引地川と鵠沼橋


 ■ 引地川の概要

引地川は、大和市の「泉の森公園」にある「大池」を水源地とする二級河川です。泉の森公園の周辺地域に残っている雑木林の落ち葉や土の中に蓄えられた雨水が谷間で湧水となり、これが引地川の水源となっています。

泉の森公園から南下し鵠沼海岸に至るまで全長は約21Kmです。

「引地」は、「ひきぢ」、「ひきち」、「ひきじ」など、いろいろな呼び方がされていますが語源は明らかになっていません。
長久保緑橋


○ 河川の種別 河川法によると、一級河川とは治水や利水上特に重要な河川として国土交通大臣が指定したものであり、二級河川とは、一級河川以外の河川で公共の利害に重要な関係がある河川として都道府県知事が指定したものです。ちなみに、近くを流れる河川では相模川が一級河川、境川は二級河川です。

○ 泉の森公園 小田急線鶴間駅から徒歩20分または大和駅から徒歩30分。面積約42haの自然を活かした広大な公園です。「かながわの公園50選」「かながわの探鳥地50選」に選ばれています。野鳥、植物、昆虫の観察に最適な公園です。




 ■ 引地川と自然災害

昔の引地川は大きく蛇行していたため湾曲部での流れが悪く、大雨の度に氾濫を繰り返し堤防が流されました。せっかく架けた橋も氾濫の都度架け直さなければならなかったようです。

引地川の治水事業は、江戸時代の後期に地域の有力者(浅場家)が私財を投げ出して築堤工事を行ったことが始まりといわれていますが、自然災害との戦いは近年まで幾度となく繰り返されてきました。
木橋(出典:土木図書館所蔵)

 ■ 現在の引地川の姿

昭和の初期に始まる耕地整理事業や河川改修事業により、湾曲していた引地川の流れは改善されました。しかしながら水害を完全に克服できたわけではなく、その後も護岸改修や河床掘削などの治水対策が近年まで行われてきました。

現在の引地川の安全性は格段に向上しましたが、反面、護岸はコンクリートで固められてしまい、昔のような親水性は低下してしまいました。

近年は環境問題への意識の高まりから河川のあり方についても見直しが始まり、多自然型川づくりへの取り組みが行われています。
辻堂太平台付近の引地川


○ 鵠沼耕地整理事業
旧引地川以東の鵠沼地域を中心とした水田の用水を確保し米の生産性の向上と安定的な生産をはかるために昭和6年に始まり昭和61年に完了した事業です。この事業とあわせて引地川の抜本的な改修が行われました(鵠沼耕地整理事業の記念碑より)。

○ 多自然型川づくり
河川が有している生物の良好な生育環境に配慮し、あわせて美しい自然環境を保全あるいは創出する事業です(神奈川県のホームページより)。引地川では上流の大和市から下流の藤沢市までの随所で様々な取り組みが行われています。



 ■ 取水堰の懐かしい風景

下の絵葉書は50年以上前に製作されたものであり、引地川につくられた取水堰が写っています。現在の長久保公園付近と考えられます。タイトルは「引地川上流の鮎釣り」です。かつて鮎釣りができたとは信じられないことです。左岸(絵葉書では右側)は水田地帯であり右岸は砂丘と松林になっています。

この取水堰がいつ取り壊されたか定かでありませんが、昭和30年代まで存在したことは確かです。砂丘や松林は子供達の格好の遊び場でした。私自身も日が暮れるまで遊んだことが度々あります。遅い帰りを心配する母の顔が眼に浮かび畦道のような細い道を自転車で走り抜け家路を急いだ記憶があります。

50年以上前の引地川の風景


 ■ 私の散歩道…引地川の遊歩道と長久保公園

現在の引地川沿いには多くの区間に遊歩道が整備されており、ジョギングや犬の散歩など地域の人々に親しまれています。私のお気に入りの散歩道です。長久保公園は富士見橋〜長久保緑橋の辺りにあり多くの植物を楽しむことができます。春や夏には植木市も開かれており、散歩の途中で立ち寄り、季節の花を買うのが楽しみです。

引地川緑地の遊歩道 長久保公園
引地川の水面(1) 引地川の水面(2)


○ 堰の目的
堰の目的には、取水、舟運のための水位・水深の確保、流量調節、河口部における塩水遡上防止などがあります。引地川の堰は農業用水路に水を引くために設けられた取水堰です。

○ 長久保公園
長久保都市緑化植物園と呼ばれている面積3.4haの公園です。みどりの相談所や花のプロムナード、温室や見本園などがあります。四季を通して花や緑を楽しむことができます。



 ■ 鵠沼橋の昔

引地川の中で最も下流に位置するのが鵠沼橋です。正確には鵠沼橋より海側に「みどり橋」というサイクリングロードがありましたが現在は存在しません。鵠沼橋は昭和7年に建設された由緒ある橋であり、隣接する「鵠沼プールガーデン」とともに、藤沢市民にとって愛着深いところでした。

旧鵠沼橋と親柱

旧鵠沼橋からみた江の島


 ■ 鵠沼橋の今

旧鵠沼橋は、平成2年の台風の際に落橋したため、国道134号線の4車線化とあわせて現在の鵠沼橋に架け替えられました。

高欄のデザインは一新されましたが、旧鵠沼橋の親柱が橋のたもとに記念として設置されており、昔を偲ぶことができます。


鵠沼橋からは江の島を真正面に見ることができます。また、毎年夏に開催される花火大会を見る場所としても最適です。
旧鵠沼橋の親柱

4車線化が完成した鵠沼橋
現在の鵠沼橋からみた江の島


○ 鵠沼プールガーデン
昭和13年に県立プール(管理は藤沢町に委託)として開設されました。昭和35年からは小田急が経営するレジャープールとして市民に親しまれてきましたが、利用者の減少により平成12年の夏に閉鎖されました。その跡地利用については様々な検討が行われていますが、現在はスケートパークとして利用されています。

○ 国道134号線 国道16号交差点の横須賀市三春町から中郡大磯町までの海岸沿いを走る総延長約60kmの国道です。昭和のはじめに失業対策事業としてつくられた道路であり、湘南遊歩道と呼ばれていましたが、東京オリンピックに備え整備が行われ、昭和40年一般国道134号に指定されました。


参考文献

○鵠沼海岸百年の歴史・高木和男著・菜根出版・昭和56年発行、○藤沢の地名・日本地名研究所編・藤沢市・昭和62年発行、○湘南散歩・境川・引地川・村岡義章著・(株)武田出版・平成12年発行



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