竜園
Original Novel

-迷宮神話-



第U章  転生の儀式









 シヴァは眼前を掠める獣爪を、身体を逸らして躱した。
 右手に握り締めた剣を、反射的に薙いだ。
「っあ!」
「ぐアおォあ!!」
 パッと赤い飛沫が水平に飛び散り、野太い悲鳴が迷宮の空気を震わせる。
 怒り狂った魔獣は、四本の前脚を目茶苦茶に振り回す。
 浅い階層に生息している、四手熊だ。
 爪が掠った頬に滲む血を舐めたシヴァは、距離を取って剣を構え直す。
 肩に担ぐように切っ先を獲物に向け、両手で剣を握り前傾していく。
「破、ァ!」
 四手熊に突進するシヴァの剣が、気合いに呼応するように火炎を発した。
 全身の力を込めた突きは、四手熊の心臓を貫いて、焼き焦がした。
 断末魔の悲鳴が耳を刺す。
 不意に、剣の手応えが軽くなる。
 体重にして五〇〇キロを越す魔獣は、空間に染みるように輪郭を崩して消えた。
 四手熊の結晶化した存在エネルギーが、琥珀色の精霊珠となる。
 キィ…ンと澄んだ音を立てて精霊珠が落ちると同時に、シヴァは膝を折って口元を押さえて呻く。
 四手熊を殺した瞬間、剣を媒体にして何かが身体の中に流れ込んだ。
 それが、EXPと呼ばれるエネルギーだと、シーダーギルドの半妖精に教えられた。
 他の存在のエネルギーを奪う。
 食事にも似たプロセスに苦痛はない。
 むしろ、陶酔にも似た快感すら感じる。
 それが、シヴァに吐き気を催させる。
「いい加減に慣れろ」
 自分に言い聞かせるように叫んだシヴァは、迷宮の石床に立ち上がった。
 シヴァは体中の傷の痛みに眉を顰めながら、床に転がる精霊珠を拾いあげる。
 琥珀色の小さな結晶は、それ自体が発光している。
「土の属性か………」
 精霊珠の色は、四大精霊素の属性を表す。
 火は赤。
 風は白。
 土は茶。
 水は青。
 其々の属性が混じり合った、複雑な色に精霊珠は染まる。
 純度と光度の高い結晶ほど、内包したエネルギー総量が高い。
 大きさや色の具合で、精霊珠の取引値段が決められている。
 下の階層に棲む強力な魔獣ほど、美しく大量の精霊珠を入手できるのだ。





 ラグナロク迷宮については、探索者協会でも研究が続けられている。
 地下数百階にも及ぶ迷宮の探索を可能にしているのは、ラグナロク迷宮の一階に設置された、巨大な転移装置のおかげだ。
 神代文明の遺産と伝えられている装置は、動力元も動作理論も解明されていない。
 転移装置は一度降りた階層の深さまで、シーダーを飛ばす事が出来る。
 それは、転移装置がシーダーの一人一人を登録しているのだといわれているが、実際の所シーダーギルドでも事実は解明されていない。
 また、どんな階層にも受付側の装置があり、地上に帰る事も出来た。
 例え、異常空間に干渉されて他階に迷い込んでも、転移装置を捜し出せれば帰れる。
 基本的には一階ずつ地下へ進攻していくのが基本だが、他の者に連れられてより深い階層へ赴く事も可能だった。
 ギルドに報酬を支払う、深い階層への道案内のサービスもある。
 もっとも、実力が伴わなければ、待っているのは確実な死だ。
 シヴァが迷宮に足を踏み入れてから一週間。
 十階付近をベースキャンプに、戦いを繰り返していた。





 浅い階層では遭遇確立の多い犬頭=コボルトが、群れをなしてシヴァを取り囲んだ。
 醜い犬の頭をした人型魔獣は、背丈が人間の半分程に過ぎない。
 力も非力だが、数を頼んで獲物を追い詰める。
 コボルトは愚かだが、状況を判断するだけの知能があった。
 無謀にも見える連戦で弱ったシヴァを、組みやすい獲物と定めて襲いかかる。
「…ぐっ!」
 剣を振り回して間合いを取ろうと威嚇するシヴァの太股に、コボルトの錆びた短剣が突き刺さった。
 チャンスと見て飛び込む一匹の脳天を、上段から振り降ろして砕いた。
 歯を噛み締めたシヴァは、薙ぎ払うように火炎剣を振るった。
 刀身から噴き出す火炎は、明らかにその威力を増していた。
 魔法剣の扱いに馴れたというのが理由のひとつだが、シヴァ自身のEXPも影響しているのだ。
「破ァ!!」
「キャィン…!」
 背中を向けて逃げ出す最後の一匹を、背中から袈裟切りにする。
 切断された身体は、焔に包まれて消滅する。
 炎に包まれた精霊珠が、チン…と転がった。
 シヴァは荒い息を吐いて蹲った。
 朝一番で迷宮に入り込み、戦いずくめだった。
 ラグナロク迷宮の壁には発光する苔が群生しており、常に夕暮ほどの明るさがある。
 年中同じ明るさなので、時間を知るのは困難だった。
 床に散らばった精霊珠を拾い集めたシヴァは、壁を這うように転移装置に向かった。





 毎日迷宮へ潜っているシヴァは、大小無数の傷を受けていた。
 掠り傷程度ならば、一晩休息を取っただけで治癒した。
 例え深手を負ったとしても、致命傷でない限り一週間も安静にしていれば完治する。
「大体、想像がつくと思うけれど、それもEXPのおかげよ。生体エネルギーが肉体のポテンシャルを高めるの。回復の時、ちょこっとだけEXPが減るんだけどね」
「そっか…」
 上機嫌のサリアが、シヴァの能力鑑定をしていた。
 受付の役職はローテーションで変わるらしく、定期検定窓口に居たのだ。
「何か………嬉しそうに見える」
「あ、そう見える? シヴァ君が無事だったから、かな」
