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山遊雑記 
村田久氏から学ぶ下嵐江(3/3)

■村田久氏が伝えるもの

 新しい胆沢ダム建設によって、辺りは一変し始めている。私は毎年行っているが、巨大な重機で無惨に削り取られていく姿は、見るに耐えない。しかし、こうした巨大開発は、単なる自然を奪うだけでなく、そこに生きた人々の歴史さえも奪っていく。

石淵ダムも胆沢ダムも、元々はそこに住む人達の要望によって計画されたものではあるが、計画が官の手に渡った時から、住民の意思とはかけ離れたものになっていく。

抗うことの出来ないうねりの中で、抹殺されていく人々の心を忘れてはいけない。下嵐江という村が無くなっても、その歴史を抹殺してはいけない。そして開発とは何なのかを、考えなければならない。村田さんは、老人達の言葉を借りて語っているのでしょう。

私が調べた「下嵐江」は、ほとんどネットで調べたものであるが、これだけでも知って、再度エッセーを読むと、また違った受け取り方が出てくる。老人の語りに深みが増してくるのである。

 皆さんが本に限らず、映画や色々な作品に出会って、のめり込んで詳しく調べる事があると思うけど、私にとって、本当に色々と調べたくなった作品はこれが初めてだった。また、ネットという便利なものが出来たせいで、気軽に調べられるという事もあるが、やはり、こういう地域の話はとてもネットでカバーできるものではない。今度は、色々と自分の足を使って調べてみようと思っている。

 下嵐江について書いてきましたが、村田さんは、失われつつある日本人の心や、風土をとても上手く描写する。ほんのりと心地よく入ってくる話も多い。昭和の時代にタイムスリップしたかのような気にさせてくれる。遠野にまつわる話も数多い。決して、あの時代は良かったという文章ではない。その時代に、人々がどう生きていたかということを、描いているのである。遠野についても、色々と自分なりに調べてみたいと思う。

 村田さんの著書には、クスリと笑ってしまうエッセーも沢山ある。「イーハトーブ釣り倶楽部」は軽妙なエッセーが多い。「拾った44センチ」や「屁っぴり虫」「夏の子供」「ビル・バランの憂鬱」などどれをとっても、思わずにやりとしてしまったり、清々しくなったりする。皆さんも、どれか一冊読んでみれば、虜になってしまうと思いますよ。

  3/3