† 少女の亡骸 †

本当に愛していたものは
ある日突然 慈悲さえなくし

少女は引き裂かれた服を
脱ぎ捨てられるはずもなく

ただ声も出さずにふるえていた

穴の開いたぬいぐるみ
枯れても白いままの霞草

細い手足が切り落とされて
その傷みで目を覚ました

明日大人になれと告げる傷口

子守歌を聞かせて
夜想曲よりも優しく眠らせて

最後に抱いてくれたのは何時?    

乞うものは答えも愛も返らない
忘れたなんて言わないで

あなたが こうさせたのに

それすら思い出さないの

本当に愛していたのに
夜が消えてしまえばいい
幼いときの記憶もすべて

この闇が明ける頃には
大人になってしまっているのだから

泣きはらしたまぶたも閉じて

そのうでが焼き付けた烙印を見ても
決しておびえたりしないように

静寂に残る足音の幻も
全部全部今夜中に殺してしまえばいい

殺してしまえばいい

だけど

そうね きっと

弱くて淋しくて
亡骸さえ抱いてしまう

過ちよりも もっと深い場所で
あなたがそうしてたのを
知っているから

本当に愛していたの

おやすみなさい




20010319発行詩集Bird Charryより。




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