 ふた月分の給金を賭け勝ったサリアは、長耳をひくひくさせてとぼけた。
「レベルアップのお祝いしてあげるわ。私の奢りで飲みましょ」
 サリアは碧色の瞳で眼鏡越しに、ボロボロのシヴァを見やった。
 作務衣が一張羅なのか擦り切れ、包帯が覗く身体はまるで野戦病院の患者だ。
 サリアは眼鏡を押さえて溜息を吐いた。
 素材自体は男妾で食える程のシヴァだったが、外見に頓着しないタイプだった。
「………その前に、服を買い替えた方がいいみたいね」
「いや、俺は別に平気」
「はい、はい。午後から空き時間を取るから、買物に付き合ってあげる」
 心無し俯いたシヴァは頬を掻く。
 サリアの、世話焼き好きの性格に圧倒されてしまう。
「それじゃ、クラスチェンジの方法教えてほしいんだけど」
「あのね…シヴァ君はナイトになる心算なんでしょう? 焦っちゃ駄目よ。私としては、バトラーになった方がいいと思うんだけれど」
 闘士への転職可能段階は、LevX。
 剣士への転職可能段階は、LevZ。
 騎士への転職可能段階は、Lev\。
 特殊なクラスを除き、最初シーダーが選択する職業はみっつに限られる。
 クラスチェンジ時の必要レベルの差異は、転職後のポテンシャルが違うからだ。
 LevTのバトラーより、LevTのナイトの方が基本能力が高い。
「大体ね、シヴァ君。レベル\になるには、二、三ヵ月掛かるんだから………れ?」
 EXP鑑定結果を見たサリアは、ぴんと耳を峙たせた。
 オーブと水銀計を組み合わせた装置を、複雑に弄り直す。
「レベル…]? 何で、一週間でそんなに…!?」
 今までとは違う、怯えたように顔をあげる。
 だが、シヴァはきょと…と立ち尽くしていた。





 迷宮都市ラグナロクには、一際目立つ建築物がみっつある。
 シーダーズ協会の本部である、城を思わせる『セントラルレギオン』。
 天神ヴァルクリウスを奉る、『ヴァルクリウス大神殿』。
 そして、『聖堂』だ。
 聖堂は迷宮の上部に据えられ、神権戦争に造り出されたと伝承されている。
 半球状の遺跡の内部は、奇妙な程にシンプルだった。
 紋章と魔法文字が敷き詰められた回廊を歩む者は、資格を問われながら転生の間へと誘導される。
 『騎士の間』へとシヴァが足を踏み入れた。
 それは、シヴァが騎士になる資格を充たしている証拠だった。
 資格がない者は扉に阻まれ、外へと弾き出される。
 クラスチェンジは肉体に負担が掛かるので、未熟な者は死亡する危険もあった。
 シヴァは迷宮内部に酷似した空間を、物珍しげに見回した。
 円形の部屋の中央には、台座が据えられている。
 入り口と反対の方には、奥へと続く扉がある。
 試しに触れたが、扉には鍵が掛かっているように開かなかった。
 それは、騎士の上級クラスへの路だった。
 シヴァはサリアから聞いた通り、部屋中央の台座に乗った。
『汝、レイロードよ。汝は騎士への転生を望むか?』
 頭に直接響く声に、シヴァは頭を振った。
 入り口で初めて聞いた時には驚いたが、分岐路ごとに問い掛けられれば馴れる。
「俺の名はシヴァだ」
『…汝、シヴァよ。汝は騎士への転生を望むか?』
 性別、年齢を超越した不思議な声は、もう一度問いを繰り返した。
「望む」
『汝は力を求めるか?』
「求める」
『汝は命と引き替えに力を求めるか?』
「求める」
『汝は命と引き替えに騎士の力を求めるか?』
「求める」
 繰り返される質問に、シヴァは淀みなく答えていく。
 問いに否定的な答えを返せば、聖堂の外へと転移させられる。
『汝は何故に騎士の力を求めるか?』
 シヴァの肩が、微かに震えた。
「………復讐、だ」
『其れも又、真理へと続く路。汝、心せよ。汝は騎士となる………』
「ぐゥ…あ! ああっっ!!」
 シヴァは肉体が焼けるような痛みに、身を捩った。
 筋肉組織が、骨格が、細胞自体が、別の物へと再構成されていく。
 戦闘のための生物へと転生する。
 四つ這いで荒い息を繰り返すシヴァは、自分の黒髪が肩に触れるほど伸びているのに気づいた。
 新陳代謝が活性化され、数十日分の成長をした事になるのだ。
『さらばだ。騎士シヴァ』
 魔法力がシヴァを取り囲み、聖堂の外へと送り返した。





 街を歩くシーダーは、服装からクラスを言い当てる事が出来る。
 それは、其々のクラスに適した装束があるからだ。
 クラス独特の甲冑や動きに合った、戦闘着がある。
 闘士系のバトルジャケット、騎士系のナイトスーツ、剣士系のアーマーローブだ。
 もっとも、色や細部はバリエーションが豊富で、個性的な格好をする者も多い。
 シヴァが服屋で買った装束は、グレイ調の騎士服だ。
 黒髪のシヴァに、サリアが見繕った品だった。
「どう? 調子は」
「怠い。風邪ひいた感じ」
 洒落たサロンで、ふたりは遅目の昼食を取っていた。
 くすくすと微笑むサリアは、頚後ろで結った髪を弄るシヴァを見詰めた。
 真新しい装束に身を包み、こざっぱりしたシヴァは一端の騎士然として見えた。
 ウエイトレスの娘達がシヴァを覗き見ていたのに、サリアはちょっとした優越感を覚えた。
 見栄えする騎士は、世間一般で人気のあるクラスだ。
 騎士を選択するのは、貴族の子息か、大概が仕官を望むシーダー達だ。
 昇級の難しさや、転生を選択する時に意志力を求められるため、なり手が少ないのが現状でもある。
「ナイトは、これ着なくちゃ駄目なのか?」
 シヴァは大き目に作られた装束を、具合悪そうに弄った。
