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2006年 6月 3〜4日 
荒川水系女川
メンバー 無釣さん、川崎さん、いばらさん、渓児さん、Mセンさん、岩國
写真 Mセンさん、いばらさん

山で遊ぶには、それなりの知識、経験、体力が必要である。己の能力にあったフィールドで遊びながら、少しずつステップアップするのが基本だ。なんと言っても体力は絶対に欠かせない。もし、体力を考えずに出かけてしまうと、とても痛い目に遭うのである。今回は痛切に感じた旅だった・・・・。


Mセンからの誘いで女川に行くことになった。源流ファンにはお馴染みの川だが、オレは初めて。調べてみると、ん〜・・・・道はずっとついてるが、かなりの高低差がある。どうやら健脚で3時間コースらしい。なんのトレーニングもしてない今のオレだと4時間は最低かかるな。初っぱなにしてはちょっときついかなぁ・・・体力に不安を覚えながら皆の待つ福島飯坂へと向かった。まさか、このときは不安以上の顛末になるとは思いもしなかった。

メンバーはMセン、渓児さん、いばらさん、源流ごっこをしてた頃からの仲間だ。彼らは今では朝日や飯豊の銘渓に通う、オレとは格違いの源流マンである。さらに川崎さん。彼もまた、山男の臭いを漂わせる源流マンだ。そして、特別ゲストに無釣さん。みなさんご存じの著名な方である。挨拶をすませ、支度に取りかかる。


車止めは、霧に覆われ、これから向かうぜんまい道をおぼろげにし、さながら異界へ入り口を思わせる。

この日のために新調した奥利根アクアステルスを履きザックを背負い今年初めての渓泊まりへの一歩を踏み出した。メンバーはタラの芽やコシアブラをとりながら、和気あいあいと進む。道が少しずつ険しくなると、足の親指の爪が痛い。爪を切ってこなかったのが原因だ。途中で皆が山菜取りをしてる間に、ハサミを取り出し爪を切る。だいぶ楽になったが、今度は、足が靴の中で遊ぶ。靴ひもの締めが甘かったのである。遊ぶ靴で踏ん張るうちに、よけいな疲れをためてしまった。
やっと、休憩で靴ひもを締め直した時には、かなり足に疲労がたまっていた。道がなだらかになったところでペースをあげて進む。尾根に出たところで、景色を望みたいところだが、あいにくの霧で全く景色は拝めない。飯豊と朝日の山々を一望できるらしいのだが・・・

のんびりペースで3時間が経過。もう脚が悲鳴をあげ始めた。もう筋肉痛が始まったのである。情けねぇ!下りでは踏ん張りが利かなくなってきた。脚がぷるぷる震えるのである。膝が笑うのではない。脛、腿の筋肉が笑っているのである。後ろを歩いていた渓児さんに向かって

「ふおぉ〜〜ふぉっふぉっふぉっふぉっふぉっ!笑う源流マン!もう、脚がわらっちゃってどうしようもねぇよ」

笑ったところで、筋肉痛は回復しないのだが、笑うしかなかった。

4時間目に突入し、地獄?の急下降に入ると、もう脚はどうにもならない状態だった。はっきり言って、いつこコケてもおかしくない状態だったのである。ここでコケて怪我でもしたら、皆に多大な迷惑をかける。ついに覚悟を決めて皆にリタイヤ宣言をしたのである。身の程知らずの軟弱源流マンを哀れみ、自分担当のブルーシート(1.5kg)をMセンが担いでくれることになった。友とはありがたいものです。(感涙)

