― 相手に見返りを求めるのは 「恋」に過ぎない
     見返りを求めず、ただひたすらに相手の幸せを願う事
                                   それが 「愛」 ――




いつだったか、そんな話を聞いたことがあった。

その時は、自分に全く関係の無いことだったから
頭の片隅に留まっているに過ぎなかった言葉。


でも、今。
不意に思い出された、ひどく納得の出来るその言葉。



”アイツ”のそれは、「愛」の他ならないと思えたから。






アタシの数歩先を、妙に小奇麗な紅いマントが、ひらりひらりと翻る。
それを目で追いながら、アタシは”アイツ”の後ろを歩く。
ひたすら無言で。

「………………」

ヴィンセントが何も喋らないのにも、もう慣れた。
アタシばっかりが喋るのも、もう疲れた。
だからこうして、何も喋らない代わりに、珍しく考え事をしてみる。

………でも、やっぱり珍しい事はするもんじゃない、と思った。



あの言葉が浮かび上がったかと思えば、次に浮かぶのはヴィンの言葉。


『あなたが幸せなら、私は構わない』


何でだろう。
何でアタシ、こんなぐちゃぐちゃな気持ちなんだろう。

ムカつくのと悲しいのと、何だかごっちゃになった感じ。
上手く説明出来ない、不可解な感情。




ヴィンが「あの人」に言った言葉。
ヴィンの「あの人」に対する想い。

それは「愛」以外の何物でも無い、と思う。
だってヴィンは、「あの人」に何の見返りも求めちゃいない。
「あの人」が幸せなら、それで構わないって。
そう、言ってた。



じゃあ、アタシのは何だろう?
ヴィンを「好きだ」って想うこの気持ち。

アタシのは「恋」なのかな?

ヴィンに幸せになってもらいたい、とは思う。


でも、アタシは―――――………。





「………?」

後ろから気配が消えた。

「ユフィ?」

呼びかけて振り返ると、彼女は私の数歩後ろで立ち止まっていた。
顔は地面と平行になるように、俯かれている。
「どうした?」
彼女の方まで戻るが、返事は無い。

「ユフィ…」
「―なんでもない」
もう一度呼ぶのと重なって、彼女が応えた。

「なんでもないよ、ゴメン。 …………行こう?」

気丈に振舞いながらも、その手は私のマントの裾を軽く掴んでいて。
心なしか、震えている様に思えた。

「…………ああ」
マントを掴まれたまま、私は歩き出した。






………アタシ、バカだ。

何で今頃、気付いちゃったんだろう。



アタシは、ヴィンが好き。
ヴィンには、幸せになってもらいたい。
ヴィンが幸せなら、アタシはそれでいい。

でも。


ヴィンの隣には アタシが居なきゃ嫌だ、なんて。

アタシ、『見返り』を求め過ぎてる。



ヴィンが幸せな時だって、悲しい時だって、辛い時だって。
いつだって、そこにはアタシが居て。
ヴィンと一緒に笑ったり、悩んだり、怒ったり泣いたりして。

ヴィンの眼には アタシしか映らなきゃ良いのに、とか。
ヴィンが触れるのは アタシだけで良いのに、とか。


…ヴィンが好きになる人が アタシなら良いのに、とか。


自分の都合の良いことばっかり、考えてる。
ヴィンの気持ち、無視してる。


……アタシ、本当にバカだ。
自己嫌悪。

こんなの、『愛」とか『恋』とかじゃない。
そんな大層なモノじゃない。


こんなの。



独り善がりの、ただの我が侭だ――………。




「………ッ!?」

ヴィンのマントを掴んでたアタシの右腕が、
反対にヴィンの左手に掴まれた。

「ヴィ……ン?」
「………そんな軽く掴まれていたのでは、いつかお前が逸れそうなのでな」

そのまま、力強くアタシを引っ張っていく。
すっかり為すがままのアタシは、足を速めてヴィンについて行くのに必死だ。

さっき考えてたコトなんか、ついて行くのに必死になり過ぎて、忘れてしまいそうな程に。
思わず泣きそうになってたけど、すっかり涙腺は張り戻された。

これが、ヴィンなりの気遣いなのかな、とかも思ったけど。
何だか、ちょっぴり嬉しくなった。




『愛』とか、『恋』なんて大層なモンじゃない。


独り善がりの、ただの我が侭だけど。



ヴィンが、アタシのことを好きになってくれると良い。
そうなってくれると、嬉しい。


これくらいのワガママ、許してくれるよね?


『愛』じゃなくても、いいから。
『恋』でなくても、いいから。



掴まれてた右手で、ヴィンの左手を握り返しながら。


そう、想った。



END




------------------------------------------------------------------





シリアスなんだかシリアスじゃないんだか(死)
アホな脳細胞では、これが限界です(汗)



最初の言葉(『見返りを求めるのは〜』ってヤツ)は、
某番組で美輪明宏がおっしゃられた、「オーラの言葉」です(番組バレバレ)
コレを聞いた時、「ああ、じゃあヴィンのルクレツィアに対する気持ちは『愛』なんだなぁ」と
納得しまして(笑)
そして、このお話が浮かんだのです。


ヴィンのルクさんに対する気持ちは「愛」で構いません。
ユフィに対しては、寧ろ見返りを求めまくって欲しい訳ですよ!(オイ)
ムッツリですから、ウチのヴィンは(笑)

同様にユフィも、どんどん見返りを求めてもらいたい。

「見返りを求めない愛」ってのは、確かに純粋で素晴らしいんだけど。
人である以上、「誰かに愛してもらいたい」ってのもあると思う訳ですよ。
それが「見返り」にならなきゃ良いんですけどね…。
恋愛って難しい。