ぱすてるチャイムは二度、鳴り響く 第2話 「慟哭の雨」 朝日奈コロ 『次は、舞弦学園前。舞弦学園前』 アナウンスが車内に響き、乗っていたバスが緩やかに減速する。 空気が抜ける軽い音と共にバスの扉が開く。 バスから降りて正面を向く。 記憶の中で色褪せてしまった舞弦学園の姿と、目の前の歴史を感じさせる校舎とが一致した。 学園からは学生達のものであろう喧騒が校門前まで聞こえてきた。 澄み切った蒼い空に飲み込まれそうな天気の下。 『ただいまより。第563年度、舞弦学園、卒業式を行います』 不意に、郷愁の琴線にふれる懐かしい声が、学園のスピーカー越しに聞こえた。 「ベネット…先生」 自然と、声の持ち主の名前が口から発せられた。 懐かしさに駆られながら校門から講堂へ続く桜並木を覗いた。 並木道の両側には、舞弦学園の学生達が並んで、誰かに拍手を送っている。 そして俺は……見てしまった。 周りの学生達から祝福の拍手を一身に受けている二人の卒業生の姿を。 見てしまったんだ……… 桜が舞っていた――― 花弁はその身を誇るかの如く盛大に散りゆき、景色を染め上げていく。 その光景は涙が零れ落ちるほどに美しい。 大勢の人間がいた。 彼らは皆、学生服を身に纏い、一組の男女を祝福していた。 男女の内、ピンクの髪をもった少女は満面の笑みを浮かべ、その瞳には感涙が滲んでいる。 その手はしっかりと男子の手と繋がっている。 男子の方もはにかみながら祝福を受けている。 二人の前に、エルフの教師が立つ。 教師―――ベネット・コジュールは二人に卒業の証である短剣を手渡す。 彼女も目に涙を溜め、二人の生徒の卒業を祝う。 おめでとうとベネット先生が讃辞の言葉を贈る。 「おめでとう!」 「二人とも、おめでとう!」 「卒業、おめでとう!」 ベネット先生の言葉に続き他の学生達も祝福の言葉とともに盛大な拍手を贈る。 少女―――ミュウは『俺』と共に、その輪の中にいた。 キモチワルイ…… 何かがおかしかった。 嵌まらないパズルのピースを無理矢理に嵌めた様な違和感が其処にあった。 何故ミュウは記憶の中にある姿のままなのか? 魔王ラガヴリが甲斐那さんに憑依した時に、ミュウはコレットとロイと一緒に転移魔法が封じられたアミュレットを使って迷宮から脱出したはずだ。 ならば何故、今俺の目に映っているミュウは年を取っていない? そして、何故ミュウの隣には俺じゃない『俺』が寄り添っているのか? ミュウと手を繋ぐ『俺』は俺が時の牢獄に捕えられる以前の容姿をしていた。 髪の毛は短く切り揃えられていて、その髪は白髪ではなく鮮やかな漆黒に彩られている。 瞳は俺の持つ紅い瞳などとは違い漆黒だった。 目の前にいる『俺』は一体誰なのか? この卒業式は何なのか? 目に見える全てが異常なものように映る。 キモチワルイ…… この茶番は一体なんなのだ。 何もかもがおかしい。 二人に祝福を贈る学生達がおかしい。 二人の前に立つベネット先生がおかしい。 ミュウの隣にいる『俺』がおかしい。 刻々とその花弁を散らす桜がおかしい。 この舞弦学園がおかしい。 こんな茶番を見せる世界がおかしい。 キモチワルイ……キモチワルイ、キモチワルイ、キモチワルイ……キモチワルイ! そして俺は見た。 『俺』に微笑むミュウの姿を…… その微笑みが全てを悟らせてくれた。いや、目を背けていた事実を突き付けられた。 あぁ…そうか。 学生達も、ベネット先生も、『俺』も、舞弦学園も、そしてこの世界も、全てが在るべき所に在るだけなんだ。 あの『俺』はこの世界での相羽カイト。 ならば……最初からおかしかったのは。 「おかしいのは……俺の…方なのか」 口に出した事実が真実なのだと俺は認めている。 