《2》 暴力が目前に迫ったそのとき、子どもに何ができるか
最近の防犯グッズはすごいな〜。『いつでも使えるように』ということが配慮された作りにどんどん進化している。
でも、道具が苦手な私…。グッズを持つ・持ってもらう(子どもに)という方向には、どうも心が動かない。
そんな私がいつでも使える道具として一番信頼しているのは「声」。声なら、無くすことも忘れることもないから。
大きくて低く太く、声を出すことで元気になれて気合いが入るような声を、子どもが出せるような練習は、子どもの(親子の)セルフディフェンス講座で欠かせない!と思って毎回入れるようにしている。
ただ、それが逆に『大きな声を出せなくてはダメよ』というメッセージになては元も子もないので、声がなぜ重要なのかについても子どもさんの年齢を考えなら簡単に補足するのも大事なことだな、と思う。(親御さんへの講座資料には詳しく載せているので、おうちでフォローしていただけたらありがたいです。)
●「いざというときに声は出せない」というのは真実か?
ブザーが配布される理由のひとつとして「いざというときに声は出せないものだから」という言葉を聞くことがある。それはひとつの事実なのだろうけれど、私はあれについて、「風呂に入らないと身体がかゆくなる」と思われているのと似ているなぁと思っている。
お風呂に入らなくて身体がかゆくなるのは、肌にホコリやら古い角質やらがたまるからなのではないだろうか。シャワーや清拭(蒸しタオルなどで体を拭くこと)など、「かゆくならないための」別の方法はいろいろある。
声にも、「いざというときでも声を出すための別の方法や考え方」がある。
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呼吸が止まるというのは、生物にとって死を意味する。酸素濃度の低い血液が脳に届くと、脳はパニックを起こすそうだ。
だから、パニックを起こさないためにも、呼吸を保つというのは、本当に大切なこと。
しかし、万が一の突発的な状況で『息を呑んで』しまったら、深呼吸するのは至難の業。それ以上吸う事ができないから。
ここで『声』を思いっきり出して息を吐けば、次の瞬間、無理なく息を据える。脳に酸素を送り、生命維持ができる。
●声の価値
声を出せば加害者が驚くかもしれないし、周囲の誰かが気づいてくれて、助けを得やすくなるかもしれない。
でも、加害者が驚くとは限らない。気付いてくれる人を得やすい状況で暴力を受けるとは限らない。だからこそ、私たちは声を出すことに抵抗を感じるのではないだろうか。「相手が逆ギレしたら…」と考えてしまうし、「こんなところで声なんか出しても、誰にも助けてもらえない」と思う。
それでも、声を出す価値があるということを、私はWEN-DO(女性のためのセルフディフェンス)のトレーニングで知った。
声の本当の価値。それは、声を出すと人は元気になれて、集中力を高め、力を発揮しやすい状態に近づける、ということ。
子どもが楽しそうにエネルギッシュに遊ぶとき、大声を出して笑ったり騒いだりする。万が一の状況でも、子どもがあれくらいエネルギッシュになれたらどんなにいいだろう。
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大声を、助けを呼ぶためのものとして考えず、その人(子)自身が目を覚まして的確な行動を起こしやすくするためのエネルギーとして考えてみると、必ずしも大声でなくてもいいように思う。
大事なのは、その人自身の気持ちが解放でき、すっきりできる発声だろう。子どもには『大きい声』の大切さも伝えつつ、そればかりを求めすぎないように注意したい。
そして、報道で助かったとされている子のほとんどは声を使っていることも講座では伝えようと思う。
あ、そうだ。「大声を出すと不審者は逃走した」「大声を出して逃げて子どもは無事」などの新聞記事をたくさん集めておこうかな?