「そうね。本当は何でもいいんでしょうけど、騎士はナイトスーツを着るのが基本だと思うわ。騎士甲冑とか身につける時に、邪魔にならないように設計してあるんですって」
 口をもぐもぐさせるシヴァに、サリアはテーブルに肘を突いて微笑む。
「カードはカッパーのままだけど、来週の検定日まで我慢してね。更新してあげてもいいのだけれど、料金がかかっちゃうから。シルバーカードはお預けね」
「カードが変わると、何か違うのか?」
「そうね、色々な特典があるわ。前に話したでしょう? ラグナロクでは、常に強者が優遇されるから。書庫とか、温泉場とかの協会の施設を自由に利用できるわよ。もっとも、本格的な特権が貰えるのは、上級クラスからね」
 先に食事を終えたサリアは、紅茶のカップを口に運ぶ。
「何かあったら、左手の甲を見せる事ね。上級者の方が罪に問われない事が多いから」
「どうして?」
「何でって………気づいてないの?」
 自分の左手に視線を落としたシヴァは、甲に浮かび上がった模様に驚く。
 浅黒いシヴァの肌に、奇妙だが綺麗な刺青が刻まれていた。
 サリアはシヴァらしい反応の鈍さに、好ましさを感じながら教えた。
「それが、ナイトの紋章よ。クラスによって形は違うわ。普通は利き腕の甲に刻まれるという話だけれど、貴方は左利きだものね」
「馬の顔…みたい」
「擦っても消せないわよ?」
 紋章はクラスチェンジするごとに、複雑に上書きされていく。
 時には紋章を偽造する者も現われるが、能力鑑定は誤魔化せない。
「そっか………ガーリックステーキ追加」
「よく食べるわねー。奢るって、約束したんだけれど」
 フォークをくわえたシヴァは、気まずそうに前髪を引っ張った。
「後免。凄く、腹空いてて」
「クラスチェンジで精気を使い果しちゃったのね。いいわよ。一杯食べて、元気になってね。………ふふっ」
 分厚いステーキを頬張るシヴァは、意味ありげに微笑むサリアに気づかなかった。
 夜の事を期待しているに違いなかった。
「二、三日は大人しくしてなきゃ駄目よ。身体が元通りに馴染むまではね」
「うん」
「本当かなぁ。何か信用できないのよね。迷宮に降りてからも、無理は禁物よ。EXPが空に戻った状態なんだから、闘気も使えないし、怪我してもすぐには治らないのよ」
 素直に頷くシヴァだったが、頬が食べ物で膨らんでいた。





 食事を済ませると、シヴァ達は武装の新調に『爺さんの金槌』に赴いた。
 全身を覆う騎士甲冑は、何種類かの銘柄が揃っている。
 武器屋『爺さんの金槌』は初級クラス向けの店なので、強力な武装は置いていない。
 それでも種類は豊富なもので、来客も多い名店だった。
「騎士が使う武器は、剣類と槍だったかしら? 後は盾ね」
 騎士は防御力を重視したクラスであり、一般に硬いといわれている。
 高レベルになっていく程、各クラスの特徴がはっきりしていく。
 闘士系は大概の種類の武装を扱え、戦術も豊富だ。
 剣士系は剣のみ、中でも刀と呼ばれる細身の武器を愛用する。
 身軽さを重視する事から鎧も限られ、盾も使わないものが多い。
「迷宮で斧を拾ったんだけど、使えないのかな?」
「多分、使えると思う。でもね、強力な魔法具なんかは、使い手を選ぶわ。例えばシヴァ君が魔法刀を見つけても、鞘から抜く事も出来ないし、本来の威力とは程遠い武器に過ぎないからね」
「そうだろうね。………やっぱり」
 サリアに背を向けたシヴァは、壁に掛けられた剣に触れた。
 騎士用の甲冑、ナイトメイルが五〇〇銀貨。
 同じくナイトシールド二〇〇銀貨を合わせて、シヴァが即金で買い込んだ。
 サリアが目を見張った程の連戦で、シヴァの懐にはそれだけの貯えがあったのだ。
「でも、誉められた事じゃないわ。怪我をしたまま迷宮に降りて、死んじゃったら何にもならないのよ?」
「死にゃしない」
 斑の木馬亭に買い物を運んだ後、そのまま地下のフードバーで酒宴が再開された。
 何軒かの酒場を回った後なので、ふたりともそれなりに酔いが回っている。
「私には、貴方が焦ってるように見える」
 琥珀色の蒸留酒をグラスに注いだサリアの言葉が、シヴァの胸に突き刺さった。
「焦ってる…か?」
「訳を聞くほど野暮じゃないけれど、事を急いで自滅した人達を、何人も見てきたわ。だから、シヴァ君には二の舞を踏んでほしくないの。………心配する資格ぐらい、あるでしょう?」
 カウンターに乗せられたシヴァの手に、サリアの指が添えられる。
 酔いの火照りの上から赤面したシヴァは、微かに握り返して視線を逸らした。
「貴方が死んだら、私………きっと泣くわ」
「参ったな…」
 俯いたシヴァは、額を乗せた腕の隙間からサリアを見た。
「………恥ずかしいところばかり見られる」
「悪い事じゃ、ないと思う。甘えてくれる分、私も甘えていいよ…ね?」
「俺は、きっと酷い奴だよ」
 頭を振ったサリアは、シヴァの腕を抱えて場所替えを促した。
 階段を上って右手の奥が、シヴァの間借り部屋だ。
「シヴァ…ぁ…」
「サリア…」
 扉が閉まると、ふたりは何方からともなく唇を合わせた。
 肉付きの薄いサリアの唇に舌をなぞらせたシヴァは、口紅の味に懐かしさを感じた。
「ぁ…ゃ…シヴァ、シヴァ…くん」
 乳房にあてがわれた掌が、擦り付けるように動く。
「だめ…胸は駄目…」
「全然、綺麗だよ。隠さないで…」
「だって…だって、ちっちゃいよ」
