Ragnaroku OnLine
ラグナロクオンライン
読切 Side Story






ARENA-ROOMへようこそ♪











「………こんにちは、ラグナロクオンライン運営チームです。
 お楽しみのところ失礼いたします。
 現在、こちらのマップでパトロールを行っており、ランダムでユーザーさまに耳打ちを行っております。
 お返事いただけない場合、アリーナルームへお越しいただくことになりますが、よろしいでしょうか?
―――ARENA-ROOMへようこそ♪」





「―――………んっ」
 頬に触れる冷たい感触。
 濡れたような唇から、意味の無い吐息が漏れる。
 身体を締め付ける、何時もの感触。
 騎士としての誇りであり、既に躯の一部となった甲冑の重み。
 だが、何よりその感触に、彼女の意識は急速に覚醒していった。
 既に何年にもなる冒険者としての生活の中で稼いだ、一般人には手が届かないほどの資金を投入して鍛えられた、自分の甲冑の感覚を忘れる訳が無い。
「…ッ!」
 うつ伏せに横たわる自分の状況を確認する前に、後ろに跳ねるように身構える。
 がしゃがしゃと五月蝿い甲冑は、やはり自分のメイルオブイフリートではありえない。
 毎日の手入れを重ね、獣脂を塗り込まれたメイルは、纏い手の動きをトレースするように極限まで動きを妨げない。
 片膝を立てて蹲ったまま、自分の状況を確認する。
 靄がかかったような頭の中で、無意識に自分の装備を確認していく。
 鎧―――は、見ないまでも解る。
 古城に潜むMOBから自力で刈り取ってきた神代の甲冑ではなく、粗雑な店売りの鎧。
 それも未精練状態のメイルであった。
 頭に冠った兜も、ウィローカードを刺した高精錬ヘルムではなく、店売り品である。
 盾、はもとより所持していない。
 彼女は力の劣る自分を補うために、両手剣を使用しての高速攻撃を得意技としていたのだから。
「何てこと」
 吐き棄てるように呟く。
 モッキングマントも、グリーンブーツも、全てが店売りの品に変わっていた。
 外見は同じでも、案山子と同じである。
 バックパックに入っていたのはミルクが数本、後は狂気ポーションだけだった。
 自分は性質の悪い詐欺にでも引っ掛かって、身包み剥がされでもしたのか?
 大体、ここは何処だというのだろう?
 周囲を見回す。
 薄暗く、レンガのような石造りの玄室。
「スフィンクスダンジョン?」
 そこは、現在の彼女のメイン狩場であった。
 王家の守護者、スフィンクスを象り、内部に凶悪なモンスターを抱え込んだモロクの遺跡。
「ゆっくり寝てられる場所じゃないか………まず、街まで戻らないと」
 溜息をひとつ吐いて立ち上がる。
 それは、気合を入れるためと、未知の状況に置かれた恐怖を誤魔化す呪いだ。
「蝶の羽を使って」
 意識せずに腰のバックに手をやるが、そんな物が無いのはさっき確認している。
「しっかりしなさい! 私」
 何故、ここに居たのか?
 何故、ここに居るのか?
 狩りに来た途中で、怪我でもして倒れていたのか?
 それならば、意識を失った時点で、なぜ街まで自動的に転送されなかったのか?
