす。
 より大胆な男女は、青姦に耽る事も珍しくない。
「でも、ここじゃ」
 流石に尻込みするカムイを押し倒し、身体を重ねるミリュウ。
 決して嫌がっていないカムイに、甘いキスを繰り返し送る。
「今、欲しい………。皆もシテる、カムイも…」
「う…ぁ」
「おっきく…なってる」
 ズボンを突っ張らせるカムイの股間を愛撫するミリュウは、帯を解いて圧迫されていた勃起物を開放してやる。
 毎日カムイと脱がし合いをしているだけに、動作に戸惑いはない。
 カムイと舌を絡めながら、直立した肉根に優しく指を巻き付かせる。
 硬い弾力のある其れを握り、上下に擦って悦びを与えた。
 カムイが最も感じるツボを、ミリュウは経験から把握していた。
 握り拳三つ分はある肉根は、ミリュウの指の中で快楽痙攣をする。
「ミリュウ…っ、凄い…気持ちいい。上手く………なったね」
「嬉しい。喜んで…くれた?」
 素直に誉められて相好を崩したミリュウは、カムイの隣に寝そべって、両手で肉根を扱き愛撫した。
 カムイもミリュウに応え、着物をはだけさせる。
 されるままのミリュウの後垂れを捲り、可愛いショーツに包まれたお尻を剥いた。
「柔らかくて…絞まってて、可愛いよ…ミリュウのお尻」
 同じように両手で臀部の肉を揉むカムイは、可愛く腰を捩るミリュウに囁く。
 ショーツの横紐を解き、ミリュウをノーパンにさせる。
 ふさふさした柔らかい陰毛を掻き分けて、熱く湿った女性器を撫で擦る。
 ミリュウは愛しいカムイの指の感触に、可愛く獣のように鳴く。
「きゅ…きゅう、はぅ………ひゃ…ぁ」
「とろ…っとしたね」
 興奮に盛り上がったミリュウの女陰が割れ、口を開いた膣口から濃度の粘った愛液が零れ滴った。
 何時に無く羞恥に震えるミリュウが、本格的な行為への移行を切望する。
 言葉にしてカムイにお願いできないのか、潤んだ瞳で縋り見る。
「上においで………。誰かに覗かれないように、お尻だけ上げて」
「ぅん…乗る」
 何とも可愛らしく頷いたミリュウは、カムイの腰に跨がる。
 背中を抱き寄せられ、臀部だけが夜空に掲げられた。
 スカートを履いているので、結合部分は外気に触れない。
 カムイはミリュウのスカートの下で直接腰を押さえ、挿入のサポートをしてあげる。
「さ…ゆっくりおいで」
「ぅん…あぅん」
 肉根が滑った、熱い粘膜に包まれていく。
 完全に溶き解されていないミリュウの膣は、まだ硬い感じがした。
 カムイにとっては快楽を感じるきつさだが、ミリュウにとっては痛みを伴っているかもしれない。
 カムイは、目の前のミリュウの表情を、気遣わしげに見詰めた。
 陶酔と苦痛、快感に変わるミリュウの顔は、カムイにも愛しおさを呼び起こした。
 そんな自分の心の動きに驚いたカムイは、最後まで挿入を果たして、息も絶え絶えのミリュウを強く抱き締めてしまった。
「……だよ」
「ぁ…ぅ? きゅ…かむい…カムイぃ」
 ちょっと失神しかけ、陶酔に身を任せていたミリュウは、言葉を聞き取れなかった。
 だが、カムイは優しく微笑み、ミリュウの尻を揉みながら膣を刺激した。
 ミリュウもセックスの快楽に、引き込まれてしまう。
 可愛く鼻で鳴くミリュウは、お尻だけを蠢かして肉根の感触を貪った。
 カムイは性器の結合運動をミリュウに任せ、月を見上げて悦楽に酔った。
 健気にお尻を擦り付けるミリュウの背中を抱き、柔らかいプラチナブロンドと可愛い獣耳を弄ってあげる。
 ミリュウは最高に幸せな瞬間を味わいながら、運河の畔で絶頂に達した。
「俺も…イクよ、ミリュウ………ぅ」
「いい…イッて、思い切り………膣に射精シテ」
 カムイの為に腰を蠢かし続けていたミリュウが、色っぽく喘ぐカムイを抱き締めた。
 ビク…っと膣内の肉根が痙攣し、熱い迸しりが流し込まれる。