●子どもにとって有効な身体的護身術
ここからはしばしばご質問をいただく、「子どもにもできる護身の技は?」について。う〜ん、サイトや文章、講座資料でお伝えするのは、やはり難しい…。
身体の動きを文字や絵、写真などでお伝えすることの難しさがある上に、護身の技というのは、加害者の『急所(弱点)』に対してダメージを与える/負荷をかける方法である場合も多い。そうした危険な情報は不特定多数の方に無責任にお伝えしてはならないし…。
けれど、受講してくださった方々が、自宅にて講座内容を思い出しながら練習するための情報は必要だなぁ。
護身的な発想や身体づかいの、ポイントみたいなものが示されるだけでも、なんとなくでも思い出していただけるかしら?
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(1) 誰が教える?
護身術は奥深いものではあるけれど、決して難しいものではない。もし難しいものなのだとしたら、武道や格闘技の下地が全くなく、体育の評点が2〜3だった私(ハハハ)にいきなりできるはずがないし、誰でも出来る物でなければ『一般に普及しうる護身術』として成り立たない。
だから、親子の護身術講座にご参加くださった親御さんには、自信を持って、子どもさんとご自宅で練習していただければと思っています(いきなり「ですます」調に)。
女性のための護身術の講座に参加してくださった方が、ご家庭で子どもさんに伝えていただくことも大歓迎!
多少細部がうろ覚えになっていても、気にする必要はまったくありません。だって、「その時」に一番重要なのは、「危険から逃げてくること」であって、「正確に技を行うこと」ではないんだもん。
大事なのは意気込みと気合い。そして、「なんとしてでも逃げる!」という気持ち。逃げたいと感じ、そのための行動を起こした自分を信じて、応援しつづける気持ちです!
(2) 技のポイント
・ 護身術では自分が怪我をしないように、自分の身体の安全な部分を使う。
・ 「自分の身体の安全な部分」とは、骨や関節が見えやすくはないところ。どちらかというと、クッションになるような筋肉や脂肪のついている部分。
・ 「どこでなら、思いっきりドンドンできる?」と考える。
例えば、拳を作って、机をおもいっきり「ドンドン!」と叩くなら?
脚で蹴るとき、床や地面を思いっきり「ドシドシ」できるのはどこ?
・遠心力やテコの原理などの力を取り入れる。
力対力で引っ張ったり押したりするだけよりも、回転やねじり、反動など、
他の動作や力を加えると力が増える。
・ 相手にとって何が「意外(な動作になる)か」を考える。
(3)急所
急所とは「そこをやられるとピンチになるところ」で、「鍛えたり覆ったりできない部分」。
また、護身術と言えども、生死に関わる急所には安易に反撃対象にすることはない。急所には、生死にかかわる急所(や、ダメージを受けると後遺症が一生残る急所)と、一時的なダメージのみで済む急所との2種類がある。
また、ダメージとは、痛みや故障だけではなく、「ハンディを追って不利になる」と考えると視野が広がるかも。
例えば相手の顔がこちらに接近しているとき、相手が思わず身体をのけぞらせたくなってしまうような所に軽い力をかけるだけで(働きかけるだけで)相手の姿勢を崩すことができるかもしれない、というような発想を持つような。
*なお、私が担当する親子護身術講座や、短時間の女性向け護身講座では、一時的なダメージのみで済む急所とそこへの技しかお伝えしていませんので、ご安心ください(?)。
(4)知恵と「意外な方法」で身を護る
加害者は、ターゲットに対して自分の力のほうが上だと感じられるときに暴力を振るう。スポーツではないから、かなわないかもしれない相手に挑んだりはしない。女性や子どもが狙われがちなのは、加害者から「弱い」とみなされているからだろうと思う。
だからこそ加害者にとって意外な反応が効果的になる。それが力強い方法であろうがなかろうが、意外であるというただそれだけで、充分護身として成り立つ場合もある。