「スタン? 睡眠? スキル攻撃………?」
 自分がスフィンクスダンジョンに居るのは、何もおかしくはない。
 古代アクセサリーを装備できる資格のある自分には、むしろヌルイとさえ言える狩場。
「あ………確か、私、ゼニーを稼ぎに」
 そう、まとまった銭が必要なので、ギルドからもPTからも別れて、ソロで籠っていたのだ。
 そして、カードを求めて、四階で狩りをしていた、筈。
「確か、そこで誰かに」
 ―――話しかけられたような、気がした。





「ッ」
 地面を震わせる足音。
 それも、多数の、聞きなれた響き。
 玄室の奥から、待ち構えていたように沸き出してきたのは、ミノタウロスであった。
 下半身は牛、上半身は人、そして容貌も牛そのもののモンスターである。
 分類は人型とされるMOBだったが、とても人の種類として許容できるMOBではない。
 口から零れ落ちる涎。
 血走って狂気に歪んだ眼に、呆然と立ち尽くした騎士子の姿が映る。
「!!!」
 その雄叫びは、人の発音できる声でも、言葉でも無かった。
 蹄を打ち鳴らし、雪崩れのように騎士子に襲いかかってくる。
 騎士として、彼女の行動は最適化されていた。
 片手で地面に落ちている剣を拾いあげ、片手でバックから狂気ポーションを取り出して一気に呷る。
 喉の奥に広がる熱と苦さに一瞬怯みながらも、剣を両手に構えてスキルを発動させる。
「Twohand Quicken!」
 四肢に宿る神速の力が、手にした剣の重みを羽のように変える。
「何これっ、アイスカタナ?」
 今更気づいた自分が馬鹿なのだろう。
 それは何本も砕いて高精錬したアイスクレイモアではなく、折れてしまいそうなカタナであった。
 だが、両手剣であっただけ、幸いと言うものだろう。
 習得したスキルは武器を選ぶ。
「剣さえあるならっ」
 ダース単位の数のミノタウロスの、先頭の一匹に斬りかかった。
 一撃目は石のような皮膚を僅かに削っただけ。
 ニ撃目は僅かに抉っただけ。
 だが、それが目にも止まらぬ速度で、連続でミノタウロスの身体に叩き込まれた。
 二匹目がたどり着く前には、刻まれたミノタウロスの死体が、地面に倒れかかっている。
 左右から、二匹のミノタウロスが、獲物である巨大なハンマーを同時に振り下ろす。
 床を砕く大振りな一撃は、彼女に擦りもしなかった。
 風に乗った踊り子のような動きで、躱し、捌き、剣を振るう。
 だが、二匹を捌き切る前に、後続のミノタウロス達が詰め寄ってくる。
 幾ら回避力に優れていても、囲まれてしまえば限界は訪れる。
 だが、騎士子は焦らず恐れず、一歩一歩後退するように、足捌きだけで剣を振るいつつ躱していく。
 モンスターの集団が団子のように連なり、壁に追い詰められた騎士子に詰め寄る。
 だが、その口元に笑みが浮かんだのは、気の所為ではなかった。
「爆け飛べ―――Bowling Bash!!」
 力任せの渾身の一撃。
 それは相手を切り裂くための斬撃ではなかった。
 最初の攻撃を受けたミノタウロスは、玩具のタマのように弾き飛ばされる。
 そして、それは後衛の同族を巻き込んで、嵐のように衝撃を貫通させる。
 無論、一撃で倒れるような軟なMOBではなかったが、連続で撃ちつけられる衝撃に、その生命力を削り切られた。
 残敵を僅かばかり剣を合わせて切り伏せた騎士子は、大きく溜息をついて胸を撫で下ろした。
「連鎖して、良かった………」
 剣を降ろしたその姿に、隙が合ったとして責められる冒険者は居ないだろう。
 空間から滲み出るように、背後に現出したミノタウロスは、大きくハンマーを振りかぶったまま呪詛のような呟きを漏らす。
