こんどは源氏の息子「夕霧」の物語です。
律義者の夕霧は、その誠実な性格から、一途に落葉の宮との恋にのめりこんでいきます。
これがもとで、妻の雲居の雁との間で派手なけんかが始まるようになります。
夕霧は、結婚して10年。28歳になりました。当時の年齢感覚は、いまとは20年位の差があったといわれ、今の感覚では、もう50歳位のところでしょうか。
今も昔も、真面目な男が、急に若い女に血道をあげ、生活を狂わせる事件はよくあるようです。
それにしても、あのプレーボーイの源氏の息子に、よくもこのような真面目な男がうまれたものです。



ゆうぎり

まめ人という定評で、何事にも真面目な夕霧は、柏木の死以来落葉の宮に対し、親身も及ばぬ世話を続けてきましたが、それが次第に恋心に変わり、いまやこのままではとてもおさまらないまでに燃え上がっていました。
しかし、今更その庇護者としての立場を変えるのは、世間の手前きまりが悪いと、ためらっています。
ただひたすら誠実に尽くしていれば、いつかは世間も、彼女もわかってくれるだろうと、彼女の母御息所が病気治療のため山荘に移ったときにも、何かとこまごま心をくばっていました。
そんな夕霧の心を知ってか知らずか、落葉の宮は、彼の気配りには迷惑顔で、心を閉ざすばかりで、悶々としています。
夕霧は、彼女の心をどんなに傷つけているかなど気がつきません。
秋の色濃い8月の中ごろ。山荘を訪れた夕霧は、ついに彼女にわが心を訴えます。
そして夕暮れから深い霧がたちこめてきたことを口実に、強引にその山荘で一夜を明かします。
しかし落葉の宮は固く心を閉ざしたままで、夕霧は空しい朝を迎えます。
母御息所は、祈祷師から夕霧が宿泊したことを聞いて心を痛めますが、夕霧の心変わりさえなければと、二人が結ばれることを望みますが、それをたしかめることも出来ないまま、心痛のあまり病が急変し、亡くなってしまいます。
一人残された落葉の宮は、茫然自失、たよりにする人とてなく、母の死は、夕霧のせいと、夕霧を恨むようになります。
源氏は、二人の噂を聞いて重苦しく受け止めますが、どうしようもありません。
紫の上も、女というものの宿命に、胸を痛めます。
二人とも、そこに過去の自分を見つめているのです。
夕霧は、落葉の宮の気持ちが解けるのを気長に待ちながらも、強引な説得が続きます。
夕霧には、もはや妻の嫉妬や嘆き、世間の目もありません。
妻の雲居の雁を怒らせながら、夕霧は落葉の宮のもとへ通い、ついに、まだ喪も明けないというのに、ものにしてしまいます。
雲居の雁は、たまりかねて子供たちを連れて、里へ帰ってしまうのでした。


・ この色恋沙汰で実家に帰ってきた雲居の雁の父・太政大臣(もとの頭の中将)は、困ったことだと思いながらも、強いて夕霧のところに戻れとはいいません。
相手の落葉の宮は、亡き長男柏木の未亡人なのです。複雑な心境で、どうしたらよいか、気に病んだにちがいありません。

その後、雲居の雁も、元のさやに収まり、夕霧は、落葉の宮と雲居の雁と、月に半分づつ通うという、彼らしい合理主義を押し通します。

<御法へ>