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Side Story





Are you warmonger? Or are you war"monkey"?



Presented By-滑稽

「と言うかさ、何でギルマスの俺が知らない間にギルメンがまた増えてる訳よ？」
プロンテラ裏路地、いつもの溜まり場。
「俺に加入権限与えたのアンタでしょうが」
「下半身直結は君もだった、って事だぁね」
「ええい、うっさい」
先だって勧誘―する気もなかったんだが、何故か懐いた―したアサ子を連れて溜まり場に来ると、ギルドマスターは新しいギルメンだろう、うら若い商人の娘と何かしら駄弁っていた。
「や、初めまして」
「あ、ども。初めまして」
「そこの人格破綻プリのメイン相方と当ギルドの副ギルマスやってます。よろしく」
「こ、こちらこそご丁寧に、どうもです」
「んで、こちらが何か貴女と同時期に当ギルドへ参入希望されたアサ子さん」
「…何だ、ここのギルマスはロリコンかよ。ま、いい。お互い新参者同士、仲良くしようぜ？」
悪態をつきながらも、それなりの挨拶をするアサ子。
商人の娘さんに対しては悪くない挨拶だが、その前がちょいと問題だ。
「誰がロリコンなのかな？お嬢さん」
アサ子の腕を掴もうとする動きを察知して、アサ子の襟首を掴んで後ろへ倒す。
「おわ!?何しやがる!!」
「…そこのギルマスは老女以外なら何でもいい、って廃ブリッドだからな。迂闊に近寄ると妊娠するぜ？」
「げ」
思わず一歩引くアサ子。
「ええい、この性騎士め。偽善者っぷりは健在か」
「やかましい。この前のアンタの妄言に期せずして沿っちまった俺自身が情けなくてな。社会奉仕に暫く生きようか迷ってる」
「無理無理。まぁ別段ヤバイ事はしないよ。…って何で隠れるのさアサ子さん」
「…アンタなぁ。そのわきわきした手は何だ」
「おいそこの廃クルセ。この娘さんに何仕込んだ」
「むしろ俺はそのマーちゃんに何仕込んでたか聞きたいんだがな？」
睨み合う、野郎二人。
「…ふむ」
「ちっ…」
同時に視線を逸らし、同時に苦笑。
「ま、いい。取り敢えずこのアサ子は俺の。貸さねぇぞ？」
「な、いつ誰が誰のモノにっ!!」
ぽ、と少女よろしく頬を染めるアサ子。
「誰が貸せっつったよ。一回その胸に手を埋めてみたかっただけさ」
「却下」
「ちぇ。…ところで、何よその見るからに廃装備」
「むしろ先に気付け。…集めてたんだよ、コツコツと」
「時給２０Ｍは下らないってのに…このオトコは」
「に、にじゅっ…!?」
「めが？」
絶句するアサ子、疑問符を浮かべるマーちゃん。
「い、１Ｍは１００万だ」
ご丁寧に説明するアサ子。
「２０Ｍはその２０倍…に、にせんまん!?」
「まあ、趣味装備なのは認めるが…。兄さんこの前のシルクハットはどーしたよ？」
と、視線をすっと横に背けるギルマス。
「…またか」
「「また？」」
同時に疑問を投げかける新米二人。
「…当ギルドギルマスの最新情報を教えよう。装備が果てしなく廃クオリティ…なのはまあ御約束として。…特技、女コマシ、下半身直結思考。趣味、ホルグレンに装備を貢いでカンカンクホホ」
「…うわー…」
「？」
心底憐れみの視線を向けるアサ子と、やっぱり何の事だかイマイチ判ってない様子のマーちゃんと。
「ええい、そんな目で見るな」
「…いいじゃねぇの。憐れんでもらえるだけ幸せだと思おうぜ」
「…で、だ」
こちらのツッコミは無視し、ふと真面目な顔でアサ子さんに向くギルマス。
「…アサ子さんはこのウォーモンガーにどうコマされたクチ？」
「張っ倒すぞこのエロギルマス」
「んじゃヤってないのかね？」
「いや、ヤった」
「…意外だね。この殺人鬼に殺戮以外の趣味があったのか」
「あーんーたーなー…」
ひきひき、と引き攣る米神。
「ま、いいじゃんか。それよりさ―」
「ああ、ちょっと待った。チャットルーム作るわ」
きゅぽん、とペンを取り出し、壁にささっと書き殴る。
そこに手を重ねる事で、周囲の雑音が消える。それがチャットルーム。
ぽん、ぽん、ぽんと立て続けに音。
「…題名の書き直しを要求する」
「やだ」
書かれたのはただ一つ。『ギルマスは女性の敵』。
「俺程の紳士はそう居ないぜ？」
「…ほほう？と言う事だけど、紳士的な扱いをしてもらってるかな？娘さん」
「え？えっと、あの…えっと…」
「…この様子が全てを物語ってる、ということで」
「…後でもう少し教え込まないとなぁ」
「ったく。この下半心」
「微妙に変換が違う気がするのは気のせいか」
「…むしろこっちの変換のが正しいしょ」
「むう」