「横、沸きっ」
 振り返り様剣を叩きこむ。
 四肢に満ちた神速の力は切れていたが、掛けなおすだけの時間は無い。
「 …ash!Bashッ!!」
「―――HAMMER FALL…」
 頭上のハンマーが地面に叩きつけらるのと、騎士子の剣がミノタウロスの生命力を削り切るのは、同時であった。
 地面を伝播した魔法の衝撃波が、騎士子の身体中を走りぬけてその機能を痲痺させる。
「………く、ぅ」
 ぺたん、と地面に座りこむようにスタンした彼女は、剣を取り落として今度こそ完全に気を抜いた。
 壁に倒れこんだミノタウロスは、塩の柱のように輪郭を崩してこの世界から消えていく。
「こ、れだけは、慣れない、なぁ…」
 タイマンの時にスタンしても、殴り殺される前には回復する。
 だが、モンハウ状態でスタンすれば、それはカプラ救済サービスの手を借りることになる。
 早さを、攻撃力を求めた代償として、その身体に耐性は無い。
 ―――だから。
「………う、そ」
 ―――その四肢が神速を取り戻すその時に。
「…や、めて、よ」
 ―――届く事は無い。
 壁に映った松明の影が、二本の角を突き立てた異形の影が、騎士子の背後に立っていた。





「ぅ…そ、イ」
 実際、何故モンスターが人間を襲うのか、その理由は解明されて居ない。
 理由は種類によって様々なのだろう。
 自分の縄張りを守るため。
 捕食するため。
 闘争本能に駆り立てられて。
 ―――だとすれば、ミノタウロスを行動に駆り立てている本能は何なのだったろうか。
「イ、やァ!」
 ベロン、と口蓋から垂れ落ちた舌が、うつ伏せに倒された騎士子の、太股を舐め上げる。
 自由の効かない騎士子の姿勢は、両手を床に投げ出した、神に許しを請う殉教者のように四つん這いにされている。
 ミノタウロスも騎士子の背後に蹲り、両手でその黒いニーソックスに包まれた太股を、小枝のように容易く握り締めて固定する。
 そして、輪の填められた鼻先を、騎士子の股間に押し当てる。
「ッッ…ひ!」
 下着越しとはいえ、その冷たく濡れた感触に、悲鳴のような呼吸が漏れた。
 彼女の性器を覆う薄い生地が、冷たい鼻輪の感触と共にぐいぐいと押し付けられる。
 その行為が、匂いを嗅ぐ動物の仕草だと悟った瞬間。
 羞恥に意識が焼き切れそうになる。
「止めて! やっ…や」
 スタンしているはずの騎士子の背中が、ビクン、と震えた。
 太股を味見するように這い回っていた舌。
 その、赤子の腕ほどもあるミノタウロスの牛の舌が、白地のパンティを捲り上げて騎士子の女陰に宛がわれていた。
 そして、その先端は場所を間違うコトも無く。
 騎士子の膣口に入り込んでいた。
「ァ…かは……ぁ? あ、ぁ」
 ずるずると、ためらうコトも無く肉の間を潜り抜けていく牛の舌。
 柔らかい舌先故に、解れてもいない襞を捏ねるようにしつつ、奥へ奥へと潜り込んでいく。
 騎士子にはミノタウロスの行動原理よりも、何故、そんなにも容易くその場所に侵入されていくのかが、解らなかった。
 彼女とて女としての機能が未使用だった訳ではない。
 むしろ、最近は頻繁でさえあった。
 それは不特定多数が相手ではなく、長年連れ添った相方のみが対象である。
 そして、彼女はようやく思い出す。
 何故、ゼニーが必要だったのか。
 何故、籠りつづけていたのか。
「ゃ………嘘ッ…それ、以上は…ダメェ!」
 ヌメヌメと、一個の生物のように胎内を進んでいた舌が、今迄進入される事の無かった領域にまでたどり着いていた。
 そして、それが当然のように、波打つ波紋のように舌を蠕動させた。
