◆感情鈍麻性反応◆
特徴:精神活動の萎縮・感情が鈍くなる

侵入性症状は思い出したくないのに思い出させてしまうというものですが、回避性症状(狭窄・反応麻痺)は健忘のように
トラウマとなった体験を思い出させないようにするものです。
一見正反対ともいえるような状態が同居していることをどう理解すればいいのでしょうか。

この事を理解するためには、先に述べた「体験の瞬間冷凍」という考え方が役に立つと思われます。

回避性(狭窄)の症状はトラウマ体験を思い出させるきっかけとなりうる刺激を避けようとするものであり、
瞬間冷凍されたトラウマが解凍されて自己を抑制したり、あるいは解体してしまうような状態を避けようとする 意味が含まれています。
一方、侵入性の症状はある意味ショッキングな体験に対する通常の反応と類似したものであると言えましょう。

このようにしてみてみると、一見正反対にみえる回避性症状(狭窄)と侵入性症状はいづれもトラウマから自己を守ったり、
あるいはトラウマを解消しようとするこころの動きが固定化し、何らかの不適応をもたらす症状になったものと理解できるでしょう。
(「子どものトラウマ」西澤哲)


感情鈍麻性反応は分かりづらく、見落としの多い反応です。

例えば、強姦の被害にあった人が それから五年後にも無気力で憂鬱な状態が続いたとします。
しかし不安パニックや悪夢などは 最初の半年で収まってしまっていたとする。
そうすると、事件の影響はその半年のうちに収まっていて後に残った無気力や憂鬱は
その人の「もともとの病気であった」と解釈されてしまう。

しかし驚愕反応や悪夢などがなくなり
患者本人が表面上は平穏で落ち着いているように見えたとしても
良く観察すると 事件以後、深刻な人格変化が生じている場合があるのです。

派手な症状
●震え ●急な発汗 ●毛が逆立つ
これらが消えても、人間関係において深い情緒的な関係を避けてしまうことになりがちです。


■兆候■
●友人関係を鬱陶しいと感じるようになる。
●配偶者や恋人との関係が以前ほど親密なものでなくなる。
●新しい人間関係を作りなおすことを躊躇する。
●「こんな思いをしながら どうして生きていなきゃならないのか」という気持ちが芽生える。
●「人生なんて何も面白いものはない。生きる価値なんてない」という感覚になる。
→■失感情症■身体的にも精神的にも痛みの感覚が鈍麻したり なくなってしまったりする。


そして人間関係での信頼が失われ、閉じこもりの精神になってしまいます。

トラウマの人格変化については、H・クリスタルという人の意見が妥当とされています。
具体的には
第二次世界大戦の生き残り、特にホロコースト(ナチスの行ったユダヤ人全滅運動)の被害者で
現在アメリカに生活している人々の調査で「災難症候群」というものを報告するなかで述べられています。


■症候群の特徴■
●「コミュニティー・サポートを利用する能力の低下」
以前なら寂しさや要望を表現することができたのに、それが出来なくなってしまう=孤立化

●「絶望感を伴う慢性・反復性の抑鬱」

●身体のどこかが、いつも具合が悪い=心身症

●情緒的に麻酔をかけられているような状態。「感情反応の遮断」と呼ばれる。
さきほどの失感情症も症候群の特徴に含まれます。



トラウマの人格変化に関して 特に目立つPTSDの症状は 解離 です


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