針の木峠〜鳥帽子岳縦走                        2004.9.22〜26

月 日    9月22日(水)〜26日(日)

天 候   晴れ/小雨

メンバー  星野

 1日目
 新宿発「ムーンライト信州81号」白馬行きは全車座席指定だが、がらがらであった。扇沢へは裏剣に行くと言う女性3人組みと相乗りしタクシーで30分ほど、4100円を割り勘で一人1000円。
扇沢で山菜そばを食べてから扇沢観光案内所にある登山カードポストに計画書を投函し7時10分出発。

これから登る人は誰も見えない。針ノ木峠まで登りのコースタイムでは5時間、どのくらいで歩けるか。ガラガラの鳴沢の次の湧き水の噴出している沢で休憩、次の水流のある沢を渡渉し大沢小屋は休まずに通過。

朝の扇沢駅 針の木峠登山口

雪渓下端と思われる二股の徒渉点で休憩。前方に6人と2人のパーティが見える。今年は暑い日が続いたせいか雪渓は現れてこない。夏道をゆっくり登り「ノド」の下の渡渉点で休憩。ノドの上部にも雪渓は見えない。

ここまでに下ってきた登山者は5人のみ。下から登ってきた3人パーティに追い付かられる。対岸に渡渉し鎖のある岩場を三点確保で登る。ヤマクボ沢を徒渉し、レンゲ沢と表示のある水流の沢で、ベニバナイチゴがたわわに実っているので写真に収めたり食べたりしていると、先ほどの3人パーティのうち男性二人に追い越される。もう一人は女性で姿は見えない。聞くと足が遅いので先に行っていると置いて着てしまったらしい。「可哀相に!」。さらに夏道を登りつめて、山小屋の発動機の音が聞こえてくる。針ノ木峠は間もなくだ。

針ノ木峠手前からはダケカンバやナナカマドの紅葉が素晴らしい。12時10分着。針ノ木峠までの所要は5時間00分、測ったようにジャストであった。2ケ月少々の空白と寝不足でピッチは上がらなかったがまだ衰えていないらしい。

一日目の行程を扇沢から針ノ木小屋泊りまでにすると楽だし、船窪小屋まで足を延ばすとコースタイム10時間超という時間的ハードさに加えて、蓮華の大下りと北葛岳・七倉岳という大きなピークを2つ越えるという厳しいものとなるので、今回は寝不足という事を理由に針ノ木小屋泊りとした。
受付を済まし、今日は時間はたっぷりあるので針ノ木岳までピストンしょうと思ったが頂上付近の雲が取れないので針ノ木岳はやめて蓮華の途中まで写真撮影で時間をつぶしのんびりする。峠から蓮華岳は見えているのは3分の1位だ。

同室の客は名古屋の高津クライミングガイドと女性客4名の名古屋コーチン隊、東京の横チャンリーダーこと横田さん他女性3名の東京ドドンパ隊と私の計10名。賑やかでとても楽しい人達だ。この方達と最後まで一緒になるとはこの時は誰も思いも寄らなかっただろう。

針の木岳(2821m)

北葛岳(2551m)左と七倉岳(2509m)右


 2日目
 今朝も晴れ、これから辿る山々を眺めながらモーニングコーヒーをのんびり飲んで6時30分、予定よりまる1時間遅れて最後に出発。最初の15分が急登でコブにでる。2754mピークで先発の東京グループに追いつく。鹿島槍等の写真撮ったりして一服休憩。この時、東京グループの菅原さんから「そんなに急いでどうすんの?時間はあるんだしのんびり楽しんで行こうよ!」と、この一声がこれから先の行動を共にするきっかけになった。

この第2ビークから頂上は遠い。平坦な砂礫の緩斜面になると高山植物の枯れ草が次々目につくようになる。花時はコマクサの群落がさぞ素晴らしいことだろう。石祠のある蓮華岳ピークに立つと360度遮る物なしで剱岳・爺が岳・鹿島槍・白馬・薬師・槍が岳と針ノ木岳の鋭鋒が素晴らしい。大町市にある若一王子神社奥宮の石祠のすぐ先に三角点標石がある。頂上で写真を撮ったり撮られたりして、菅原さんから『あなたの名前は?』と聞かれたので「星野だよ」と答えると[フルネームで]と聞かれ「健一」だよと言うとすぐさま『健ちゃん』ね、と以後東京に着くまで健ちゃんとなってしまった。