 抱き上げられるようにベッドに運ばれたサリアは、脱がされながら胸に手をやる。
 下着姿のサリアを、シヴァは覆い被さるように見詰めた。
 しばし、触れないシヴァに、サリアは不安げに仰ぎ見る。
「ハーフエルフは細いから………物足りない?」
「充分…魅力的、だよ」
 羞恥に火照ったサリアは、シヴァの股間を服の上から擦った。
「もぉ、こんなに硬…ぃ。我慢しないで、娼婦館で抜いてくればいいのに」
 ラグナロクの歓楽街には、数多くの娼婦館が並んでいる。
 娼婦のほとんどは、シーダーズ協会から払い下げられた奴隷だ。
 容姿やサービスの度合いで、一発五銀貨の娼婦から、一晩で数百銀貨の高級娼婦までが揃っていた。
 気に入った娼婦は、交渉次第で身請けできるのが慣習だった。
 苦笑したシヴァは、下着姿のサリアを丁寧に愛撫した。
「今は…サリアが、相手をしてくれるんだろう?」
「うん………鑑定にきた日の夜は、空けておくからね」
 だから、シヴァの方から誘って、と囁く。
 可愛いおへそに舌先を入れたシヴァは、ゆっくりと青縞のパンティを脱がせていく。
 性器を晒されたサリアは、小指を噛んで目を瞑る。
 淡い薄桃色の膣膜を捲り、そ…っと中指を挿入させる。
「ぁ…」
 ひく…と可愛く腰を跳ねさせたサリアが、きゅ…っと括約筋を絞めた。
 シヴァはサリアの膝頭を押さえ、閉じようとする股間をさらに広げる。
 半妖精の可憐な性器を見詰めながら、じっくりと指の出し入れを続ける。
「…ぁ…ぁ…ぁぃ…」
 膣の襞を引っ掻くように擽ると、サリアの腹筋が痙攣するのが見て取れた。
 指に伝う蜜液が、どんどん孔掘を容易にしていく。
 人差し指も淫唇に入れたシヴァは、指を開いて膣口を開いてみせた。
 ちゅく…と淫猥に痙攣する膣膜の連なりに、蜜粘が滴っていた。
「や…意地悪…しないで」
「綺麗…だ」
 肉芽の包皮を剥いて舌先で舐めると、それだけでサリアは枕に仰け反った。
 素早く服を脱ぎ捨てたシヴァは、達してヒクヒク…としているサリアに跨がった。
 掴んだ逸物の先端を、無防備な半妖精の膣孔に埋めた。
「あぁ…ん、あんっ…あ」
「あ…後免。もう一度、イッた?」
 碧色の瞳を潤ませたサリアは、足を絡めてシヴァの腰を引き寄せる。
「だめ…もっと、もっと…奥まで挿れて」
「…うん」
「あっ…あっ…あぁぁ…ィ」
 焦らすようにゆっくりと腰を射れ、サリアの長耳を食みながら腰を蠢かした。
 エルフ族の性器は、人間のそれより一回り小さい。
 半妖精のサリアの膣は、小気味よい緊迫でシヴァの逸物を搾った。
「ぁ…やっぱり…いぃ…シヴァの…いい…ぃ」
 シヴァの反り返った亀頭が擦る部分は、サリアの性感帯に当て填まっていた。
「抜かれちゃう…腸が引き抜かれちゃう…」
「大丈夫だから…ちゃんと挿れ直してあげるから」
 ぐちょぐちょ…と淫猥に鳴る淫唇から、つぅ…つぅ…と蜜液が滴り落ちていく。
 断続的に尻筋を痙攣させ始めたシヴァの様子に、縋るように背中を撫で擦るサリアが耳元で囁いた。
「ぁ…今日は、危ない日だから…」
「解った、じゃ…外に」
 射精の瞬間引き抜いたシヴァは、サリアの腹部に白濁液を放った。
 勢いよく飛び散るザーメンは、へその窪みにとろ…っと滴り溜まった。
 大量の精液は脇腹を伝い、シーツにまで垂れる。
「凄い…いっぱい。貴方…の子種」
「後免………拭かなきゃ」
「くす…それに、まだ満足してない」
 駄々っ子をあやすように微笑んだサリアは、睨むように勃起した逸物を扱いた。
「遠慮しないで…続けて、きて」
「辛くなったら、言うんだぞ」
「うん。…シヴァ」
 頷いたサリアは、俯せになって左脚を折り曲げた。
 シヴァは可愛らしく締まった尻を、逸物で貫き直した。
 枕に顔を埋めて悶えるサリアから眼鏡を取り、ついでにポニーテールも解く。
「やだ………エルフみたい、でしょ…?」
「コンプレックス必要ないよ。妖精も…俺、嫌いじゃない、みたいだし」
 亜人種に差別意識を持つ人間は、決して少なくない。
 亜人の王国ヴァリウス以外では、露骨な人種迫害があった。
 シヴァはサリアの細い腰を抱え、後背位に持ち込んで尻を突き続ける。
 二度目のシヴァは中々達せず、サリアの方が途中で気を遣ってしまう。
 昂ぶって充分に勃起した逸物は、却って射精までの時間は長引くのだ。
 枕を抱き締めたサリアの背中に、うっすらと汗が艶滲んで妖艶に見える。
「も…ぉ…だめ、シヴァ…お願ぃ…イッて…ぇ」
「くぅ…出るッ」
 息も絶え絶えのサリアの懇願に、シヴァは射精のタガが外れたのを感じた。
 ちゅぽ…と鄙猥に花開いた淫唇からまろび出た逸物は、尻溝を擦りあげながら激しく射精を行なった。
 二度目とは思えない量のザーメンを背中に受けながら、サリアは余韻に痙攣する。
 ぽぉ…と惚けていたサリアが正気に戻ったのは、シヴァから優しく身体を拭われている時だった。
「優しいのね………シヴァ…君は」
「無理させたから」
 ふふ…と可愛らしく微笑んだサリアは、身を委ねたままシヴァを見詰めた。
「この前みたいに、膣で出だされちゃうかと思って…ちょっとドキドキだったけど」
「だから、後免…て」
「責任取ってくれるのなら、受け入れてあげてもいいのだけれど…?」
 冗談粧したサリアの悪戯っぽい眼差しを、シヴァは煙草に火を点して躱した。
「ね…シヴァ君」
「ん?」
「もしも、貴方が大金持ちになって、まだ私の事を覚えていてくれたなら………私の事、貰ってほしいな」