俺はこの場所で、この学園で、そしてこの世界にとって異分子なんだと。 なんだ……はじめから俺の居場所なんて何処にも存在していなかったんだ。 ははっ… 「なんて……道化」 そして俺は逃げ出した。 一秒でも早くこの場から離れたかったから。 学生達が口にするオメデトウが呪詛として俺に突き刺さるから。 『俺』に笑いかける彼女をこれ以上見ていたくなかったから。 彼女は俺に笑いかけてくれないから。 なにより彼女は俺があの時間(とき)の無間地獄の中で想い続けたミュウじゃないから。 受け入れた事実からまた目を背ける為に。 俺は逃げ出した…… ◆ 駆ける。早く。もっと速く。 舞弦学園からはとうの昔に離れていた。 それでも俺は駆ける。逃げたいから。 この残酷で喜劇じみた世界から逃げたいと思った。 だから駆ける。自身の限界を越えた速さで。 脚がもう無理だと悲鳴を上げる、肺が遮二無二に酸素を求める、心臓が早鐘のように鼓動を鳴り響かせる。 だけど、止まらない、止められない、止まりたくないんだ。 今、脚を止めてしまったら、それは、認めてしまうことだから。 渇望していたものが、やっと手が届いた瞬間に別物だと気付かされる現実に。 認めない、認められるはずがない! 学園を駆け抜け、街を駆け抜ける。 空は厚い雲に覆われ泣き出しそうだった。 いつの間にか降り出した小雨は、今やバケツをひっくり返したような土砂降りへとその姿を変えた。 雨粒に身を晒しながら、それでも駆ける。 やがて、街を抜け、辺りに民家一つない草原でようやく遁走が歩みに変わり、そして止まった。 雨はまだ降り続く、濡れた体が酷く冷たい。 心はもっと冷たかった……凍えそうになるほど。 草葉の上に膝をつく。いや、膝が折れた。 もう……全てを認めよう、全てを受け入れよう。 「ははっ……はははは」 認めてしまえば、狂ったような嗤い声が口から零れ出る。 濡れた前髪が表情を隠す。 今の俺は無様な顔をしているのだろう。 膝を地面につきながら、両手を天に向かって掲げる。 神に救いを求める罪人のように。 空を向いた顔に容赦なく雨粒が降り注ぐ。 乾き、罅割れていた心が、現実を受け入れて…………そして、砕けた――― 「あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁぁあ゛あ゛あぁぁぁぁっ」 降り止まない雨に打たれながら、俺は真の絶望に身を灼かれた。 慟哭の雨は降り止まない…… ◆ あれから幾日が過ぎた。 茫然自失状態のカイトは何日も彷徨っていた。行く当てもなく、ましてこの世界にはカイトの帰る場所など在りはしないのだから。 死んでないから生きている。 今のカイトの状態はまさにそれだった。 脚を動かしているのはただ単に今までの惰性。 夕陽の色を閉じ込めた瞳は暗く澱んでいて、目に映る光景もただ通り過ぎるだけの絵画となんら変わり無い。 どのくらい歩いただろうか。 街を越え、村を越え、山を越え、森を越えてきた。 幾度も夜の帳が落ち、幾度も陽光が肌を照らした。 雨が降り、日が差し込んでも何の感慨も浮かんでこない。 あれ程綺麗だと思っていた世界は全部、俺にとってまがい物で、俺は世界にとってのまがい物。 いくら思考を巡らせても弾き出される答えは自身こそが異分子だという厳然たる事実。 数えるのが馬鹿らしくなるくらい生物に流れる絲を断ち切る様を見続けたこの瞳が証明していた。 あの時、あの場で見た『俺』は確かに自分自身。 自分に流れる絲の集合を見間違える筈がなかった。 また幾日が流れた。 カイトは最初にこの世界で目覚めた遺跡の前に戻ってきた。 其処には何も在りはしない。 ただ巨大な岩が幾何学的に円を描くように並んでいるだけだった。 カイトは夢遊病者のようにその場に佇む。 