ある子どもは、不審者に手を伸ばされて、相手にげっぷをふきかけようと考え、緊張のあまりゲロまで出てしまったらしいのだけれど、結果としてそれで加害者が逃げていき、自分を護ることができたそうだ。
公園の砂場で狙われた男児は、丁度そのとき手に持っていた、おもちゃのピストルを加害者に向けて構えた。加害者はピストルを向けられてオタオタと逃げたという。子どものおもちゃなのに。
子どもにはこうした『ちょっと笑える武勇伝』が効果的なようです(これは親子護身術でやってきてみての実感)。
護身するときの緊張感や怖れを子どもにイメージさせすぎると『すごく怖い』との情報がインプットされてしまう。「私には無理。できない」となる。
でも、逃げる加害者を“かっこ悪ぅ〜!”と笑いながらイメージできると、いざというとき子どもが護身行為を起こしやすくなるような気がする。
(5)子どもが、ポジティブな自己像を思い描けるように
私達大人は、子どもを、何もできない弱い護るべき存在と見なしてしまうことがある。「守ってやらねば」と思わず考え、言ってしまうこともある。でも、大人から常にそのように見られ、そのように言われていたら、子どもも自分を「自分は弱く、守られなくては生きていけない存在」と思ってしまうかもしれない。
新聞には関連する報道が頻繁に見られるが、無惨な被害にあったという報道と、被害に遭いかけたけれど子どもは逃げたという報道とのどちらの数が多いかと言えば、逃げた子どもについての報道のほうが圧倒的に多数だ。だったら、「怖い時代になった」と読み取るかわりに、「たくましい子どもが今はたくさんいる」と読むこともできる。
『声をかけられてヘンだと思ったから、即座に走って逃げた』
『腕をつかまれたが大声を出してすぐに走って逃げた』
『ランドセルに手をかけられたが、児童はランドセルから身を離しそのまま走って逃げた』
『児童が大声を出すと、不審者は逃走した(車で走り去った)』
『「動くと刺すぞ」とナイフで脅されたが、子どもは走って逃げて無事だった』
多くの子が、彼等のように逃げられる可能性を持っているはず。可能性を現実にいかすには、“その子”がその時にポジティブな自己像を内側に持てるかどうかが鍵ではないだろうか。
『怖い人がね、また子どもを襲ったんだって』という言い方では、それを聞いた子どもがイメージするのは“怖い人が子ども(や自分)を襲う”場面、“手も足も出ず、立ちすくむ自分”となってしまうかもしれない。.
でも、ただ家庭で事件について話すとき、『この子は、襲われかけたときに大声を出して走って逃げたんだって。それて不審者も追いかけて来なくて無事だったんだって!』と聴かされれば、聞かされた子は、“不審者から子どもが逃げのびている”というイメージを描きやすくなるかもしれない。
失敗例だけを100個聞いても、成功することはできない。
成功するには成功の秘訣を得ることが必要だ。
(6)逃げてから、どうする?
我が家の子どもが私にこう言ったことがある。
「逃げても、もし知らない所だったら、どうしたらいいんだろう?」
うーん、確かに。もし知らないところに連れていかれて放り出されちゃったら? という話も大事ですね。
知らない所に連れていかれて知らない場所に放り出されてしまったら、
・ 誰の家でもどの店でもいいから尋ねて、助けてもらう
・ 自分の家の住所や電話番号が言えなくても大丈夫。学校(保育園)の名前さえ言えればOK.
・お金も携帯もなくても電話をかけられる方法…コレクトコールなどを教えておく(4年生以上くらいなら理解できるかな)
* 今は電話代も安価になりましたし、子どもが助けをもとめて来たのに電話すら貸せないという人も減っていると思うので、実際はコレクトコールを使わなくても電話の一本くらいはかけられると思いますが、子どもは『こういう手段がある』と知ることで、安心感を得られるかも。
・お金がなくてもタクシーなら乗れる…タクシーは後払いの乗り物。家などに着いてからお金を払えば良い。
自宅で、緊急時に使うお金の置き場所(隠し場所)を決めておく。
他にもあるかな?