西穂稜線縦走&前穂北尾根登攀          2003.7.24〜27
   
月 日    7月24日(木)〜27日(日)

天 候   晴れ

メンバー  星野、山際、尾藤

 
前穂高岳山頂

24日(木) 新穂高ロープウェイ ガス/雨 西穂口駅から雨具を着けて16時出発。雨よりも合羽の蒸れで、汗がびっしょり。コースタイム通りに小屋に17時到着。当日の小屋は中学生の団体客で超満員。一枚の布団に1.5人とのこと。しかし、運良く我々の部屋(6人部屋)は後続の客無しで4人のみでゆったりです。食事ができるまでの間、生ビールで乾杯です。

 
25日(金) 3時半起床、4時10分出発。昨日の雨が嘘の様。先行パーティは2人のパーティ1組と9人のツアーパーティ1組だ。独標(2701m)にてご来光を迎える。ピラミッドピークの道標がなくなっていた。
西穂高岳(2908.8m)頂上6時45分着。ここから間ノ岳(2907m)へはナイフ・エッジの岩稜下り、風化が激しい浮石の多い逆層のルンゼ上の登り。天狗岳(2909m)への登りは逆層のスラブ状の岩壁。下りは足元が切れ落ちた岩壁の鎖場。
とここまでは順調。天狗岳8時50分着。同室だった青年2人組みとは抜きつ抜かれつ来たが、休憩している間にとうとう抜かれてしまった。

ピラミット゜ピークから西穂の稜線に向かって 西穂高山頂


天狗のコル辺りから雲が出始める。ここには元避難小屋があったが今はない。前回相原と来たとき、この分岐からエスケープするため岳沢に下った3人パーティのうち2人が滑落遭難した。ここを下山する時は、ピッケルは勿論アイゼンも必携な急斜面だ。
コブ尾根の頭へは標高300mの急な長〜い登りで浮石も多く歩行速度が極端に落ちる。
畳岩の頭を経てやっとやっとコブ尾根の頭へ。目の前にジャンダルム(3163m)が立ちはだかっている。


 ジャンダルムはコルから飛騨側ルートで簡単に頂上へ。しかしガスがかかり展望なしで残念だ。昨年の夏、小川・斉藤・尾藤さんの女性軍とこの正面壁で遊んだことが昨日のように思い出させる。
ロバの耳の鎖場を越え、馬の背のナイフ・エッジを簡単に通過し奥穂高岳頂上へ。

天狗岳に向かう 間ノ岳の下り 逆層スラブは長いクサリで

天狗岳山頂 ジャンダルムから見たコブとロバの耳(左)

ジャンダルムの岩峰 馬の背のナイフ・エッジを登る

 山頂で休憩し涸沢に向け下山にかかる。ガスの中をまだ一般登山者が軽装で登ってくる。大丈夫かいな。山荘直前の鎖場にはハイキンググループの初心者の皆さんがセミ状態で岩にへばりつき中々進んでくれない。
山荘前から雪が付いている。今年は雪が多そうだ。ザイテングラードを下り、シナノキンバイとハクサンイチゲのお花畑に出る頃から降り出した雨は小屋にあと15分前頃には本降りとなってきた。涸沢小屋を経て涸沢ヒュッテに。だがしかし、そこには尾藤さんがいなかったのだ。涸沢小屋に電話するとチェックインしていると言う。また、涸沢小屋に引き返し尾藤さんと合流。この涸沢にはヒュッテと小屋があるので良く合流する時に間違えるという。今日の行動時間は12時間だった。

奥穂高頂上

 明日は念願の北尾根の登攀だ。
北尾根は前穂高岳から北東方向へ派生する岩稜(末端は屏風岩)でその美しいスカイラインは日本三大岩稜(槍ヶ岳北鎌尾根と剱岳八ツ峰)にも数えられるとのこと。北尾根は前穂高岳を1峰とし最低コルにかけて八つのピークを連ねている。30数年前の昔、相原たちと涸沢にベースを張り、この北尾根の末端の屏風のコルから上がり屏風の頭で遊んだことがあり、この次は北尾根の完全制覇だと思い続けていた旧恋の場所だ。
 