「へっへっへ…。思い知らせてやる」
路地裏を覗き込みながら、だらしない笑みを浮かべる男。
どうやら路地裏に座り込んでいる男のどちらかを見ているようだが、虚ろな視線の所為かどちらを見ているのか定かではない。
「こ、こここいつでモンスターを呼び出して…チャットルームを仕舞う前に襲い掛かってやるるる」
と、懐から取り出したのは一本の枝。
それを力任せにへし折る。
と、そこからにじみ出た魔力が、何処かとここと空間を繋ぐ。
そして、現れたのは―
「私を呼んだのは貴様か、人間」
巨大な―
「し、ししししししんえ―」
「では死ね」
ぐばぅん、と。
最後に彼が聞いたのは、体の内外から響くそんな重い音だった。


「あ」
最初にそれを見つけたのはギルマスだった。
「ん？」
振り返って、その視線を追う。
「…げっ!?」
「ひ!?」
女性陣は一瞬で度肝を抜かれたらしい。
黒い馬、黒塗りの馬具、黒尽くめの巨大な鎧。
「おや、深淵の旦那じゃん」
「人里に出てきた…ってぇか、テロか」
「んだな」
世の中に出回るアイテムの中でも、使い方次第で色々と人騒がせな事が起きる。
これはその一例。
「あーあ、逃げ回ってやがら」
「まー、真性廃な連中は今頃殆どニブルに遊びに行ってるだろうからねぇ」
古木の枝と呼ばれる、モンスター召喚アイテムの効果だ。
「あ、アンタら何落ち着いてるんだよ!?」
「な、何なんですか!?アレ!!」
「深淵の騎士。グラストヘイムを根城にする騎士さんでな。中々にイカシた戦闘力の旦那だよ」
「中々!?思いっきり化け物じゃねぇか!!」
悲鳴じみた異論を無視して、その光景に見入る。
「しかし、阿鼻叫喚だが…」
「こっち来られると鬱陶しいな」
「…どうする？支援くれるかい？」
「装備何よ」
「んーと…タラ盾とレイドとババア」
「得物は？」
「殺戮単細胞」
「おっけ。いってらっしゃい」
「ち。やっぱりソロで狩れってかい」
溜め息をついて、意識をチャットルームから引き剥がす。
むく、と立ち上がり、聞こえるように一言。
「ようようそこのイカレた鎧の旦那さん。俺といっちょ遊んでくれない？」


チャットルーム内。
「おいギルマスの旦那!!あ、アイツ一人で行かせて大丈夫なのか!?」
「だいじょーぶだいじょーぶ。彼は真性の戦闘狂だからね。あの挑発だって無駄にしている訳じゃないよ」
「で、でも…」
「あ、まあ取り敢えず腰を浮かす準備はしておいて。彼が逝ったらこのチャットルーム放棄して―」
俺逃げるから、とギルマスが発言しようとした矢先、
『あ、俺が負けたらそこの廃プリ盾にして逃げてね』
ギルドチャットで死刑宣告が。
「…」
「…」
『…何と言う非人道的な発言をしますか、君は』
『順当な戦力比較だよ』
『支援プリに何が出来ると』
『つーか俺の取りこぼしくらいなら根性で叩け』
『ああもう』
『…ってか、深淵ったら最強クラスで有名なんじゃないのか!?』
突如会話に割り込むアサ子。
『あー、うん。群れでこられたらキツい。確かに』
『って!!』
『まあ、見てなさいな』
と、平然と剣を振り上げる。
「ホーリークロス!!」
十字に彼が剣を振り抜く。
刹那。
騎士の左腕が弾けた。
「はぁっ!?」
目を丸くする、新参二人。
『兄さん兄さん。お嬢さん達怯えてますが』
『んなまさか』
苦笑する彼の二撃目は、騎士の乗っている馬を一瞬で文字通り『四散』させた。


