+ Wake Up , Right Now +
− Souffle Side −
「っ……」
包丁を持つ手が、止まる。
―――とはいっても、別に手を包丁で傷つけた訳じゃない。
「痛〜…。……腰痛っ……」
思わず、腰を擦ってしまう。
旦那様(…って言っちゃった!キャーvvv)のアルベルちゃんが、
1週間ぶりに泊り込みしてたお城から、家のあるこのカルサアに帰ってきたのは
昨日の事。
アルベルちゃんが帰ってきたのは嬉しかったけど………
………まさか、あんなに激しくされるなんて思ってなかったからなぁ…。
起きた時なんか、腰痛過ぎてしばらく動けなかったんだからッ!!!(泣)
…………嫌じゃなかったのは…確か……デス。(照)
………って、何言ってんのアタシッッ!!!!!
あーもー、アルベルちゃんが起きてくる前に
ご飯作んなきゃっ。
その時。
『ぐぉッッ!!!!?』
2階の、アタシとアルベルちゃんの部屋から
鈍い音と声が、ほぼ同時に聞こえた。
…………シーちゃん…フェリシアが、アルベルちゃんの上に
圧し掛かったな……。
アタシも昔、アルベルちゃんによくやってたっけ……。
「………あれ?」
ふと、周りを見渡してみる。
「アルベルちゃんを起こしてきて」と頼んだのは、
娘のシーちゃんにだけ。
さっきまで、アタシの隣りに居た筈の
息子のリーちゃんまでもが居なくなっていた。
きっとアルベルちゃんを助けに行ったんだな……。
シーちゃん、アルベルちゃんに引っ付きたくてしょうがなさそうだったし…。
しばらくして、トントンと階段を下りてくる音が聞こえた。
最初に台所へ戻ってきたのは、シーちゃんの方だった。
「お父さん、起きたよー…」
あらら、すっかりしょげ返っちゃって。
ぶすくれた顔をして、ちょこんと椅子に座る。
「………つまんない〜っ!」
かと思えば、足をバタつかせテーブルに身体をくっつけて
駄々をこね始めた。
「何がそんなにつまんないの? シーちゃん」
「だぁってぇ〜…。お父さん、ちっとも私に構ってくれないんだもん……。
起こしに行ったのだって、私なのにさ……」
そう言うと、こてんと頭をテーブルに置いた。
………ありゃ、ちょっと涙目だ。
「……お父さん、私のことキライなのかな……?」
………シーちゃん。
お母さん、お父さんと知り合ってもう10年近く経つけど。
あんな、娘に対して親バカなアルベルちゃんを見た事は、
リーちゃんとシーちゃんが生まれるまで、一度も無いよ………?(苦笑)
「…お父さんがシーちゃんをキライな訳無いじゃない」
「……でもぉ……」
彼女の黒髪を軽く撫でてあげる。
「それとも、シーちゃんはお父さんに『嫌いだ』って言われた事ある?」
「………」
黙ってシーちゃんが首を横に振る。
「お父さん、シーちゃんの事大好きだよ?
きっと照れてるんだよ」
「………そっかな……?」
「そうだよ」
「………そうだよね!」
ぱぁっと、シーちゃんの顔が明るくなる。
……そう言えば、シーちゃんとアタシが似てるって
アルベルちゃんに言われた事があるんだよね…。
「どこが?」って聞いたら、即答で
「全部。」って返って来たけど……。
……アタシ、こんな可愛く笑えないと思うんだけどなぁ……。
そうこうしている内に、また階段を下りる音が聞こえた。
今度、台所に入ってきたのは
息子のフェンリル……通称リーちゃん。
「あ! リーちゃん、お父さん起きた?」
「……母上……。……その呼び方は止めて下さいと……」
そう言うと、少々げんなりした表情で椅子に座る。
そんな事言ったって……。
「フェンリルちゃん」じゃ呼び辛いし、フェリシアが「シーちゃん」だから
フェンリルは「リーちゃん」が良いかなって………。
今更、呼び方なんか変えられないよ…。
アルベルちゃんだって、最初のうちは
『ちゃん付けするなッ! この阿呆ッ!!!』
―――って言ってたのに、今じゃ全く抵抗感ゼロだよ?(笑)
「だーい丈夫っ! そのうち慣れるよ!」
「………あんまり慣れたくない……」
…今度はリーちゃんがぶーたれちゃった……。
そんなリーちゃんに気を遣ってか、シーちゃんが
リーちゃんの頭を「いい子いい子」してあげてた。
仲良いなぁ。
さて。
リーちゃんが戻ってきたってことは、もう少しすれば
アルベルちゃんが降りてくる。
ご飯の準備はもう出来たし、
子供達2人も、お腹を空かせて待ち兼ねてるし。
とりあえず、彼が起きて来たら。
最高の笑顔で、
「おはよう」って、言ってあげよう。
END.
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アルベル視点に対して、スフレ視点。
日々、こんな感じで
ノックス一家の一日は始まるのですよ。