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彼は聖堂に篭もって神に祈りを捧げ続ける道を捨てた。
自ら野に下り、己が力が『世界』に在ってはほんのちっぽけなものに過ぎぬと理解するに至る。
そして彼は一人の友人とギルドを立ち上げた。
名は『双つの月』。
ありふれたギルドだ。何ら特別なものがある訳でもない。
未熟なアコライトと未熟なソードマンが立ち上げた、そのギルドは今や。
十五人を超えるギルドになっている。








  黒のカタコンベ
    第十三幕
      「下層・Side『双つの月』」


                               
滑稽





パキーン!
ガガガガガガ!
パキーン!!
ガガガガガガガガガガガ!!
「?」
妙な音が聞こえてきたのは、彼らが都合五つめの階段を下りようとした頃だった。
我知らず構えを取るメンバー。
その間も音は次第に近づいてくる。
見たこともないようなモンスターに山ほど遭遇した彼らだ。
それらを退けたように、今度も。
そう思った彼らの眼に映ったのは、物凄い勢いの―
「ちょ―!ちょっと!停まって!!居た居たっ!!!」
カートを引くペコペコだった。
「おっけーっ!」
「ちょ!きゅ、急に停まるなァーっ!?」
「うわ!?」
ペコペコが急ブレーキをかける。だが後ろのカートには当然ブレーキなどなく。
不幸だったのは、ペコペコが体を斜めにする形で停まったこと。
ペコペコの体を支点にして、それでもカートは流れて急停止し。
遠心力も手伝って、中に乗っていた二人を外へと放り投げた。
「うわ!?きゃぁぁぁぁ―ぶっ!」
自分の方に飛んできたそれを華麗に避けて、ラガは目を丸くした。
「クウさん、ラヴィさん、リョウさん。…なんでここに?」
「追ってきたんだよ」
一人無傷な騎士―リョウがにこやかに答える。いや、それは判るのだけれども。
「僕一人だったらもっと時間がかかったかもしれないんだけどね。二人の協力を得られたお陰で、こんなに早く♪」
「…さいですか。
答えに困る。というか、背後からの視線が痛冷たい。
「つまり、僕のロジャーにラヴィさんのカートをつないで、クウさんが路面を凍らせる。そして二人がカートに乗り込んで、僕がロジャーで引いたのさ」
「ふむ」
増大する殺気。にこやかなリョウ。ラガは二歩ほど右にずれた。
「ああ、モンスター?そりゃそうやって加速つけてたら追ってこようにも追い切れないと思うよ?いや、ほら貴族が使うペコ車をヒントにしたんだけべっ!?」
「殺す気っ!?」
端的、かつ判りやすい発言ではあった。
持っていた本をリョウの顔面に叩きつけ、クウは怒声を吐き出した。
「ゆっくり停まらなきゃアタシ達が死んじゃうぢゃないのよっ!?」
「しゅ…しゅみましぇん」
鼻を押さえ、涙目で告げるクウの顔は、そりゃあもう痛そうだった。
「ヒール」
「ありがとラガさん♪」
リョウも鼻血を流しているが、この際無視だ。
「さぁて…。ラヴィさん、どうしよう?」
「…ペコ二匹による股裂き」
「そ、それはちょっと」
半眼でぼそりと告げるブラックスミスに、水を向けたクウでさえ引く。
「…局部に化け物の餌をつけてストリーキング」
「それも…。女性だっていることですし」
…そういう問題ではない。
「…耳を横向きにナイフで切れ目―」
「だからそんな―」
「いっそこの際さくっと殺―」
「それは許され―」
「じゃあ男色のインキュバスの群れ―」
「どうやって探すんで―」
随分後。
「じゃ、じゃあそういうことで…」
「は、はい…」
二人して息も絶え絶え、やっとリョウへの報復内容が決定した時には。
「じゃあ、リョウさん。ここはハイビスカスとウェディングドレス姿でギルドメンバーの前でベリーダンスを…」
「あれ?」
ギルドの面々は既に階段を下りていた。


階段下。
二人が会話を終了したのと、ちょうど同じ頃。
リョウを加えた双つの月の面々は、のんびりと彼等を待って…いる余裕はなかった。
「…ミノスケ、とでも呼べばいいのかね」
「さあて、ね」
「ひゅごおおおおおおおおおお…」
骨の隙間から大量の息を吐き出しつつ、牛の骨が次から次へと彼等に襲い掛かってきていたのだ。
「行くぞ、Dさん、リョウさんっ!!るああっ!!」
「了解だ!」
「くらえええええっ!!」
三人の騎士が並走して骨を見る間に吹き飛ばし。
「いかなミノタウロスの骨とは言え、アンデッドならシキさん!」
「はいな!」
「こっちもやりますね」
詠唱を始めるシキ、ユウナ。
「ストームガスト!」
「マグヌスエクソシズム!」
二つの大規模魔法がミノタウロススケルトンの動きを止め、更には浄化する。
「さあ、この歌で更に頑張って!」
テイルの歌が全員を奮い立たせ、
「ひゅっ!」
「穿てッ!!」
「動くんじゃないっ!!」
ヴァッヅの矢が。
レベリオンの気の塊が。
アティの鈍器による殴打が、がすがすと数を減らしていく。
「すいません、遅れまし…げっ」
「い、急いでラヴィさん!」
そんな折に下りてくる二人。
だが。
「…終わった、かな」
ちょうど最後のミノタウロススケルトンがリョウの槍に吹き飛ばされ、戦闘はひとまず終了した。
「あ、あはは…」
「…」
全員の目が冷たい。
「ま、まあ一応集合したから、行こうか」
「そ、そうだねラガさん」
「シュウさんとの合流はもっと下?」
「…その予定なんだけどね」
はぁ、と溜め息をつくラガ。
このダンジョンは色々な意味で普通ではない。
ちゃんと合流できるのか、心配にはなる。
「行こう。約束は最下層だ。随分下りたし、もう少しで合流出来るさ」
そう締めると、ラガは率先して歩き出した。
あのクルセイダーは必ず自分達を見つけ出す。
そう信じていた。
根拠は全くなかったが。


続く










後書き
ども、滑稽です。
登場人物が多すぎるデスヨ…。
今回ちょっとだけ書きましたが、どうにも動きを書きにくいですねえ。
ちなみにミノタウロススケルトンに関しては、昔暖めていたROのネタが元だったりします。
今回やっと出せた訳で、ついでにごつミノスケも出してみようかな…と画策中です。
では、また次回。






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