不良雑貨専門「だっぺ屋」の
山遊雑記沢の主幻想釣行記友遊釣行記川柳画廊貧乏グッズ岩國渓流新聞漫画葛籠イカサマ・ペイント巡回サイト掲示板TOP
山遊雑記 
太古の流れ

今、私は土木屋みたいな仕事をしている。地面から2〜3m掘り、浄化槽を埋める工事なのだが、結構奥が深い。穴掘りでやっかいなのは、湧水である。湧水があると、掘った側から、土が崩れていき、作業員に危険が及ぶのはもちろん、結果的に大きな穴を掘るハメになる(工事が遅れる)し、やっかいこの上ないのだ。だが経験した範囲では、川や水路のすぐ側でなければ、2〜3m掘っても大した水量は無い。チョロチョロ程度が多い。

いつだったか、広い田圃の中の民家で穴掘りをして、大量の湧水に難儀したことがある。もちろん、田に水を引く水路はあるが、小さなモノで、ある程度、湧水の予想はしてたが、大したことはないだろうと踏んでいた。工事を始めると50cm程掘ったところで、大小の丸い石が現れ、作業を難航させた。そしてまもなく、水が出始め、1m掘ったときには、急遽レンタルで、でかいポンプ2台を借り、毎分1tの水を汲み上げるハメになった。状況に四苦八苦しながらも、なんとか工事を進めていると、その家のおじいさんが心配そうに見に来た。苦笑混じりで状況を話すと

「この辺は、昔、川だったのよぉ、っつうか、川が何キロも暴れたところだからなぁ」

丸い石と膨大な湧水の意味が分かった。ここから北に1〜2kmの処に和賀川が流れているのである。ここは、その伏流水が流れているのだ。丸い石は、昔ココが川だった証である。私は、護岸され、地図に記された川の流れが正しいものと思い、川から数キロ離れたここは楽に掘れると、思っていたのである。僅か地面から50cm下には地図とは無関係の太古からの自然の流れが息づいているのを実感したのだった。