「ふふふ…頼んだわよ?亮」 「勿論だ、鏡花」 「…それを出したら私が大貧民になる事を理解しているのか」 「まだ確定した訳じゃないよな?単に革命を起こすだけだぞ」 「ぬう」 「結託は卑怯ですよ先輩!」 「夫婦なら当然でしょ?」 「しかし凄いね。亮くんは覚りの力ないのに」 「まあ、付き合い長いから」 「お姉ちゃん!こないなバカップルに負けとる場合やないで!」 「うむ」 「さ、行きなさい亮!私達の勝利の為にッ!!」 「では、革命」 「革命返し」 「「なぁにいいいいいいいいいいいいいいい!?」」 四年目の平日に 滑稽 「で、結局キララが五位、モモが四位。いずみさん三位で祁答院が二位」 亮が結果を発表する。 「亮が一位…なんか納得いかないわね。…そして」 鏡花の言が重い。 「罰ゲームのビリと六位は鏡花と真言美ちゃん、と」 「「なんでぇぇぇぇぇ!?」」 久しぶりに大津名に現れたマコト達を歓待する為に亮の家へと集まった旧桜水台学園天文部員の面々。 東京在住の翼と所在不明の健人は招けず。 暫くの酒盛りの後、この面子で大貧民パーティという状況になったのである。 「で、罰ゲームの内容は…と」 ここで登場するのが罰箱である。 各自がそれぞれ書いた『罰ゲーム的な事』カードを中に入れ、そしてトップの人間が一枚引き、そこに書かれている内容を罰ゲーム対象が行う、というのが今回のルールだ。 「で、何なのよ」 「ちょっと待てって」 今回のトップは亮なので、引くのは彼である。 「んーと…」 と、引き当てたカードを見て、亮の顔色が変わる。 「やっぱこれなし!」 「えぇ!?」 「羽村、それはどうかと思うぞ」 「それはアカンて、兄ちゃん」 「一体なんなんだよ?」 「いや、ちょっとこれはなぁ…」 各自の非難にも、亮は頑として読み上げようとしない。 「何なのよ、一体!?」 と。罰ゲーム担当の鏡花がカードをひったくった。 「お、おいおい!」 「負けたんだから潔くやるわよ!!で、何!」 半ばキレている。 「『コスプレ。羽村(亮)、ナース服。百瀬、セーラー服。羽村(鏡)、メイド服。三輪坂、応援団。火倉、和メイド。祁答院(マ)、チャイナ服。祁答院(キ)、猫耳』…」 が、読み進むにつれ言葉が尻すぼみになっていく。 「…流石にこれは、なあ?」 小声で呟く亮。 「…そ、そうね」 冷静に戻ったのか、鏡花も小声になる。 「大体なんで読み上げたんだよ。このまま戻せば…」 「アンタの思考からエロと焦りしか感じられなかったからよ。…読んでる間に察しちゃったじゃない」 「俺の所為か!?」 「違うっての!?」 「ここまで指定されれば大体考えるだろ!?」 「誰がここまで書いたってのよ!?アンタなんじゃないの!?だから焦った、違う!?」 「ああ、それを書いたのは私だ」 喧嘩腰になった二人の腰を折るマコトの言。 「「…なんで?」」 「罰ゲームと言われてもあまり自信がなくてな」 確かに。腕立て伏せ1万回とか言い出しそうだが。 「取り敢えず腹筋2万回と書こうとしたのだが、キララに止められてな」 案の定だったらしい。 「そのような事を書いては後々の雰囲気に関わる、と言われた。なのでキララに助言をもらってな」 「ああ、まあ…確かに」 やった後は疲れてしまってゲームどころじゃないだろう。 「仮装というのは一部の者だけがするのは恥ずかしいのだろう?」 「だからって何故指定するのよ!?」 「ああ、あの時の恰好をひどく羽村が嫌がっていたのが印象に残っていてな。だからそうしたのだが…」 何かまずかったか?と言った表情のマコト。 「ああ、いや…」 「うん、まあ、ね…」 流石にそれは言えない。 「で、でも祁答院。そんな衣装、今あるのか?」 ナイス!と鏡花の気配が告げる。 「ああ、無論万事抜かりはない」 と、持ってきていたスーツケースの中からそれを取り出す。 「どうだ?」 「…何でそんなのがあるのよ」 ご都合な展開に最早ついていけない鏡花の、せめてもの反攻。 「キララがな」 「キ〜ラ〜ラ〜?」 「な、何やねん!?」 実際二人が何故こんなに焦るのか判らないキララも、事態が飲み込めていないらしい。 「『どうせ宴会になるんやからゲームの一つもやるやろし、こっちが色々用意しても罰は当たらんのとちゃうか?』と言い出してな」 無論、それはキララなりの気の使い方だったのだろうが。 今回に限っては大幅に大問題だ。 「で、どうするんだ?」 「や、やるわよ」 「…そ、そうか」 「さ、イくわよマナちゃん」 「え?あ、はい!!」 鏡花はひったくるように衣装を取ると、真言美を連れて別室に消えた。 「…何だったのかな?」 「さあ」 「覚悟しとけ、モモ」 「何がさ?」 「多分我慢出来なくなるぞ」 「…だから何がさ?」 「今に判る」 五分後。 「…センパイ。俺が悪かった」 「…だろ?」 コスプレを済ませてきた真言美の姿に撃沈寸前の壮一がぼそりと敗北宣言を吐く。 「センパイもか?」 