第1Pから針の木小屋 第2Pから剣岳をバックに


 ここから船窪小屋までは“蓮華の大下り”と北葛岳・七倉岳という大きなピークを2つ越えるという厳しいものとなる。ここでルートは右へ直角に折れて蓮華の大下りとなる。ザラザラと崩れるような岩屑の道をジグザグに急降下して行く。蓮華の山頂がたちまち頭上高く遠ざかって行く。
こんなに下ってしまってもったいないな〜。岩峰を下りながら振り返ると「やっぱり北アルプスだ!北海道や屋久島とは違うね!」ご機嫌だ。

コルに近づくと足元も砂地のように滑りやすく鎖場、梯子が連続し岩場を下る楽しい所だ。ようやく降りたったコルが北葛乗越、蓮華山頂から500メートル下りはまさに“蓮華の大下り”だ。
今度はここから北葛岳までは300メートルの急登だ。正面に綺麗な三角形の頂上を見ながら歩きにくいハイマツの岩場を一歩一歩登る。コケモモ・ガンコウラン・クロマメの実を摘んでは口に放り込み、秋の味覚を楽しみながら登る。
山頂までは単純な一本調子の登りではなく、途中には2、3の突起が控えて体力を消耗する。ハイマツに囲まれた広場の北葛岳の山頂に蓮華岳から2時間48分かかって到着。蓮華、針ノ木、立山、剱岳などを眺めながら楽しい昼食だ。

 今度は北葛山頂から右へ直角に折れるようにして下って行く。相変わらず険しく歩きにくい道に変わりはない。ハシゴや岩場を下りさらにコブの上下を2、3回繰り返して300メートルほど高度を下げて七倉乗越のコルとなる。 今度は鉄の梯子を登り七倉沢側がスッパリ切れ落ちたナイフエッジを頑張れば七倉岳の頂上で南側の高みに古びた七倉岳の標柱。針の木から見た素晴らしい姿からは想像も付かない何の変哲もないつまらない頂上だ。ここで雨がパラパラ落ちてきたので、目と鼻の先の船窪小屋へ向かうと、小屋から『お疲れさーん』と鐘の音で向かえてくれ、到着すると同時に熱いお茶をベンチへ持ってきてくれた。この歓迎が嬉しかった。13時33分到着。針の木から7時間03分、予定より17分早く着いた。

 増築数年の船窪小屋は、まだ新しい感じできれいだった。中へ入ると囲炉裏がきってあり、炭が赤く熾っている。囲炉裏で高津さんや横ちゃん・親父さん等と談笑中、窓の外は大粒の雨が降り出してきた前線が通過中で今夜から雨だ。明日雨だと嫌だな〜、と思いつつ気まぐれに「前線は南下中だよ」と言うと小屋の親父さんが「そうかい南下中なら明日は今日と同じか晴れるよ」と言ってくれた。


そんな中を合羽を着た登山者が続々到着した。中には新穂高から単独で来たお嬢さんや、「扇沢から直接ここまで四つんばいになって登ってきたと」ふらふら状態で来た単独の鶴ヶ島のお嬢さん。
「もう駄目だ、明日は下山するぞ」とふらふらのさいたま市の女性二人と男性一人のパーティ。女性群からはっぱを掛けられていた。小屋の外からは剱から槍、燕岳まで一望という小屋だが、残念ながら雨で展望は得られない。
 この小屋は、大きな山小屋では味わえないアットホームな小屋で、またランプの小屋という雰囲気がよかった。食事の前に奥さんの料理の説明があり、赤米(古代米)の赤飯のようなご飯も美味しかったし、おかずごとに器を別にしている気遣いが、嬉しく一層美味しくしていた。最後に出されたブルーベリーのデザートに感激です。

 食後の後は、お茶タイムで、奥さんが入れてくれた紅茶も美味しく、ここで仕事をしているネパール人のシェルパのサーダー氏がネパールの恋愛の歌や、若旦那がアコーデォンの演奏会。これが半端じゃない、頭にタオルを巻き黒いサングラスを掛けてのトークが面白く。ハンガリー民謡やチャイコフスキー等、そして今日誕生日を迎えた横ちゃんへのリクエストも演奏してくれた。なお、今夜の宿泊客は18名だった。