「カイト……かい?」 不意に背後から声をかけられた。 後ろを振り向く、外部から刺激に反応したのは随分久しぶりに感じた。 「妙……子……さん」 立っていた人物は俺がこの世界で初めて会って世話になった人。 「なんて恰好してるんだい、ほら、立ち話もなんだ家においで」 そう言って彼女は俺の手を引いて行く。 初老の域に入った女性とは思えないほどの力強さだった。 「俺は……」 何かを言いかけて、何を言えば良いか分からず口ごもる。 そんな俺に対して妙子さんは。 「ゆっくり話せばいいさ、何があったかなんて聞きゃあしないよ、あんたの話したい時に言いな」 その言葉があまりにも優しくて、あまりにも暖かく感じて、涙が零れた。 「……バカだねえ男の子が泣くんじゃないよ」 そう言って彼女は頭を撫でた。 ◆ 昼下がりの公園。 ご飯を食べ終えた子供たちが、公園に設置された遊具で遊んでいる。 子供の親達は、井戸端会議に花を咲かせている。 そんな日常の光景にカイトは何をするでもなく、ただベンチに座っていた。 あの後、妙子さん達には、全てを話した。 自分が十年前の舞弦学園の学生だったこと。 恋人が魔王ラガヴリの憑代だったこと 時間封印が施されるダンジョンに、恋人を仲間と共に救いに行ったこと。 ラガヴリを倒した後、一人迷宮に取り残されたこと。 時の牢獄での長い闇路のこと。 平行世界から来てしまったであろうこと。 舞弦学園に、この世界の自分がいたこと。 普通の人に話せば、狂人と思われる事を全て、夕凪夫妻に包み隠さず話した。 長い独白じみた告白を終えた後。 頬から涙が伝っていた。 そんな俺を、妙子さんは静かに抱きしめて。 『信じる』と確かに言ってくれた。 その言葉が嬉しくて、恥も外聞も無く大泣きをしてしまった。 ……思い返してみると、とてつもなく恥ずかしいが。 妙子さんの夫、喜助さんは、初めの内は困惑していたけど、最終的には信じてくれた。 後から聞いた話によると。 二人とも若いころは、有名な冒険者だったらしく。 魔法や、不思議な現象に関して慣れていた。 その経験も話を信じる要因になったそうだ。 その後、行く当てもない俺に対して、好きなだけ家ににいれば良いと、二人は提案してくれた。 俺は申し出を受け入れた。 こうして俺はこの世界で居場所を手に入れた。 ……そんなやり取りが一週間前にあった。 今現在、公園のベンチでボーっとしているのは、単にやることが無いからだ。 異邦人のカイトには、学歴なんぞ存在しないし、そもそも戸籍自体無い。 夕凪宅で家事を幾つか引き受けているが、それほど時間も経たないうちに仕事を終えてしまう。 そのまま家の中で、読書でもしようかと思うのだが。 妙子さんに見つかり、何かと理由を付けて外に放り出されてしまう。 彼女曰く、大の男が家の中で一日中読書なんて不健康だそうだ。 おそらく、彼女なりの親切なのだと思う。 家の中に居て一人でいるより、外に出ている方が嫌な考えをせずに済む。 だが、数日も続くと、さすがに暇の潰し方に困る。 確かに、此処で日長一日、空を眺めたり、駆け回る子供達を見ているのは楽しい。 陰鬱なダンジョンとは比べるまでもなく。 このまま、この地に根を下ろすのも吝かではない。 しかし、心の片隅で得体のしれない感情が蠢いている。 それは焦燥感にも似ていて、俺を何かに駆り立てようともがいている。 大切な約束があった気がする。 忘却の彼方に旅立とうとする記憶を手繰り寄せても思い出せない。 俺が■■■を目指すことを誓った大切な…… 「あうっ……」 聞こえてきた、苦悶の声にハッと現実に引き戻される。 見るとそこには、5歳くらいの男の子が膝を抱え、うずくまっている。 膝からはうっすらと血が滲んでいるのが見て取れた。 