雨が上がってくれることを祈りながら就寝。雨が夜半頃激しく屋根を叩いていた。夢うつつの中で、今日は雨、ゆっくり寝ていられると思ったのに天気予報と違い満天の星空だ。



前穂高北尾根登攀に挑戦

前穂高北尾根(昨年の写真)


 26日(土)昨日に続き3時半起床、4時40分ヘッドランプを灯して出発。涸沢雪渓にはまだ誰もいない。キャンプ場を過ぎアイゼンを着け、ピッケル片手に登攀開始。奥穂〜涸沢岳が赤く染まってきた。
5・6のコルに突き上げる沢は急だ。このままコルまで雪渓を登るとなれば尾藤さんをアンザイレンしなければならなくなるなと思っていた頃、後続の男女二人のパーティが追抜いて行った。右岸に付けられた踏み跡というより登山道に出る。シナノキンバイ・ハクサンイチゲのお花畑が綺麗だ。コルからの展望は最高。

涸沢岳 北穂と槍ヶ岳

 X峰は見た目には狭い岩稜だが右手に踏み跡がついていて簡単に頂上へ立つ。槍穂の稜線が綺麗だ。足元には奥叉白池が朝日に光っている。
先行したパーティがW峰を登り始めた。インターネットによる昨年の夏山の山行報告書によればW峰の
登攀は難しい。ガイドブックによれば涸沢側を巻くとあり、踏み跡もあるがグズグズのトラバースがいやらしい。ザイルを出すほどではないが、長さ数mの危険個所がいくつかあるし、岩が脆くて落石に注意を要した。過去には大島亮吉がこの4峰から涸沢に転落して亡くなっている。(山と渓谷社アルパインルート集)と記してあった。
又、1週間前の武蔵高麗の日和田山の岩トレ時に柏山岳会の末吉さんがトラバースはほんといやらしい。グレードもV峰よりも総合的にはW峰の方が上ではないかとも言っていたのを思い出したが、これは残雪期のことであり、岩が乾いていれば問題ないだろう。

X峰頂上 奥又白の池

 ここからW峰へはまず涸沢側をからむ踏み跡に入っていく。しばらく進むと岩にペンキ印があって、ここから奥又白側へトラバース。先行パーティは直登ルートを登って行き、大きな声で合図を送っている。我々はその直登ルートを無視し、狭いバンド状をぐるりと回り込んだところから、今度は残置された黄色いスリングの垂れた岩峰へと右上しようとしたが、先行パーティが目の上にいた。
そして、その女性が「私にはここは無理、もう一度ルートを確かめましょう」と言っていたようだ。
また、ここからの登攀は岩が脆くボロボロ崩れてきたので、稜線には戻らず積雪期ルートと思われるバンドをそのまま直上し、裏側からW峰の頂上に出た。
W峰のW峰の頂上は大岩が積み重なった細長いピーク、両側が切れ落ちていて高度感があり、槍穂のスカイラインが素晴らしく登ったと言う実感がわいてくる。そして、V峰の迫力のある岩峰の上に9人の登山者がこちらを見ていた。あの人数でこんなに早く登れるなんて、何て早い連中なんだろうレベルが違い過ぎるなと関心した。
ガイドブックで言う、涸沢側から巻くというのはどこのことを指しているのだろう。涸沢側への踏み跡が判らなかった。また、我々が巻いたルートはかなり大きな岩も崩れるので冷や冷やものだ。この巻きは涸沢側より悪いと思う。


V峰1Pを登る星野 V峰2P目を登る尾藤

V峰3P目を登る V峰4P目を登る山際


V峰へは、コルから15mほど上がった場所が最初のビレーポイントである。ここから1ピッチ目は奥又白側にトラバース気味に上がっていく。残置ハーケンはたくさんあるがグラグラ動く物もあり一本一本確かめてカラビナを掛けていく。
岩質も安定していて快調である。足元は奥又白側にスッパリ切れ落ちていて高度感たっぷりの登攀を楽しめる。


