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山遊雑記 
崩壊の真実(2005,08,15)

お盆休みに、和賀川支流、北本内川に行ってきた。和賀川水系でも渓谷美を楽しめるお気軽釣り場として人気の川である。ずっと林道がついてるが、昨年冬、林道の入り口で崩壊が起こり、去年一年間復旧工事の為、車では入れなかった。今年の春に工事が終わったのを確認しているが、また、その先が新たに崩壊しているのも確認している。ふと、先を確かめたくなった。前日はかなりの雨が降ったが、渇水気味だった川にはちょうど良いと思って出かけたのだが、明け方になってもまだ、霧雨が降ってる状態だった。

林道の入り口で、見覚えのある漁協の監視員がいた。朝の挨拶をし、年券を見せると

「今日は、あなたが初めてだよ。昨日は結構、秋田から逃れた人が来たけどね」

朝の7:00である。とっくに先客がいると思ったのだが。

「かなり、増水してるから、釣りになんねぇかもしれねぇよ」

春先に確認したこの先の崩壊現場は歩きなら行けるという。自分が行きたいのは、その先の二股の先、2時間の歩きだ。

「あ〜、そこまで行けば、釣りになっぁかもしんねぇ。大漁かもしんねぇぞ(笑)途中、おっきぐ、崩れてっとこあるがら、気を付けていってな。」

崩壊現場前に車を置くと、すぐに虻が寄ってきた。防虫ネットをかぶり、手には分厚い手袋をはめた。鬱陶しいお供を連れて、崩壊現場に到着すると、既に復旧工事にとりかかっているらしい。でもこの様子では、来年までかかるだろう。虎ロープをまたいで、ガレ場を慎重に渡り、目指す二股に向かった。
雨後の川はまだ荒れていた。これでは釣りにならない。半ば、釣りを諦めた。ただ、この林道がどうなったかに興味が湧いてきた。車できた修復区間とはうって変わり、荒れ放題の林道になっていた。至る所で崩壊が起きている。30分も歩くと、懐かしい二股に到着した。以前、釣りに来てた場所はまだここから、4〜5km先である。休み、休み行きたいのだが、虻がうるさくて、おちおち休めない。虻に追い立てられるように、先を進む。
大崩壊現場に遭遇。おっちゃんが云ってた場所はここだな。山頂から、数十Mの幅で丸ごと崩れている。もちろん、林道などは無くなっている。凄まじい光景だ。ある意味、感動した。そして嬉しく思ったりもした。私は頭がおかしいのか?

人間は車を走らせるために、勝手に山をいびつに削りとり、土砂を捨て、コンクリートで固めていく。山は、小さな崩壊を繰り返して警告しているのに、人間は止めようとしない。この繰り返しに終止符を打つために、大きな崩壊を起こしたのではないだろうか?いや、山は、そんな事に関係なく、自分のあるべき本来の姿に戻ろうとしてるだけだろう。
林道は既に人が歩けるだけの道になっていた。2年前はここを、大型の4駆が行き来していた。
不思議な木に出会った。根が伸びた?いや、よく見ると、倒木が逆さまに立っているのである。しかも、朽ちた枝からは新しい枝がちゃんと天を向いて伸びていた。生命の不思議を感じる。
物好きな釣り人しか来なくなった川では、へっぽこ釣り師にヤマメが挨拶してくれた。綺麗な魚体にうっとりした。
車の通らなくなった道にはマムシが日向ぼっこしていた。
虫たちも気軽に見ることができる。写真には撮れなかったが、ミヤマカラスアゲハなどが飛んでいた。

片道2時間の歩きで、崩壊した場所は5カ所を数えた。コンクリートで塗り固められた岩肌も所々はがれて落ちていた。道は既に車が通れる状態ではない。人間が足で歩くのを許してくれるだけである。山は誰のモノなのか?誰のモノでもなく、山のモノじゃないのか?やっぱり、山は自分の姿を取り戻そうとしているだけだと、独りよがりな考えに頷きながら歩いていた。

昼には、すっかり雨も上がり、暑くなってきた。帰り道、ネットと手袋が鬱陶しくなり、はずすと、いつの間にか、虻に何カ所かキスをされた。私は、うざったい虻を払いながら、山もうざったい人間を払おうとしているのかなと、思わず苦笑した。

ふと、空を見上げると、森が私を飲み込もうとしているように思えた。