船窪小屋 ランプと囲炉裏が懐かしい

 3日目
 今日は船窪小屋から船窪岳・不動岳・南沢岳を越えて烏帽子小屋までの休憩を含まない標準タイム7時間30分(休憩時間を1時間40分をプラスすると9時間10分)のロングコース。雨で道は濡れているので10時間で歩くことはたぶん可能だろう。
朝食を取らず4時50分に小屋を出発した名古屋コーチン隊を見送り、我々は5時50分に出発。
頂上への分岐に来るとご来光とともに浅間山が噴煙をたなびかせ、富士山も槍ヶ岳も綺麗に空に浮かんでいた。キャンプ指定地への下りに入る。一張りのテントがあるキャンプ場を過ぎると、思いきり良く急降下して樹林帯へと入って行く。信州側は雪庇じゃなく土庇の下が抉れ、いつ崩壊しても可笑しくない大崩壊の白っぽい急崖、どこまで下るのか、足場の悪い長い下りを終るとやっと船窪乗越のコルとなる。小屋から1時間、標高差300メートルを下だった。

 船窪岳ピークへの登り応えがある。コースは険しい悪路つづき。20分で『船窪岳』の標柱の立つ2310mピークとなる。
この標柱のすぐ脇に天然のブルーベリー木がありたくさん実を付けていたので朝のデザートとした。ここから2459mピークまでのコースも非常に悪い。大崩壊により足下がえぐれて、ひさし状になっているのではないかと疑いたくなるような道、ナイフの刃渡りのような痩せた尾根、息を抜けない緊張と、何回も繰り返すアップダウンを繰り返す。
登り着いたピークの標柱にはマジックで船窪岳第二ピーク「2459.0m」と書いてある。船窪岳山頂は、先ほどの船窪岳標柱の2310mピークではなく、ここが船窪岳山頂とガイドブックには書かれている。ピークは樹木に囲まれて展望がない。
これから先は樹林に入ったり出たりしながら進み、途中からガスの密度が濃く樹木に溜まった雨滴が雨状態で降り落ちてくる。
2341m付近で昼食。これから辿る不動岳、南沢岳のほか、表銀座の山々、立山から五色ケ原、薬師、赤牛岳や眼下には黒四ダムを眺めながら大ガレのコルへ下る。

 不動岳までは大ガレのコルから250mほどの登りとなるが、小さなピークを3つほど越えていく。登っては降り、登っては降り、精神的な負担感が大きくピッチは上がらない。大きな岩峰が見えてきて、これを登りきると不動岳第1ピークだ。次の岩峰を越えると山頂標柱はその先の広々としたハイマツと砂礫の円頂にあった。船窪小屋からなんと約2時間30分オーバータイム7時間を要してしまった。

船窪第2ピーク頂上 船窪の登りはこんなのが続く


 立山方面に少し雲がかかっているが、五色ケ原から、薬師、水晶岳、針ノ木、蓮華、北葛、七倉、船窪岳などの越えて来た山々、みごとな展望が広がっている。
 不動岳山頂からは、ハイマツ帯からガレ沢を下降し、しばらく下ると樹林帯へと入る、この付近はナナカマドの紅葉が素晴らしい。標高差200メートルほどの小ピークを越して2つ目のコルが南沢乗越である。ここから本日最後の大きな登り、標高差250mを頑張れば南沢岳である。ガレの縁、あるいは富山側を巻いたりして、これが最後の登りだ、左に唐沢岳と餓鬼岳のギザギザの山並みが登行欲を誘う、今度はあのルートをやって見たいと思った。ここまで来ると皆疲れているので山頂手前のコブを越えるのがかなりつらく感じられた。
 南沢岳は砂礫の広い空間で、大きな花崗岩の岩が一つ、そこに『南沢』と朱書してあるだけで標柱はない。基礎部分が浮き出してしまった三角点標石がある。 ここも展望は文句なし。上の廊下から黒部湖、赤牛、目の前のドームの烏帽子岳、槍から穂高と裏銀座のオンパレードだ。頂上には昨日ふらふらだった埼玉グループがいた。不動岳から所要時間は1時間40分とピッタリであった。疲れているのに良く付いてきたと感心する。
 疲労感はあるが、ようやく気分的な余裕も生まれてきた。越えて来たピークを振りかえり、四囲の展望にしばらく見入って休憩のひとときを過ごした。

