雨 音


どこかで
何かが 切れた音がする
どこかで
何かを 切ってしまったことに気づく

彼は消え
彼女も消え
残るのは 雨の残した影

目が痛くて
左手も
右手も
ふるえが止まらない

爪の奥が凍ってる
冷えた躰
飛びかう 風の欠片に
わずかな熱さえ 見える

昨日の幻
幼かった私

ほんの数分でさえ

戻らない
降る雨の中
溶けていく影


20000319発行詩集Ipheionより


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