9mm50mシングルのロープの流れが悪い、「山際さーんロープを送って!」と合図を送りロープを送り出して貰う。
平たいテラスの上に出たが、ここから上には残置ハーケン・ボルトがないので、右に振り横に走るクラックを利用し右チムニールートに入るが行く手を阻まれ、尚もその右の一番右の涸沢側のクラックに入る。
しかし、ここは悪く岩を抱え込んでいく部分は冷や冷や物だった。テラス右上部のA右ルート(リッジのようだ)ここでセルフビレイをとりセカンドの山際さん、ラストの尾藤さんをビレーする。


2ピッチ目はクラックルートを右上へ抜けた。ハンドジャムが良く決まり気持ちいい。
3ピッチ目は、涸沢側のクラックから左上し2m
程の高さの、のっぺりしてつるつるの岩が出てきた。手足をかけるところが全然見あたらない。残置スリングに足を掛けて強引に這い上がり大きなテラスへ(35m)。このテラスが一番大きく安定している。ここで休憩する。

V峰4P目テラスにて

4Pは本を開いたような典型的な凹角ノジェードルを直登するが見た目よりホールドがたくさんありクラックに靴先をねじ込み簡単に登れる。
5P目は頂上直下の岩峰下まで階段状の岩場の登り(50m)で簡単。
6P目は左が逆層気味のハングで悪く、右側の涸沢側からトラバースし頂上へでることにした。
しばらく直上してから右にトラバースし、下り気味に進んでから斜上するが、トラバースから一段下るところの足場は空中に突き出した岩で、いかにも崩れそうなだ。
その先の斜上ラインも岩の状態が悪く、大きな岩がグラグラする。また、踏み跡も良く判らないので適当に登っていく。ここを抜けたところはV峰の頭のわずかに先で、本当に小さなコルを越えてU峰へは目の前の岩稜を簡単に登れる。そのままU峰の稜線の突端に出て、10mとも15mとも言われる切り立った岩壁の懸垂下降は、しっかりビレーを取り、バランス良く下降とガイドブックには書かれていたが、我々は残置スリングに長めのスリングを2本からませクライムダウン。ラストの山際さんにスリングの回収を頼んだが、結び目が引っかかり中々取れないので再度登り返しフリーで降りてしまった。

コルからは、目の前の斜面を適当に登るだけ。涸沢側から簡単に巻いて頂上へ出た。W・V峰で見えた登山者は前穂頂上の登山者だったと今頃気がついた。

 頂上標識のところで山際さん尾藤さんと「やったね」と硬い握手を交わす。二人とも「やった!」と満面の笑顔だった。これで翌週のヨーロッパアルプス「マッターホルン」挑戦への自信もつき安心して送り出せると思った。頂上にいた栃木県の2人パーティの人に記念写真を撮ってもらう。

U峰からW峰の稜線 前穂高岳頂上


 これからの予定は、奥穂経由穂高山荘で泊まり翌日白出沢〜新穂高温泉に下山することになっていたが、これだと明日も行動時間が10時間を越えるため3日間連ちゃんの10時間越えは勘弁して欲しいと、岳沢ヒュッテに泊まり楽チン下山で新穂高へ行くことに変更となった。
下山は紀美子平へ下るが、紀美子平へは何回も上り下りをしているのにどうした訳か吊尾根の縦走路を奥穂側へ下ってしまった。バカななんてこった、こんなことがあっていいのかと反省する。紀美子平へ引き返し、花の勉強会をしながら岳沢ヒュッテへ下った。行動時間12時間。二日連続の12時間行動でほんと疲れた。


戦い終わって深山荘の露天風呂で汗を流す

 27日(日)最終日なのでゆっくり起床と思ったが、周りが煩く結局は寝ていられず起きてしまった。山際・尾藤の二人は最後まで頑張って寝ていた。
そして、出発は最後となりのんびりと上高地へ下山。河童橋の袂にある白樺荘に立ち寄り、大雪山で知り合って以来5年目、あの愛しの彼女「やよいちゃん」と感激の再会だ。
 上高地から発車ぎりぎりの平湯温泉行きバスに乗り、平湯温泉で30分待ちで新穂高温泉行きに乗換へ終点一つ手前の深山荘前で下車し、清流を眺めながら混浴の露天風呂に浸かり山の汗を流し下山した。


写真:星野/文:星野