「俺の場合四年越しだ」 「…だからか」 「ああ」 二人はあまり言葉を交わさなかったが、胸の内は全く同じ事を考えていた。 「…ほう、やはり似合うな」 「だねぇ。鏡花ちゃん気合充分って感じだね」 「…二人だけだと恥ずかしいですねぇ」 「…そうね」 真っ赤な二人。特に鏡花は別の意味でも赤くなっている訳だが。 と、論評する二人に声をかけたのは亮だった。 「ああ、そういえば祁答院」 「何だ羽村?」 「こっちには引っ越してきたのか?」 「ああ。取り敢えず正式に大津名付きの火者となった。お前達も里から給料が出るようになったからな」 「そうか。それは嬉しいな」 「いや、お前達の功績を考えれば妥当な事だ」 「で、引越しの作業はもう済ませたのか?」 「いや、週末だが」 「そっか。ならその時には連絡入れてくれ。…手伝うよ」 「それは助かる」 「…ああ。それじゃそろそろ開こうか」 「?まだ一回しかしていないが」 当然の疑問を差し込むマコト。 「そうなんだが、明日も学校だしな」 「ああ、そうだね。私も仕事だぁ」 天然で応じてくれるいずみに感謝しつつ、同志に水を向ける。 「では、お開きにするけどいいか?モモ」 「構わねぇぜ」 「真言美ちゃんは?」 「ん〜…、ちょっと残念ですねぇ。こういう時にはパーっと騒ぎたいと思いません?鏡花さん」 「そ、そう?私は週末提出の課題があるから…」 「あ、そうなんですかぁ。それじゃ仕方ないですねぇ…」 溜め息をつく真言美。 「済まないね。ま、モモ。そういう訳だから送っていってやれよ」 「おう、そうするぜ」 「え?モモちゃん送っていってくれるの?」 「おう。取り敢えずさっさと御暇しようぜ?もう夜だし、そのままの恰好でも問題ないだろ?」 「え、えええっ!?」 「悪いな、センパイ。それじゃな、ねーちゃん、いずみさん、姉御」 「あ、ちょ、モモちゃんってば!」 真言美を引き摺るようにして壮一は出て行った。 「…何なのだ、あれは」 「…さあ…」 「お楽しみなんやろ。がっついてもうて、まあ…」 一部キララが冷静にそんな事を言っているが、それはともかく。 「では我々も失礼しようか」 「そうだね」 「ごゆっくりやで〜」 一気に静寂が部屋に訪れた。 「…さて、と」 「…ぁによ」 何だか緊張する。 初めてや二度目とかいう訳ではないのだが、何故か。 「…まあ、二度目か」 「この助平」 「うっせ」 文句を告げながらそっと耳元に唇を寄せる。 「は…ひっ…」 「ほんと、こんな時だけは猫なのな」 「うるっさ…い、わよ!」 それでも強気を保とうとする鏡花の胸を乱暴に掴み、尖端をきゅ、と捻る。 「ひ…!?」 「何だ、もう反応してるじゃないかよ」 「ん…っ」 「で、どうなんだ?今日『も』下着は特注なのか?」 「…このエロ…」 「そういう事言うと止めちまうぞ」 「そんな…んっ、気、ないくせに…」 「なら止めた」 す、っと名残の欠片もなく離れようとする亮に、それがフロックだと判っていても鏡花はしがみついた。 「…よ」 「ん?」 「あの日と全く一緒よ!」 「そかそか」 と、胸を弄っていた手をそのまま下に。 「ぁ、ひぃ…ッ!!」 「どれどれ、確認、っと」 すりすりと、下腹の辺りの下着を擦り、感触を楽しむ。 「うん、いい手触りだ」 「亮…」 鏡花の、こちらを見る視線は切なく濡れて― 「今日は寝かさんからな〜♪」 亮もまた、野獣になった。 「あ」 「?どうしたのマコト」 「いや、衣装を返してもらうのを忘れていた」 「あ、そっか」 「ふむ、三輪坂も着て帰ってしまったな」 「どうする?電話しておこうか」 「あー、やめときやめとき」 「何故だ?」 「…どうせどっちもお楽しみ中やろ。余計な手出しは野暮やで、野暮」 「「…(赤面)」」 「二人ともホントに判らんかったんか?にーちゃん達二人とも目が野獣やったやんか」 「…そ、そう(真っ赤)」 「…私も混ざればよかったか」 「「…ええええええええええええええええええええええええ!?」」 「む?」 翌朝。 やっと一息ついた亮の携帯に、壮一から電話がかかってきた。 「よう、どうしたモモ。楽しかったか?」 『タスケテクレ…』 「あん?どうし―」 『もう終わり?壮一君♪』 『た、頼む…もうヤメテクレェェ…』 『駄・目♪』 『センパイ!タス―』 ぶつ。 「…うわぁ」 「どしたの?亮」 と、シャワーを浴びて体から湯気の立つ鏡花が現れる。 「いや、ちょっとな。モモの奴に冥福を…」 「?」 「と、言う訳で」 ぎゅ、と鏡花の腰を抱き。 「って、またぁ!?」 「うむ」 「だ、大学は…」 「休講」 「そ、そう…」 「そう」 そのままベッドに倒れこむ二人。 交際四年目。 この二人にはまだまだ倦怠期は遠いようだ。 ○○年目の… に続く。 後書き あけおめ&竜園60万Hit記念作品です。 2005年もよろしくお願いします。 …いや、もう何も書けませんてば。 |
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