「健太くん、大丈夫ぅ?」 男の子の傍には同じくらいの年齢の女の子が泣きそうになりながら、健太と呼ばれた少年の心配をしていた。 「へっちゃらだって、そんな顔すんなよ、美羽」 気丈にも健太がオロオロする美羽をたしなめる。 痛みに耐えている彼の眦には涙が溜まっている。 周囲の大人は世間話に夢中で気付いていない。 ……仕方がない。 「……大丈夫か?」 近づいて声をかけると、美羽はビクリと肩を震わせた。 「えっと……その健太くんが……ヒック……怪我して、血が……」 無愛想なカイトが声を掛けたためだろう、美羽はとうとう嗚咽を漏らし始めた。 そんな美羽を安心させる為にポンポンと頭に軽く手をのせ撫でてやる。 「あっ…」 「……見せてみろ」 そう言って健太の患部を観察する。 出血の割に傷は浅い、おそらく、転んで膝を擦ったのだろう。 とりあえず、患部の洗浄を。 「……立てるか?」 「兄ちゃん……誰」 健太が怪訝な表情でカイトに問う。 「通りすがりだ……立てるか?」 当たり障りのない答えを言ってから、再び聞いてみる。 「大丈夫……痛っ」 自力で立ち上がろうとした健太は痛みで再びうずくまった。 カイトは無言で、健太の背中と膝の裏に、腕を通し抱え上げた。 俗に言う、お姫様抱っこで。 「わーー!放せ馬鹿っどこに連れて行く気だ!」 「……水道」 羞恥で暴れだす健太に短く答える。 美羽はそんなカイト達の後ろを不安げについてくる。 公園に設置された水道の蛇口を捻り、水を出す。 「しみるぞ……」 そのまま傷口を洗う。 「ーーーーっ」 痛みに顔を顰めながらも、健太は必死に泣く事を我慢する。 傷を洗い終えたカイトは、腰のポーチから簡易救急キットを取り出し、消毒。 傷口に軟膏を塗り、ガーゼを当て、包帯をしっかりと巻いて応急処置完了。 「……頑張ったな」 健太に労いの言葉をかけ、頭を撫でてやる。 「ふ、ふんっ、大きなお世話だ」 傷を手当てする様子をしげしげと眺めていた健太は 頭を撫でられる行為が恥ずかしかったのか、鼻を鳴らしそっぽを向いた。 「け、健太くん!ダメだよそんなこと言っちゃあ」 健太の怪我が手当てされて幾分か落ち着いたのか。 美羽が今までの気弱な態度から一変して、健太をたしなめる。 おそらく、これが彼女本来の気性なのだろう。 「ほら、健太くん。お兄さんにちゃんとお礼言わないと」 「う〜〜」 「唸ってもダメ」 先程のお姫様抱っこが尾を引いているのだろう、健太はなかなかお礼を口にしない。 微笑ましいやり取りを繰り広げる二人に対し、僅かに笑みが零れてしまう。 「……気にしなくてもいい」 そう言ってカイトは踵を返そうとする。 「あっ待ってください。あの、ありがとうございました」 美羽がカイトを呼び止め、年齢の割にしっかりとしたお礼の言葉を言う。 「健太くんも」 言って、健太の耳を抓りながら促す。 「痛てて、わかったから耳引っ張んな。兄ちゃん、あんがとな!」 ゴーン、ゴーン 街の中央に建てられた時計塔から三時を告げる、鐘の音が打ち鳴らされる。 その音に驚いた公園の鳩が一斉に飛び立つ。 「うぇっ、もうこんな時間かよ。じゃ〜な〜兄ちゃん」 「あっ待ってよ健太くん」 そう言って公園の出口へ駆けていく健太と、彼を追う為に走り出す美羽。 「ほら、早く来いよ美羽、さっさとしないとおやつ食い逃しちまう」 「もう、さっきまで泣いてたのに」 走りながらもじゃれ合う二人を見ていたカイトも、そろそろ夕凪の家に帰ろうかと時計塔の時刻を見て考えていた時。 「泣いてねえよ!俺は冒険者になるんだ。だから絶対泣いてねえ!」 耳を突いた健太の台詞が記憶の琴線に触れる。 閉ざされた迷宮で忘我の果てに忘れていた記憶。 それは大切な誓い。 