 く…っと唇を噛み締めたミリュウは、胎内奥深くにどぷ…どぷ…っと射精される。
 ミリュウは子宮の袋にも、どぷゅ…っと流れ込んだ精液の滑りを感じていた。
 子宮はミリュウの興奮の深さを物語るように、精液を受け入れるために目一杯隆起して膨らんでいた。
 カムイのザーメンは、どぶゅどぶゅ…っと勢いよく子宮に流入していく。
 ミリュウは震えながら、カムイの胸に縋った。
 洗っても無駄なぐらい奥に、カムイの子種が…いっぱい。
「旦那様ぁ…好き」
「俺も…ミリュウ」
 カムイはしっかりとミリュウの腰を抱き締め、子宮に子種を流し続けた。
 ミリュウに拒否する気持ちは全然無かった。
 其れどころか、しっかりと流し込まれて幸せを感じてしまう。
「今夜は、ずっと俺の部屋においで…ね。ミリュウの事、可愛がってあげたいよ」
「ぁ…あぅ…はぅ」
「自由にしてあげない。ミリュウのお尻も…身体も…全部、俺の物だよ」
 痛い程抱き締められたミリュウは、兎のように震えて頷く。
 嫌だなんて、言えるはずが無い。
 ずっと、望んでいた言葉。
 肉根を引き抜かれた感触に、ミリュウは泣きそうに可愛く喘いだ。
「やぁ…嫌ぁ」
 腰が抜けてへたり込んだミリュウの股間から、新鮮なザーメンが溢れた。
 何時もより液量の多い精液が、草土にびちょびちょに溜まる。
「いやー…ぁ………。出ちゃ嫌ぁ」
 自分でも良く解らない衝動だったが、ミリュウは反射的に股間を押さえた。
 嫌々しながら、糸を引いて漏れるカムイのザーメンを膣に封じようとする。
 カムイはそんなミリュウの仕草が、震える程に淫らで可愛く感じられた。
 そ…っと白濁した、粘ついている指を離させる。
「がっかりしないで。すぐに、俺の精液で一杯にしてあげる」
「ぁ…はぃ」
 何時になく野性的で、エッチなカムイの精悍な表情に、ミリュウは従順に頷いた。
「たっぷりとね………気絶するまで、エッチしよね」
「はぃ…旦那様ぁ」





 居間に陣取ったフィズとローンは、氷室から勝手に出した麦酒を飲んでいた。
 各々風呂を浴びてグレイの体液を洗い流し、カムイの作った蓄音機から流行の詩を大音量で響かせている。
「おまいらなー…、いい加減帰れ」
「嫌だ」
「嫌です」
 戸口に立ち尽くしたグレイの呆れた言葉に、同時にきっぱりと否定する。
「何でだよぉ。カムイとミリュウさん、帰ってきちまうだろ?」
「んだから、カムイさんに聞いときたいことがあんだよ。スゥの事とか、色々」
 豪快に麦酒を飲むフィズが、据わった目で振り返る。
「あの女と同棲してんのがマジなら、言い訳して貰わねぇとサ。スゥを裏切るみてぇな行為は許せねぇぜ。事と次第によっちゃあ、スゥにばらす」
「ばっ、馬鹿言ってんじゃねぇ!」
「そうですわねぇ。スゥ自身に気持ちの整理をつけさせてあげるべきですわ」
 ザ…っと青ざめたグレイに、ローンも言葉を接ぐ。
 頬に指を当て、罪の無い笑顔で恐ろしい事を言う。
「これではスゥがピエロです。スゥは私達の、大切な親友なのですから」
「………別に、愛人のひとりやふたり居ても、いいじゃん」
 不用心なグレイの一言に、ふたりの険悪な視線が突き刺さる。
 グレイは尻尾を縮めて、後じ去る。
「へ…ぇ、ひとりや、ふたりねぇ?」
「私達も、グレイ様の…情婦ですものね」
 造り笑みを浮かべたグレイは、冷汗を流して言い訳を爆考する。
「情婦だなんて、んな事思った事ねぇって」
「早い話が娼婦だよな。俺等、無料だし…グレイが発情した時に、都合のいい穴だよ」
「ばっ…!」
 投げ遣りに呟いたフィズに、グレイは本気で怒った。
「本気で俺が、んな事考えてると思ってんのか!」
「痛いよ! 放せ、馬鹿野郎」
 フィズの手首を掴んだグレイは、触れ合うほど間近に顔を突き付ける。
