ぱすてるチャイムContinueSS
  ザ・ショートショート


                               
ショウ





その1

 土曜日の夜にて。
「ではニィさん、ちゃんとお留守番してて下さいね」
 そう言って、ばたんとドアを閉めるルーシー。残されたのは、滅茶苦茶にあれた部屋と、床や壁に突き立った何本もの矢と、鎖で雁字搦めに縛られた黒猫。
「ニ、ニィ!ニィ!ニィ~~~~~~~~~~っ!!」



 その晩、ルーシーは帰ってこなかった。






その2

インターアド(スカウト部門)にて。
「ふふふ……今日こそ俺の実力を見せる時!忍者がいかに素晴らしいか、世の者共に教えてやるぜ!」
「……あ!いました!いましたよ団長!」
「え?」
「見つけたぞ怪盗ネコ小娘の子分!さあ、我らから奪った物を返してもらうぞ!」
「え?あの?ちょっと?」
「問答無用!」
「ギャーーーーーーーーーーーっす!!?」



「こないな、サワタリ」
「………うん、…………来ないね」





その3

 インターアド(魔術師部門)にて。
「全く………気持ちが分からない訳ではないが、試合中にする事もないだろう」
「すいません……」
「まあいいだろう。反省はしたようだし、後輩の事を思っての事ならば大目に見よう」
「あ、ありがとうございます」
「うむ。ところで………その後輩に、少し合わせてもらいたいのだがいいか?」



 後日。
「ゲームセット!マスターBの勝利です!」
「こ、このプロの三連星のリーダーである俺があっさり!?な、何者だお前!?」
「貴様らに名乗る名は無い……と言いたい所だがそれでは不便だな。GT(ゴーレムティーチャー)とでも呼ぶがいい」
 そういって男はサングラスの位置を直した。





その4

 繰り返された時にて。
「畜生!?また赤点かよ!?」
「はっはっはっは、無様だなサワタリ」
「う、うるせえ!大体なんで俺と同じぐらいしか勉強してないはずのユウキが満点なんか取ってるんだよ!?」
「ふ。真の天才とは人知れず努力するものだよ、サワタリ君」
「ち、ちくしょ〜〜〜〜〜っ!」
「あ、サワタリ」
「……………………」
(まあ二回目だしなあ………)





その5

 コルウェイドにて。
「ユウキ、電話ですよ。おじい様からです」
「ん、分かった」
『………久しぶりだな、ユウキ』
「ああ、結婚式以来だから四ヶ月ぶりか?元気かい?」
『お前こそ斉香を泣かせたりしておらんだろうな』
「そんな事死んでもするかよ。で、用件は何さ?」
『うむ。いやな、ひ孫はいつ頃になるか?』
「……………いきなりかよ」
『そう言うな。私もそう長くない。出来れば元気なうちに見たいのが心情でな』
「はいはい……。まあ、とりあえず近々そっちに帰る予定だからさ、積もる話はその時にしようぜ」
『ふむ、分かった。そろそろお前にもファルネーゼの社長としての自覚を持ってもらわなければならんしな』
「…………一日ぐらいは休暇くれよ?それじゃあな」
『うむ。しっかりな』
「………………」



「サイカ、出産予定日は確か来月だよな?」
「ええ、そうですけど?」





その6

 ルーシー自室にて。
「うふふ………です」
「ユウキはこれでテープは奪取したとお思いでしょうが……」
 ほくそ笑みながらロッカーを開けると、山と詰まれたテープの山。
「ふふ……交渉の極意とは、敢えて手の内をさらして相手に妥協させる事にあるのですよ」
「さて、今日のずるい言葉を早速リスニング」
心の底から幸せそうなルーシーの隣で、一匹の黒猫が悶え転がっていた。





その7

 病院にて。
「なあ、ルーシー」
「ん?」
「そういえば最近、沙耶姉さんに会わないんだが、何かあったのか?」
「…………いいえ、私は……」
「そっか。なんだかリナもあってないっていうし……どうしたんだろうなあ?」
 ぶつぶつ言いながら先を行くユウキ。その後を追いながら、



「………ニィさん、罪人の様子は?」
「ニィニィニィニー」
「……そうですか、では後三日ほど反省してもらいましょう。ユウキに大切な事を黙っていた罰です」



 恋する女は怒らせてはいけない。





その8

 外なる神との戦いにて。
「そういえばさ、カイトはどうしたんだ、ミュウ?」
「え?」
「いや、カイトがどうしていないのかな、と思ってさ。アイツが居れば随分楽なんだけど」
「え、えと……別の区域で戦ってるよ」
「そうか。しっかし残念だなあ、カイトのホンキを見てみたかったんだが……」
「ホンキも何も、十年前から変わってないよ、カイト君は」
「でもさ、まがりなりにも魔王とその僕を倒したんだろ?やっぱ自分の実力がどれくらいなのかは知っておきたいしさ」
「そ、そう?」
「ま、気にする事もないかあ。アイツが魔物程度に倒される訳ないしな」
「う、うん………」



(……………腰痛で寝込んでる、なんてとても言えないよぉぉおおおお(泣))
 二重の意味で恥ずかしいミュウだった。





その9

 二度目の世界にて。
「そういえばさ」
「? どうしたのよ、ユウキ」
「いやさあ、俺達十年前の雪山で精霊獣を倒してフィリスを助けたろ?」
「ええ。そうだけど、それが何?」
「あのさ、精霊獣って俺達に問答無用で襲い掛かってきた訳で、助ける前のフィリスって三日もそいつの傍にいたんだろ?……なんで怪我とか無かったんだ?」
「あ…………そういえば」
「何はなしてるの、リナ、ユウキ?」
 ひょいと顔をだすフィリス。その小柄な少女を見つめていたリナとユウキにはその時、同じ考えが頭に浮かんでいた。



((……あの精霊獣ってひょっとして…………ロリ??))











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