理数理科は3ケ年で3科目を必修(計19-21単位)

2000.9.北海道高等学校理数科指導研究会物理分科会報告資料に一部加筆



1.教育課程


札幌啓成高等学校理数理科教育課程表(1998年度入学生)

1年理数生物(4)必修
2年理数化学(4),理数物理(3)を必修
3年理数化学(2),理数物理(4),理数生物(2)を必修 さらに古典・理数化学・理数生物から1科目選択(2)


 1970年代前半まで,理科は4科目とも履修するのが普通科の高校ではあたりまえでした。ところが,学習指導要領が改訂されるたびにどんどん選択制が導入されて,現在,都市部の大規模校では,文系・理系ともに理科は2科目という学校がほとんどです。

 一方,理数科では,理数科の特色を生かす主旨から,しばらくは物化生地の4科目必修の時代が続きましたが,1990年代に入って,家庭科の必修や,第2・第4土曜日の休業等の影響で,理科のそれまでの単位数の確保が難しくなり,現在では,本校と同じく理科は3科目の履修としているところが多いと思います。このように理数科の理科は4科目から3科目へと減少はしましたが,それでも普通科の理科2科目履修に比べるとプラス1科目の広がりがあり,現時点で,これが理数科のカリキュラム上の大きな“特色”であると同時に,理数科を卒業した生徒達の“強み”になっていると思われます。

 一般論としては,エネルギー・環境といった現代の科学的課題の多くは,物理・化学・生物・地学が複雑に絡み合った総合問題としてとらえる必要があります。データを互いに関連づけたり,正しく科学的に推論したりする能力を養うためには,深いが狭い専門性よりも,多少浅くても広い科学的知識や教養を持つことが大切だと考えます。つまり,理科の科目を幅広く学習しておくことはそれだけで十分意義のあることです。しかし,現時点で理数科のカリキュラムが最も生かされるのは,やはり理系大学に進学する場合でしょう。

 例えば,大学に入学した学生が,高校でその基礎となる理科の科目を履修してこなかったばかりに大学での授業についていけず,結局高校理科の補習授業を行わなくてはならなくなった話(工学部の物理,医学部の生物等)はよく聞くところですが,理数科出身の学生の場合にはそのような心配は最小限ですみます。

 また,現代の理系の学問では,物理・化学・生物・地学の互いに重なり合う領域や,学際的な領域が非常な勢いで拡大されていますが,そのようなテーマを研究する場合に,高校時代に理科を3科目学習してきた理数科出身の学生は比較的有利な立場にいることが想像されます。

 このように理数科出身の学生は,理系大学では大いに歓迎されているはずなのですが,理数科は普通科と比べると生徒数が圧倒的に少ないので,ひょっとしたら大学の入試担当者からはあまり注目されてこなかったかも知れません。理数科の特色を大いにPRし,例えば,大学の推薦入学の枠が“理数科”指定でとれるようになれば,理数科教育も大いにはずみがつくのではないかと考えています。

2.理数科課題研究

 秋に,理数科1・2年生合同の授業として,理数科課題研究発表会を行っています。2年生は,10〜15グループ程度に分かれて任意のテーマに基づいて約半年間行ってきた課題研究の成果を発表します。1年生は聴衆として2年生の発表を聴き,来年の自分達の発表に備えます。評価は1年生と発表者以外の2年生が評価カードに評価を記入する形で行います。教科科目の評価には組み込んでいません。時間数的には,ガイダンス,テーマ選定,発表,まとめ等をあわせて合計約13〜14時間を授業時間内で行います。そのうちの8時間を発表会にあてています。時数は理数理科と理数数学にカウントします。実験・データ処理・発表会の資料作成・報告書作成等は主に放課後の活動です。

 なお,平成12年度の課題研研究テーマは以下のようになっています。

ペットボトルロケットについて/静電気について/物体の質量と固有振動数と音/電球について/着色について/粘着テープの性質を暴く!/液体有機化合物の分析/定性分析/油について/火について(発火の方法・条件)/植物ホルモンの植物成長に与える影響/菌〜食べ物に含まれている菌について/地層〜土壌と環境/香りがもたらす心身への影響/声について/肝臓の再生/土について/めだか/植物の組織培養について/螢の発光/火山の仕組み/地球の重さを量る/オゾン層の破壊





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