 膝を抱えたサリアの独り言のような呟きは、一握りの夢の欠片だった。
 砕け散った夢の欠片を集められた者には、神話という物語が手に入るのだろう。
 シヴァもまた、自分の中に夢の欠片がある事を知っていた。





 グレイ色調のナイトスーツは、分厚い木地で縫われている。
 装束だけでも、ちょっとした装甲になるだろう。
 それでも暑いのは確かだ。
 ワーズアース大陸の中央に位置するラグナロクは、気温が一定して過ごし易い場所だ。
 四季はあるが、冬にも雪は降らない。
 寒冷地帯のディーバリエ国の田舎に住んでいたシヴァには多少暑く感じた。
 ぶかぶかの戦着ズボンをふたつの戦闘帯で締め、肌に張りつくような黒地のアンダーウェアを着ただけの姿だ。
 シヴァは少し考えてから、フレイムブレイドを戦闘帯に提げた。
 宿に置きっぱなしにする不安もあるが、街の治安にも自信がないのだ。
 シーダー同士の私闘が禁じられているとはいえ、血の気の多いシーダー達の小競り合いは珍しくなかった。
「いい天気だな………」
 窓から空を見上げた後、雨戸を閉めて鍵を掛ける。
 サリアの忠告を聞いて、迷宮に降りるのを止めたシヴァだった。
 クラスチェンジの副作用なのか、身体が怠く関節が熱を持ったように疼いた。
 腕を掲げて筋肉の筋に触れてみる。
 昨日より細く、肉が削げ落ちた感じがするが、筋肉組織自体の密度が変わったのだ。
 普通人と能力者では、同じ体格でも筋力や体重がまるで違う。
 人間の限界を超えた力への、キャパシティが備わったのだ。
 財布を懐に納めたシヴァは、部屋の鍵を指先に引っ掛けて階段を降りていった。
 宿の借契約は昨夜に更新済みで、一週間分の二十銀貨を支払ってある。
 軽くなったとはいえ、財布の中身には百銀貨近くの入っている。
 農民をしていた頃のシヴァには、一年分の稼ぎに匹敵する。
 シヴァ自身は金銭に執着がなかった。
 斑の木馬亭フロントには、数人のシーダーが屯して居た。
 普通、一度迷宮へ赴いた後は、傷の養生と鋭気を養うために、二、三日は間を置く。
 そのため、ラグナロクには娯楽施設も充実している。
 賭博場や娼婦館、酒場の数が最も多い。
 その他にも、演劇場やオペラハウス、図書館や社交場などの施設が揃っていた。
 戦士クラスのシーダー達は、シヴァを押し黙ってまま見送った。
 少しでも懐に余裕があるシーダーは、もっと設備の調った宿に移るのが普通だ。
 当然、体力回復の度合いも違ってくる。
 斑の木馬亭の客は、シヴァを除いて戦士だけだった。
「さて」
 宿場街を抜けたシヴァは、メインストリートに続く石段の上で腰に手を当てた。
 結われた黒髪が風に靡く。
 物憂げな自分に酔っているわけではなく、時間の過ごし方が良いのか解らないのだ。
「雑草を抜く必要も、耕す畑もないし………」
 ぼぉと立ち尽くしたシヴァは、街並みをただ眺めていた。
 取り合えず、目的を探して街を歩く事にした。
 メインストリートをぶらついたシヴァは、自然と闘戯場へと行き着く。
 小さな武闘会でも開かれているのか、コロセウムの中からは喧騒が響いていた。
 入り口付近には、焼き鳥や腸詰めの屋台もちらほら見えた。
 鳥肉の串焼きを買ったシヴァは、食べ歩きながらコロセウムの外壁を回った。
 闘戯場の周辺地区には、道場らしきものが幾つかあった。
 金を支払う事で、様々な戦闘術を習得できる。
 攻撃の威力を増幅させる術や、効果的な楯の使用法など、シーダーにとっては学んで損はない武術だ。
 秘術の伝授は、僅か一週間という短い期間で行なわれる。
 それは、クラスチェンジと似た仕組みで、肉体に直接秘術を受け継がれるからだ。
 その分、授業料は高く、何千何万銀貨という報酬を要求される。
 頭を振ってメインストリートに戻ろうとしたシヴァだが、不図視線を彷徨わせる。
 道場の中庭から覗けた、剣士の姿が誰かとだぶった。
 シヴァは右手を掲げると、中指に填めた何でもない銀の指輪を見詰める。
「忘れてた…」
 第三シーダー協会支部に向かい掛けたが、思い直して少しだけ道順を変える。
 探し人を占ってもらうのも一興だろうと、シヴァはまじない通りに足を運んだ。
 まじない通りの外れに、辻占いの露店がある。
 質素な天蓋で覆った台座に、水晶球や卜棒などが置かれている。
「あ、シヴァ様…?」
「やあ」
 暇そうに溜息を吐いていたエミュールは、様変わりしたシヴァに一瞬気づかない。
 初めて見た時の垢抜けない田舎者だったのが、涼しげな眼差しの青年に見えた。
「まあ、おめでとう御座います。騎士になられたのですね」
 装束からクラスを読み取ったエミュールだが、シヴァは流石占い師と勘違いする。
「暇そうだね?」
「ぇ…えぇ、まあ…こういう日も御座いますから」
 口篭もったエミュールは、気まずそうに言葉を濁した。
 羞恥に薄く染まった肌に、シヴァは気づかなかった。
「それで、シヴァ様。今日はどういった御用件でしょうか?」
「占いを、頼みたい」
 シヴァは念のため見料を確かめたが、怪訝な表情を浮かべた。
 一見一銀貨。
 占師にも様々なレベルが居り、法外な料金を請求して順番待ちという有名所もある。
 場所柄客の入りが悪いのなら尚更、生活していけるのか難しい稼ぎだろう。
「人探しを頼みたい。出来るかな?」
