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「愉しんでるか?あぁ!?先達よォ!」
「当然だ!貴様はどうだ!?新米!!」
「しゃらくせえこと聞いてんじゃねぇって!!」
スカルヒーローの一撃がプレートアーマーを抉り。
シュウの強打が盾を穿つ。
足を止めての後退知らずの斬り結びは、既に二十合を超えていた。
「どうらァッ!!」
剣同士がぶつかり合い、互いの腕を浅く裂いても。
「はぁっ!!」
片方の剣を兜で受け、その隙に腹を突こうと。
「ッしゃあ!」
砕いた筈の骨腕が再生してしたたかに顔面を張られようと。
「この程度では!」
「終われねえよなァ!!」
ヒールで軽傷を癒す。その最中に頭突きを敢行して新たな傷をこさえつつ。
シュウは確かに笑っていたのだ。









  黒のカタコンベ
    第十四幕
      「シュウ・Warjunkie」


                               
滑稽





ざぐ。がぎ。ずじゃ。ばご。どか。ごず。
「化け物だ…二人とも」
ナッツはそうぼやいた。
シュウの一撃はとてつもなく重い。スカルサベージを一撃で文字通り粉砕するクルセイダーなど、彼は自分の生涯で彼以外に見た事がないし、先の混戦の際にも彼以外にそんな一撃を繰り出すクルセイダーは居なかった。
それを受け止め、更には打ち返し、そして互角に渡り合う。
骨になれば力は衰える。それが理屈だ。
だが、眼前の骨はオーク族の勇者のものだ。いかな衰えたと言えど、単独で闘うなど無謀に過ぎる。
「凄いな…」
「えぇ」
フィルもララムも目を輝かせてそれに見入っている。
「二人とも、そんな事言っている場合じゃ―」
と、ナッツが声をかけようとした刹那。
「お止めください、ヒーロー殿。王が悲しまれます」
一体の悪魔が前触れなくそこに現れた。
「管財者か」
「御身は王の大事な存在。人間風情がここに居る理由は解せませぬが、この様な者共、お手を煩わせずとも私めが…」
「黙しておれ、貴様。わが至福を邪魔だてするなら、貴様からガッ!?」
「…外野に気ィ回すたぁ余裕だな、先達」
「ふん、済まんな。…だが、煩わしいのも事実よ」
「ちっ…違いねえ」
シュウも『管財者』たる悪魔を見た。見た目はちょっと大きいデビルチだが、その程度ではないだろう。
「人間。これ以上の狼藉を働かんと約するのであれば、見逃してやらんではないぞ」
という管財者の言葉を、
「笑わせんな」
せせら笑う。
「ならばここで私が殺してやろう!折角の好機を無駄にしたな」
「どうする先達。二人同時にかかってくるかよ?」
「馬鹿を言え。そのような無様、誰が晒すか」
「ヒーロー殿の手を煩わせるまでもない」
「けっ、割り込んでおいて何吐かしてやがる」
唾棄するシュウに、苛立ちを隠さない管財者。
「シュウ!手を貸そう」
「ん、ああ…?ああ、そっか」
そう言えば居たな、と。
彼らの存在を思い出すと同時、妙案が浮かんだ。
「なあ、先達―」
「奇遇だな、同じ事を考えた」
むんず、と。スカルヒーローが管財者の頭を掴んだのと同時に。
シュウもフィルらの方へ視線を向けた。
「じゃあ、済まねえが…」
「貴様に任せたい事がある」
そのスカルヒーローの言葉は、果たしてどちらに向けられたものか。
「え?」
「は?」
「ん?」
「へ?」
疑問符を浮かべる四者。管財者さえも呆気に取られた一瞬。
「こいつの相手、頼まぁ」
「奴らの相手をしておいてくれぬか。くれぐれも我等の邪魔にならぬように、な」
ぽい。
放物線を描き、フィル達の方へ投げられる管財者。
「おーい」
「…!」
シュウの声に、最初に反応したのはララムだった。
「任せて!ナッツ!!」
腰に提げていた鈍器の一つを取り出すと、
「OK!アスペルシオ!」
聖水を振り掛けて力を宿し、
「せー…のぉ!!」
大きく振りかぶって、
「ちぇええすとぉぉぉぉっ!!」
地面に嫌になるような勢いで叩きつけた。
「へぶぅ!」
「も、モーニングスター…」
「あ、荒っぽい女子だのう…」
まあ、それは会った当初から判っていた事だが。
とまれ、邪魔者は互いに消えた。
「…さぁて、と。仕切り直しだ先達」
「うむ。ここからが本番だ、新米」