 ぼこぼことした突起のようにざらついた舌が、へばり付いた騎士子の肉襞を根刮ぎ擦り上げる。
 騎士子の背中が、方が、顎が、髪が、意思を裏切って痙攣を示す。
 ミノタウロスは掴んだ騎士子の太股を、T字からM字になるまで玩具のように押し開いた。
 それは、下着を巻き込んで騎士子の性器に埋められた舌を、更に奥へ挿れるための作業だった。
「何でぇ…嫌ぁ…どうして、こんなの…何で」
 舌が奥に入るほど、舌の付け根の太さは、増していく。
 だが、そんな手首ほどの舌をギリギリと埋められていって何故。
「………痛く、ない…のっ?」
 そればかりではなく。
 最初に容易く異物の進入を許したのは、最初から騎士子の肉体が、ある反応を生じさせていたからである。
 さらに、四肢の主導権は失ったままだが、五感は正常に機能していた。
 胸の奥、胃の奥で熱く蟠った感触までもが感じられる。
「速度ポット…じゃ、無かった…?」
 だとすれば、アレは何だったのか。
 なぜ、そんなものをじぶんがもっていたのか。
 なぜ、こんなにもおなかのおくがあついのか。
 なぜこんなにもおなかのなかでうごめいているにくのかたまりが気持ち―――イイ。
「…はァー…はァー…ァー……」
 舌が自分の胎内から抜け出していく感触に、騎士子は最初の絶頂に達していた。
 はっきりと泌み出している愛液を、肉襞ごと擦り落とすように、圧倒的な喪失感を与えつつ抜かれていく牛の舌に、尻を痙攣させてイッていた。
 鼻息を荒くして猛ミノタウロスは、騎士子を掴んだまま立ち上がる。
 玩具の人形のように逆さに吊るされた騎士子は、天井に向かってそそり立つ魔獣の逸物を見せ付けさせられる。
 しぬ、と思った。
 あれはむり、だと思った。
 明らかに人間とはサイズが違う。
 形状が違う。
 長さが違う。
 太さが違う。
 ミノタウロスは股間の前で、逆立ちするように吊るした騎士子の、穴を塞ぐジャマな布切れを剥ぎ取った。
 舌の蹂躙を受けた騎士子の女性器は、驚くほど柔軟にその肉輪を解し込んでいた。
 騎士子の握り拳。
 第二関節から折り曲げた、射拳のように押し当てられた亀頭が、べちゃりと股間に押しつけらる。
「ぁ…は?」
 人がズボンを履くように、騎士子がずるり、と持ち上げられる。
 自分の胎内に這入っている。
 それは棒というよりも、岩の塊だった。
 なんではいったんだろう?
 じぶんのそこはそんなにもおおきいのだろうか。
 それだけでも、驚くべき事なのだが、ミノタウロスにとってそれは挿入ではなく、亀頭を淫唇に潜らせただけだった。
「…あ?」
 ずるり、と膣の中ほどまでが膨らんだ風船のように膨張した。
「…あ」
 まともな神経ならば生理反応で筋が千切れていたであろう、その中を、肉の塊が押し進んでいく。
「…はぁ」
 自分の胎内の底の、突き当たりに的中って安堵した。
 もう、これ以上は無理であり、膣口をいっぱいいっぱいに押し広げている肉棒に、例え拳握り分の余りがあっても入れられる事は無い。
 だが、腰をスカートのようにガードしてた鎖帷子が捲れ、臍まで見えている自分の下腹部を見て気が遠くなる。
 外側からですら、ミノタウロスの逸物の形状が確認できるほどに、膨れ上がっていた。
「…や…ぁ、らさないで」
 膣の奥に沁透していく温度の違う粘液の放出に、頭を振りつつ訴える。
 ミノタウロスの逸物の先端から、膣口に宛がわれた時から粘々した体液が吹き出していた。
 だが、それは先走りの飛沫であり、精液ではない。
 例え、人の射精と変わらない量が、絶えず子宮に流し込まれていたとしても。
「んぁ、ぅ………くるし…つっつかないれ、むりぃ」