「はい。そのお方のお名前、特徴、シヴァ様とのご関係などをお聞かせ願えますか?」
「名前は………サクヤ=ホナミ=スメラギ」
 占いの準備をしていたエミュールの手が止まる。
 サードネームを名乗れるのは、貴族階級だけだ。
「髪と瞳の色は、ブラックブラウン。今は…17歳、になったのかな」
「『煌』といえば、ツクサミ連合国の御方ですか?」
 頷くシヴァに、エミュールは気遣わしげに問いを重ねた。
「シヴァ様との、ご関係は………?」
「ただの知り合い。昔は友達、だった」
「解りました。宜しいですか?」
 卓上にラグナロクの地図を広げたエミュールは、精霊珠を下げたペンダントのようなものをその上に捧げた。
 振り子のように円運動するペンダントで、地図の上を動かしていく。
 やがて、地図の一点で振り子の動きが止まる。
 そこは、ツクサミ大使館が位置する場所だった。
 シヴァは感心すると同時に納得した。
 大使館という場所があるのも、知らなかったのだ。
「占いというのも、満更じゃないんだな」
「捜し物は、占術の基本ですから」
「そうか。………もう一度、頼めるかい?」
 捜し物という言葉に反応したシヴァに、エミュールは小さく頭を振った。
「占いは一人、日に一度が誓約で御座います。日を改めていらっしゃって下されば」
「無理を言った。有難う」
 ポケットから硬貨を摘んだシヴァは、エミュールの掌に乗せる。
 踵を返すシヴァに、驚いたエミュールの声が引き止める。
「シヴァ様…これは」
 シヴァが渡したのは金貨だった。
 金銭取引では銀貨が基本となっている。
 他にも銅貨や塩での取り引きも行なわれているが、勘定は銀貨で換算される。
 金貨一枚は、二十銀貨に価する。
 エミュールは何故か赤面して俯いた。
「ぁ…あの、シヴァ…様…この、ご金額では…その」
「勝れた占いには、それなりの報酬を支払うべきだと、俺は思うから」
 怪訝に振り返ったシヴァの言葉に、エミュールは恥ずかしそうに顔をあげた。
「は、はい。………有難う御座います、シヴァ様」
「また、来る」
「御免なさい…シヴァ様」
 黙って頷いたエミュールは、シヴァの後ろ姿にそっと謝った。





 第20階層。
 剣を振るうシヴァは、以前より軽く感じているのを覚えた。
 全身を甲う騎士甲冑も、身を妨げる程の重さには感じない。
「ヴも!!」
 ミノタウロスが鼻輪に涎を滴らせて、巨大な戦斧を振り降ろしてきた。
 反射的に掲げた騎士盾が、バギンと鈍い音をさせて戦斧を弾き返す。
 普通の人間が受け切れる衝撃ではない。
 割れてもおかしくない盾には、僅かな凹があるだけだ。
 ミノタウロスは自分の半分程の相手に、再び戦斧を叩きつけた。
 身体の正面で攻撃を受けたシヴァの盾は、不透明な何かでコーティングされていた。
 EXPを闘気に変換し、身体をオーラで防御する。
 騎士は特に、爆発的に闘気を高める事を得意とするクラスだ。
 純粋的な破壊力、防御能力は騎士が一番だろう。
 騎士が硬いと言われている所以だ。
 シヴァは戦闘の中で、無意識に闘気を操る術を会得し始めていた。
「っっ…破ァ、ァ!」
「ヴヴもォ!!」
 刀身に力を注ぎ、火炎剣の力を使おうとしたシヴァは、膨れあがった爆炎に自分も吹き飛ばされた。
 騎士がオーラを武器に注ぎ込んで爆発させる、ブラストという必殺技だった。
 広範囲の敵にダメージを与える事が可能だ。
 シヴァのように魔法剣を使っている場合は、魔法力も増幅させて使う事が出来る。
 そんな事とは知らないシヴァは、吹き飛ばされた姿のまま腰を抜かしていた。
 黒焦げになったミノタウロスが、今までよりは大きな結晶と化して散る。
 同時に、ミノタウロスが使っていた巨大な戦斧が、石畳に突き刺さって残った。
 迷宮の魔獣を倒した時、魔獣が使っている装備も総て消え失せるのが普通だ。
 だが、稀に武器や防具などが、とり残される事がある。
 そうした武具は、大概が魔法具である。
 ミノタウロスの戦斧は黒光りした金属性で、斧刃から石突きまで二メートルはある。
 シヴァは剣を鞘に納めると、恐る恐る戦斧を拾った。
 左手一本で持ち上げるが、やはり相当な重量があった。
 自在に扱うには、両手で持つ必要があるだろう。
 それでも不思議と手に馴染み、使えるという感じがした。
 シヴァは試しとばかりに、戦斧を振りかぶって闘気を高めた。
「砕、ア!」
 何もない空間に振り下ろされた戦斧は、爆発するように石畳を粉砕した。
 シヴァはやはり吃驚する。
 同時に、腕が痺れたように冷え、精気が抜けた感覚が解った。
 闘気を一気に放出したため、軽い虚脱感を感じているのだ。
 それに、結構疲労する。
「連発は出来ないか」
 それでも、強力な技を会得したのは事実だった。
「兄ちゃん兄ちゃん、店ん近くで騒がんといてな」
「えっ…?」
 突然人の声が聞こえ、シヴァは慌てて周囲を見回した。
 奇妙なイントネーションの聞き馴れない声は、明らかに女性のものだった。
 通路の角に明かりを見つけたシヴァは、用心深く歩を進めた。
 が、呆然として立ち尽くしてしまった。
 そこには店があった。
 迷宮の壁を抉ったように奥まった店内は、雑貨屋のような品揃えが並んでいた。
 看板は極彩色でピカピカ光った文字で描かれている。
 ラグナロクの歓楽街でも見られる、ネオンという光文字だ。
 数十種類の言語で描かれた看板には、シヴァにも読める文字がある。
『迷宮商店マチュピチュ』