手ごたえは確かだった。気持ちいいくらいの一撃が、管財者を強打したのだ。
だがララムは手を休めようとはせず、ひたすらに打ち据える。
「こっちも、頼むっ!!」
一歩出遅れたフィルあdったが、槍を構えて突っ込んで行く。
「失礼!アスペルシオ!!」
「スピアスタブ!」
そのまま槍を突き出し、その勢いで管財者を跳ね飛ばす。
「…初めから容赦のない」
だが。管財者はごく平然と立ち上がった。
「まったく、あの方もお人の悪い。我欲の為に私すら利用するとは」
次の瞬間。
「これも管理職の辛いところだ。…ところで」
炎に包まれた岩塊が彼らの周囲に降り注いだ。
「うわっ…!?」
「焼き具合はどれ位が好ましいかね?」
「む…無詠唱でメテオストームを発動するだと…!?」
「見た目はデビルチだってのに…!」
「ん…?貴様らは何も知らずにここを訪れたのか?」
「なに…?」
「ここは我等が王の住まう地下城。何処より浅き深淵。ここに住まうを許されたのは、王の気に入られた『変異種』のみ」
「へんい…しゅ?」
「貴様等の言う『天才』のようなものだ。同じ種族でありながら極端に強き者。来るがいい、いと脆き人間よ。我が魔道を髄まで味わって死ね」
「うぉぉ!?」
一瞬の発動を封じるほか、この石雨を避ける事は出来ないだろう。
もしくは―
「ぬああああっ!!」
「効かねえよ、先達!!」
ちらりとナッツは激闘を繰り広げる二人の方に視線を向けた。
あちらに行けば、この圧倒的な物量は襲ってこないだろう。
だが、しかし。
「くらえ!」
「はぁっ!!」
自分達は任されたのだ。
子供じみた執着だとは思いながらも、その信頼には応えたいと思った。
「聖域、その力輝いて大地を奔り、我等の傷を癒したまわん」
ざあ、と広がる光。
「サンクチュアリ!」
発生した癒しの力場に仲間を集め、再び念を練る。
「…威力がさほど高くないのが救いか」
降り注ぐ石雨。だがその衝撃自体はさほど強くない。
力場が与えてくれる癒しの効果でなんとか回復出来る程には。
「ふん…。ならばお前達の力が失せるまで落とし続けてやろう」
管財者は魔法の発動を止めない。
だが、結果としてフィル達と管財者は機を計って睨み合う形となったのである。


「流石に…やるじゃねえか、先達」
「まだまだ…出来るだろう?新米。その兜を託された貴様が、その程度の筈がないだろう」
「まぁな。…さあ、受け止めて見せろよ」
今まで携えていた剣を仕舞い、腰に幾つかある鞘の一つから一振りの剣を取り出す。
ずん、とその剣を地に突き立て、
「切り札を見せてやる」
魔力因子を体内へと集めていく。
「…我は誘わん」
「正気か!?新米!」
先ほどとは逆だ。スカルヒーローの遠慮呵責のない攻撃がシュウを傷つけていく。
「光、力、聖なる十字。天より手繰り寄せる軍神の刃」
だが、棒立ちで打たれながらも、その詠唱は全く止まらない。
「異種、骸、なれど誇り高き戦士の魂。闘争を求める激情さえ打ち砕き…」
力の種類は一緒。だが、収束する力の質量は今までとは明らかに異なる。
「眼前の者に『救い』を齎せ!」
一瞬。
力の収束も詠唱も、スカルヒーローの攻撃すら終わった完全なる間。
恐ろしいほど長い一瞬を突き破る、一声。
「グランドクロス!」
圧倒的なほどの力が爆発した。


続きます










後書き
連続です。滑稽です。
実は十三話が完成する前に、既にこれはほぼ完成していたりしました。
やはりバトルは書きやすくていいですねえ。
んで。
今回はグランドクロスの詠唱文言を少々変えて見ました。
前回までがレベル5、今回がレベル10、という感じです。
詠唱に関してはちょっとだけシュウの私情が篭もっていますが。
スカルヒーロー戦、管財者戦はまだ続きます。
では、また次回。






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