ぼろぼろの状態でやっと、渓に降り立った時の、嬉しかったこと!なんと5時間もかかってしまった。だいぶ寄り道が多かったとしても、後半のオレのエンストが大きなタイムロスの原因である。さて、テン場だ!と思ったら、ココの常連の川崎さんの提案でさらに上流のテン場へ・・・まだ歩かせるのかよっ!と思いつつも、体力のない自分が情けなくなる。
へろへろになりながらも、テン場目前というところでついに、痙攣を起こし、遡行不可能に!皆に先に行ってもらう。しばらく、ストレッチしたり、もんだりしてやっと歩けるようになり、一人遅れてテン場到着。時計をみると、歩き始めてから6時間が経過していた(自爆)


やっと落ち着いて、景色を見渡す。気がつけば天国の様な美しさ!身も心も洗われる。って、天国に行った事ないですがね(笑)
テントを張り、たき火の準備が終わったところで、元気のあるMセン、いばらさん、渓児さんは釣りに出かける。Mセンはテン場の前でいきなり、釣り上げ、拍手喝采である。この男は本当に釣りの好きなやつだ。刺身用に尺を一本釣ってきてくれと頼み、残った者はビールで乾杯。最高に美味かった!

とにかく、後は疲れを回復させる為、脚にバンテリンを塗りたくり、仮眠することにした。しかし、まどろみ始めると、脚が攣る。起きあがってはストレッチ。何度か繰り返すうちに、完全に眠りについてしまった。目が覚めると、川崎さんの姿はなく、無釣さんが一人でたき火をしていた。
お話を聞くと、ここ数年ほとんど山に入ってなく、かなりキテたとのこと。実は、ここまで来る間、口数が少なかったのだが、どうやら少々ご機嫌斜めだったためらしい(^^;)川崎さんには、1〜2時間で行けるところに連れて行けと頼んでいたらしいのだ。
「全く、へばってるのが二人もいるのに、こんな所まで連れてきやがって!」
「でも、リーダーの言うことには逆らえないですからね(^^;)」
「そんなリーダー解任しちまえ!でも、彼も此処を見せたかったんだろう。確かにいいテン場だし、此処にきたらあっちには泊まりたくねぇもんな(笑)」

と、やっと、笑顔を見せてくれた。

2時を少し回ったところで、Mセンがニコニコしながら戻ってきた。
「いやぁ、入れ掛かり!約束通り、尺釣ってきたよ!」
見事な魚体のイワナだ。それも尺2本!さすが大物師!時間をもてあましているが、無釣さんやオレは今日は釣りには行かない事に決めたし、Mセンも、もう満足のようだ。まだ早いが、呑むしかない(笑)
「いつもさぁ、○道楽は山行っても、ろくに釣りもしないで宴会ばっかって、陰口言ってたんだけどさ、これじゃ人の事言えないね(笑)」
○道楽会員のMセンはアハハと笑った。ちびちびやり始めているうちに、川崎さんも良型を手にニコニコと戻ってきた。いばらさんと渓児さんも尺をぶら下げてきた。どうやら今晩は、山の幸でごちそうにありつけそうだ。
Mセンの尺イワナを今日の板長、川崎さんのウデでお刺身に
山菜各種、今日は山菜の天ぷらだ!
各自持ち寄ったおつまみメニューに加え、山菜各種を板長が天ぷらにする。イワナの骨酒も用意され豪勢な宴会となりました。
いろいろな話題で時が過ぎていく。酔いが回ればギャグもなめらかに出てくる。テンションもあがる。実は題名は無釣さんが、この宴会で発したジョークをいただいて、改変したモノである。
こうなると、誰もが今日の疲れなどふっとび、夜のブナの森に笑い声が木霊する。風も無く、月も出てる良い天気。いつものことだが、本当に贅沢なひとときだ。どんなに辛くても、これがあるから、やめられないんだよね。
最後に2時間煮込んだカレーでご飯を食べる。もう幸せです。無釣さんも、すっかりご機嫌で