 それにどんな不満があるのか、掴んで掲げた騎士子の脚を、開いたり持ち上げたりして逸物の納まりを調整する。
 騎士子のヘソの下。
 白い雪原のような下腹部が、内側からミノタウロスの屈伸運動に合わせて、ぼこんぼこんと隆起を繰り返す。
 欲情し、涎をダラダラと垂らしながら小刻みに屈伸して蹄を鳴らすミノタウロスと、尻の底をめいっぱい天井に向けて拡げた姿勢で逆さに吊るされた騎士子。
 それは性交や陵辱というよりも、地面を掘削していく工事に似ていた。
 腸の位置ごと膣を拡張改良され、挿入された獣根に耐えられるように順応させられていく尻。
「…はぁー…はぁー…はぁー…はぁ〜…」
 恐ろしいほどの忍耐力で、単純作業を繰り返すミノタウロス。
 零れた涎の雫が、また一滴床に垂れる。
 ぴちゃん、と水溜りになっている粘液の塊。
 騎士子の格好は逆さのまま、先ほどとは逆向きに吊られていた。
 牛の殖栗が、ピチャピチャと騎士子の尻を叩いている。
 その卑猥な粘音は、騎士子の股間の間からも響き続けていた。
 ゴツゴツとした血管が浮かび上がった獣根が、ズルズルと穴から抜け出していくと、蹂躙に弛緩した騎士子の内側が一緒に捲り返されていく。
 ねっとりとした体液が絡み付いた獣根は、再び根元近くまで肉の穴に埋まっていく。
 その一連のスパンが次第に回転速度を速めていく。
 その先に何が待っているのか、騎士子は良く理解していたが、それを判断する理性は既に磨耗していた。
「…ぁー…ぁー……ぁ!…ぁ!…」
 身体の真下から突き降ろされるミノタウロスの巨根に合わせ、横隔膜が収縮し、呼吸をも犯されていく。
 甲冑がギシギシと軋む音と、自分が漏らしている呼気、それを圧するように響き渡るぬちゃぬちゃとした下腹部からの接合音。
 見た目よりもずっと柔らかい勃起の牛のペニスだったが、亀頭だけが鉄の玉のように堅い。
 矢尻のようにエラの張ったソレで掻き回される膣奥は、〆忘れた蛇口から漏れるミノタウロスの体液によって、聞くに堪えない卑猥な粘音を出させた。
 騎士子の脚をT字に抱えていたミノタウロスが、天井を見上げてガチガチと歯を打ち合わせた。
「!………〜ぁ…ィ!」
 胎内の底を殴られたに等しかった。
 塊のようなモノが、どっと、一瞬にして胎内に溢れる。
 僅かな隙間を残していた子宮を満たし、それでも限界まで拡張されている膣襞を逆流する事を許されず。
 ただ、薬と穿孔され続けて弛緩し拡張された膣を人牛の精液で膨らませた。
 例えるなら、温めた大量のベト液で膨らませた風船を、立て続けに胎内の中で破裂させる行為。
 ぐるぐると喉を鳴らしながら、ミノタウロスがゆっくりと肩を下ろしていく。
 騎士子の虚ろに潤んだ瞳に、自分の股間から生えていく巨大な獣根が写っていた。





「これはこれは、中々の素材ですな」
「然り、あのクラスのMOBを受け入れ、壊れない素材は滅多に居ない」
 薄暗く、澱んだ空気に流される毒の会話。
 どんなに穢れた迷宮の奥よりも、グラストヘイムの地下水道よりも、重く澱んだ空間。
 部屋のあちこちには深く沈み込むソファーと、それに埋まるようにした男たちの影が存在している。
「ほほ…まるで、引っくり返した桶のようですな」
「おっと、もう一匹追加か。壊しては元も子もあるまいに」
 部屋の中央に、大きな投射器が据え付けられている。
 そこには、股間から垂れ流した大量のスペルマに蹲った騎士子と、己の逸物を無理やり両手で扱かせて居るミノタウロスが居た。
 新しく横沸きしたミノタウロスも、騎士子を攻撃することなく、その場で勃起させた獣根を拡張されて外側に捲り反っている騎士子の性器に埋め込む。