それは夢を目指した理由。 それはミュウと交わした約束。 拙い文字でたくさん書かれた決め事。 その一つ一つを、広大な記憶の砂漠の中から見つけ出していく。 全部、拾い上げたとき。 俺はこの世界で生きる目標を見つけた気がした。 ◆ 「妙子さん……服まだある?」 夕凪の家に帰宅してからの第一声。 相変わらず言葉が足りないと思うが、まだ人の会話が慣れない。 妙子さんは夕飯の支度をしながら台所から顔を覗かせる。 「なんだい?藪から棒に。あんたの服ならまだ取ってあるけど、着れたもんじゃないよ」 血やら何やらでボロボロさね、と妙子さんが怪訝な表情で答える。 「ん……大丈夫、着るわけじゃない」 「そうかい?なら其処にいな、すぐ持ってくるから」 奥の部屋に聞く妙子さんを見送り、テーブルに着きぼんやりと、置かれた紅茶を口にする。 ……美味しい。 カイトにとって数十年ぶりの夕凪家での食事は革命的であった。 出された白米を食べた瞬間の感動は今も忘れない。 味噌汁の味の深さに驚き。 漬物に文化の重みを知り。 焼き魚の味に匠の技を感じた。 そんなことがあって、数十年間の断食から解放されたカイトは、夕凪家のエンゲル係数を天井知らずに上昇させる食いしん坊へ覚醒した。 閑話休題。 奥から戻ってきた妙子さんが抱えていた物は、服の原型を殆ど留めていない襤褸切れだった。 「ほら、これだよ」 そう言って渡された服だったモノから、酸化した血がポロポロ剥がれ落ちる。 気にせず、原型を留めていない上着の内ポケットに手をいれて、目的のものを探す。 内ポケットを弄る手に固い感触が当たった。 『それ』を掴み、取り出す。 「なんだい?それ?」 出てきた薄い長方形の物体に、妙子さんの訝しげな視線が注がれる。 「……手帳です。大切な……」 手にしたものは、とても手帳と言えるモノでは無かった。 手帳の表面はボロボロでタイトルも掠れて、読めない。 中のページも大量も酸化した血がこびり付き開けることすら叶わない。 始めてみる人には単なる長方形の『何か』にしか見えないだろう。 しかし、『それ』はカイトにとって掛け替えのないモノ。 壊れモノ扱うような繊細な動作で胸ポケットに仕舞う。 『ぼうけんしゃのちかい』の書。それが小さな手帳の名前。 幼い頃、もう思い出せないくらい、ぼやけた記憶に存在する想い出。 泣き虫だった少女と一緒に交わした誓い。 もっと強くなりたかった。 もっと優しくなりたかった。 そんな俺たちが幼い拙い字で、一生懸命書き綴った手帳。 『泣かない事』 『仲間を守る事』 『泳げるようになる事』 『好き嫌いはなくす事』 『朝はひとりで、ちゃんと起きる事』 もう開ける事の出来ない手帳の内容が俺の中で蘇る。 果たせていない約束はまだ、たくさん残っている。 だからこそ。 まだここで立ち止まるわけにいかない。 ……大丈夫だよミュウ、俺はまだ……頑張れる。 「妙子さん……」 まっすぐ、妙子さんの瞳を見据え……告げた。 俺は、冒険者になります―― 幼き日の誓いを果たすため。 そして、仄暗い希望を胸に抱き。 俺は。 止めていた歩みを。 ゆっくり。 動かし始めた―― * * * * * * * あとがき どうも初めまして。 素人SS書きの朝日奈コロです。 このたびはコロの作品、「ぱすてるチャイムは二度、鳴り響く」を読んでいただき有難う御座います。 まだまだ、至らないところは星の数ほどありますが、生暖かい目で見守ってほしいです。 では今回はこのへんで失礼します。 次回ぱすてるチャイムは二度、鳴り響く 第3話「入学試験」 ついに本編のキャラが!! |
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