「明日は全員遭難したことにして、もう一泊しよう!」

無釣さんの発言に皆、大声で笑いながら賛成したが、悲しい事にサラリーマンであることを思いだしてしまうのである。しかし、本当に、一泊ではもったいない所である。
全員が呑んべなのに、今回ばかりは、さすがに疲れているのか、シュラフに潜り込むのが早い。7時過ぎた頃から、一人、二人と脱落し、宵っ張りのこのオレでさえ、8時過ぎには睡魔に襲われ、4人目の脱落者となってしまった。Mセンといばらさんの話し声を子守歌にあっという間に深い眠りについた。


一夜明けると、快晴だった。珍しく一番早く起きた。焚き火の準備をしていると、皆もぞろぞろ起き出してきた。渓児さんにコーヒーを入れてもらい、オレと無釣さんは、近場で少し竿を出したが、残念ながらイワナちゃんはまだお目覚めではなかったようだ(苦笑)
朝飯を済ませ、帰路に。ぐっすり寝たせいか、思ったよりも脚は動く。それでも痛いのだが。重いブルーシートはいばらさんが担いでくれることになった(感謝)最初の急登を元気なうちにクリアしたので、これならと思ったが、やはり3時間を超えたあたりから、へろへろになる。
「3本目の脚使えば?」
「いや、もう使い物にならないでしょう(笑)」

くだらない下ネタジョークで笑っているうちは良かったが、筋肉痛だけでなく、左脚の関節が痛み出した。ふつう膝がやられるもんだが、なぜか股関節。
『女川来て股関節痛めたなんて洒落になんね〜』
しかし、痛みは増し、まともに歩けなくなってしまった。
『ほんと、3本目の脚がほしい〜!!ん?3本目?(電球点灯!)』
そうだよ、杖つけばなんとかなるかも!といういわけで、木の枝を杖にして歩くと、かなり痛みが少ない。3本目の脚に頼りながら、へろへろ歩いていると、やっと皆が待つ場所に。絶景ポイントだ!昨日は拝めなかった朝日連峰だ!
絶景を眺めながら大休止。素晴らしい山の景色にエネルギーをもらい、踏ん張って最後の行程をクリアした。いや、良き仲間のおかげでなんとか帰れた。皆に本当に感謝する。(でも、オレがいなくても、山菜採りでペースは変わらなかったかもしれないが(爆)帰りは行きにまして採りまくってたからなぁ(^^;))今度は余裕で来てみたいものだ。できれば2泊したい。そのためにももっと体力を付けなければ。



【追記】2007年 3月 28日
無釣さん事、黒田薫さんが「焚き火の焚きつけ」という本をつり人社から出版されています。
う〜ん・・・・こんなにすごい人だとは、全然知らなかった(汗)
そうとは知らず、無釣さんに、マヌケな質問ばっかりしてた。ワハハハ・・・・

以下、つり人社の紹介記事


 中学卒業と同時に社会人山岳会の門を叩いた著者は、青春時代には米国のヨセミテの自然に魅せられ、学業もほったらかしにして世界一の大岩壁・エルキャピタン登攀にエネルギーを燃やします。フリークライミングの真髄を体験した著者は、同時に70年代のアメリカ若者文化から「自由」の洗礼も受け、後に日本の登山界にウォータークライミングという独創的なスタイルを生み出しました。

 その影響は自由精神に溢れた彼の文章にも表われていて、それまでの「無償の崇高な行為」や「男のロマン」を売り物にした多くの山の文章とは一線を画した、個性的な、そして時にはかなり型破りなスタイルで、山に登ることの喜びを痛快に語りつくしています。

 本書は、そうした一連のロッククライミング、登山、沢登り、そして渓流釣りの紀行文などに、新たに書き下ろした原稿を加えた、奇才の名文家・黒田薫の集大成です。

 また巻末には’80年代に歯に衣着せぬ文で絶大な人気を博した「毒舌 山ヤ相談室」(『山と渓谷』連載)も収録しました。これまでの山の本では味わうことのできない、オリジナリティ溢れる、切れ味鋭い抱腹絶倒の世界へどうぞ。