DEATH PENALTY
カシャン。
カシャン。
ひとつひとつ、装填されてゆく黄金の弾丸。
黒髪の男がしているその様を、少し離れて
じっと見つめる少女。
『いつか』と同じ様に、宿屋のある一室の、安っぽいベッドに座っている彼と、
それを見守る自分。
2年前と同じ様に、彼は無言のまま
黒光りする手元の銃に弾丸を込める。
違うとすれば。
それは。
「………ね、ヴィンセント」
「…………何だ」
少女―ユフィが、突拍子も無く話しかけ、
少し間を空けてからヴィンセントが返事をする。
これも、いつものことだ。
「あのさ、あの銃はどうしたの?」
「あの銃……?」
ベッドに寝っ転がっていたユフィが座り直し、
ヴィンセントはそのまま装填を続ける。
「ホラ、2年前に使ってた……。
ルクレツィアだかって人がくれたのがあったじゃん」
カシャン。
ユフィの口から、意外な人物の名前が出たからか。
ヴィンセントは、装填の手を止めた。
「…………デスペナルティか」
『死の罰』と銘打たれたその銃は、かつてのヴィンセントの愛銃だ。
罪にまみれた自分には、もっとも相応しい、と、
当時の彼は自嘲気味に言い放ち、
今も心に住み続けている、愛しい女性が遺したそれを手に取り、
使い続けていた。
だが。
今のヴィンセントの手元にあるのは、デスペナルティではない。
口径の3つ付いた、少し銃身の長い銃の名は「ケルベロス」。
3つの口を、有名な「地獄の番犬」の頭に見立てた物だ。
「…………あれは、彼女の元に還してきた」
そうとだけ呟くと、ヴィンセントはまた
ケルベロスに装填を始めた。
「ふぅん………」
自分で聞いておきながら、ヴィンセントの返答には
さしたる興味も示さずに、またユフィは彼の動向を見つめる。
「…………今の私には、あの銃はもう必要の無いものだ」
2年前まで、自分の罪は償い切れないものだと思っていた。
否、思い込んでいた。
愛する女性を守り切れなかった。
いずれ、世界の厄災となるであろうモノを、作り出すことを止められなかった。
その罪の代償に、時を重ねる事の無い、異形のものへと変貌を遂げる
忌まわしい身体を手に入れてしまった。
罪を償えても、償えなくても良かった。
死すら許されぬ程の業ならば。
行き続ける事で罪を償えるならば。
それで、良かったのだ。
だが、自分は変わった。
時間の概念の無い、この身体が変わった訳ではない。
自分の罪が消えた訳でもない。
それでも。
彼の『心』は、次第に変化を見せていた。
大切な、『仲間』と呼べる存在が出来た。
守るべきものが出来た。
護るべき、『人』が出来た。
もう、『死の罰』は必要としなくなった。
例え、「罪」が許される為の「罰」が『死』だとしても。
自分は、死ぬ事が出来なくなったから。
「護りたいんだ…………私に、出来るのなら」
「へ? 何か言った?」
囁くように呟いた、ヴィンセントの言葉に気付くユフィ。
「何でもない」
最後の弾丸を銃に詰め込み、リボルバーを閉じる。
貴女を守れなかった代わり、とは言わない。
それは貴女にも、彼女にも失礼な事だから。
「そうだ、ヴィンセント!」
「何だ」
「今度さ、アタシがイイ物作ったげるよ!」
「いいもの?」
「そうさ! アタシ、これでも手先は器用なんだ!
アンタのその銃にピッタリのアクセを作ってやるよ!!」
護りたいんだ。
私の傍を離れない、小さな「彼女」を。
ただ、それだけの為に。
私は、この引き金を引くのだ。
END
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日記に投下したヴィンユフィ小説。
一部加筆修正でお届けします。
そしてコレは、「ヴィンユフィ同盟」様に提供してますです。
…で、この時作ったのが
「DC」でヴィンセントがつけてるケルベロスのチェーンな訳ですよ。
僕的設定では、ユフィも携帯に
同じモチーフのストラップをつけています(勿論ユフィのお手製)
これで二人は、離れていても一緒ですよ!(爆)