「俺はッ、お前も、ローンにも惚れてるから抱くんだ! じゃなきゃ…無理なんざ、言えるわきゃ………ねーだろ」
 言葉尻を窄ませたグレイは、俯いて激しく赤面してしまう。
 手を押さえられたままのフィズは、自分の言葉が酷くグレイを傷つけた事を知った。
 同じ事を感じがえてしまっていたローンも、反省してしゅんとうな垂れる。
「でも………グレイ。都合のいい女は…辛い」
「いずれ、グレイ様から捨てられる身と解っていて、遊ばれていると思うなと仰るんですか………?」
 グレイの尻尾を握ったローンも、我慢していた思いを吐露する。
「終わりの見えている恋で満足できる程………強く無いです」
「俺も、やっぱ嫌だよ。最初はそれでいい、と思おうとした。けど、嫌だ…やだよ、グレイ。俺、他の男の物になるのは嫌なんだ」
 後腐れない関係を望んでいたグレイは、言葉に詰まる。
 冷たく突き放す事が出来ないほど、ふたりに情が移ってしまっていた。
 それに、健気なふたりを可愛いと思えてしまう。
 確かに、妾妻として嫁入りしたふたりが、無数の使用人から輪姦されている場面を思い描くと、胸が焼けそうに嫉妬しちまう。
「グレイ様に合う前なら、家の道具でも良かった………けれど、もぅ…今は」
「俺達は道具でも、物でもない。………助けてよ、グレイぃ」
 初めて弱音を吐いたフィズが、グレイの胸板に顔を埋めた。
 ローンにも話していなかったが、先日フィズは嫁入り先に呼び出されてお披露目を受けた。
 縛られ、媚薬を嗅がされた状態で、先を争う使用人達に尻を玩ばれ続けた。
 まず始めに、夫となる十歳の御当主から凌辱を受けた。
 グレイ以外に初めて精液を膣に流し込まれ、フィズは涙を抑えられなかった。
 豪華なリビングには常に順番待ちの男達が群がり、複数でのレイプは繰り返された。
 膣にも、初めてだった肛門にも、全身に臭い精液が流れた。
 朝からの凌辱は、翌朝まで休みなく続けられた。
 疲れ果て失神したフィズは、精液塗れのまま実家に連れ戻された。
 父親も、弟達も、皆当然という顔でフィズを無視した。
 その時には、涙は枯れはてていた。
 来週には、強制的に避妊手術をされる。
 ただ、ザーメンを流し込まれるだけの、性欲処理用の肉人形にされるのだ。
「フィズ………」
 がたがたと震えるフィズの身体を抱き締めたグレイは、とある決心を固めた。
 振り返り、涙を零すローンも胸に掻き抱く。
「お前等…俺ん所に来る気、あるか………?」
「ぁ…?」
「ぇ…?」
 ふたりは反射的に顔を上げる。
 ガリガリと頭を掻いたグレイは、灰色毛を薄ピンクに染めて天井を仰ぐ。
 彼女達はある予感を抱きながら、酷く真剣にグレイを見詰める。
 暫らく奇妙な声で唸っていたグレイだったが、極限までマジな凝視に気づいて尻込みしてしまう。
「あ、あのヨ…俺、将来って家督継ぐ気ないし。明日食う飯もねぇ程、貧乏だし。甲斐性も全然ねぇし。それでもよきゃ、サ………その、あ…ぁぁ」
「………うぉル?」
「何してるかって聞かれてもサ」
 まったく予想していなかった背後からの声に、三人は硬直した。
「わゥ、グルル…きゅ?」
「したっけ、しょうがないよ。大目にピザ買ってきて、正解だったでしょ?」
「ガゥ…?」
「違う違う。この子達はぁ、グレイの恋人」
 のんびりとした会話がなされ、告白を邪魔されたグレイは自然と安堵の溜息を吐く。
 正反対にフィズとローンは、遣場の無い怒りにうなじを逆立たせた。
「か、カムイさんの大馬鹿野郎…ッ」
 拳を握り締めたフィズは、小さな声に怨念を込めて呟いた。
 フィズは悔しさに潤んだ視線で、背後を剣呑に睨んだ。
 だが、戸口に立っていたふたつの人影に、びくっとして仰け反ってしまう。
 同時に振り返ったグレイとローンも、フィズと同じ反応を示した。