 南沢岳山頂から悪路からも開放され、白砂の日本庭園風の道をゆっくりと歩を進めて行くと、四十八池と呼ばれる烏帽子田圃は草紅葉に池塘が散りばめられ烏帽子岳のドームが姿を写し最高のロケーションだ。途中でベニバナイチゴの群落があり食後のデザートを頂く。

鳥帽子田圃 鳥帽子岳の岩峰

烏帽子分岐にザックをデポし烏帽子岳を目指す。
先頭を行く豊ちゃんのスピードが物凄く早い、どこにこんな馬力が残っていたのかビックリする。烏帽子岳の岩峰には数年前に付けられた新しい鎖があり、簡単に頂上に立てるようになってしまったことは残念だ。これも200名山の賜物か。私は昔30数年前に登った通り三点確保で登りきった。岩峰の絶点に立つと運良く餓鬼岳側にブロッケンが現れた。これは超ラッキーだった。烏帽子岳で約1時間遊び分岐に戻ってニセ烏帽子(現在は前烏帽子岳と表記されている)を越えて烏帽子小屋へ向かった。

 やっとのことで烏帽子小屋に17時12分到着。船窪小屋から12時間の行動となってしまった。とうとうやったねと全員握手で喜び合った。登りきった安堵感から缶ビールで一人乾杯してしまった。これは横ちゃんが飲めないため。
船窪小屋(5:50)〜(6:50)船窪乗越(6:55)〜(7:15)船窪岳(7:27) 〜(8:00)鞍部(8:15)〜(9:11)第2ピーク(9:20)〜(12:54)不動岳(13:00)〜(13:35)南沢乗越(13:45)(14:38)  南沢岳(14:48)〜(15:35)
烏帽子岳分岐(15:45)〜(16:00)烏帽子岳(16:15)〜(16:25)烏帽子岳分岐(16:30)〜(17:12)烏帽子小屋

 夕食の後は、名古屋コーチン隊と合同のお茶会だ。女性が7人もいると本当に賑やかだ、この調子では明日まで話が止まらないのではないかと思ってしまう。今日の宿泊客は40名

鳥帽子岳の岩峰

 4日目(最終日)
 今日は最終日ブナ立尾根を高瀬ダムに下るだけだ。モーニングコーヒーを飲んでまたまた最後尾で6時40分出発。扇沢から蓮華岳・烏帽子岳まで北アルプスとは思えない静かな稜線縦走だったが、烏帽子小屋からブナ立尾根の下りに入っても登って来る登山者は少ない。

三角点まで55分、タヌキ岩付近からキノコがたくさん生えている、こうなると徳ちゃんが止まらない。食べられるかどうか分からないが結構採っていた。それでも予定より早い1時間50分で濁沢まで下ってしまった。
濁沢の河原でお茶タイム。菅原さんのザックからケーキが出てきた。小屋では全員に振舞う訳には行かないので、ここで改めて横ちゃんのハッピーバースディを祝った。
 濁沢に懸かる30m以上はあろうかと思われる滝を写真に撮り高瀬ダムへ向かう。不動沢に懸かる気持ちの良い長い吊橋を渡り、続いて不動沢トンネルを抜けると高瀬ダムだ。ここには小屋のすぐ上から携帯で呼んでいたタクシーが待っていた。続いてもう1台もすぐ上ってきた。東電の監視所がうるさいらしく2台となってしまったがゲートの先で1台に乗換て葛温泉の高瀬館に立ち寄り、露天風呂で4日間の山の汗を流し信濃大町駅へ、指定件を買ってから駅前のガンコそばで今日から販売の季節限定のキノコそばと生ビールで乾杯。ここで大笑いは、同じテーブルに着いたお兄ちゃんの海老天そばを見て天婦羅が食べたいと徳ちゃんが、盛り合わせを二人前たのんでしまった。この天婦羅は徳ちゃんのおごりでした。ご馳走様でした。食後はブルーベリーのヨーグルトアイスを食べてから14時02分発新宿行き特急アズサに乗り、帰途についた。


鳥帽子小屋 東京ドドンパ隊の面々と

写真文:星野