 ついで、様々な文句がべたべたと飾られている。
『任せて安心、信頼のブランド』
『危機一髪。そんな時にお任せ下さい』
『備えあれば憂いなし。後悔はさせません』
『商売繁盛』
『一千年の営業実績を誇る、迷宮商店へようこそ』
 そんな札が、所狭しと掲げられている。
「お…さっきの兄ちゃんやな。四日ぶりの客や、いらっしゃい」
「モンスター…じゃない?」
 店主は眉を引きつらせ、大仰に肩を竦めてみせた。
「こないプリティなモンスターが居るかい。客やないんなら、さっさと失せぇ」
「後免。可愛い顔した魔獣も居るって、聞いてたから」
「ま、ええわ。んじゃ、商売しよか」
 カウンターに肘を突いた娘は、可愛いという言葉に機嫌を直して笑みを浮かべた。
 それでもシヴァは、まじまじと店主を見詰めてしまう。
 人間だとして年齢は二十歳前後。
 青い肌に白髪。
 耳はエルフのように長いが、獣耳のように頭の後に反っていた。
「何や、兄ちゃん。そない可愛いか?」
「何故、こんな場所に店を?」
 聞きたい事は別だが、取り合えず別の疑問を聞いてみる。
 娘は改めてシヴァを見た。
「兄ちゃん騎士か。まだまだ新米やろ? うちを知らんちゅうのは、もぐりやで」
「うん。危なくないのか?」
「あ、何や可愛い兄ちゃんやなぁ。ま、教えたるわ」
 娘の名前はアルファといった。
 自分でも忘れる程昔から、迷宮で商売をしている精霊の一種だった。
 看板が偽りではないと知って、シヴァはいささか驚く。
 店の場所は数百年単位で転移し、アルファ自身原因も仕組みも解らないとの事だ。
 自分にも良く解らないが、迷宮で自然発生した特殊な精霊だろうと、アルファ本人はお気楽に語った。
 アルファ自身は迷宮はおろか店からも出られないらしいが、気にしていないようだ。
 迷宮の中で商売を営む事に、使命と喜びを感じていると言い切る。
 精霊に会ったのが初めてのシヴァは、素直に納得する。
「ま、そいうこっちゃ。うちはここで120年ほど店やっとるん。その前は、600階層ぐらいん所に居ったんやけどな。その前は、ちいと思い出せんわ」
「凄いね」
「あはは。うちの仲間がやっとる店、迷宮ん中に24店舗あるで」
 感心するシヴァに、頑張って探しやと励ます。
「せやから、兄ちゃんも何か買ぅてや。リストこれやから」
 シヴァはカウンターに乗せられた商品覧を見た。
「兄ちゃん、こっから地下降りるん? せやったら、フリーズブレイドがお薦めやぁ」
 武具の品揃えは十に満たなかったが、総てが魔法具だった。
 フリーズブレイドの項目を見る。
 氷結剣『フリーズブレイド』
 属性『アクア』
 攻撃力『45AP』
 定価『20000ソル』
 シヴァは馬鹿にされるのを覚悟で聞いた。
「ソルって、幾ら? 銀貨じゃ駄目かな」
「兄ちゃんも持っとるやんか。それや、地上じゃ精霊珠とかいうてる」
 シヴァは精霊珠を入れた小袋を、カウンターに乗せた。
「ラグナロク迷宮ん中じゃ、ソルが貨幣基準やから。大体、一ソルで銀貨一枚くらいやから、計算はし易いやろ」
 精霊珠の鑑定をしながら、アルファが説明してくれる。
 ラグナロク迷宮の中にも町があるというのは、シヴァには驚きだった。
「ん〜…あかんなぁ。千とちょっとや。傷薬でもどないだ?」
「ミノタウロスから斧を奪ったんだけど、幾らで売れるかな?」
 元々地上で売る心算だったシヴァは、戦斧をアルファに鑑定してもらう。
 魔法具の類はいい商売になるのか、アルファは熱心に戦斧を調べ始めた。
 シヴァは暇潰しに、小さな店内に詰め込まれた品物を見た。
 解毒薬や傷薬の類は地上の店にもあったが、さらに怪しげな薬物が揃っていた。
 精神昂揚剤、痛覚麻痺薬、レイプ用に調合された催淫剤まである。
 品書きを読んでみたが、サキュバスなどのモンスターに効果的と書かれていた。
 ちょっと欲しくなってみたシヴァだが、値段は2000ソル。
「兄ちゃん良い物拾ぅたなぁ。20000ソルで買ぉたるで」
「売ってもいいけど…」
「おっと、値段の交渉は無しやで。うちら、商売で嘘は吐かれへんのや。これがぎりぎりの取り引きっちゅうもんや。五掛けが相場やで」
 売る場合は、元の半値というわけだ。
「代わりに剣を買いたい。そこにある、暗黒剣を」
 シヴァはカウンターの奥に立て掛けられた、一振りの漆黒の剣を見つけていた。
「ほんまにええんか? カオス系武器やで。兄ちゃん黒騎士なる心算か?」
「………ああ」
「珍しいなぁ。人間で黒騎士、目指すちゅうんは。まぁ、売れへんと思ぉとった奴やからなぁ。買うてくれるちゅうんなら嬉しいんやけどな」
 アルファは暗黒剣をカウンターに置くと、保存状態を確かめた。
 鞘から引き抜かれた刀身は、一点の曇りもなく漆黒だった。
 地上に存在する物質で造られた剣ではないのだ。
「攻撃力50オーバーやな。ノーマル仕様のダークソードやけど、悪い品やないで」
「買うよ。幾ら?」
「25000ソルでどぉや?」
 実際の所、アルファの提示価格はまっとうな値段だった。
 俯いたシヴァに、アルファは妥協案を提案する。
「しゃあないな。その腰に提げとる火炎剣、5000で買い取ったる」
「これは、借り物だから」
「せやったら、5000ソル程稼いでまた来ぃや」
 肩を落として落ち込むシヴァに、アルファは思いついたように笑みを浮かべた。
「せやなぁ………。何なら身体で払うかぁ?」
