シンゴ、苅部、クーガー、クレアに委員長にロイド。クラスメートや寮にいた連中。
 そして四人の女の子。
 学校で知り合った俺の学友達。皆いい奴だった。
 俺は今、新たな学友と出会う。
 王立舞弦学園の生徒として。

 ・・・留年したからなっ!(血涙)






終わりから始めよう


「その 1 の1」



作:HIRO





「も、もう一度言ってくれ、親父」
「なんだ聞こえなかったのか?」
「やあねえ、まだ寝ぼけてるのかしら?」
 親父は新聞を読み、お袋はコーヒーを入れ直す。
 そして立ち尽くすパジャマの俺。
 地上に戻って一週間。
 七日間繰り返された平和という日々は、昨日眠った時に終りを告げていたらしい。  
  

 幾時間、ひょっとしたら幾日も刃をふるっていたかもしれない。
 気が付くと俺は動くものもいない闇の中、壁に一人背をあずけていた。再び目をつむって、それからからどれくらいの時が過ぎたかは判らない。
 風を頬に感じたので目を開けると、俺はまだ明けきっていない夜空の下、運動場の傍に座っていた。
 そのままぼんやりしていると、空は白く青く、そして蒼くなる。俺はその朝日に釣られるように立ちあがった。
 朝日を受け、くっきりと姿を表す慣れ親しんだ白い校舎を眺め。ふと、振り返る。
 いつから居たのか四人の大人の女性達が立っていた。
 どこか見覚えのある彼女達としばらくにらめっこ。
 俺は冷たい空気を一息すって。

「よ、オハヨ」

 いつもと変らぬあいさつをしてやった。


  
 そのまま泣きながら抱きつく彼女達に挟まれながら気を失い、お城の一角で目を覚ましたのが5日前。
 その後、国王を交えたパーティに出席したのが4日前。
 家に帰ってそこで旧友達と再会し、騒いだのが3日前。
 毎日尋ねてきて、喧嘩を繰り返す彼女達とだらだら過ごすこと2日間。
 朝飯を食べに起きた俺に親父は言った。
「カイト、お前は明日から学校だ。今日中に準備しとけよ」
  
 は!
 なにやらここ一週間を説明させられたような気がするが、それはともかく!
「な、なんで俺が学校いかなきゃなんないんだ!?」
「なんでって・・・お前が卒業していないからだろうが」
「してないの!?」
 今ごろにして聞く衝撃の事実。息子の未来に関わることをあっさりといってくれました。せめて新聞たたんでくれ親父。
「あたりまえだ、お前授業をサボってばっかりだったらしいな?」
 じろりとこちらを見やる父。
「いや、あれは・・・」


 俺にも言い分がある。

 言い訳すると俺は確かにサボっていたが、遊んでいたわけじゃない。
 今や師とも仰ぐ二人の兄妹。
 兄から剣を習い、妹から教わった術のしくみ。これらを己のものとするには、決定的に時間が必要だった。
 型をなぞり、集中し、動き、止まる。
 集め、束ね、織る。 
 何時間も、それこそぶっ倒れるまで、ただただ繰り返す日々を送っていたんだ。



(私と遊びに行ったこともありました(はーと)byせつなちゃん(*・・*))
(まちぼうけくった私は、次の週思わず・・・:PN 妹大事さん(−"−#))



 ・・・(;゜▽゜)?か、甲斐那さんや刹那さんが教えてくれたことを一日で身につけられるわけもなかったし、二人に会えなくなった後、何かに取り付かれたようにさらに修行したかった。その為、可能な限り休んで修行したんだがここで誤算が一つ。
 例の騒ぎで俺は後半の出席予定だった授業に当然出ていない。できなかった。できませんでした。
 結果、日数が足らず留年扱いとなったらしい。
  
「う・・・ヒドい」
「ひどくはない、退学にはなっていないんだから感謝したらどうだ?」
「・・・・・・」

 俺は確か伝説の魔王を倒したんだよな?国を、世界を救ったのに・・・世間はちょっと冷たくないだろうか?

「で、お前は冒険者になりたいんだろう?」
「・・・ああ」
「となると、復学するか、無印冒険者のどっちかしかないんじゃないのか?」
「・・・・・・」


 ここで少し説明を。
 世に冒険時代が到来して幾十年。未知の世界、未開の大陸といえど時がたてば拠点となる街ができる。そうやって少しずつ安全な場所が広がっていくのだ。
 しかし、世の中には冒険者からドロップアウトした者や、代々山賊やら海賊やらを営んでる方々がいるこの世界。
 そうやってできた街の中に自称”冒険者”の犯罪者を入れるわけにはいかない。当然その出入りには厳しい身分照会がある。
 そこで生きるのが冒険者資格証。複製不可能な呪術で製作されるこれらは、所持者がしかるべき訓練を受け、信用のおける人間であることを発行国が保証してくれるのだ。その為簡単な審査で出入りができ、仕事を得、街に定住することだってできる。
 そういった資格がないのが無印冒険者とよばれ、当然信用もなく、街の出入りにも一苦労、生きていくのも一苦労、その為犯罪にころぶ者も多く、かくして立場は最悪である。

 とにかく、ちゃんとした施設の出を証明する冒険者資格があるのとないのとではものすごい差があるということだ。資格があれば他所の国の町でも身分は保証され、敵対国でもない限り入れないということはない。
 カイトには選ぶ道はなかった。


「もう一年頑張ります・・・」
「待ちなさいカイト」

 とぼとぼと自室に帰る息子を今度は母シノラが呼び止める。
 スラリとした細い体に亜麻色の長い髪を持つおだやかな顔をした美しい女性だ。
 ご近所の旦那さん達から、町内一の美人若(?)奥様と密かに人気がある。
 平凡な人生を送り、高校を卒業したてで年上で美貌の上司をあっさり落としたカイトの父。そこに確かな血の流れをうかがわせる。

「ミュウちゃん、コレットちゃん、沙耶ちゃん、セレスちゃん」

 とても大きな子供がいるとは思えない程のみずみずしさをもつ母は、相変わらずにこにこと”えがを”を浮かべ、四人の女性の名を呼び上げる。
 カイトがよく知る少女達は、すっかり成長して輝くような魅力溢れる女性になっていた。
 そして自分のいない間に親しくなっていたらしく、彼女達を実の娘同然に扱う母に呆気にとられたもんである。
 が、それはともかく。

 カイトは父・省吾と同じ?顔で母を見つめる。


 母は。
 ゆっくりと。
 忘れていた事実を。

「あなた・・・食べちゃったんですってね、同じ夜に」

 思い出させた。








時が・・・こおりついた(笑)








「カ、カイト、お、お前?」
 床にコーヒーを広げ、固まる、ちち。
 笑みを浮かべ、静かに佇む、はは。
 そして。
「あうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあう」
 とりあえず、倒れこむしかない自分。








時は動き出す!その瞬間。







「ず、ずるい、ずるいぞー!!あんな美人を四人も、お前息子のくせにぃぃ!!」

 とりあえず息子を掴みガタガタいわす父。
 ホームドラマは、コメディになりさがった。


「・・・あなた?」


 ピタリ。
 いやサスペンスかもしれない。






 新年明けましておめでとうございます。
 竜園の皆様、今年もよろしくです。
 本来なら元旦にでも投稿しようと思ってたんですが。
 なにやってたんですかね〜。
 ここまで読んでくれた貴方に感謝です。
 では、次の作品でおあいしましょ〜。







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