「カ…カムイと、ミリュウさん…か?」
 唖然としたグレイの言葉に、カムイはクス…っと笑って、ミリュウの鬣を撫でた。
 うなじから背中までの獣毛を撫でられ、心地良さげに喉を鳴らすミリュウ。
 ミリュウは大きな一匹の、完全な狼に変身していた。
 獣人種でも特に純潔の濃い者は、完全な獣に変化する事が可能だった。
 獣神の血と月の霊力が、体細胞の変化を促して力を与える。
 実はミリュウ本人も、獣化したのは初経験だった。
 とあるショックで偶然獣化してしまい、元に戻れず難儀している。
「ああ、それは大丈夫。月が沈めば…って、朝になれば獣化も解けるはずだけど」
 勇者として名声を博した祖父が、同じく獣化出来るほど獣神の血が濃かった。
 獣化の出来ないグレイだったが、話だけは聞き及んでいた。
「ガウ」
「良かったね、ミリュウさん。心配する程の事じゃないってサ」
 カムイの慰めに、ミリュウは思い切り落ち込んだ。
 折角、カムイが積極的に可愛がってくれるチャンスだったのに、狼の姿では流石に抱いてもらえない。
 哀れっぽく鳴いたミリュウは、尻尾をうな垂れさせた。
 カムイはミリュウの首輪に指を入れ、喉をくすぐって慰める。
 夜風で大分乾いたとはいえ、まだ少し湿っていた。
「んで、おまいサ。………眼鏡どうしたん?」
「え? …ああ」
 反射的に顔を覆ったカムイは、苦笑いして濡れた前髪を掻き上げた。
「水底かな。実はサ。ミリュウさんと一緒に運河におっこちちゃって。ミリュウさんはミリュウさんで獣化しちゃうし、吃驚したよ」
 屈託なく微笑んだカムイは、銀細工のような髪も解けて、全くの素顔になっていた。
 隣に金銀の人狼を従えたその姿は、神殿のリレーフのTシーンのようだった。
 水も滴る良い男、などという言葉も超越した美貌の美しさだった。
 フィズとローンは愚か、グレイまでもカムイの笑みに魅せられた。
 だがそれは、触れれば壊れそうな、不可侵さを感じさせる。
 ガラスの薄皮で作られた、仮面のように。
「ガゥ、グルルっ」
 それに気づいたミリュウは、惚けた三人組に不快げに唸った。
 逸早く我に返ったローンが、慌てて見当違いな挨拶をかました。
「あ、あー…今晩わ、です。カムイさん。えー、どうもお邪魔してしまいまして」
「後免ね。ちょっとミリュウさん、晩ご飯の準備出来なくって。代わりにピザ買ってきたから、食べるでしょ?」
「あ、はい。ピザ、好きです」
「ボク達、お風呂浴びてくるから。食事の準備しててくれると嬉しいな」
 Lサイズのピザ三枚をテーブルに置くと、ミリュウとカムイは風呂場に消えた。
「ぁ…明太子味。新製品だ」
 しばしの沈黙の後、鼻を引くつかせたグレイが呟く。
「何と無く解ったぜ。………スゥの理想の高い訳」
「そう…ですわね。あの方がお兄様なら、美的センス不感症にもなります」
「はぁ………だろ?」
 頭を振ったり小突いたりしているふたりに、グレイは諦めの溜息を吐いたのだった。





 結局、フィズとローンの二人は外泊する事になった。
 ミリュウがカムイの所に出張して空いた部屋を、寝所に譲られていた。
「別にグレイの部屋でも構わないんだけど?」
 くすっと悪戯っぽく笑んだカムイは、ミリュウ狼を連れて早々に寝入った。
 認めたくはなかったが、カムイの美貌に性的興奮してしまったふたりは、其々グレイに一回ずつ抱かれて昂ぶりを沈めた。
 さて、翌日。
 陽も昇り切らぬ早朝。
 フィズとローンは、カムイの部屋の扉にへばりついていた。
 ごちゃついた部屋のベッド上では、今まさに愛の営みが始まっていた。
 人型に戻ったミリュウは、カムイに跨がって甘えるように口づけを求める。
 獣化から戻ったミリュウは、もちろん全裸だ。
 暗視の効くローンは、同性から見ても綺麗な裸に密かに嫉妬したりする。