 根元まで突き入れられた獣根に、騎士子の背筋がビクビクと痙攣する。
 その腹部は、鎖帷子を押し上げて、ぼっこりと膨らんでいた。
 最初のミノタウロスの逸物に縋り付いて身を捩るのは、肉体の生理的な反応に過ぎない。
「おお、もう熟れておりますな。正しく女性の躯は神秘」
「何を仰られますか。そのような扱いしか出来ぬから、貴公のBOTは長持ちせぬのです」
 パイプ煙草を咥え、頭にクラウンを載せた騎士風の男が鼻を鳴らした。
 年齢、職業は様々だが、部屋に集った者たちは、その全てが高額装備で身を飾った富豪のようであった。
『―――皆様、充分にご検分下さいましたでしょうか?』
 騎士子の歌うような嗚咽に重なって、性別不祥の声が響いた。
『この騎士は不正ツール使用、升によるゼニーの無限増殖、個人情報詐称により、アカウント停止処分になる素体であります』
 更に沸いた三匹目のミノタウロスが、早々に失敬した同族を押し退けて騎士子の背後に跪く。
 グローブのような手でその卵のような尻の肉を左右に開き、精液が吹き零れる股間に素股でヘソの底を擦るように逸物を宛がった。
『現在、レベルは98。AGI>STR>DEX型の両手剣スキルCompleteタイプ。性能評価はA+で御座います』
『イ…、はァ!………ぁ!ァ!』
 焦点を失っていた騎士子が、瘧にかかったようにガクガクと痙攣する。
 三匹目がその先端で突き刺していたのは、排泄器の穴であった。
「ふむ………確かに悪くは無い素体であるが」
「演出が過ぎるのではないかね? 勿体ない」
「ならば、降りるが宜しい。道具を愛玩する趣味は、私には無いのでね」
『それでしたならば、もう直に、我社の威信を掛けました転生システムの実装が御座います。まっさらな肉体、まっさらなスキル、まっさらなステータスでカスタマイズできる事を、お約束致します』
 文字通り腸を掻き回されている騎士子は、それでも痛みを感じる事を取り上げられたまま、その感触だけを肉体で受け入れさせられる。
「また、それか、公式、かね?」
 皮肉げな嘲笑にも、答えは無い。
「だが、まあ、良かろう。買おうではないか」
『誤解なさらぬように、お願い申し上げます。これはあくまで、廃棄アカウントの処理を皆さまに委託し、有効的利用の末に抹消して頂くことを目的とした事業で御座います。』
 モニターの中の騎士子は、尻を痙攣させたまま、メイルを剥がされてその肉体を曝け出すようにして吊り下げられる。
『―――それでは、100Mゼニーからの入札を開始致します』





「………やれやれ。凄いわね糞BOTerども、何アノ金額、ふざけてるの?」
 二つのモニターを同時に眺めていた魔法使いの娘が、呆れたように溜息を漏らす。
 一つのモニターには、男たちが嗤いながら競りを続けていく様子が。
 もう一つのモニターには、左右のミノタウロスに吊られたまま、背後から性器を貫かれている騎士子の様子が。
「でも本当、凄いわね。あの女………あんな、牛のペニスを挿れられてよがり始めてる♪」
 擬似迷宮訓練場の中での操作は、全てここから行なわれる。
「あのお腹っ…まるで妊娠してるみたいじゃない♪」
 射精されたまま尻を振り子の様に揺すられる。
「やれやれ………気は済みましたか?」
「フン、何で? 私が?」
「ああ、そうでしたね。善良なユーザーからのBOT通報、有難う御座いました」
 ウィザードの娘は、半分気を失った騎士子の映像を見ながら、振り返らずに背後の声に答える。
「何よ、皮肉?」
「いえいえ、BOT、不正ユーザーを駆除するのは、我社の業務で御座いますれば。通報、証拠SSの提出をして頂いた方への感謝は当然かと」