「掃除とか?」
「ちゃう。EXPや。生体エネルギーを料金分貰うちゅうのはどないだ?」
 シヴァはちょっと退いた。
 精霊というだけあって、サキュバスや吸血鬼のような吸精能力もあるらしい。
「死なないなら、いいけど」
「大丈夫やぁ。兄ちゃん、見掛けの割にEXP持っとるから。ちぃと疲れるぐらいや」
「解った。抜いてくれ」
「方法、知ってて聞いとるん? 兄ちゃんがうちを抱くっちゅう事やで?」
 カウンターに肘を乗せたアルファは、狼狽するシヴァを意地悪く見詰める。
「うち、病気とか持っとらんで。まぁ、起たへんかったら、話にならんわなぁ」
 アルファは赤面して俯くシヴァに、少しばかり驚く。
 大概の人間は、人間離れした肌の色に尻込みする。
 だが、シヴァはアルファにではなく、性行為自体に戸惑っていた。
「兄ちゃん純情やんか。意地悪し過ぎたなぁ…店の中入りぃや」
「いい…の、か?」
「ええて。商品は銭払わな、外に持ち出せんのや」
 シヴァは遠慮しながら、マチュピチュのカウンター奥に足を踏み入れた。
 アルファの私室は、随分と小さく質素だった。
 ベッドが無いという事は、眠る必要がないのだろう。
 シヴァを椅子に座らせたアルファは、足元に跪いて戦闘帯を解いた。
「久しぶりやから愉しみたいねん。鎧も脱いでくれるかぁ…?」
「ぁ、ああ」
「んふふ、ほんま可愛いなぁ。こっちの方ではサービスもOKやぁ」
 鎧と服を脱いだシヴァより先に、アルファが全裸になって待っていた。
 足先まで綺麗な青色をしていたが、身体は人間と変わり無かった。
 ただし、逆鈎になった短い尻尾と、肩から背中にうっすらと鱗が生えている。
「なんやぁ…やっぱ人間には気持ち悪いんか?」
「いや」
 俯いたシヴァは、股間でそそり立っている自分の逸物に赤面した。
「本当に………可愛いと、俺は思うよ」
「ぁ…ほんまや。人間やのに、立派なペニスやなぁ…待ってなぁ、口でしたるわ」
 もう一度シヴァの前に跪いたアルファは、勃起した逸物に指を添えて、舌先でちろちろ…と擽るように舐め始めた。
「うっ…く」
「可愛いわぁ…ひくひくしよったで。ごっつ、気持ち良くしたるさかいなぁ」
 それからしばらく、シヴァは椅子から降りる事も出来ずに仰け反った。
 亀頭をくわえたまま舌先で尿道を突かれ、精袋も丹念に揉み解される。
 裏筋をざらついた舌が這って、肛門も同時に弄られる。
 アルファの舌は、人間の倍以上の長さがあるようだった。
「んちゅ…汗臭いシーダーの匂いが好きやねん。仲間では未通娘も居るけどな、うちは男に抱かれるのが好きやねんもん」
 玉袋を含んでしゃぶるアルファは、濡れた瞳でシヴァを見上げる。
「なぁ…気持ち良いかぁ…なぁ…」
「凄い、上手…だ。こんなの、初めてだ」
「テクの年季が違うんや………20年ぶりやから、兄ちゃんには一杯したるよって」
 アルファはシヴァが達しそうになると、尿道の付け根を押さえて射精を防ぐ。
 ぷぁ…と口腔から吐き出された逸物は、涎に塗れてびくびく痙攣していた。
「ふふ、良かったやろ?」
「アルファ…俺、もう」
 アルファは腰掛けたシヴァの腰に、ゆっくりと跨がった。
「解っとる。目一杯…出しいやぁ。我慢せんといいからなぁ」
 余裕を持って挿入されたアルファの膣内は、ひんやりとして蜜が溢れていた。
 人間とは違う異質な感触に、放ち掛けたシヴァは尻を窄めて堪える。
「イッてもええんやで…? 兄ちゃんがイッたら、うちも同時にイケるんやぁ」
「いや…もう少し、動いてて」
「なんやぁ…兄ちゃんも結構好き者やんか。ええよぉ…一緒に気持ち良くなろな」
 淫らに微笑んだアルファは、尻尾をくねらせながら尻を蠢かした。
「えらい胎で引っ掛かる感じやぁ…兄ちゃん、精霊泣かせの物持ちやわぁ」
「ま、待って…そんな動かれたら」
「もぉ…止まらんて、ほんま…うちも感じてきてもぉたわ」
 アルファはシヴァに跨がったまま、椅子を軋ませて尻を振った。
「待ってな、待ってな…うち、ほんまにいきそうやねん。こんなん…100年ぶりなんやからぁ」
 唇を噛んだシヴァは、激しく動くアルファの尻を掴んだ。
「あっあっあっ…ぁ…ええよ。きて、今やから…イッて」
 青い乳房に顔を埋めたシヴァは、堪えていた分思い切り射精した。
 粘膜摩擦で熱っぽく茹だった精霊の膣に、塊のような粘液が放たれた。
 堰切った射精は、びゅるびゅるにスペルマをアルファに流し込んでいく。
「ぁ…熱ぃわぁ…それに、濃ゅい…ザーメンにたっぷりソルが含まれとる………」
 久しぶりの快感に尻をひく付かせるアルファは、忘我のシヴァからEXPを抜いた。
 身体の奥深くからEXPを抜き取られる感触は、一種射精に酷似した快感だった。
 シヴァは精霊の尻を抱いたまま失神した。
「は…ぁ。後免なぁ、あんま感じたもんでEXP抽き過ぎたみたいやわ。人間相手にこんなん感じたん、初めてやってんもん。暗黒剣の他にもサービスするやってん、勘弁してぇな。せやから、EXP抜きでええから、もっかいシヨ?」
 そこで、アルファはシヴァが気を失っているのに気づいた。
「………ま、ええわ。起きる頃にはあっちも回復するやろし」
 アルファは暗黒剣に売約済の札を貼ると、満足気な微笑みを浮かべた。








Presented by 竜園


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