「さぁ…始まったぜ。マジに恋人なんだな、あのふたりサ」
「そうですわね。はぁ………スゥに何と言ったら」
 足音を消して立ち去りかけたローンの尻尾が、不意に引かれる。
「フィズ?」
「あ、あのヨ。も…ちっと観察してかね? 興味無いか、他人のセックスしてるとこ」
「もぅ、マナーに反しますわよ」
「いいじゃん。そだ、お目覚めのキスかもしんねーじゃん? やっぱ、最後まで見てねぇとさぁ」
「それは………そうかもしれないですわ」
 元々、思い切り興味の在ったローンは、素直に論破される。
 その証拠に、尻尾が興味深げに揺れている。
 僅かだけ開けられた扉に、再び覗き魔達が詰め寄る。
 可愛い声で鳴くミリュウは、腰を捩って尻尾を旗めかせている。
 下からカムイに乳房を弄くられながら、小指を噛んだ。
「まだまだ………無邪気なスキンシップかも」
「黙って………いよいよ挿入タイムですわ」
「くわぁ…いきなし、騎乗位でかますかぁ」
 激しくドキドキする二人は、食い入るようにカムイ達を見詰める。
 もはや、本来の目的は、脳裏から抜け落ちていた。
 後手にまさぐっているミリュウの股下に、カムイの隆起した男根が顕になった。
 フィズとローンは、怯えにも似た感嘆の溜息を吐く。
「で………っけぇ」
「な、何ですの? あのサイズ。こ、壊れちゃいますわよ?」
「半端じゃねぇぜ…グレイよか、一回りはでけぇ」
 言いながら、思わず股間を押さえてしまうふたり。
 覗かれている事を知らぬミリュウは、ようやく捜し当てた肉根を掴む。
 優しく見守るカムイを確認すると、安心して腰を降ろしていく。
 充分に潤ったミリュウの肉唇に、ぬる…っと先端が沈む。
 カムイも太股を抱え、震えるミリュウをサポートする。
「ひゃ…」
「ひゃ…」
 ミリュウとローンの喘ぎ声が唱和した。
「ま、マジか…マジで入んのか」
「そんな、嘘です。絶対無理ですぅ」
 最早、ふたりの視線は結合部に釘づけだった。
 ゆっくり、ゆっくりと勃起物がミリュウの尻に埋まっていく。
 血管の浮いた肉杭に、愛液の雫がつつ…っと絡んだ。
「本気で感じてます。………あの人」
「うわうわうわ…は、入った…よ」
「凄ぃ…イッたみたいです。あんなの挿入されたら、堪らないでしょうね」
 実際、堪らなかったミリュウは、落ち着くまでカムイに優しく抱いてもらう。
「ミリュウ…大丈夫?」
「ぅん…平気。動いても………いい?」
「動いてご覧」
 従順に頷いたミリュウは、く…っと臀部を掲げる。
 蜜に塗れた肉根がぬぬ…ッと吐き出され、ふたりは熱い安堵の息を吐く。
 だが、次の瞬間には、粘膜を巻返しながら挿入された。
「し、シテる。セックスしてるぜ」
「はぁ…はぁ………凄過ぎますぅ。あんなので掻き回されたら、死んじゃいますぅ」
「ローンっ…オナニーなんざ、すんじゃねぇよ」
 虚ろな瞳をしたローンは、スカートを捲って自慰を始める。
 フィズも、性器の疼きに腰を捩る。
「フィズ…我慢しないで、一緒に」
「ば、馬鹿」
 ベッドの上では、指を噛み締めたミリュウが、激しく腰を使っていた。
 ベッドの軋みは、床にまで振動を伝える。
 滑々と激しい出し入れの続く融合地点は、赤面物の鄙猥さだった。
「凄ぇ………俺、あの女の事…尊敬しそう」
 フィズも我知らず、パンティに沈んだ指を淫猥に蠢かしだす。
「まさか、スゥもアレ………入ったんですの?」
「だって、抱かれたって事は、ずっぽし…突っ込まれたんだぜ。きっと」
「ぁ…カムイぃ? やぁ…止めちゃ、嫌ぁ」
 突然、腰の動きを止めたカムイに、頬を火照らせて喘いでいたミリュウが泣き付く。
 慌てて口を塞いだフィズとローンも、息を飲んで部屋の中を覗く。
 跨がったミリュウを降ろしたカムイは、臀部を叩いて這いつくばらせるポーズを要求させた。
