債務整理(特定調停・任意整理・個人再生)という言葉は知らなくても、自己破産という言葉は皆知っていると思います。
ただ、掲示板の書き込みをみていて「自己破産について勘違いしている人が多いな。」と思う事があります。
明らかに支払不能に陥っている状態なのに、「でも破産はしたくないんです。何かアドバイス下さい。」と言う人がいたり、家族に勇気を持って告白したら「離婚と言われた」と言う人がいたりします。
その様な書き込みを見ると、そのほとんどが自己破産について勘違いしています。自己破産しても選挙権はなくなりません、戸籍や住民票にも記載されません、家財道具も一般には処分されません。自己破産するとこの世の終わりだと言う人がいますが、そんな事はありません。むしろ、多重債務に陥った人のこれからの人生に、希望の光を照らす有難い制度なのです。
★自己破産とは★
多額の借金で支払不能に陥った人に与えられた、最終的な救済手段。債務者の財産を債権者に公平に分配し、その後、免責決定を受けて初めて債務の支払義務がなくなります。
債務者に不動産や預貯金等の財産がある場合は、破産宣告と同時に破産管財人が選任され破産の手続きを進めます。
債務者にめぼしい財産がない場合は、破産管財人を選任せず破産宣告と同時に破産手続きを終了します(同時廃止)。
★同時廃止の場合の主な流れは次の様になります。
破産申立 → 審尋 → 破産宣告(同時廃止) → 免責申立 → 審尋 → 免責決定
★免責とは★
破産宣告が下されたからといって借金がなくなる訳ではありません。破産宣告決定後に免責申立して免責決定を受けて初めて支払義務がなくなります。ですから、自己破産をする目的の全ては免責決定を受ける事にあります。
ただし免責申立をした人全てに免責決定されるかというとそうではありません。免責不許可事由というのがあり、これに該当する行為があった場合は問題になります。
主な免責不許可事由として、浪費やギャンブル、財産を隠した場合、クレジットカードで買った商品を転売した場合、虚偽の書類を裁判所に提出した場合等があります。
ですが、裁判所では免責不許可事由があっても裁判官の裁量により、広く免責を認める傾向にあるようです。免責不許可事由に該当するからといって、自己破産を債務整理の選択肢から外すのはお勧めできません。専門家に相談してみて下さい。
★破産者の主な制限とは★
●資格の制限
破産者は生保外交員や警備員、宅建取引業者、代理人や後見人、会社の取締役や監査役等になる事が出来ません。弁護士や司法書士等、他にも制限がありますので詳しい事は御自分で調べるか、専門家に相談する等して下さい。
また、資格制限は免責決定がなされるまでの間です。
●自由の制限
破産者宛の郵便物等は一旦破産管財人に配達され、破産管財人はこれを見る事が出来ます。また、裁判所の許可がなければ転居や長期の旅行等をする事が出来ません。この制限は破産手続きが終了するまでです。
同時廃止の場合にこの制限はありません。が、何か行動を起こす時には必ず専門家に相談してからにして下さい。
●財産管理の制限
破産宣告時に所有していた財産の管理処分権は破産管財人に移ります。この制限は破産手続きが終了するまでです。同時廃止の場合にこの制限はありません。が、何か行動を起こす時には必ず専門家に相談してからにして下さい。
尚、破産宣告後に新たに取得した財産は自由財産と呼ばれ、破産者が自由に使う事が出来ます。
自己破産がこの世の終わりではないという事がお分かりになったでしょうか?結局、自己破産の際に受ける資格の制限や自由の制限等は、破産宣告や免責決定されるとなくなります。その後の生活上の不利益をしいて挙げると、新たな借入が出来なくなる点です。しかし、借金はもう懲り懲りですよね?借金体質を直すリハビリ期間と思って貯金のある生活を目指しましょう。 |