不良雑貨専門「だっぺ屋」の | ||||
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気を取り直して、いよいよ本命ポイントへ向かう。これから、8寸、9寸、尺、と上流に行く程、型が上がるはずだ。相変わらず岩魚は見えている。しかし・・・何かおかしい。見えるのだが、餌を入れると逃げてしまう。さっきまでは、何の疑いもなく食いついてきたのに・・・。なんの事はない。核心部から、前日のものと思われる足跡があちこちぺたりぺたり・・・。まあ、仕方がない。足跡が無くなる処まで行くか。 | ||||
しかし、足跡はどこまでも続いていた。気がついたときには、もう1時を回っていた。腹が減ったのを我慢して、先へ進むが、足跡は消えない。もう、釣りは無理だな。お湯を沸かし、カップラーメンで昼飯とした。ラーメンをすすりながら、2週間前の新潟を思い出していた。ここも、簡単に来れるところじゃなきゃなぁ・・・。でも、そうすると、オレが来れないか(苦笑) 一服終え、沢を下り始めた。トレーニングのつもりで、休憩は少な目にし、汗をかく位のスピードで降りる。残り1/3程のところで、また、霧が立ちこめてきた。朧に見える水面には岩魚の姿があった。普通、帰りには姿を消しているはずなのに・・・霧に塗れた緑は怪しげな色合いだった。足下を注意しながら駆け下りる。そんな中でずっと気に掛かる事があった。誰かが見てるような気がしてならなかったのである。ふと対岸を見ると、一瞬足がすくんだ。2匹の緑色した猿がこちらを見ていた。だらしがなく仰向けになった猿と木の間から笑ってる猿。数秒して誰もいない沢で苦笑してしまった。 なんてオレは肝っ玉が小さいんだ! 正体は苔むした木の根だった。 まあ、猿ヶ石だから、猿ヶ木があってもおかしくはないか。 車止めに戻ると来たときと同じ霧の暗闇。 今日の不思議な出来事を思い出した。霧に包まれた沢は恐ろしかったが楽しかった。岩魚の姿も、白骨も、そして蝦夷蒲公英も・・・霧が晴れると現実の世界へ引き戻された。そして帰りでの緑猿・・・きっと此処は・・・ 霧幻の森なのかもしれない。 |
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完 |