「これでよし。見下ろされるのって好きじゃないんだよね」
「…貴様…」
騎士殿はどうやらご立腹の模様だ。
怒りに我を忘れて防御が疎かな事この上ない。
「死ね。死ね！死ね!!」
ごすごす、と打ちつけられる槍。
中々痛い。
「あー、戦ってる実感があるって、いいねぇ」
一応自分が戦闘狂だと言う自覚はある。
『ってかさ、オートガードは!?ちゃんと防がないと殺されるだろ!?』
アサ子の至極もっともな意見。…だけど。
『いやそれが…盾スキル無いんだよね』
『…は？』
『この人さ、攻める事しか考えない突貫クルセイダー』
『とっかん…』
『ホーリークロス、グランドクロス、デーモンベインにバッシュ、マグナムブレイク。攻撃技能はどれも極めてるけど、防御技能はからっきし』
『攻撃は最大の防御!!…ってね♪』
『…ヴァカ？』
『うっさい。後で虐めるぞ』
取り敢えずは集中。
「せーのっ!!」
ホーリークロスを連発する。
「こ、このっ…!!」
騎士殿が大きく槍を後ろに引いた。
『ブ…!!』
ずどん、と打ち出される強烈な槍の一撃。
『ブランディッシュ・スピア!?』
「せいか〜い。…痛ったぁ…」
痛い。激烈に痛い。
「もう許さん」
いや、最初から許すつもりもなかったが。


再びチャットルーム内。
「な…っ!?」
「しかしタフだよねぇ。普通なら即死決定なんだけど」
呆れ声のギルマス。
「すっごぉい…」
「む」
キラキラと目を輝かせるマーちゃんに、剣呑な目を向けるギルマスとアサ子。
「お」
と、青年が何度目かのホーリークロスを叩き込み。
ガラガラと鎧が崩れて消失した。
『ちぇ。カードでねぇや』
『出たら俺はきっと君を殺してる』
『おいおい』
苦笑。
取り敢えず地に落ちた馬の手綱を拾い上げ。
こちらに戻って来たクルセイダーの青年が入って最初の一言は、
「ちょっと待て」
だった。
「何さ？」
「書き直しを要求する」
何時の間にかチャットルームの題名が書き換えられている。
「やだ」
「いや、戦闘狂なのは認める。認めるけど…コレはないだろぉ!?」
「やだよん」
「喧嘩売ってるのかこの廃クホリン」
「そんな馬鹿な。殺戮と血に餓えた病的クルセイダーと殴り合う度胸は私にはないのですががが」
「売ってるな？売ってる。売ってると決めた。てゆーか断定した」
「Ｐｖ行くかい？」
「行かいでか」
二人、チャットルームを抜ける。
『取り敢えずついてくる？飽きさせない自信はあるよ』
ギルマスの言に、
『あ、あのあの…。何で副ギルマスさんはそんなに怒ってらっしゃるのですか？』
間の抜けた質問を返すマーちゃん。
『…チャットの題名をよく見てみよう』
取り敢えずそれだけ告げて、後は振り返らない。
『お、おい!!ちょっと待てよ!!』
慌てて追ってくるアサ子。
『？？？』
そのままの姿勢で題名と睨めっこを続けるマーちゃんに、ギルマスが仕方なく助け舟を出す。
『…戦闘狂を俗に「Warmonger」と言うんだがね？』
『はい』
『何て書かれてる？』
自分で書いたので、それを説明するのは何かと恥ずかしいものだが。
『あ』
そこにはこう書かれていた。

―副ギルマスはＷａｒｍｏｎｋｅｙ

と。


　Are you warmonger? Or are you war"monkey"??






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