 尻尾を握られ引き寄せられたミリュウは、痛みの混じった刺激にカムイを振り仰ぐ。
「バックからぁ…?」
「そ。ほら…もっと、犬みたいにお尻振って」
「あぅん。か…カムイぃ…尻尾、尻尾はぁ」
 じゅっぶ…じゅっぶ…っと遠慮無しに突き上げられるミリュウは、爪でシーツを裂いてしまう。
 薄っすらと艶光るミリュウの背中に、カムイの汗が飛滴となって落ちる。
 ミリュウの腰骨を抱えたカムイは、成熟した尻を奥まで貪った。
 暴れるミリュウの尻尾を引くたびに、膣が…きゅ!…きゅ!っと心地よく窄まった。
 カムイの右膝頭が、ぐ…っとミリュウの股間に割り込んだ。
「あぁー…ぅ」
 さらに挿入が深くなり、少しでも圧迫感を逃そうと、く…っと尻が反り上がる。
 噛み締めた薄紅の唇から、可愛く濡れた牙が剥き出る。
 カムイが挿入の角度を変化させると、膣粘膜をぬぢゅ…と肉根が抉り抜ける。
 同時に痛い位に充血している、滑々の肉芽をきゅッと摘まれた。
「ぃ、ぁ…やあッ! ああぁー…ぁ」
「うぅ…絞まって、きっつぃ。じゃ………俺の番ね。激しくイクから、我慢してて」
「スル…我慢する。だからぁ…精液ぃ…欲しい、出して出してぇ」
 腰を鄙猥に振るミリュウは、朝の儀式仕上げに、膣に一杯のザーメンを要求する。
 一旦結合を解いたカムイは、お腹をひくひくさせるミリュウに跨がる。
 可愛く唇を開いたミリュウは、ぁ…っと吐息を吐く。
「抱き合ってシヨ。後…目一杯に脚開いて。もっと奥深くに入ってくよ?」」
 興味深い事を教えて貰ったミリュウは、筋が吊りそうな程に股間を開く。
 ほとんど垂直まで開脚されたミリュウに微笑んで、カムイはひくひく…っとしている淫唇に肉根を滑り込ませる。
 突かれて練れた括約筋は、適度な緊迫を保ちつつ、肉根をちゅ…ると吸い込む。
 カムイはすっかり自分の性器に適応してしまったミリュウに、罪悪感より愛しさを覚えてしまっている。
 唇から涎を垂れ流すミリュウの、震える乳首を愛咬する。
「ぁ…ん、ああー…ん、ひゃ…ん。ぁ…今ぁ、お腹の中にこり…って」
「うん、感じた。ほら…当たってる。ミリュウの可愛い子宮」
 嫌々するミリュウを愛しく見下ろし、ぬじゅ…ぬじゅ…っと生殖器官を突き上げる。
 脊髄を走り抜ける衝撃に、必死にカムイの背中を抱くミリュウ。
「出すよ。いいね…出すよ、中に」
「いいー…ぃ…出して、カムイの濃ゅいの一杯ぃ」
 呼吸さえ忘れたフィズとローンは、動きの停止したカムイの尻が痙攣したのを見た。
 もう、明るくなった視界の中で、一分程も誰も動かなかった。
「本当に………膣内射精…してるのか?」
「あの人………身篭もる事…恐くないんだわ」
 ふたりとも、避妊薬を常用しているとはいえ、グレイにも滅多に膣射精を許さない。
 受精の抑制は完璧ではなく、まれに妊娠する危険もあるからだ。
「嘘…だろ? カムイさんの子供だぜ………?」
 ぼんやり…と腰の抜けたフィズが、ローンを振り返る。
 欲情した聖母のような表情をしたローンは、股間から蜜糸をつぅ…と伸ばしながら指を抜き出した。
「祝福を与えてあげたいですわ………。本当にカムイさんを愛していらっしゃるのね」
「ぉ…俺だって、グレイの………事…」
 俯いて口篭もるフィズの手を、ローンが握った。
「行きましょ…グレイ様の所へ。私も、凄く抱いてもらいたい気分なんです」
「お、俺は…別に…好きとか、そんなんじゃ…ねぇぜ?」
「私に嘘をついても無駄ですわよ? だって、私もグレイ様の事…愛してますから」
 真っ赤になって俯いてしまったフィズに、優しく微笑んだローンは、手を引いてグレイの部屋へと誘っていった。









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