「で? 約束は守って貰えるんでしょうね」
「勿論で御座います。あのBOT騎士の装備、アイテム一式の寄与」
 プログラム通り、傷を与えないように細心の注意を払って、騎士子を犯していくMOB達。
「BOT騎士は記憶を抹消した上に、再プログラムをダウンロード。………さて? 再就職先は、SDか伊豆か」
「関係無いわ。興味も無いし」
 最後に仰け反って絶頂に達している騎士子の映像を一瞥し、画像を消去した。
「………どうせなら、現金に替えてくれない? 面倒くさいし」
「相場の五割になりますが」
「構わないわ。あの女の匂いが残ったものを、持っていたくないの」
 それだけで、一生は遊んで生活せるゼニーの袋を担ぎ、その空間から出る。
 最後に、唇だけが笑みの形に歪んだ。
「―――サヨウナラ。姉さん」





「―――ふう」
 首都プロンテラは今日もいい天気だった。
 商人の喧騒。
 冒険者の小競り合い。
 小規模なテロ。
 狩場に向かうパーティー。
 清算場の悲喜交々。
「お兄ちゃん♪」
「…っと、ビックリした」
 背中から、抱きつくように寄り掛かられ、座り込んで空を見上げていたプリーストの男が頬を掻いた。
 その柔らかそうな栗色の髪を、抱きついたウィザードの少女が撫でる。
「どうしたのよぉ? 溜り場で一人きりだなんてぇ」
「嗚呼、ギルドの皆は、ほら…狩りにいってるからさ」
 気を使ってくれているのだと、自覚していた。
 だが、気力が沸かない。
「―――お姉ちゃんの事が、気になってるの?」
「あ、いや、まぁ…そうなんだけど」
 それは、結婚の約束を交わした、婚約者とも言える女性。
 お互いに、一時職の頃から、ずっとペアを組んできたパートナーだった。
 結婚のための、常識外れとも言える資金を稼ぐために、お互い金銭効率を優先して狩りをしていた。
 それが、帰って来ないのだ。
 一週間前から。
「参ったよ…WISも通じないなんて、今迄なかったのに」
「ふぅん、ね? それってさ―――お兄ちゃんとの結婚が嫌、になったんじゃないの?」
 背中に抱き突いているからこそ、感じる震え。
「実は、サ。私も相談受けてたり、したんだよね」
「なっ」
「ちょっと………勘違いされてるかも知れない―――って」
 息を飲む、その気配が解る。
「それでも、待つよ。ぼく達は、パートナーだから、ね」
「ッ………そ、そう?」
 唇を噛み締めて、兄と呼んだ男から離れる。
「もう、帰ってこないかもしれないよ?」
「それでも、待つよ」
 俯いて、前髪に隠れたその口元が、歪んだ笑みに曲がる。
「そっかぁ〜、流石は私が好きになったお兄ちゃんだねぇ」
「こ、こらっ、お兄ちゃんと呼ぶのはいいとしても、その発言は誤解を招くだろう」
「なんで〜、いいじゃない〜。私がギルドに入って、ずっと面倒見てくれたのは、お兄ちゃんなんだし〜」
 にっこりと無邪気に頬笑んで、男の腕を取った。
「ね? また狩りに連れてってよぅ」
「だけど、彼女が戻ったら…」
「ギルチャで報告ぐらいするでしょ? お姉ちゃんも―――そぅ」
 強引に出れば断れない。
 そんな性格は解りきっている。
 ―――だから、この人はワタシのモノだ。
「案外、狩場で見かけるかもネ?」





 無機質な、生活の匂いと言うものが一切無い空間で。
 ただ、周囲の機材とは温度が違うだけの、一個の機械が立ち上がった。
 その成熟して見事に引き締まった躯を、恥じらいも無く晒し、全裸で床に跪く。
「ごめいれいをくださいごしゅじんさま」







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